24.佐田町子ども体験活動・ボランティア活動支援センター

分野:まちづくり

  • 町内の公的機関のニーズをもとに、町内の中高生に対して各機関へのボランティアを仲介している事例である。
  • 中高生と地域がボランティアを通して接することによって、地域内の助け合いの気持ちが高まり、新たな地縁づくりに成功している。

1.主体活動団体

  佐田町子ども体験活動・ボランティア活動支援センター

2.活動のきっかけ・問題意識

  佐田町子ども体験活動・ボランティア活動支援センターの設立にあたっては、それに先立って平成12年度、13年度に島根県教育委員会が実施した「地域で育むしまねの子」推進事業が大きな役割を果たしている。
  学校の週5日制を控えるという背景の中、「学社連携、融合」を手法になされたこの事業で、佐田町では、「地域で育むスサノオ人」をキーワードにボランティアの推進も行なうことを決定し、取り組みを推進した。
  具体的には、以下のとおりである。

  1. 町内の小学校2校、中学校1校、高校1校(分校)に呼びかけを行い、推進協議会を設置。各学校と行政などがヨコのつながりを持てるようにした。
  2. 学校には、ボランティア担当者を決定して配置することを依頼し、窓口を決めた。
  3. 中高生ボランティアバンクを設置、ボランティア活動を希望する中高生を登録した。

  2年度にわたり継続したこの事業は、ボランティアバンクの実績こそ、受け入れ13施設、登録23人、活動45件(いずれも平成12年度)と低調であったが、子どものボランティアを取り巻く行政、学校、団体(活動場所)等の連絡が密接に行えることとなり、センター設置の礎となった。
  同事業により佐田町教育委員会では、推進協議会を設置、学校や公民館との強いパイプを作ることができた。また、ここで立ち上げられた「中高生ボランティアバンク」事業があったから、佐田町子ども体験活動・ボランティア活動支援センターの設立が企画されたことは間違いない。

3.活動の概要(活動段階)

  町内の公的な機関による中学生、高校生のボランティア受け入れを斡旋している。受け入れ機関にはアンケートを実施してニーズを把握、町内の中学校、高校(分校)で募集する。活動場所は児童館、公民館、老人ホーム、デイサービス、子育て支援センター、保育所などが中心である。原則として公的な機関か、それに近い非営利の組織やイベントなどであるが、例外的には町の産業祭や出雲市に設置されたアンテナショップでの販売の手伝いなども行なうことがある。こうした例外は、町の名産品等を扱うことにより、町への愛着が高まる効果が見られることから、あえて営利的な面も含めて体験させている。
  また、一人暮らしの高齢者や老人ホーム等の高齢者に対して絵手紙を送る活動も行っている。このボランティアは、特に出向くことを必要としないため、気軽に取り組める半面、対象となる高齢者にとっては非常にうれしいボランティアである。
  関連して、啓発的な意味合いで中学校と連携し、全校生徒を対象とした「ボランティア集会」なども行っている。

4.事業の成果

  平成15年度はボランティアの受け入れ施設は50箇所、延べ活動人数は1,500人を数えるに至った(絵手紙ボランティア含む)。
  前段階の「中高生ボランティアバンク」の事業に比して、飛躍的に受け入れ施設、活動場所とも増加している。同様の事業の継続により、活動自体が知られるようになってきたことに加えて、あえて登録制をやめ、町内のすべての学校と生徒に呼びかけを行なうという方策を採ったことが成功の要因である。
  また、センターの設置が教育委員会であることから、教育的な側面の成果も重要である。ボランティア活動に参加した生徒については、意識に明確な変化が見られることが多い。活動の成果からくる自尊心の育成、活動に参加したことから生じる町に対する愛着の増加、異世代の交流による社会性の獲得、体験によって将来の職業を考えるキャリア教育など、多方面に役立っている。

5.活動にあたって留意したこと

  • ボランティアだけが目的にあるのではなく、最大の目的は生徒の地域への参加である。ひいては新たな地縁作りにつながると考えて事業を実施している。モットーは「地域で育てる子ども、地域を育てる子ども」である。
  • 2000年より実施した事業により学校の理解が進み、ボランティア学習などを行っていることから、その連携をさらに強めることを心掛けた。
  • ボランティア活動を行なう生徒全員(高齢者への手紙は除く)にスポーツ安全保険(ボランティア保険)をかけている。
  • ボランティアの募集についても、一覧表の配付による募集、という手順が基本でありつつも、急ぎの案件では担当者が学校へ出向く、過去に活動した生徒に個別に呼びかけを行なうなど、柔軟かつ機動的に対応している。大きな都市ではできないきめ細かい対応である。

6.活動後の評価・今後の課題・展開など

活動にあたって障害になったこと

  • 大きな障害と感じていることはない。小さな町であること、事前の事業により関係機関の円滑な協力体制が図られているためである。
  • 現場レベルでは、事業に対して専任のコーディネーターの配置が望ましいが人件費の不足から配置できていない点があげられる。現在もコーディネーターとしての人員の雇用はなされているが、予算の面からパートタイムでの雇用が限界であり、事務レベルの仕事が中心となってしまっている。
  • ボランティア活動を行なう際に、移動する交通手段が少ないことが、地方の町の弱点である。活動場所は町内の様々な場所であるが、地方では公共交通が発達しておらず、生徒が参加する場合には自転車で行ける範囲に限られてしまうことも少なくない。

事後評価について・今後の展開・課題

  • 同センターの活動の目的として、「新たな地縁づくり」があげられる。改めてボランティア活動を言うのではなく、近所の人が困っていたら助けるのが当然、というような地元意識を作っていくことが大切と考えているためである。ボランティアはあくまでそのための入口という位置づけである。こうした地縁づくりのためには、地域に出ないと何も始まらない。生徒が地域に出ることでひとつでも興味が持てる活動を見出して、地域に参加してほしいとの思いがある。
  • そのことは活動先である施設でも理解されている。実際には同センターが派遣するボランティアが活動する施設の9割が、ボランティアなしでも支障はない状況である。ボランティアを受け入れることで、仕事を教えるなど逆に負担になる場合すらあるが、ボランティアを行なう生徒に対する教育的な側面からあえて受け入れを行い、生徒の育成に協力している施設も多い。
  • 担当者は県教育委員会からの派遣であるが、その期限が本年度までであり、教育委員会内で事業は引き継ぐものの、人的に不安な状態となる。また、平成17年3月22日に出雲市と合併し、事業の継続自体にも不安が生じている。
  • 行政支援はどうしても目に見える形のある箱モノや教材などに偏りがちであるが、現在の子どもの課題の多くはモノ余りの時代背景に起因しているにもかかわらず、これ以上モノを与えるのは意味がない。こうした事業を行なう際に、必要なのは業務に当たる人間の人件費やプログラムなどソフトの部分であり、それを確保していくことが事業の継続に向けた今後の大きな課題である。

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生涯学習政策局社会教育課

-- 登録:平成21年以前 --