18.青森県立平内高等学校におけるボランティア活動(みちくさボランティアを中心として)

分野:福祉

  • 青森県立平内高等学校ではボランティア活動に力を入れており、全校を挙げたボランティアの取り組みのほか、同校に設置したボランティア委員会を中心とするみちくさボランティアでは地域の高齢者宅を放課後に訪問し挨拶や声掛けを行なっている。
  • 科目や委員会活動を通じたボランティア活動が、生徒の自発的なボランティア精神の養成につながっており、また平内高等学校でボランティア活動を行なうことを志望動機に受験する中学生が見られるまでに地域に浸透している。

1.主体活動団体

  青森県立平内高等学校(※青森県立平内高等学校ウェブサイトへリンク)(※別ウィンドウで開きます。)

2.関係者・関係団体・活動場所

主催者・主催団体

  青森県立平内高等学校

協力団体

  平内町、松風塾高等学校、青森県教育委員会、特別養護老人ホーム、デイサービスひまわり、小湊郵便局、平内町消防署、平内町幹部交番、JR小湊駅など

ボランティア参加者・参加団体

  平内高校生

活動場所

  主に平内町

3.活動のきっかけ・問題意識

活動に至る経緯

  青森県立平内高等学校は昭和58年に青森県立青森東高等学校平内分校より独立することにより設立された。平成16年度の全校生徒は約245名である。
  平内高校では、設立当初からボランティア委員会を発足させ、老人ホームを訪問するなど、ボランティア活動に積極的に取り組んできた。昭和61年から3年間、青森県教育委員会からボランティア実践協力校、平成元年から2年間、文部省の奉仕等体験学習研究推進校、平成4年から2年間、高校生地域ボランティア推進事業指定校の指定を相次いで受け、地域の清掃活動や献血、募金、高齢者を文化祭に招待するなどの活動を着実に実施してきた。
  平成7年の文化祭には、ボランティア委員会が「リサイクル」をテーマとして牛乳パックの再生紙ではがきを作成した。さらに、このはがきを用いて地域の180名の独居老人に励ましのはがきを書き送った。この活動に対し、多くの返事が寄せられたが、その中に配偶者の七回忌を終えた方から「激励のはがきに感動し、死ぬことを思いとどまった」との便りがあった。このことを契機に、生徒が居住地や通学路を中心に3~6名を担当し、高齢者宅を訪問して挨拶や声掛けを行なう「みちくさボランティア」がスタートした。

活動のねらい

  みちくさボランティアに限らず、平内高等学校でボランティア活動が盛んに行なわれている背景には、『「おもいやり」の心を持ち』と謳われている校訓がある。この校訓にはごく自然にボランティア活動ができる精神を身につけるという平内高校の理想がこめられている。
  また、特にみちくさボランティアは、当時学校周辺のアパートで独居老人の孤独死があったことにより、生徒自身が地域の高齢者に直に触れ合い力になりたいと考えたことによる。

4.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

  平内高校の設立当初からボランティア委員会が組織されており、委員会活動として生徒と教員、ならびに地域の協力のもと、活動内容を年々企画、拡充させてきた。
  活動費用に関しては、大きな費用の掛かる活動を行なうのではなく生徒の創意工夫により活動を行なっている。この他、これまでに活動や時期に応じて平内町や福祉協議会、青森県教育委員会での支援を受けたりした。

5.活動の概要(活動段階)

活動内容・参加者

1.全校生徒が行なうボランティア活動

  平成16年度の入学生は2年生、3年生ともに選択科目が設定されており、科目「ボランティア」を選択することができる。このことは生徒にとって、ボランティア活動を行ってきた成果が単位という形で記録に残るという意味を持つ。
  また、これまで全校を挙げてボランティアに取り組んできた校風を反映し、例えば運動部員が冬季のグラウンド等校地内の雪かきを自発的に行なうなど、科目の時間における活動以外にも生徒が自らボランティアを行なう意識が醸成されてきている。

2.ボランティア委員会とみちくさボランティアの活動

  ボランティア委員は平成16年度は33名である。その他の希望者を募り、地域の高齢者福祉施設への訪問、地域の高齢者へ年賀状・暑中見舞・クリスマスカードの送付、一人暮らしの高齢者宅の雪かきなど、多種多様な活動が行われている。
  特に、みちくさボランティアは、ボランティア委員以外の50名を含めた83名で260名の高齢者を担当し、週1、2回程度登下校時に担当の高齢者宅を訪問し、挨拶、声かけ、安否確認、お手伝い、委員会で作成したボランティア通信の配付、学校行事への招待などを行っている。

6.事業の成果

  平内高校生の間にボランティアの精神、思いやりの心が着実に定着しつつあり、困っている人にはすぐに手を差し伸べられる生徒が増えてきている。
  また、みちくさボランティアのきっかけとなった、「自殺を考えていた高齢者に生きることへの意欲を呼び起こした」できごとは、平内高校生が行ってきた活動の価値を象徴するものである。
  一方、平内高校生がボランティア活動に積極的であることが地域に浸透しているため、ボランティア活動に関心がある中学生が、このことを志望動機に平内高校を受験するというケースも見られる。

7.活動にあたって留意したこと

参加のしやすさに関して

  みちくさボランティアについては、高齢者宅の訪問はボランティア委員は週1~2回、有志は活動できる範囲での訪問とし、活動できる範囲で無理なく自主的に行なうこととした。

安全面に関して

  それぞれの活動内容に応じて、平内高校の教員、地域の有識者、関係者などが指導にあたる。
  みちくさボランティアに関しては、高齢者とのプライバシーに配慮し、適切な距離感を保つことが広い意味での安全確保につながる重要な課題である。このため、年度初めの集会等でみちくさボランティアの先輩達の活動ビデオを参加者に見せ、活動のガイダンスを行なうとともに、プライバシーへの配慮、金品の受け取りをしないことを徹底している。ただし、話相手になるなかでお茶・お菓子などをご馳走になることは良好な人間関係を構築する観点から認めている。

8.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  ボランティア委員会の発足当初は、委員会活動として行なうことに対して議論があったが、現在では全校生徒のボランティアへの意識が浸透するにつれ、定着してきている。

活動後の評価

  平内高校生が行ったボランティア活動については、その活動内容に応じて社会福祉協議会や連絡員、協力員など、高齢者やその家族からの反響が意見や要望の形で寄せられることが少なくない。これをもとにボランティア委員会で話し合いを行い、次の活動に反映させている。

今後の課題

  少子高齢化の進展により、生徒数が減少する一方で、一人暮らしの高齢者は年々増加している現状にある。このためみちくさボランティアの担当者の配置が難しくなってきていることが課題である。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --