分野:まちづくり
「松本市の自転車安全マップを作ろう」プロジェクト
長野県体験活動ボランティア活動支援センター
長野県立松本美須々ケ丘高校、長野県立松本県ケ丘高校
松本市ノーマイカーデー推進市民会議
NPO「環境の世紀」をめざして・まつもと発21
長野県メディアリテラシー研究会
松本市は、盆地で市街地の起伏が少ないことや市街地を流れる河川に沿って自転車が走りやすい好条件や、ノーマイカーデー推進市民会議が「自転車デー」を開催するなどの環境意識の高揚から、高校生をはじめとして自転車の活用度合いが高い。しかしながら、市内の道路の中には、狭小で自転車の運行には危険が伴う箇所にもある。自転車事故の約85パーセントは、子どもと高校生であることから、自転車のいちばんのユーザーである高校生の目線から、市内の自転車使用に関する危険なポイントを把握することが計画された。
他方、長野県体験活動ボランティア活動支援センターで以前から実施していたボランティアの講習会には、地域の高校の教員が積極的に参加しており、生徒が様々な分野のボランティアに関心があることが伝わっていた。これらのことから、松本市で高校生をはじめとして地域を挙げて取り組むことのできる活動内容として自転車に注目し、高校生の地域への参加のきっかけともなることから、自転車を安全に利用できる環境整備として本事業へとつながった。
活動は、長野県体験活動ボランティア活動支援センターがコーディネート役となり、実際に日々の行動に自転車を使っている高校生と連携し、松本市内の道路について自転車通行上の危険箇所をマッピングしていくことにより、「安全自転車マップ」を完成させるものである。
事業には、上に挙げた様々な団体が協力している。短期間にこれらの団体と連携ができた背景には、松本市民の間に自転車への注目度が高く、この環境整備が地域の共通課題だと共通認識をもつことができた点が挙げられる。
高校との連携という点においては、長野県体験活動ボランティア活動支援センターで松本美須々ケ丘高等学校、松本県ケ丘高等学校に呼びかけ、平成16年秋から両校の生徒会を中心に取り組んできた。その一環として両校の1、2年生の生徒約1,200人からアンケート調査を行い、市内の危険箇所の洗い出しを行なうなど、両校ともに全校を挙げた取り組みとなっている。
予算の面では、長野県体験活動ボランティア活動支援センターの予算、松本市ほかで取り組んでいるノーマイカーデー関連の予算のほか、NPOの支援など様々な団体の支援を広く受けることができた。
アンケート結果をもとに、マッピングする危険箇所を30箇所、携帯電話のカメラ機能を利用して画像情報を収集、WEB上で地図を作り上げていく手法をとった。活動に参加する他NPO等の団体は、それぞれの立場を活かして、事業の進行、収集された情報活用に協力した。事前準備を含め、マップづくりまでの実施の手順は概ね以下の通りである
具体的な事業成果は「安全自転車マップ」であるが、その作成において長野県メディアリテラシー研究会と連携したことが有効であった。具体例として、生徒が携帯電話のカメラで撮影し送信した写真を研究会が受信し、問題点を効果的に伝えることのできる写真かを判断して、必要に応じて撮り直しを指示することができた。このように情報ツールを活用して適切な情報収集を効率的に行なうことができた。
また、事業のプロセスにおいて両高校の職員会議で議論し学校全体での合意形成を得られたこと、および生徒についても、一部の生徒の活動にとどまらず、生徒会で取り組むことを通じて出来るだけ多くの生徒が関わって事業を推進するという実績をあげることができたことも大きな成果である。
高校生以外に参加するNPO等がそれぞれの役割を担うことが重要である。具体的には、ノーマイカー協議会は活動の成果を社会に還元する方法の検討を、NPO「環境の世紀」をめざして・まつもと発21は、高校と自治体を結びつける役割と実践から起こる課題解決を、長野県メディアリテラシー研究会は高校生が能動的に参加できるようワークショップの企画を担当、長野県体験活動ボランティア支援センターは全体のコーディネートを行なう。活動は単なるマップ制作に止まるのではなく、この活動を通じて参加した高校生の交通安全意識の高揚、ひいては街づくりの構成員としての自覚を意識化し、積極的に行政などにも関与できることを目指す。
事業を進めるにつれ事業の意義を関係団体それぞれが学習・理解したこと、また不幸なことであるが事業期間中に市内で交通事故があったこともあり日増しに事業の意義が全関係者に浸透していった。ただし、当初は関係団体の取り組みに温度差が見られた面もあり、センターでは意識合わせに留意し繰り返し事業の意義を発信した。
現在進行中であるために活動後の評価を(当面の課題として、)関係団体それぞれの視点から本事業を評価してもらうことを考えている。また、この活動は地域と高校生の連携のモデルとして一般化し、他地域での活動促進に役立てることを検討している。本事例では、長野県体験活動ボランティア活動支援センターが様々な関係団体のコーディネーター機能を果たしたが、本事例の教訓として様々な関係団体の意識の調整が大きな課題となったこともあり、他地域で行なう場合、コーディネーター機能をどの機関が担うかが重要なポイントになる。様々な関係団体の意見を集約できる組織がコーディネーターを務めるとともに、コーディネーターは事業の意義が参加者に浸透するまで徹底して情報発信を行なうことが、他地域に応用する場合に本事例から学ぶべき点である。
生涯学習政策局社会教育課
-- 登録:平成21年以前 --