2.活動準備編

(1)外部の人材・団体との連携と役割分担

指導者やコーディネーター役の発掘

ポイント

  • 経験豊富な外部の人に指導者やコーディネーターを依頼できるよう、地域の人材を発掘できる体制を整えておく。

  活動内容によっては、ボランティアに対して何らかの技能を教える指導者が必要になることがある。また、活動団体とボランティア、そしてボランティアを受ける側とをつなぐコーディネーターが必要な場合もあり、その調整力によって活動が円滑に進むかどうかに影響を与える。いずれも経験とノウハウが求められるため、いくつかの団体では、経験豊富な外部の人に指導者やコーディネーターを依頼している。そのために、地域の人材を発掘できるような体制を整えておくことが必要である。場合によってはある組織・機関がコーディネート機能を担い、様々な関係団体の意見を集約しよりよい方向に導くことができるよう努めることもある。

参考事例

塩谷町旧熊ノ木小学校管理組合(星ふる学校「くまの木」)
  • くまの木では、様々な地域資源を生かして、自然観察、農林業体験、伝統工芸体験、文化体験、郷土料理などの体験活動の機会を提供しており、これら体験活動の指導者は地元の人材を活用している。
  • 体験学習の指導者はNPOの地元会員が候補者を選定・依頼した上で、塩谷町が協力して説明会を開催しており、担当者は比較的順調に指導者就任の了解を得ることができたと評価している。
広島市ユースボランティア・サポートセンター
  • 広島市ユースボランティア・サポートセンターでは、センターに登録したボランティア希望者に対して公民館、児童館などにおいて小・中学生と交流する場を紹介している。
  • 同センターでは、自らコーディネートを行なうのではなく、以前児童館長を務めていた人にコーディネーターを依頼し運営している。経験豊富な人材がコーディネートに当たることで、登録時の面接で本人の活動状況や希望について把握し、活動場所へ同行して受け入れ施設とのマッチングを行なうなどきめ細かな対応が可能になっている。

関係機関や他団体との連絡調整・連携

ポイント

  • 地域の他団体や学校・企業などと緊密に連絡を取れる体制をつくっておく。
  • 各地域にあるボランティアセンターなどを有効に活用する。

  活動の準備を進めていく中で、様々な問題に直面し、支援や助言を必要とする場面が出てくる可能性がある。そこで、地域ですでに活動している他のボランティア団体や、学校・企業などと緊密に連絡を取るようにし、連携による活動を実施したり支援・助言を受けたりすることができるような関係を築いておくことが重要である。
 また、日常的には、打ち合わせ場所の確保や、参考となる資料の収集、チラシなどの作成・印刷などを行わなければならため、どこに行けば何ができるのか、あらかじめ探しておくと活動を効率良く行なうことができる。特に、各地域にあるボランティアセンターでは、支援・助言のほか、会議室や印刷機などの貸し出しを行っている場合も多い。

参考事例

明治安田生命相互保険会社「愛の声かけ・配食運動」
  • 会社が支援する社員ボランティア活動として、全国で高齢者や障害者への配食サービスを行っている。活動を始める前に、プログラム策定のためのフィージビリティ調査として、配食サービスの専門家や経験者等を交えた委員会を設置して研究に取り組んだ。また、福岡・広島・京都・函館・札幌における配食サービスボランティア活動の現状を調査した。これは、各地域において配食サービスボランティアを実践するためのネットワークづくりの基礎となった。このとき協力関係を構築した配食サービス団体ともに、社員やその家族に対しボランティア参加を呼びかけていった。
佐田町子ども体験活動・ボランティア活動支援センター
  • 町内の公的な機関が中学生、高校生のボランティア受け入れを斡旋している。受け入れ機関にはアンケートを実施してニーズを把握し、町内の中学校、高校(分校)で募集する。活動場所は児童館、公民館、老人ホーム、デイサービス、子育て支援センター、保育所などが中心である。
  • 活動の事務局的な組織として推進協議会を設置し、参加する学校間、学校-行政との間に横のつながりがもてるように配慮を行なっている。

役割分担の明確化

ポイント

  • 各参加者、協力団体に適した活動内容を見極め、適切な役割分担を行うことが重要である。
  • その際、参加者の持っているスキルや知識が活かせるように配慮する。また、一部の人に過度の負担がかからないように意識する。

  活動を行なう組織の中では、個々のボランティアに対し明確に役割を振り分け、それぞれが協力し合うことで組織全体として大きな力を効果的に発揮できるようにすることが大切である。このことにより、個人の力が最大限活かされるだけではなく、一部の人に過度の負担がかかることを避けることが可能になる。
  また、自分たちの組織と連携して活動に取り組む協力団体との役割分担も明確化する必要がある。特に、学校と連携する場合は、幼稚園から大学までの中から、自分たちの活動内容に適した年代を見極め、適切な役割分担を行なうことが重要である。

参考事例

足利水土里探偵団
  • 彦谷川の浄化活動に当たり、大学・中学校・小学校・幼稚園までの様々な世代と連携を図っている。このうち、水質浄化作用のある微生物の入った団子を作る役割を幼稚園児・小学生に与えた。
  • 参加者の興味や能力に応じた役割を付与することにより、様々な世代がともに参加しているという意識を醸成する工夫である。
「松本市の自転車安全マップを作ろう」プロジェクト
  • 松本市において自転車安全マップの作成を行なうこの取り組みにおいては、普段から自転車を使用している高校生が、現地調査の役割を担い、携帯電話のカメラで該当箇所の写真撮影を行なった。
  • また、写真撮影の際には、長野県メディアリテラシー研究会と連携した。これにより、高校生が撮影した写真を研究会までメールで送信し、受け取った研究会が現場の問題点を効果的に伝えることのできる写真かを判断して、必要に応じて撮り直しを指示することができた。このように情報ツールを活用して適切な情報収集を効率的に行なっている。

(2)参加者の募集と受け入れ

戦略的な募集情報の発信

ポイント

  • 活動目的や具体的活動内容も含め、人々の関心を引き出すメッセージを伝える。
  • 対象者をある程度絞りこんだ上で、確実にメッセージが届く媒体を選ぶ。
  • 媒体としてはボランティアセンターの広報誌やホームページ、チラシなどがある。

  参加者募集に限ったことではないが、情報発信を戦略的かつ効果的に行なうには、「何を」「誰に」「どのように」という3点を十分に考える必要がある。
  「何を」は、単に参加者募集ということだけではなく、活動の目的や具体的な活動内容も含め、人々の関心を引き出すメッセージを伝えるように留意する。「誰に」「どのように」という2つについては、対象者をある程度絞り込んだ上で、確実にメッセージが届く媒体を選ぶことにより、効率よく情報発信を行なうことができる。ボランティアであれば、ボランティアセンターの広報誌やホームページへの募集記事掲載、またはチラシの配付などの方法が考えられる。

参考事例

子どもの美術教育をサポートする会
  • ボランティア(会員)の募集は特に積極的に行ってはおらず、美術館や地域で子どもを対象としたボランティアを経験したことのある人たちが、口コミによって集まっている。子どもの教育に対し意識の高い人々に自然に集まってもらいたいため、関心のある人には積極的に情報を提供し、見学や参加は自由にするというスタイルをとっている。
  • 最近では、大学と協力を結び、美術を専門に学んでいる学生の体験の場として活動に参加してもらうこともある。これは将来のスタッフを養成するという意味合いもある。
高島平地区小地域ネットワーク
  • 高島平地区小地域ネットワークでは、自分達も楽しむということを重視し、楽しさをアピールすることで地域住民の自発的な参加を促進している。これはネットワークにおいて、以前単身高齢者宅を訪問し声掛けを行なったが、高齢者がこのような活動を敬遠したことを契機に、「訪問する」ことから、楽しい役に立つ活動を通じて「来てもらう」ことに姿勢を転換したことも背景にある。

受け入れ体制の整備・雰囲気づくり

ポイント

  • 活動目的や理念、活動計画案などを明確に提示できるようにしておく。
  • 人を呼び寄せるため、手軽に立ち寄ることができる活動拠点を設置する。
  • 新規の参加希望者に対し、既存メンバーが親しみを持って接する。

  その組織に参加して活動を行いたいという人のために、ボランティア受け入れの体制整備や雰囲気づくりに努めておかなければならない。例えば、活動目的や理念、先を見据えた活動計画案などを明確に提示できるようにしておき、参加希望者に呼びかけ理解を促していくことや、手軽に立ち寄ることができる活動拠点を設置して人を呼び寄せることなどが重要である。また、活動開始後に参加を希望する人に対しては、既にいるメンバーが親しみを持って接し、歓迎されていることを実感してもらえるような雰囲気をつくり出すことが必要である。

参考事例

足利水土里探偵団
  • EM(有用微生物群)による生ごみの堆肥化に取り組んでおり、それを広めるために地域でEMサロンという説明会を開催している。また、事務局を商工会議所内から中心街の空き店舗に移転し、エコ・サロンと名付けて活動内容の展示やEM関連商品の販売も行っている。このように、活動の中にサロン的な雰囲気を導入して、地域の人々が気軽に立ち寄ったり参加したりしやすいような場をつくるように心掛けている。
スノーバスターズ
  • スノーバスターズでは、村民のメンバーのほかに、村外からのメンバーを募っている。村外の参加者には地域で発行しているボランティアの地域通貨“わらび”が発行され、獲得したわらびは地域の商業施設で利用可能である。ボランティアへの金銭の授与には賛否議論のあるところであるが、ボランティアを趣旨とする地域通貨の付与は、参加者にインセンティブを与えつつ、地元での消費につながるという点で工夫が見られる。また、沢内村で開催される地吹雪体験ツアーの参加者にスノーバスターズとして雪かきに参加してもらうなど、参加者の関心を引き、抵抗のない形でのボランティアに参加してもらうように工夫している。

(3)参加者に対する事前指導

事前の講習会の実施

ポイント

  • 活動に必要な知識やスキルを事前に学んでもらい、初心者でも安心して活動に参加できるようにする。
  • 活動内容に応じて、専門家を招いて本格的な指導を行なう。

  子どもや高齢者を相手とする活動のように一定のスキルが求められる活動や、観光ガイドのように知識や接遇マナーなどが必要になる活動などにおいては、参加者に対し事前に講習を実施して、関連する知識やスキルを学んでもらう事例が多く見られる。このような活動前のサポート体制が充実していると、初心者でも安心して活動に参加することができ、またボランティアを受ける側からの評価も高くなる。団体によっては専門家を招いて本格的な指導を行なうなど力を入れているところもある。

参考事例

長浜観光ボランタリーガイド
  • 長浜観光ボランタリーガイドでは、新たにガイド登録を行なう新人会員をターゲットとした講座(現会員も聴講可)を年6回程度実施している。講座の他にも、他地域の観光ボランティアや長浜の歴史とも関連の深い地域への視察研修も年数回実施するなどし、ガイドとしてのスキルアップに努めている。
西予市ボランティアセンター「乳幼児ふれあい体験教室」
  • 「乳幼児ふれあい体験教室」に初めて参加する生徒が戸惑わないように、保育の専門家(元保育士)を講師に招いてボランティア指導の時間を設けている。講師の選抜については、市の保健士が持つ情報やボランティア活動センターの登録情報から得ている。

安全に対する備え

ポイント

  • 参加者に対し、安全に関する指導を事前に徹底する。
  • 事故防止のため、活動場所の安全確保や、安全性の高い道具の選択などを行なう。
  • 参加者や活動そのものを対象として、ボランティア保険に加入することが重要である。

  活動の中には、交通量の多い道路沿いや高所、海・川など危険な場所で行なうものや、刃物や火気など危険を伴う道具類を扱うものがある。多くのボランティアを預かる組織としては、安全第一を心がけなければならないため、安全に関する指導の徹底や、柵やフェンスなどの設置による事故防止、安全性の高い道具の選択、ボランティア保険の加入など、様々な安全対策を行っている。ボランティア保険については、新規に加入するのではなく、学校や企業などですでに加入している保険を活用している例も見られる。

参考事例

塚原の雑木林を守る会(富士ゼロックス株式会社)
  • 活動に当たっては、安全を第一としている。植樹地が高台であるため、転落事故が起こらないよう、活動のスタートにあたり、防護フェンスの敷設や階段の補強などをまず実施した。
  • また日常の作業にあたっては、経験豊富なメンバーから鎌やナタなど用具の使用や作業方法などについての指導を徹底している。
  • さらに万が一に備え、活動日毎に会社が全参加者にボランティア保険を掛けている。
筑前新宮に白砂青松を取り戻す会
  • 親子植樹会など、素人が植樹に参加する活動もあることから、使用した道具で参加者がケガをすることのないよう、道具の選択に十分注意している。

お問合せ先

生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --