1.企画段階編

(1)活動のテーマと目的の設定

地域における課題やニーズの探索

ポイント

  • 地域住民の間で共有されている地域の課題を、活動のテーマとして取り上げる。
  • そのために、地域における当該分野の課題やニーズについて事前に調べておく。
  • 同様の課題に対する他地域での取り組みについても調べ、企画の参考とする。

  ボランティア活動のテーマを選定するに当たり、「地域住民の間で共有されている地域課題」を克服するための活動を選定すると、多くの住民に参加してもらいやすくなり、また関係団体の協力を得やすくなる。そのため、活動を行おうとするエリアにおいて、当該分野でどのような課題やニーズが存在するのか、などについて事前に調査しておく必要がある。具体的な方法としては、自治体の政策を調べる、地域にある関係団体の活動について情報を集めたり実際に話を聞いたりする、地域住民にヒアリングをして直接ニーズを探る、などが考えられる。また、同様の課題に対する他地域での取り組みについて調べておき、活動内容を企画する際に参考とすることも有効である。

参考事例

スノーバスターズ
  • スノーバスターズでは、我が国でも有数の豪雪地帯という岩手県沢内村において切実な地域課題である、“単身高齢者等の雪かき”が取り組み内容である。この事例では、ボランティア活動の内容として雪かきを選択したのではなく、社会福祉協議会が実施した「地域福祉座談会」において、高齢者にとって雪かきが重労働であるという話題がでたことが具体的なきっかけとなって、スノーバスターズの結成に至った経緯がある。
  • 現在の担当者も、地域住民がボランティアに積極的に参加するためのポイントとして、住民が、地域課題として共有しているテーマを取り上げることが重要であると指摘している。
アジレント・テクノロジー株式会社の「こども科学実験教室」
  • 製造業企業の視点として、わが国全体としての「こども達の理数離れ」に対する危機意識が背景にあり、また、アジレント・テクノロジー社では、社会の一員として、有形無形の資産を最大限に活用し、従業員と一体となって社会貢献活動に取り組むことを基本方針としていることから、「こども達の理数離れ阻止」を中心に据えた社会貢献活動を展開している。

参加しやすいテーマの設定

ポイント

  • 多くの住民の関心が得られるようなテーマを設定する。
  • 地域で行われているイベントや事業などと絡めて活動を立ち上げることも有効。

  活動のテーマ設定は、参加者の集まり具合に大きな影響を与えるため、多くの住民の関心を得られるようなテーマを選ぶ必要がある。例えば、上記で触れた「地域住民の間で共有されている地域課題」は、最も住民が参加しやすいテーマである。また、子どもや高齢者に関わるテーマは、それ以外の世代にとっても何らかの関係があることが多く、参加者が得られやすいテーマである。
 このほか、地域で以前から行われているイベントや事業などと絡めて活動を立ち上げることも、住民の理解や意識がすでに高まっていることから、参加を促す上では有効である。

参考事例

麻布大学「淵野辺ボンバイエ」
  • 麻布大学の学生は、従前より地元の商店街で行われてきた地域住民の交流イベントなどに参加してきた。これらの活動を通じて、地元のNPO、学校、企業などとの相互理解が深まり、さらなる活動への気運が高まって、参加型交流イベントである「淵野辺ボンバイエ!」を企画・運営した。
市光工業株式会社 ミラー製造所
  • 道路のカーブミラーを製造している市光工業株式会社ミラー製造所では、カーブミラーの清掃をはじめとして様々な活動に取り組んでいる。
  • このように、企業・従業員がボランティア活動を行なう場合、あるいは地域のボランティア実行委員会などが企業・従業員の参加を募る場合、企業に全く関係ない分野ではなく、企業の製品やサービスに関連する分野からボランティアを募り、次第に内容を拡大させる方が参加しやすいと考えられる。

活動の目的や方向性の明確化

ポイント

  • 活動の目的や方向性について最初にじっくりと議論して明確化しておく。
  • その活動目的や使命は、組織の規約や会則などの中で明文化しておく。
  • すべてのメンバーが活動目的を理解し、同じ意識で活動を進められるようにする。

  その活動を行なうことでどのようなことを達成したいのか、という活動の目的や使命、方向性は、活動の途中で簡単に変えられるものではないため、最初にじっくりと議論し、規約や会則の中で明文化するなどして揺るぎないものにしなければならない。また、リーダー層だけではなく、すべてのメンバーの間でその目的の共通理解を図り、皆が同じ意識を持って活動を進めていく必要がある。

参考事例

【北光クラブ
  • 北光クラブは鹿沼市立北小学校の施設を利用して活動するサークルによって構成されている。活動において一番大切にしていることは「自分たちが楽しむ」ということであり、地域住民が自らの活動を楽しみ、また生涯学習の一環として学ぶことを最大の狙いとしている。この狙いは参加者の間に広く浸透している。
  • その上で、学校を利用して活動を行っていることから、学校にもメリットを還元することが必要との考えに基づき、自らの学びの成果を生かして無理のない形で学校支援活動を行っている。ただし、それはあくまで「結果としての学校支援活動」という位置づけである。
長浜観光ボランタリーガイド
  • 長浜ボランタリーガイドでは、事前に養成講座を受講し、ガイドとしての登録を行なった上で、申込の内容に応じて対応できる登録者がガイドを行なうものであるが、近年では、ボランティアガイド養成講座を受けた人が必ずしもガイド登録してくれないことがあったため、ボランタリーガイドの養成講座であることの趣旨を徹底する意味から、最近では講習の受講生を以前よりも削減し確実にガイド登録を行なってくれる人材に講習を行なうこととした。
  • 準備段階ではないが、事後的に新たな参加者に対してボランティアの目的や性格を再度徹底する取り組みをおこなった事例である。

(2)活動計画の立案

目的を踏まえた実現可能な戦略の立案

ポイント

  • 参加者や予算などを確実に把握し、実現可能な範囲で無理のない戦略を立てる。
  • 他団体の先進的な活動事例を参考にして戦略を立てることも有効である。
  • 活動実施中でも、改善点があれば適宜改善していく。

  活動目的が明確化されたら、それを達成するために「誰・何に対して」、「どのような方法で」、「何をするのか」という活動戦略を立案する。この戦略は、今後の活動全般に渡る場合もあれば、個別の活動ごとに立てられる場合もある。どちらにしろ、活動を継続して行なうためには、現状を確実に把握し、実現可能な範囲で無理のない戦略を立てる必要がある。そして、どのような活動を行なうボランティアがどれくらい必要か、外部の団体に手助けしてもらう部分はあるか、といった細部を詰めていくことになる。この際、他の団体における先進的な活動事例を参考にすることも有効な手段である。
  なお、これらの戦略は、活動を実際に行っていく過程で、より実現可能性が高いものがあれば適宜改善していくことになる。

参考事例

高島平地区小地域ネットワーク
  • 高島平地区小地域ネットワークでは、学校を主な活動場所にしながら地域の美化や趣味活動の支援、イベント、学校支援活動など様々な活動を行なっており、会長以下のヒエラルキー組織ではなく、参加者のネットワークであることを重視している。ネットワーク会員の間では、自分たちが楽しむことを重視しながら、まちづくりに主体的に参加する意識が共有されているため、当初は歩道の美化や講座の開催などから始まった活動が、会員の発案に基づき、地域通貨を活用した相互ボランティア制度、お祭りの実行委員など活動内容が年々拡大し、活性化している。
さわやか信用金庫
  • さわやか信用金庫の戸越銀座支店などでは、品川区内の公立学校において調理された高齢者向け昼食をボランティアが配達するサービスと、特別養護老人ホームへの配食サービスなど、5件の配達を週2回実施しており、職員が昼休みを利用して配達している。平日昼間の配食というボランティア内容から、さわやか信用金庫の戸越銀座支店という事業所と連携し、サラリーマン層が無理なくボランティアに参加するというスタイルをとることができた。

活動への参加・継続を促す仕掛けづくり

ポイント

  • 活動日・時間などを工夫し、活動に参加しやすい配慮を行なう。
  • 活動内容をPRして楽しさを伝え、新規・継続参加を促していく。
  • 活動成果が形に残り、充実感ややりがいが感じられるようにすることも重要。

  ボランティア活動への参加を促すためには、参加者にとってのハードルを低くして気軽に参加できるようにすること、参加者が活動の中で楽しみや充実感、やりがいなどを感じられること、この2つがともに重要である。
  前者については、例えば活動の曜日、時間帯、所要時間、場所など具体的な活動内容を設定する際に、十分意識する必要がある。一方、後者については、活動内容をPRして意義や楽しさを伝えることや、活動成果が具体的な形として残るようにしておくことなどが重要である。特に若者にとっては、ボランティア活動が人生設計を考える上で貴重な体験となる可能性が高く、参加を促す一つの要因となる。
  また、高校や大学でのボランティアの単位化や、活動を通じた資格の取得などは、参加者が活動に取り組んだ成果が明確化できるという意味で有効な施策である。

参考事例

西予市ボランティアセンター「乳幼児ふれあい体験教室」
  • 西予市ボランティアセンターでは、中高生による子守りボランティア「乳幼児ふれあい体験教室」を実施している。この活動には、育児に関心のある生徒が定期的に参加するようになり、中には高校卒業後に実際に保育士として就職する生徒もいた。
  • 乳幼児ふれあい体験教室では、当初から事業の狙いの一つに「将来の職業について考える機会を持ってもらうこと」を挙げている。このような目的意識が関心のある若者の参加を引き出し、彼らのキャリア形成にまで好影響を与えた事例である。
東北福祉大学
  • 東北福祉大学は、学校名に「福祉」を掲げ、その分野での人材育成を行なうことを目的としているため、大学、学生ともにボランティアに対する意識は高い。1993年よりボランティア活動を一部単位認定するなど、他大学に先駆けてボランティアに関する取り組みを実施している。この単位認定は現在も続けられており、年間に1単位が上限であるが、400~500人が単位を取得している。
  • 活動の単位化というインセンティブを与えることによって、学生のボランティアに対する意欲を引き出している事例である。

(3)資金の調達

少ない費用で可能な活動からの実施

ポイント

  • あまり費用がかからず、参加者の創意工夫をこらして大きな効果をあげることのできる活動を実施する。

  活動資金の確保は、多くのボランティア団体で最大の課題になっている。基本的に、組織の立ち上げ直後には、あまり費用をかけずに、参加者の創意工夫をこらして大きな効果をあげることのできる活動から取り組むことが望ましい。このことは、前述した「実現可能な範囲で無理のない戦略を立案する」こととも共通している。そして、活動を継続していった結果、その内容が評価され、行政や関連団体から助成金などの支援を受けることになる可能性もあり、実際にそのような団体は多く見られる。

参考事例

青森県立平内高等学校におけるボランティア活動
  • 青森県立平内高等学校では、ボランティアに全校を挙げて取り組んでおり、この一環でボランティア委員会も組織している。ボランティア委員会により、みちくさボランティアをはじめとして様々なボランティアが行なわれているが、ボランティア活動内容の設定に当たっては、学校の活動ということもあり、お金をかけずに生徒の工夫で取り組める内容を重視している。
北光クラブ
  • 当初は、活動を行っている鹿沼市立北小学校からの援助が中心であったが、活動の成果が認められ、2003年以降は市の北部地区青少年健全育成連絡協議会から助成金を獲得することができ、重要な活動資金として利用している。

資金提供者の獲得

ポイント

  • 様々な資金獲得の手段を把握しておき、活動目的や内容に応じて実行する。
  • その中で、活動参加者からの会費徴収は資金確得の確実な手段の一つである。

  既存のボランティア団体では、物品販売などによる売上、行政などからの助成金、地域の有力者や企業からの資金提供など、様々な手段により活動資金を調達している。活動目的や内容、活動している地域によって、どのような調達手段があるかを把握し、必要に応じて獲得のための行動を起こすことになる。
  その中で、ボランティアとして活動する参加者から入会金や年会費を徴収し、それを活動の資金源としている団体もある。会費制の導入は活動資金を確保する確実な手段の一つである。この場合、広報誌を作成して参加者に配付するなど、会費の還元を行っている例もある。
  また、活動には賛同するが時間的・地理的制約などによって活動に参加できない人に対しては、資金を提供することで組織を支える会員制度(賛助会員など)を設定することも、資金確保の有効な方法である。

参考事例

筑前新宮に白砂青松を取り戻す会
  • 筑前新宮に白砂青松を取り戻す会は会費制であり、会員は年会費5,000円を負担している。同会ではこの他、運営費用として町からの補助金を受けており、また初期費用に関しては、松林の除伐、間伐に必要なチッパー機の購入に「セブンイレブンみどりの基金」を活用するなど、活動資金の確保に努力している。
伊万里市民図書館
  • 伊万里市民図書館でボランティア活動を行なう「図書館フレンズ伊万里」では、図書館の施設の一角で古書の販売などを行なうことで資金を造成しており、同じく伊万里市民図書館で活動を行なう他のボランティアグループに年間1~3万円程度の活動費助成を行っている。なお、「図書館フレンズ伊万里」は250名の会員から徴収する年会費(1,000円)のみで運営しており、公的な補助などは受けていない。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --