分野:教育
子どもの美術教育をサポートする会
滋賀県立近代美術館、滋賀県立陶芸の森、MIHO MUSEUM、琵琶湖博物館、芸術家(陶芸家、茶道家、音楽家、和太鼓奏者など)、滋賀県内の小学校・中学校・養護学校
同会会員(子どもと美術教育に関心のある大人たちと大学生)
各小学校、美術館・博物館、地域の公民館など
代表の津屋氏は、美術教育が子どもたちの精神性を高めることになるという思いから、東京の世田谷美術館で教育ボランティアを行なうなど研鑚を積んでいた。1999年に滋賀に移り住んでからは、県立近代美術館や県立陶芸の森美術館などでボランティア活動を開始し、その中で、すべての子どもたちに本物の美術・芸術に触れる体験を与えるためには、学校との連携が不可欠であるとの考えに至った。
そこで、草津市の地域協働合校(がっこう)の取り組みに参加し、美術教育専門の小学校校長と出会った。そのことをきっかけにして、2000年1月に同会を設立した。
理念は「すべての子どもたちに本物の芸術に触れる機会を与え、豊かな感性と心を育てる」というものである。
最初は、前述した美術教育専門の小学校校長の学校で初めて連携授業が実現できた。その小学校が、その年の全国教育美術展で全国学校賞1位を受賞したこともあり、その後は学校側から授業の依頼が来るようになった。
ボランティア(会員)の募集は特に積極的に行ってはおらず、口コミによって、美術館や地域で子どもを対象としたボランティアの経験者などが集まっている。子どもの教育に対し意識の高い人々に自然に集まってもらいたいため、関心のある人には積極的に情報を提供し、見学や参加は自由にするというスタイルをとっている。現在の会員は約30名である。
最近では、大学と協力を結び、美術を専門に学んでいる学生の体験の場として活動に参加してもらうこともある。これは将来のスタッフの養成としても期待している。
同会はこれまで、以下のような活動・事業を通じて活動資金を確保している。
滋賀県内の特色ある4つの美術館・博物館(滋賀県立近代美術館、滋賀県立陶芸の森、MIHO MUSEUM、琵琶湖博物館)、及び地域の美術家・芸術家の人たちと、学校・地域をボランティアとしてつなぐ活動を行い、以下のような取り組みを展開している。
全国的にも珍しい、美術館・博物館・芸術家と小学校との連携授業をコーディネートしている。ボランティアは両者間の連絡調整のほか、両者の希望、実情などに即した連携プログラムを企画・提案する。授業中は、講師(美術館学芸員や専門家)のアシスタントが主な活動であるが、場合によってはボランティア自らが講師役として授業を進めることもある。
授業の内容は、活動のねらいでもある「本物の芸術に触れる」ことができるよう、体験の機会を多く設けるようにしている。講師を教室に招いて、実演を披露してもらったり実際に作品を制作したりするほか、教室を飛び出して、美術館での作品鑑賞や窯場見学なども行っている。
同様の活動は、小学校だけでなく中学校、養護学校、幼稚園や保育所からの要望も増え、実施されたところもある。また、授業内容も、美術・図工という枠を超え、歴史・社会・理科・道徳・生活、さらに、イラクの古代美術を通じた人権・平和・国際理解学習などへと広がりを見せてきている。
これまで参加した学校及び児童・生徒数は以下の通りである。
(1)と同様の内容の活動を、地域の公民館や子ども会などでも実施し、親子で参加してもらっている。これまでに約1400人の親子の参加を得た。
「総合的学習を美術館とともに」というテーマで、教育関係者を対象とした研修交流会を開催している。県立陶芸の森とMIHO MUSEUMを会場に、学校、公民館、大学、美術館、地域、NPO、行政関係者など、3年間で約300人が参加した。2004年は、教育関係者が美術館の作品から体験授業を企画するという内容で実施した。子どもたちを指導する大人が本物の芸術に触れる体験をする場である。
2004年6月に、通学路付近のトンネルでいたずら書きがあり、県からの相談を受けて、その場所に壁画を制作するプロジェクトを実施した。小学校、中学校、公民館、さらには壁画作家、行政、業者をボランティアが結び、地域のシンボル・憩いの場となる美しい壁画が完成した。
初めて連携授業を実施した小学校が、その年の全国教育美術展で全国学校賞1位を受賞し、2004年も関わっている学校のうち2校が全国学校賞を受賞した。一度連携授業を実施した学校では、継続とともに対応学年も増え、1年生から6年生まで依頼が広がっている。また、同会の活動が雑誌・新聞・テレビなど様々なメディアで取り上げられたり、文化庁から文化ボランティアの学校支援の先進的な活動事例として紹介されたりして、活動の視察に訪れる人や、連携のプロセスを学びたいという美術館などからの講師の依頼も増えている。このように、学校から地域、そして県外へと活動の輪が広域化してきている。
笠縫東・チルドレン・ミュージアム事業では、事業後にいたずら書きがなくなり、目的を果たすことができた。また、県知事や県の教育長も見学に訪れるなど、新しいまちづくりの連携モデルとして高い評価を得ることができ、他県からの問い合わせもあった。
各美術館・学校によって連携授業に対する意識・要望は異なるため、画一的な企画を押し付けるのではなく、それぞれの個性や方向性、ニーズを掴み、ふさわしいプログラムをオーダーメイドで企画するようにし、「WIN-WINの関係」、「両者の喜び」を大切にしている。
美術館関係者と学校関係者との綿密な打ち合わせを行い、美術館が提供できることと学校が求めていることをきちんと把握するように心がけている。また、両者の出会いの場を設け、ボランティアの仲立ちのもとしっかり話し合えるように努めている。
連携授業の情報を教育・行政関係者やマスコミなどに伝え、できる範囲で見学者を受け入れている。こうして活動の情報発信とともに、外部からの評価を得るようにしている。
最初の頃は、前例のない活動であったため、個人的な協力から始まり、個々の負担も大きかった。個人ベースではなく美術館全体、学校全体での協力が得られるようになったのは、活動が評価され実績が積みあがってきてからである。
これまでの活動をさらに推し進めていくほか、これまで子ども向け事業を手掛けてこなかった複数の美術館からコーディネートの依頼があり、委託事業として実施していく計画が進んでいる。また、小学校各学年対応のカリキュラムを各美術館ごとに構築するためのコーディネートを、複数の小学校から依頼されており、専門家の監修も得ながら検討会を設けて議論していく。
活動が年々増加傾向にあるため、NPOの組織としての基盤固め、スタッフの役割分担や新スタッフの養成などを行いながら、無理のない形で活動を進めていくことを考えている。
生涯学習政策局社会教育課
-- 登録:平成21年以前 --