25.東北福祉大学 ボランティアセンター

分野:まちづくり

  • 大学内にボランティアセンターが設置され、学生に対し活動の斡旋や講座・研修会の実施、学生ボランティア組織の育成などを行っている事例である。
  • 学外から受け付けるボランティアの対象を特に限定しておらず、活動自体がボランティアにふさわしいかどうかを教育の一面として学生自身に判断してもらっている点が特徴である。

1.主体活動団体

  東北福祉大学 ボランティアセンター

2.活動のきっかけ・問題意識

  東北福祉大学は、1875(明治8)年、曹洞宗専門支校として開校、その後、1962(昭和37)年より、現在の東北福祉大学となっている。
  学校名に「福祉」を掲げ、その分野での人材育成を行なうことを目的としているため、大学、学生ともにボランティアに対する意識は高い。1993年よりボランティア活動を一部単位認定するなど、他大学に先駆けてボランティアに関する取り組みに着手している(なお、この単位認定は現在に至るまで続けられており、年間に1単位が上限であるが、申請する学生は多く、400~500人が単位を取得している。これは申請に基づいて大学が認定するものであるため、ボランティア活動を行っていても申請しない学生も多い。実際にボランティア活動に参加している学生数はもっと多いことは間違いない)。
  このような背景の中、阪神大震災が発生、学生有志が「東北福祉大学ボランティア会」を結成し、多数の学生が被災地での活動を行った。大学ではこうした活動の意義を高く評価し、有事だけでなく、日常でもボランティアへ参加できるように、1998年、学内にボランティアセンターを設置した。

3.活動の概要(活動段階)

  ボランティアセンターでは、学外より広くボランティア依頼を受付け、情報提供を行なうことで活動を斡旋している。情報提供は主として学内の掲示板、資料として閲覧、ホームページからの検索、の方法でなされ、希望する学生がいた場合には、ボランティアセンターに登録の上で紹介を行なう。
  その他には以下のような事業がある。

  • 学生に対する相談支援事業
  • 講座・研修会の実施
  • 国際協力等の情報提供
  • 学生ボランティア組織(withボランティア)の育成

  仙台市社会福祉協議会とはパートナーシップ協約を締結し、「連結」して活動を行っている。「連結」とは、単なる連携関係を超えた協働的な関係を指し、同校のボランティアセンター長が目指す外部との関係である。また、イベントと事業ごとには区や市、県などの行政機関やNPO法人等との連携を行なうことも多い。
  また、ボランティアセンターが推進役となり、文部科学省「平成16年度生涯学習まちづくりモデル支援事業」として「地域防災力向上のための自主防災組織の育成」事業に取り組んでいる。

4.事業の成果

  ボランティアセンターは学内の組織として定着しており、担当する職員もセンター長以下、常勤職員2名、学生スタッフ(ティーチングアシスタント)2名の体制を確保している。なお、常勤の職員は学内のボランティアサークルの部長等の立場を兼任、学生スタッフもボランティアサークルに所属するなど、意識の高い人材である。
  ボランティアについて、年間の直接依頼件数は417件、活動者数は550人(2003年度)であるが、リピート依頼はセンターを経由しない場合もあるため、実際にはもっと多いと推察される。
  ボランティアへの参加形態は様々である。学生が個人でボランティアに参加する他に、ゼミ単位、サークル単位でのボランティアへの参加を可能にしている。体育会のクラブなどもスポーツイベントなどのボランティアに部活単位で参加するなどの取り組みが行われている。
  育成を行っている学生ボランティア組織「withボランティア」は、学生ボランティアを支援することを目的としており、ボランティアセンターと協働で事業を行なうことも多い。特にセミナー等の催しでは「withボランティア」のメンバーがスタッフとして活躍することも多い。
  平成16年度には、「福祉ボランティア講座」に力を入れ、4~12月の間に9回実施している。
  仙台市社会福祉協議会とのパートナーシップ協約は社会福祉協議会経由でボランティアを募集してくる受け入れ先が多数存在していることから、このことで学生の活動の場が広がったと認識している。
  また、学外からの評価として、マスコミに紹介されることも多く、その他、上記の文部科学省「平成16年度生涯学習まちづくりモデル支援事業」へ選定されたことや、宮城県赤い羽根共同募金平成16年度配分事業に選定されたことがあげられる。

5.活動にあたって留意したこと

  • 同大学のひとつの特徴として、他大学に比して事業の実施が早いことである。一般に大学という組織は新事業への取り組み等に対して一定の時間を要するが、ここでは「まずやってみる」というスタンスでの取り組みがコンセンサスを得ており、スピーディーな組織内対応が可能となっている。そのことが手探りでのボランティアセンターの設置や運営に大きく役立つという側面を持っている。
  • ボランティアを行なうことは、学生にとって教育面からも良い影響を与えることが、学内のコンセンサスとなっている。そのあらわれが、ボランティア募集を掲示する掲示板である。ボランティアセンターの脇に設置された掲示板だけではなく、別のフロアにある学生センター(学生談話室)の壁一面が巨大な掲示板として使用されている。学内の広いスペースをボランティアセンター事業に割いていることからも学校の理解の高さが伺える。なお、大学ではボランティア活動について、単に奉仕ではなく、地域に出て行くことで学生が地域に育てられる機会をいただくことと認識している。
  • 大学内のセンターではあるが、対象は学生だけではなく広く社会に開いている。現在も少数であるが他校の大学生、高校生、近隣の社会人なども登録している。
  • 受け付けるボランティアについて、対象を特に限定していないのが特徴である。公的な機関のほか、町内会などの組織や、企業、一般の個人などからの依頼も幅広く受け付けている。受け付ける際に初回については必ず面談を行なうことで、最低限のリスク対応を図っている。

6.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  • 先行する事例などがないことから、活動自体は手探りで行っている。そのため、年間を通じての計画立案や組織的な活動に欠ける側面がある。
  • 学生の活動には時間的な制約がある。つまり、ボランティアを希望する受け入れ先は平日の昼間などにも要望が発生するが、学生には授業があり、休日を中心とした活動時間しか確保できない。このため、現段階では、受け入れ先の要望にすべて対応できる状態になく、マッチング率は50パーセント程度に止まっている。

事後評価について・今後の展開・課題

  • ボランティアセンターの職員の体制は、他大学等のそれに比して手厚いが、それでも活動している学生のデータなどが電子化されておらず、登録ボランティアの人数が把握されていないなど、現場レベルの課題は山積みであり、今後の効率的業務への工夫が必要である。
  • 将来的には大学が設置した機関でありつつも、大学内部から離れ、地域に窓口を設けていきたいとしている。学生にこだわらず地域の幅広いボランティアのニーズに対応できるセンターになることが目標である。
  • 大学としてもっとも必要な課題が専門ボランティアの育成である。単に労働力を提供するのではなく、高度な専門性を提供する(センター長は「創造型ボランティア」と呼称している)。既にボランティア組織やNPOのホームページ作成などの情報化ボランティアを育成すべく大学で取り組みを行った経験があるが、大学側の期待とは裏腹に学生の熱意が今ひとつであった。大学では、専門ボランティアという方向が間違っている訳ではないので、あきらめずにやり方を模索していきたい、としている。
  • 学生だけではなく、大学自体がボランティアに参加することも将来の方向として必要と感じている。大学には福祉に関する理論的なノウハウ等の研究資源があるだけでなく、設備や人材も揃っている。それを個別ではなく、必要に応じて全体で提供することができるならば、さらに幅広い社会貢献が可能となり、学生にとっても場が広がることになるため、取り組んでいきたい課題である。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --