13.筑前新宮に白砂青松を取り戻す会

分野:環境保全

  • 福岡県新宮町において、松喰虫の被害が進んだ「楯の松原」を取り戻すべく、地域の様々な住民が主体となって松の植樹や管理を行なっている事例である。
  • 次世代に「楯の松原」を継承すべく小中学生の参加を重視している点や、町内の里山保全を目的とする団体と交流し、相互の活動の活性化につなげている点が特徴である。

1.主体活動団体

  筑前新宮に白砂青松を取り戻す会

2.関係者・関係団体・活動場所

主催者・主催団体

  筑前新宮に白砂青松を取り戻す会

協力者・協力団体

  わいわいクラブ、新宮町、林野庁福岡森林管理署新宮森林事務所、NPO法人じゃがいもの会 ほか

ボランティア参加者・参加団体

  一般住民、町内小中学校

活動場所

  新宮海岸楯の松原

3.活動のきっかけ・問題意識

活動に至る経緯

  福岡県新宮町は福岡市の東側と堺を接しており、近年では福岡市のベッドタウン化の傾向がみられている。筑前新宮に白砂青松を取り戻す会の主な活動エリアである新宮海岸は、新宮町北側の位置し玄界灘に臨んでいる。
  新宮海岸は江戸時代により防風・防砂林として植林事業が進められ、「楯の松原」と呼ばれる緑豊かな松林を形成してきた。現代でも海水浴を始めとして町内外の住民にとって憩いの場となっている。
  しかしながら、特に昭和60年代頃から松喰い虫による被害が激増し、松の枯死が進むとともに防砂機能の低下が見られるようになった。
  そこで、町民が中心となって平成11年3月の第1回親子植樹会として500本の植樹を行ったのを皮切りに、「楯の松原」および新宮海岸の形成する白砂青松を取り戻す取り組みが始められた。メンバーにはかつて楯の松原の景色に惹かれIターンで新宮町に居住するようになった方、昭和40年代から沿道の桜の手入れをボランティアで行なっていた方、造園業に従事した経験を持っておられた方など、様々なバックグラウンドを有した人材が経験を活かす形で取り組みが進められた。

活動のねらい

  筑前新宮に白砂青松を取り戻す会では、「楯の松原」を取り戻すことに加えて「楯の松原」を次世代に継承していくことを第二の目的に掲げており、地域の子どもを活動に積極的に巻き込むことを当初から重視した。このことは、筑前新宮に白砂青松を取り戻す会が発足した際の最初の植樹会を「親子植樹会」としたことにも反映されている。この他、地元中学校の総合学習との連携など積極的な活動が行なわれている。

4.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

事前準備

  松は春に根付くものであるため、植樹はいつでも行なえるものではなく、「植樹会」は地域を巻き込んで原則年1回(3月)の活動とし、下草刈りなどのより日常的な作業は月2回会員により実施することとした。
  植樹会には経験のない小中学生などが参加するため、植樹のやり方を図示した配付用の資料を作成している。

活動資金・資材の確保

  運営費用は会員からの会費(年会費5,000円)、新宮町からの補助により賄われている。また第1回親子植樹会においては福岡県の補助を受けている。
  初期費用に関しては、除伐、間伐に必要なチッパー機の購入には「セブンイレブンみどりの基金」を活用した。

5.活動の概要(活動段階)

活動内容・参加者

  平成11年3月に第1回親子植樹会を始めて以来、活動内容は年々拡充している。現在の主な活動内容は以下の通りである。

1.「楯の松原デー」の植樹会

  当初の親子植樹会の名称を平成14年より変更したものであり、地域の小中学生を始めとした様々な地域住民を巻き込んだ植樹会を原則年1回実施している。

2.竹柵の設置

  海岸に植樹された幼木を風から守る必要がある。第1回親子植樹会とほぼ同時期に、町内寺浦地区に里山保全を目的とするボランティアグループ「わいわいクラブ」が設立されており、同グループと交流する中で里山に繁茂する竹を伐採し竹柵を作成することとなった。このことは、地域内での資源循環になるとともに、それぞれのメンバーが相互に参加することになったことから相互の体制の強化につながっている。
  平成11年から平成15年までの累積で計410mもの竹柵を設置している。

3.間伐、下草刈りなど

  月2回の会員活動として除伐・間伐、枝打ちが行なわれている。会員は年会費納入者ベースで現在約30名であるが、このうち毎回の参加者は10~15名程度である。また、植栽後の下草刈りは毎年3~4回実施されている。

4.寺浦地区里山への広葉樹の植樹

  竹柵の設置に伴ない伐採された寺浦地区の竹林の址にクヌギ・コナラなどの広葉樹を、わいわいクラブと連携して植樹を行なっている。

5.“まつり新宮”における「白砂青松コーナー」の設置と啓発活動

  毎年11月3日に開催される新宮町のイベント“まつり新宮”に「白砂青松コーナー」を設置し、写真パネルの展示、歴史の紹介資料の配付、談話コーナーの設置などを行なうことで、活動に関する情報発信と住民への関心の喚起を図っている。

6.白砂青松タイムへのサポート

  平成13年から、新宮中学校(全校生徒約900名)が総合学習に「白砂青松タイム」として、全校生徒による年3回の海岸清掃と一部生徒による松林の間伐が行なわれている。会としてこの活動をサポートしている。また、同じく総合学習の時間に「まちづくり講演会」を年1回実施し、新宮中学校生徒に対して新宮町や松林の歴史について講演している。

6.事業の成果

  平成16年3月の「楯の松原デー」では、幼児・小中学生も含めた300名が参加し3,000本を植樹した。平成11年からの累積では9,524本に達している。また、植樹後もこまめに除伐・間伐などを行なっているため、その99パーセントが活着している。また、寺浦地区に植樹した広葉樹も累計で1,200本に至っている。
  また、植樹会や総合学習を通じて作業に携わった児童生徒の中に作業の面白さや松林の美しさが着実に浸透してきている。

7.活動にあたって留意したこと

参加者の促進に向けて

  会員の中心は40歳以上の方々であり、特に夏場の作業の体調管理には気を配っている。また会費制であることから、毎年活動報告を作成し会員には写真入の活動報告・会計報告を送付している。
  この他、「楯の松原デー」の植樹会に向けては、こどもたちをはじめとして地域の様々な主体に参加・協力を働きかけてきており、このうち特に小中学校との連携に実績をあげている。

安全面に関して

  特に「楯の松原デー」の植樹会には、経験が不十分な児童生徒が参加することや、町外の住民も参加するため、町のボランティア保険とは別に、参加者100名分のボランティア保険をかけている。
  この他、下草刈りに使用する鎌には誤って身体を傷つける怖れの少ない鋸鎌を用いるなど、道具の選択に当たっても安全に配慮している。

8.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動後の評価

  会では会長を含め17名の役員を任命し2ヶ月に1回の役員会を開催している。この中で会員の意見やニーズを収集し、活動方針や内容に反映させている。
  また、会員に送付する年間報告書の作成を通じて毎年の活動実績・課題の整理がなされている。

今後の課題

  さらなる地域住民の参加促進に向け、今後高校生の参加促進を課題としている。
  また、チッパー機の購入をはじめとする初期投資については企業や行政の支援によって賄うことができたが、発足から5年が経過した現在、機材・道具のメンテナンス・更新などの費用負担が課題になっている。
  今後は、各サークルを始め地域の人々の「発表の場」となるような、地域で何らかの祭り(イベント)を開催する。これは親睦を深めるほかに、活動資金の確保という狙いもある。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --