特定非営利活動法人 塩谷町旧熊ノ木小学校管理組合 組合会員31名
塩谷町立熊ノ木小学校廃校舎、ほか
塩谷町立熊ノ木小学校は平成11年3月末を持って閉校になることが決まった。周辺住民から校舎存続希望の声が上がり、塩谷町は公設民営という条件で、閉校後も校舎を存続させ活用することに同意した。閉校と同時に塩谷町は地元有識者や区長などから構成する跡地利用検討委員会(事務局は塩谷町企画調整課)を設立し、約1年かけて「ここならでは」の跡地活用方法を検討した結果、宿泊型体験学習施設とすることに決定した。
跡地利用検討委員会解散後、新たに旧熊ノ木小学校運営委員会を設立し、体験学習の検討を行った。その後、施設の管理運営ならびに活動推進組織の検討を行ったが、特定個人のためでない社会貢献を目的とした活動であることを明確にするため、平成13年12月に管理運営主体としてNPO法人を設立し、平成14年4月に開業した。
開業前に行った主な取り組みとしては以下の4つがあげられる。
初年度の開業資金は理事長個人からの借入金で運営した。塩谷町の公設民営という形をとっているため、NPO法人は町から施設の管理委託料を受け取り、一方施設の賃借料を町に支払っている。
星ふる学校「くまの木」(塩谷町旧熊ノ木小学校)を拠点とし、下記の地域資源を活用して人と地域を活性化させる活動を行っている。
体験事業では、自然観察(天体観察、バードウォッチング、雑木林の虫探し)、農林業体験(炭焼き、木の葉さらい、田植え)、伝統工芸体験(しめ縄作り、木工)、文化体験(影絵鑑賞、リサイクル小物作り)、郷土料理(蕎麦打ち、うどん打ち、豆腐作り)などの活動を行っている。
また、新たな企画として、会員制の農業体験「こだわりの蕎麦作り体験」を平成15年度より始めた。ジャガイモの収穫から蕎麦の種まき、刈り取り、脱穀、新蕎麦打ち、堆肥作りまでを行なう。15年度は18名、16年度は27名が参加した。さらに、平成16年度からは、人と自然を大切にする子どもを育てることを目的に「くまの木自然クラブ」を立ち上げ、毎月1回のペースで自然観察会などの活動を継続している。平成16年度は指導者5名、クラブ員(小学校4年生~中学1年生)19名で活動した。
地域の公民館と連携し、蔓を使用したカゴ作りや天体観測活動などを実施している。公民館主催の活動である場合は、施設利用費や、体験指導料を公民館から徴収している。
体験学習は開業以来、平成16年12月までの2年9ヶ月間で、395回開催し、5,862人が参加した。最も開催回数の多かったイベントは天体教室で、106回開催し1,820人が参加した。次いで蕎麦打ち体験の90回1,142人、影絵鑑賞の24回664人の順になっている。
ストレス社会の中で木造校舎の宿は安らぎの場となっており、リピーターおよび口コミによって宿泊利用客は年毎に増加しており、2年目および3年目は前年比約30パーセント増で推移した。
ホームページやパンフレットによる働きかけを行っている。また、宿泊客のリピーター確保のために「くまの木」スタンプカードを発行し、6回目の宿泊料を半額にするサービスを行っている。
体験学習の指導者はNPOの地元会員が候補者を選定・依頼し、塩谷町が協力して説明会を開催することで、比較的順調に指導者就任の了解を得ることができた。
宿泊施設の運営面では、自動火災報知器や消火器などの安全設備の設置、消防訓練の実施、日常点検の実施、賠償責任保険の加入を行っている。
体験学習やイベントにおいては、「参加者への事前説明資料」(自然体験活動の場合に、活動内容と想定される危険の説明や参加者の健康確認などを行なうチェックシート)の配付、および一般傷害保険(イベント保険)の加入を行っている。
NPO法人スタート時の会員は、旧熊ノ木小学校運営委員会の委員が就任し、全員が役員(理事および幹事)に就任したが、多くの役員は町から頼まれたからやっているという認識を持っており、責任性と自主性に欠けていた。そのため開業から1年ほど経て役員数の縮小と入れ替えを行い、前向きで社会性を持ったメンバーによって理事会を構成することとなった。
NPO法人の主たる収益事業は旅館業(木造の廃校舎が宿泊施設)であるが、初年度は利用客が少なく、また備品類などの支出が多く、収益面で厳しい状況になった。団体の宿泊客を増やすことが収益改善の近道ではあるが、あまり繁忙になると安らぎの場として不適切となるジレンマがある。
平成16年で開業3年目を迎え、宿泊型体験学習施設としての基礎は固まった。利用者数も順調に伸び続け、利用客の評判も良好である。交流活動と子どもの健全育成活動に力を入れる方針を持っているが、「くまの木自然クラブ」をその中心としてスタートさせることができた。社会貢献に対する評価はこれからの活動内容とその成果によると考えている。
NPO活動の中で地域住民と都市住民の幅広い交流が実現できていない。交流を活発にし、塩谷町の活性化に目に見える形で貢献することが求められている。
生涯学習政策局社会教育課
-- 登録:平成21年以前 --