31.アジレント・テクノロジー株式会社の「こども科学実験教室」などの取り組み

分野:教育

  • 「こども達の理数離れ阻止」をねらいとして、電子部品メーカーであるアジレント・テクノロジー株式会社の従業員が「こども科学実験教室」などを開催している事例である。
  • 米国の本社で開発された「実験・工作キット」を日本法人であるアジレント・テクノロジー株式会社が活用して、会社-従業員が一体となって社会貢献活動に取り組んでいる点が特徴である。

1.主体活動団体

  アジレント・テクノロジー株式会社

2.関係者・関係団体

  従業員、OB、NPO(オンライン自然科学教育ネットワーク(ONSEN)、さわやか福祉財団、その他多数)

3.活動のきっかけ・問題意識

  わが国における「こども達の理数離れ」に対する危機意識が背景にあり、また、当社では、社会の一員として、有形無形の資産を最大限に活用し、従業員と一体となって社会貢献活動に取り組むことを基本方針としていることから、「こども達の理数離れ阻止」を中心に据えた社会貢献活動を展開することにした。
  また、米国本社の従業員が、従業員ボランティア活動の支援ツールとして、13種類の「実験・工作キット」(こども達の理科離れに歯止めをかけ、ものづくりへの関心、思考力・発想力を高めるためのツール)を開発しており、当社でもこのキットを利用して、従業員によるボランティア活動を推進することとした(2001年より本格スタート)。

4.事前準備として行った主な取り組み(企画段階)

  当初、「こども」相手にどうすればよいのか、具体的なアイデアがなかったため、インターネット等で調査し、我々と同じような危機感・ミッションの下に活動している団体を探した(関東、関西に各1団体ずつ)。
  その団体に協力依頼し、2000年6月および10月に東京本社と神戸事業所の2箇所にて、「こども科学実験教室」を開催した。
  この活動においては、当社従業員は裏方に徹し、企画・運営はNPOにお願いしながら運営等、そのノウハウを学んだ。

5.活動の概要(活動段階)

(1)こども科学実験教室

  2000年6月より毎年実施。東京本社と神戸事業所の2箇所においてNPOとの協働により、各会場200名程度のこども達を対象に実施。

(2)アジレントアフタースクール

  従業員個人の身近なこども達のグループ、町内会、ボーイ/ガールスカウトのイベント等に従業員、OB等がボランティアとして出向き、「実験・工作キット」を無償で提供して実験教室を実施している。
  企画・実施はすべて従業員が実施しているが、イベント規模が大きい場合や、週日開催の場合にはOBによるボランティア・グループに応援を依頼している。
  NPOとの協働により、NPOが会場の確保・広報等を行い、当社従業員がボランティアとして企画運営(講師・サポート等)を担当する形で毎月1回数ヶ所において定期開催している。

(3)出前科学実験教室

  小学校への出前科学実験教室は、総合学習の一環として学校から要請があった場合に各学校へ出向き実施している。現在は、八王子市・日野市・多摩市および神戸市(西区)に限定している。

(4)サタデースクール

  PTA主催の土曜日に学校を会場として実施するタイプのものに出前科学実験教室と同様の形で協力している。

6.事業の成果

  2001年度は十数名の従業員が大小さまざまな実験教室を実施した。
  2002年度には、八王子市小学校科学教育センターからの依頼により、夏休みに3日間の実験教室を開催。市内の小学6年生120名が参加した大規模イベントで、3日間で延べ20数名の従業員及びOBボランティアが講師・サポート役として参画した。
  NPOとの協働による「こども科学実験教室」プログラムに対して、2002年度NPO法人パートナーシップ・サポート・センターの「パートナーシップ賞」を受賞。これがきっかけとなり「さわやか福祉財団」と協力関係ができ、その後各地のNPOとの協働による「科学実験教室(アジレントアフタースクール)」の開催機会が従来の三多摩および神戸に京浜、中部、京阪神の10拠点が加わり拡大した。
  2004年10月には、朝日新聞社「朝日企業市民賞」を受賞している。
  当社の支援で2001年スタートした「科学教育ボランティア研究大会」やこれまでの諸活動により、科学技術教育を推進に努力されているNPOや学校の先生等とのネットワークが全国規模で拡大し、これらのネットワークにおける当社の認知度は徐々に高まっている。

7.活動にあたって留意したこと

  従業員のボランティア活動が基本であるため、あまり負担を多くしてしまうと継続性に無理がくる。そのため「さわやか福祉財団」との協働プログラム以外は、本社および神戸事業所の周辺地域に限定して活動を実施している。
  「実験・工作キット」を13種類用意すること、社内WEBで実験教室のスケジュールを公開、参加申込みが容易に出来る仕組みなど、従業員が講師やサポート役として気軽にボランティア参加できるよう工夫している。
  「実験教室」は単に科学実験や工作をするだけではなく、実験を通してこども達が自ら考え、その考えを意見として述べたり、自分の考えを他人に理解・共感してもらえるようなコミュニケーションができるようになることも目的としている。この趣旨を徹底するため、実験・工作キットのみの提供・販売は行っていない。

8.活動後の評価・今後の課題・展開など

  年1回、東京と神戸で開催しているイベント「こども科学実験教室」は既に5年間継続して実施しているが、参加希望者が多く、各会場200名(50名×4回)が定員であるが毎回抽選となっている。
  開催数を増やして欲しいなどの要望もあり、保護者や学校等からの期待が高いが、その他の実験教室もあり従業員ボランティアの負荷も検討課題で苦慮している。
  継続的に参加しているこども達が多い実験教室では、保護者にアンケートを実施し、こども達の生活態度(テレビ,読む本の傾向、家庭内での会話など)の変化の有無の把握に努めている。
  従業員にとっては本来業務が第一であるため、いくらボランティア参加したい希望はあっても、仕事の調整が難しく参加できないケースは多い。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --