持続可能な国際競技力向上プラン(令和7年3月改定)

持続可能な国際競技力向上プラン

令和3年12月27日
令和7年3月26日改定
スポーツ庁長官 室伏広治

はじめに

 スポーツ庁では、2016年のリオデジャネイロオリンピック・パラリンピック競技大会(以下「リオ大会」という。)後、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下「東京大会」という。)に向けた国際競技力向上のための取組・支援を強力で持続可能な支援体制として構築・継承することを目的に「競技力強化のための今後の支援方針」を策定し、これを基に毎年の予算を拡充しながら、関係各機関とともに取組を進めてきた。
 こうした取組の成果は、2018年の平昌冬季オリンピック・パラリンピック競技大会や、2021年の東京大会における日本代表の活躍に現れたが、これらの大会の結果等も踏まえ、それまでの施策の成果と課題について、2021年4月に設置した「競技力強化のための施策に関する評価検討会」において評価検証を行った。同検討会の報告書を踏まえ、2021年12月に、自国開催のオリンピック・パラリンピック競技大会(以下「オリ・パラ大会」という。)後における我が国の国際競技力の維持・向上のための取組を掲げた「持続可能な国際競技力向上プラン」を策定した(以下「本プラン」という。)。
 本プランは、基本的にオリンピック競技・パラリンピック競技、夏季競技・冬季競技共通のものであり、また、中長期の展望を持って策定したものであるが、2022年の北京冬季オリ・パラ大会(以下「北京大会」という。)及び昨年のパリオリ・パラ競技大会(以下「パリ大会」という。)の結果や、本プラン策定時から刻々と状況が変化する中で重要性が増してきた観点への対応の必要性も踏まえ、これまでの取組の検証及び改善を行うべく、2024年11月に「持続可能な国際競技力向上のための施策に関する評価検討会」を立ち上げた。
同検討会における議論を踏まえ、本プランの改定版をここに示す。
 また、現時点でオリ・パラ大会の実施競技となっていない競技についても、本プランに基づき、国際競技力向上のための取組を支援する。
 なお、オリ・パラ大会のみならず、各競技の世界選手権等を含む主要国際大会も重要な指標となる。特に、2026年に愛知・名古屋で開催されるアジア・アジアパラ競技大会は、日本中の人々がトップアスリートの躍動する姿を直接感じることのできる絶好の機会であることから、2028年のロサンゼルスオリ・パラ大会(以下「ロス大会」という。)に向けた最重要マイルストーンの一つとして位置づけ、関係機関・団体が総力を挙げて選手強化活動を促進、支援する。

改定の観点と概略

 本プランの策定以来、「(1)アスリートの発掘・育成・強化の取組のシステム化・プログラム化」、「(2)居住地域等に関わらず、全国でスポーツ医・科学、情報等によるサポートを受けられる環境の実現」、「(3)国と地方の競技力向上施策の連携強化」の3点を柱として取組を行ってきた。
 「競技力強化のための今後の支援方針」を経て、本プランへと発展させながら行ってきた取組は、北京大会において冬季オリンピックとして過去最多となる総メダル数を獲得したほか、パリ大会において、オリンピックで金メダル数、総メダル数、入賞数、メダル獲得競技数いずれも海外開催のオリンピックでは過去最多となり、パラリンピックでメダル獲得競技数が海外開催のパラリンピックでは過去最多となるなど、日本代表選手団の輝かしい結果に一定の役割を果たしたと言える。また、例えば、公益財団法人日本オリンピック委員会(以下「JOC」という。)は、高い競技力と人間力を生かし、充実した人生を歩む「憧れられるアスリート」を育てることを標榜しているが[1]、アスリートが、戦う相手としてだけではなく高め合う仲間として、互いに敬意を持って躍動する姿は、多くの人々に勇気と感動をもたらしている。
 他方で、これらの好成績を持続可能なものとし、今後もより多くの競技・種目で躍進していくためには、アスリートの強化活動の基盤たる発掘・育成・強化の取組を一体的に捉え、その質の向上を目指し、かつ、刻々と変化する状況・情勢を捉えながら、重要性が増している観点も含めて先手を打って取り組んでいく必要がある。
 また、「何に取り組んでいくか」の前提として、それらの取組の「根底にある考え方」を、アスリートや強化活動に関わる全ての人々の間で共通の認識とすることによって、スポーツ界が一体となってより効果的な国際競技力向上を実現していくことが可能となる。
 こうした視点に立ち、改定後の本プランにおいては、以下の3点を根底にある考え方としながら、具体的な施策等に取り組んでいく。

✓身体機能及びコンディショニングに関するリテラシーの向上
 各機関等が、ソフト面・ハード面の両面からアスリートを支援していくことに加え、コーチやトレーナー等、アスリートを支える人々がコンディショニングに関する理解を深めていくこと、また、アスリート自身が自分の身体やその状態を理解し、自ら必要なサポートを選択できるようにしていくことによって、より最適なコンディショニングサポートを受け、パフォーマンスを向上させていくことが可能になる。

✓競技やオリ・パラの枠組みを超えた連携、強化活動
 競技やオリ・パラの枠組みを超えて、支援組織間・活動拠点間でシームレスに連携したり、アスリートや指導者等が交流しながら強化活動を行ったりしていくことで、トレーニング方法の多様化や、新たな可能性の発見、知見の共有に繋がることが期待できる。
 具体的には、例えば、単一の競技にとどまることなく、競技の枠組みを超えて「クロストレーニング」を行うことで、トレーニング効果が高まるのみならず、スポーツ文化の深化や社会的な結束力の向上に寄与することが期待できる。また、パラスポーツで活躍するアスリートやコーチの経験・知見は、単なる競技力の向上にとどまらず、困難の乗り越え方やプレッシャーのマネジメント方法等に関する示唆を与えるものであり、そこには人間の可能性を広げる大きなヒントが存在している。

✓アスリートの強化活動を通じた人類の潜在的身体能力の開拓
 アスリートが自身の持つ能力を向上させていくことは、ひいては人類の持つ潜在的身体能力をも開拓することに繋がる。すなわち、アスリートが、競技活動においてその心身の感覚・能力を極限まで研ぎ澄ましていく営みは、まだ我々が気付いていない人類の新たな可能性を広げていくものである。
 また、パラスポーツは、障害の有無を問わず、視覚や聴覚等、人が持つ機能の一部に制約を課すというルールのもとに行われるスポーツと捉えられるが、このような一定の制約のもとで能力を開拓していく活動は、近年模索されている宇宙空間への人類の活動領域拡大に向けた挑戦とも近似するものであり、両者の連携は、持続可能な競技力向上と有人活動の双方の可能性を広げ、新たな価値を創出していくことに繋がる[2]。

 

Ⅰ 基本的な方向性

 少子化が進む我が国において持続可能な国際競技力向上を図っていくためには、より多くの優れた能力を有するアスリートを見出し、育成・強化する仕組みを構築するとともに、先端技術の積極的な活用等を通じたスポーツ医・科学、情報等の知見に基づく質の高いトレーニング環境の整備等を行い、アスリートをシームレスにサポートしていくことにより、全てのアスリートが自らの持つ可能性を発揮することができる環境の実現を図ることが求められる。
 こうした基本的な考え方、及び「改定の観点と概略」で述べた「根底にある考え方」に基づき、以下4つの方向性の下、各施策を推進する。


1.アスリートの強化活動の基盤の確立・強化
 アスリートの発掘・育成・強化の取組は、NFを中心に、都道府県競技団体、地方公共団体、その他関係機関等、様々なところで行われている。これら各機関間における連携を強化し、NFにおいて策定する強化戦略プランの実効化や、コーチ等指導者・サポートスタッフ等の育成・充実、また競技やオリ・パラの垣根を超えた強化活動・組織的な活動等の取組を一体的に進めていくことで、アスリートの強化活動の基盤の確立・強化を図る。

2.アスリートへのスポーツ医・科学、情報等による支援の充実
 アスリートが持つポテンシャルを最大限発揮するには、スポーツ医・科学の知見を活用した適切なサポートを受けるとともに、競技成績に多大な影響を与える競技ルール、会場の環境等を含む国際情報を迅速に把握することが重要である。これらのスポーツ医・科学、情報等による支援をアスリートが十分に受けられるよう、ハイパフォーマンススポーツセンター(以下「HPSC」という。)[3]を中心に、大学や民間企業等とも連携した取組を進める。

3.アスリートが居住地域や活動拠点等にかかわらずハイパフォーマンスサポートを受けられる環境の実現
 各地域のスポーツ医・科学センターや大学、ナショナルトレーニングセンター競技別強化拠点(以下「NTC競技別強化拠点」という。)等を生かした各地域・拠点におけるサポート機能の強化、及びこれらの関係機関とHPSCやNFとの連携の強化を通じ、アスリートがどこに住み、どこを活動拠点としていても、スポーツ医・科学、情報等によるサポートを受けながら競技活動を行うことのできる体制を構築する。

4.アスリートがライフステージや外的要因に左右されず競技活動に専念できる環境の構築
 アスリートが心身の健康を維持しながら競技活動を行えるよう、女性アスリートのライフステージに応じた支援や、アスリートのウェルビーイング向上に向けたサポート、NFの組織基盤の強化・ガバナンスの確保等を通じ、アスリートがライフステージや外的要因に左右されず競技活動に専念できる環境を構築する。また、ドーピングが、様々な健康被害をもたらすだけでなく、自己を否定する行為、スポーツの根源的な価値を毀損するものであり、絶対に許されることではないことを改めて認識し、ドーピング防止活動の充実に取り組む[4]。

 

Ⅱ 今後の具体的な施策・取組

1.アスリートの強化活動の基盤の確立・強化

(1)戦略的な選手の発掘・育成・強化

 持続可能な国際競技力向上のためには、少子化等の大きな社会構造の変化も的確に捉えつつ、NFにおいて中長期の強化戦略プランを策定し、これを実践・更新しながら、次世代を担うアスリートの発掘・育成を進めるとともに、選手強化活動に総合的・計画的に取り組むことが不可欠である。リオ大会以降、NFが策定した強化戦略プランの実効化のため、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「JSC」という。)、JOC及び公益財団法人日本パラスポーツ協会(以下「JPSA」という。)、日本パラリンピック委員会(以下「JPC」という。)が協働して支援を行ってきたほか、メダル獲得可能性が高い競技を選定し、重点的な支援を実施してきたが、これら一連の取組が成果を上げ、東京大会以降の日本代表選手団の活躍にもつながっていることから、以下のとおりこれらの取組の継続的な実施及びさらなる充実を図る。

<1>強化戦略プランの実効化支援
〇 JSC、JOC及びJPCは、引き続き協働チームを設置し、協働コンサルテーション(以下「協働コンサル」という。)の実施等を通じて、PDCAサイクルの各
 段階でNFの中長期での強化戦略プランにおける目標達成のための課題の明確化や、課題解決のための情報提供等により同プランの実効化を支援しながら、
 競技横断的に知見を共有する。また、同プランは地域と一体となって取り組むアスリート発掘・育成等に関するものも含めて策定していく必要があること
 から、JSPOの意見も踏まえながら進める。
〇 NFの強化戦略プランの計画性・実行性(達成度等)については、協働チームが検証した上で、JSCに設置される外部有識者による評価委員会において改め
 て評価を行う。その評価結果は、引き続き、NFに対する競技力向上事業助成金の配分や、後述する重点支援競技の選定にも活用する。
〇 NFの中長期計画の全体像を踏まえて、前述の強化戦略プランに基づく取組を進める上で、各NFに加盟する地域の競技団体等にも長期戦略の全体像を示す
 よう促す。
〇 NFに設置されるハイパフォーマンスディレクター[5]、直近のオリ・パラ大会に向けた4年プランのみならず、その次の大会を見据えた8年プランについ
 ても戦略的に取り組めるよう、JOC、JPCに設置されるハイパフォーマンスマネージャー[6]やサービスマネージャー[7]はその取組を支援する。

<2>強化戦略プランに基づくアスリート育成パスウェイの構築
〇 長期的なアスリート育成パスウェイを可視化することは、発掘・育成期における競技への関わり方などに共通の認識を持つことや、アスリートが将来的に
 自立して競技に取り組むための素地づくりとして重要である。このことを踏まえ、JSCは、NFが競技別パスウェイモデルを策定するための支援を行う。
〇 JSCは、NFの強化戦略プランに基づく、発掘・育成・強化のためのアスリートパスウェイについて、各NFにおける課題解決に向けた実効化支援を行う。
〇 アスリート育成パスウェイの構築においてはNFと地域との連携強化が重要であることから、JSCは、NFが行う地域における育成環境の整備や、地方公共
 団体が行うパラアスリート発掘事業の立ち上げ等の支援に取り組む。
〇 NFは、部活動改革に向けた動きを好機として、地域における多様な活動に主体的に参画していくことにより、地域と一体となった発掘・育成・強化を進
 める。また、国は、今後の部活動改革の方向性を示すとともに、将来にわたって継続的にスポーツに親しむ機会を確保・充実するため、地域のスポーツ環
 境を整備する。
〇 JSCは、NFによるタレント発掘・育成に資するプラットフォームとして、各機関が有する体力測定等のデータを一元化し、NFの担当者が優れた選手を発
 掘できるシステムを構築する。
〇 パラ競技におけるアスリートの発掘・育成については、国、JSC及びJPSAがJOC及びJSPOと連携して実施する発掘・育成プログラムへの参加者の拡大に
 向けて、都道府県スポーツ・障害者スポーツ協会などの関係機関との連携を強化する。
〇 国は、JPSAやNFと連携し、パラ競技特有の考慮すべき事情やNFごとの強化の実態、少子化など社会の状況を踏まえた、関係機関との連携の在り方を含む
 発掘・育成方策の充実に向けた検討を行う。
〇 アスリートの成長やパフォーマンスに影響を与える要素は、体格や心理面をはじめ多岐にわたって複雑に絡み合っているとともに、一般的なピーク期だけ
 でなく、体力的には衰退していく時期も含めて、年齢・状況等に合わせた成長の仕方があることから、強化活動に関わる人々は、画一的なモデルに捉われ
 ず、個々のアスリートの状況等に応じ、アスリートが最高の状態で成長し、その才能を開花させられる環境を構築していくことが重要であることに留意す
 る[8]。

<3>メダル獲得最大化のための重点支援
〇 通常4年周期のオリ・パラ大会に向けて選手強化活動が行われる実態を踏まえ、前半2年を「全競技パフォーマンスの最大化」の考えの下、各NF選手強化
 活動を積極的に支援する『活躍基盤確立期』、後半2年を「メダル獲得の最大化」の考えの下、支援を柔軟かつ大胆に重点化する『ラストスパート期』と
 位置付ける。特に、ラストスパート期後半に当たる大会直前の1年については、金メダル獲得の可能性最大化に焦点を当てるなど、より一層の重点化を図
 る。
〇 ラストスパート期においては、メダル獲得の可能性が高い「重点支援競技」を選定し、競技力向上事業助成金の額を加算するとともに、スポーツ医・科
 学、情報等に基づく専門的かつ高度なアスリート支援の対象競技として重点的に支援を行う。

 

(2)コーチ等指導者やサポートスタッフの育成・充実

 国際競技力の向上には、優秀なコーチ等指導者やサポートスタッフの育成・配置が欠かせない。JOC、JPSAとJSPOとの連携によるコーチ等指導者の育成・質の向上を目指すとともに、ハイパフォーマンスディレクターやナショナルチームの強化責任者、現場指導者であるコーチ、サポートスタッフ等、それぞれが求められる役割を果たせるよう、以下のとおり、人材育成・配置を進める。
〇 「公認スポーツ指導者」制度を担うJSPOと、JOC・JPSA が連携し、<1>競技横断的に障害の有無を問わず備えるべき、アスリートにとって最適な指導を行 うためのリテラシーや、<2>競技によってアスリートの活躍年代やキャリアステージが異なることを踏まえて備えておくべきリテラシーがあることを念頭に置いたうえで、コーチ等指導者の育成・資質の向上がより効果的に行われるよう、取組の体系化を図る。
〇 国は、ハイパフォーマンスマネージャーが担う「国の競技力向上施策を統括する観点から競技横断的な支援を行う」という役割や、ハイパフォーマンスデ
 ィレクターが担う「NF全体の強化責任者として、中長期での強化戦略プランの策定から実行までの競技力向上に向けた総合的なマネジメントを行う」とい
 う役割の明確化及び共有を行う。
〇 ハイパフォーマンスマネージャーは、ハイパフォーマンスディレクターの設置効果の最大化に向けた資質向上に加え、ハイパフォーマンスディレクターが
 行うコーチ等の育成について、JSC、JOC及びJPCが連携して取り組む協働コンサル等を活用しモニタリングを行う。
〇 国は、近年の選手強化活動の高度化・専門化に対応した、ナショナルヘッドコーチ、ナショナルチームコーチ、ナショナルチームスタッフ等を含む専門人
 材の配置を支援する。
〇 あわせて、コーチやスポーツ医・科学、情報(データ収集・分析、心理、競技用具、パラ競技におけるクラス分け[9]を担うクラシファイア[10]等を
 含む)の専門的な知識・技能を生かし、競技固有のニーズに応じたナショナルチームのサポートを行うスタッフについても、海外からの招へいも含め配置
 支援を実施する。また、パラ競技については、競技特性等を十分に踏まえ、競技パートナー等、必要な人材の育成・配置を支援する。
〇 国は、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(以下「JADA」という。)等と連携し、アスリートと日々関わりを持つ中でアスリートに多大な影響を
 与え得るコーチや医療従事者に対し、ドーピング防止に関する最新情報や教育の機会を提供する。

 

(3)競技やオリ・パラの垣根を超えた取組の促進

 「改定の観点と概略」で述べたとおり、競技やオリ・パラの枠組みを超えた強化活動により、トレーニング方法の多様化や、新たな可能性の発見、知見の共有等に繋がることが期待できることから、以下の取組を進める。
〇 トレーニングやコーチング、組織的な活動等、あらゆる側面において、異なる競技間で交流することが、多様な視点をもたらし、技術や戦略の幅を広げ、
 また様々な知見を共有していくことに繋がることを踏まえ、国、JSC、JOC、JPSA、JSPO及び各NF においては、JOC-JPSA間やNF間を含む、競技やオ
 リ・パラの垣根を超えた組織連携及び強化活動を促進する。
〇 JSCは、クロストレーニングをはじめとする、競技やオリ・パラの垣根を超えた強化活動がもたらす影響や、より効果的な取組に関するエビデンスを抽出
 する。

2.アスリートへのスポーツ医・科学、情報等による支援の充実

(1)HPSC における大学や民間企業等とも連携したスポーツ医・科学、情報等の研究・支援の充実と人材育成

 我が国のスポーツ医・科学研究の中枢機関であるHPSCの機能強化を図ることはもとより、HPSCを核として我が国のスポーツ医・科学分野の研究・支援を推進し、NFにおける科学的根拠に基づく選手強化活動の充実を図ることは、国際競技力向上に不可欠である。また、各支援組織・活動拠点がそれぞれの観点から取り組むだけではなく、連携・融合しながら一体となって取り組んでいくことで、よりシームレスなアスリートサポートに繋がる。さらに、同じ競技でも、大会開催地、競技会場、開催時期等によって大きく環境・条件が異なる中で、アスリート自身が各環境・条件に適応できるよう自らのコンディショニングを整えていくこと、またそれを支える人々があらゆる状況に応じた適切なサポートを実施していくことが、パフォーマンスの最大化に繋がる。
 これらを踏まえ、以下の取組を進める。

<1>トータルコンディショニング[11]の確立と実践
〇 JSCは、HPSCにおけるアスリートのアセスメント及びモニタリングの際のデータ(体力測定、栄養評価、診療・メディカルチェック、映像分析等)の活
 用方法及びデータに応じた支援手法に係る研究を進めるとともに、研究成果に基づき、アスリートの個人特性や競技特性に応じた競技力向上(外傷・障害
 の予防や傷害からの早期復帰を含む)に向けた支援を実施する。
〇 JSCを中心に、HPSCやNFに所属するコーチや医師、アスレティックトレーナー、セラピスト、栄養士、心理専門家、科学者など様々な専門性を有するス
 タッフ間において、アスリート支援に関する共通理解を持つとともに、その共通理解のもとに、アスリートデータを共有し、課題に応じた分野融合型の連
 携によるアスリート支援体制を構築する。
〇 上述の取組を含め、トータルコンディショニングの実践に関わる人々は、アスリート自身が自立して考え、主体的にセルフコンディショニングを実践でき
 るようになることが重要であることに留意する。

<2>スポーツ医・科学研究の推進と人材育成
〇 国は、HPSCが選手強化現場のニーズを確認し、課題を整理したうえで、大学や民間企業等と連携して行う、医学・情報・工学・パラスポーツ分野等の先
 端的なスポーツ医・科学研究の実施に係る取組を推進する。
〇 HPSCは、上述の取組に加えて、大学及び民間企業等との連携協定等に基づく共同研究の実施など、我が国のスポーツ医・科学研究の推進に向けた取組を
 実施する。
〇 HPSCは、強化活動のみならずあらゆる人々の日常生活にも関わる、例えば熱中症や脳震盪などアスリートセーフティの観点から行う研究について、大学
 や医療現場を含む各分野の専門家等とも連携しながら、その成果を分かりやすく発信する。
〇 HPSCが、JISS(2001年)、NTCウエスト(2008年)、アスリートヴィレッジ(2011年)、NTCイースト(2019 年)と段階的に整備されてきたことを
 踏まえ、JSCにおいて、各々の役割分担を整理しつつ、今後のJISSの機能の在り方や、その機能を十分に果たすための施設改修について検討を行う。
〇 国は、HPSCが行う、パラ競技や冬季競技の用具など民間企業等による開発が十分に実施されない分野における競技用具等の機能向上に資する研究を支援
 する。
〇 国は、我が国のスポーツ医・科学研究を担う人材の育成を推進するため、HPSCと大学や地域のスポーツ医・科学センター等との連携による教育プログラ
 ムの開発や人事交流の拡充などを推進する。
〇 NFにおいて、各種データの収集・分析に基づく戦略的な選手強化などスポーツ医・科学、情報等を活用した選手強化活動が一層進められるよう、データ
 分析の専門人材等の配置を促進・支援するとともに、コーチ等指導者やサポートスタッフ等のスポーツ医・科学、情報等に関するリテラシーを高めるため
 に、HPSCによる研修会の実施などに取り組む。

<3>オリ・パラ大会時のアスリートサポートの深化
〇 オリ・パラ大会等で活躍が期待されるトップアスリートに対し、日常的な強化活動においてスポーツ医・科学、情報等による多面的で専門的かつ高度な支
 援を実施するとともに、大規模な国際競技大会において競技直前の準備に必要な支援を行うサポート拠点[12]をJSC、JOC及びJPCと連携して設置する。
〇 オリ・パラ大会時の現地支援においては、競技会場におけるNF、選手村におけるJOC及びJPC、村外サポート拠点におけるJSCのそれぞれの役割を明確に
 し、三者協働による「トライアングルサポート」を強化したうえで、JSCは、早期からの情報収集を進め、その環境等に応じて利便性にも配慮した医・科
 学、情報サポート拠点機能の強化に取り組む。

(2)国際情報収集の強化及び情報の効率的・効果的な活用

 各競技の国際的な動向や競技規則等の情報は、アスリートが日常的に行うトレーニングや、その積み重ねの先にある競技大会におけるパフォーマンスの発揮に大きな影響を与えるものであることから、関係機関が連携しながら国際情報を収集・分析し活用していくことが重要である。これを踏まえ、以下のとおり取組を進める。
〇 NFにおいて、ハイパフォーマンスディレクターを中心に、国際競技連盟、アジア競技連盟や諸外国のNFとのネットワークを活用しながら、主体的に競技
 要素(競技規則、競技会場、競技用備品等)の国際動向に関する情報収集活動を行う。
〇 JSCにおいては、JOC、JPCからの情報提供を得ながら、諸外国のメダル獲得戦略や選手強化方法等に関する情報収集を行い分析したうえで一元化し、こ
 れらの情報をJOC、JPC、NF及び地域の関係機関等に提供する。また、国際競技力向上のための国際スポーツイベント等における情報の収集と発信も併せ
 て行う。
〇 NFにおいては、これらの情報を基に、ハイパフォーマンスディレクターが中心となって、NFの強化戦略プランの策定・見直しなど選手強化・育成活動の
 充実に取り組む。
〇 パラアスリートの活躍には、障害に応じた適性判断と競技選択やクラス分けに関する適切な助言、より公平なクラス分けの国際基準作りへの積極的な参画
 が重要であることから、JPCクラス分け情報・研究拠点における調査研究や人材の育成・配置を支援するとともに、パラ競技のNFでの専門人材の確保を目
 指し、同拠点も生かしながら人材育成の取組を加速させる。

(3)強化活動を支えるツールとしてのAI等テクノロジーの活用

 近年急速に発達しているAIは、その活用により、トレーニングやコンディショニング、外傷・障害の予防の個別最適化や、公正な判定・審判の推進等に資する可能性を有している。他方で、強化活動におけるAI等テクノロジーの活用に当たっては、データの収集・活用時の倫理的課題や、扱う者が目的・用途に応じてどのようなデータを利用すべきか適切に判断する必要があるといった課題を整理していく必要がある。これらを踏まえ、以下の取組を進める。
〇 HPSCにおいて、データサイエンティストやデータエンジニア等とも連携しながら、AI等のテクノロジーの活用に向け、必要なインフラの構築や、データ
 の自動蓄積・分析に係る研究を進め、強化活動において安心してデータを収集・活用できる環境の整備及びデータ活用の精度・速度を向上させる取組を実
 施する。
〇 HPSC及びNFにおいては、HPSCにおける研究成果に基づき、AI等のテクノロジーを、目的・用途により利用すべきデータ等を適切に選択しながら、強化
 活動を支えるツールとして活用する。

3.アスリートが居住地域や活動拠点等にかかわらずハイパフォーマンスサポートを受けられる環境の実現

(1)地域における競技力向上を支える体制の整備

 持続可能な国際競技力向上を図るためには、地域と一体となってオールジャパンでアスリートの発掘・育成・強化に取り組むことが不可欠である。居住地域や競技環境に左右されることなく、全国のアスリートがスポーツ医・科学、情報等によるサポートを受けられる環境を整備するなど、競技団体、地方公共団体、都道府県スポーツ・障害者スポーツ協会、民間企業、地域のスポーツ医・科学センター、大学等が連携したアスリート育成のための仕組みづくりに取り組む。
〇 国は、地域のスポーツ医・科学センターや大学、地方公共団体、民間企業等によるコンソーシアム形成を支援し、HPSCとの連携等により、スポーツ医・
 科学支援対象の拡大や支援内容の質の向上等を行う取組を推進する。
〇 JSCは、アスリートへのスポーツ医・科学、情報等のサポートの機能強化を図るため、体力測定や栄養、映像技術等に関するHPSCの知見のパッケージ化
 を進め、地域のスポーツ医・科学センターや大学、NTC競技別強化拠点等への展開を強化するとともに、これらの知見を活用しながら各地域においてアス
 リート支援を担う人材の育成に取り組む。
〇 JSCは、パラアスリートのコンディショニング等に係るHPSCの支援機能の向上を図るとともに、大学や地域のスポーツ医・科学センター等と連携した、
 地域におけるパラアスリート支援機能の向上に取り組む。
〇 国は、NFが地域と一体となった発掘・育成・強化を進めるに当たっても、NTC競技別強化拠点が効果的に活用されるよう、NF、施設管理者への周知等に
 取り組む。

(2)NTC競技別強化拠点の機能強化

 NTC競技別強化拠点は、NTC中核拠点と同様に、トップアスリートの強化活動の一翼を担う存在である。また、強化活動拠点の環境を整備していくことは、現在のトップアスリートに資するだけではなく、次世代のアスリートの飛躍にも繋がる。NTC競技別強化拠点の質の向上を通じ、アスリートがどこを拠点としていてもスポーツ医・科学、情報等によるサポートを受けられる環境を実現すべく、以下の取組を行う。
〇 国は、NTC競技別強化拠点で活動するトップアスリート等へのスポーツ医・科学、情報等によるサポート体制等の整備充実を図るため、機能強化ディレク
 ターの効果的な配置や、JSCが開発したHPSCパッケージの拠点での活用の推進等を通じて、HPSC、大学、医療機関及び地域のスポーツ医・科学センター
 等との連携を強化する。
〇 国は、ロス大会以降に実施予定の競技・種目も含め、NTC競技別強化拠点を指定し、トレーニング環境の確保などナショナルトレーニングセンターとして
 の環境整備を行う。
〇 NFは、NTC競技別強化拠点において、強化戦略プランに基づく強化活動を効果的に実施できるよう、施設管理者と連携しながら、拠点機能の整備に主体
 的に取り組む。

4.アスリートがライフステージや外的要因に左右されず競技活動に専念できる環境の構築

(1)女性アスリートが健康に競技を継続するための環境整備

 持続可能な国際競技力の向上に欠かせない女性アスリートの活躍を実現するためには、トップアスリートはもとより、ジュニアやユース世代、コーチ等指導者、保護者等も含め、女性アスリートがライフステージに合わせて健康に競技を継続していくための環境整備が必要であることから、以下の取組を進める。
〇 JSCは、女性アスリートが居住地域や活動拠点にかかわらず健康に競技を継続するため、HPSCや大学における女性アスリート支援の知見や情報を集約し
 たオンライン・プラットフォームの充実を図るとともに、アスリートやコーチ等指導者、保護者を含め、全ての関係者が必要な情報にアクセスできるよ
 う、オンライン・プラットフォームの活用促進に向けた取組を行う。
〇 JSCは、JOC、JPC、NFとも連携し、HPSCが有する、ライフステージ毎に生じる頻度が高い女性アスリートの医・科学的な問題に対する知見を、アスリ
 ートやコーチ等指導者、保護者等が日常的なトレーニング等の強化活動現場において課題解決に活用できるよう、カンファレンスの開催や講習会実施を通
 じて提供する。
〇 JSCは、女性アスリート等が、ライフイベントに左右されず健康に競技・強化活動を継続できるよう、妊娠期・産後のトレーニングサポートや栄養・心理
 等の医・科学サポート、託児支援等の育児期の競技継続支援を行うとともに、出産後の競技継続に有益な知見の展開や、その模範となる事例の発信に取り
 組む。
〇 JSCは、NFにおける女性アスリート支援体制の構築を支援するとともに、各年代における女性アスリート特有の健康課題[13]に対して、居住地域等にかか
 わらず全てのアスリートやコーチ等指導者の理解促進を図るため、HPSCを基幹拠点としつつ、大学や地域のスポーツ医・科学センター等と連携し、地域
 における女性アスリート支援機能の向上に取り組む。

(2)誹謗中傷等からアスリートを守る体制の構築等を通じたアスリートのウェルビーイングの向上

 近年、SNS等の普及により、世界を舞台に日本を代表して戦うトップアスリートが、SNS上の誹謗中傷の被害に遭いやすくなっている。パリ大会においても、オリンピック期間中に少なくとも10,200件の誹謗中傷投稿が確認されるなど、誹謗中傷等対策は日本のみならず世界中で喫緊の課題となっている。全てのアスリートが心身ともに健康な状態で競技に取り組み、大舞台で最大のパフォーマンスを発揮できるよう、こうしたSNS上の誹謗中傷等からアスリートを守るための体制を構築するとともに、メンタルトレーニングを含む心理サポート[14]の充実を図り、アスリート・ウェルビーイング(アスリートが身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)の向上に向けた取組を行う必要がある。あわせてアスリートを支えるコーチ等指導者やサポートスタッフ等のメンタルヘルスも重要である。
 こうした認識に基づき、以下の取組を実施する。
〇 JOC及びJPSAは、SNS上の誹謗中傷等からアスリートを守るべく、協働して、啓発活動や、個別の事案に対するアスリートへの伴走支援を行うととも
 に、JSCとも連携し、セーフガーディングオフィサーやウェルフェアオフィサー[15]等の人材の育成に取り組む。
〇 取組に当たっては、アスリート自身が、社会に影響を与える存在であること、またSNSにはリスクとベネフィットの両面があることを理解し、適切にSNS
 を活用できるよう、アスリートに対する研修・啓発も併せて行う。
〇 NFの選手強化活動においてアスリート等に対する心理サポートの充実が図られるよう、HPSCにおいてNFのニーズに応じた個別相談や講習会等を実施す
 るとともに、アスリート等への心理サポートの専門性を有するワールドクラスの人材の育成及びNFへの配置支援を行う。
〇 アスリート等への心理サポートが科学的根拠に基づく有効な方法で実施されるよう、HPSCにおいて、実践の基礎となる研究を継続的に実施し、アスリー
 ト等の心理サポートに従事する資格保有者等に対して最新の知見を広く発信する。
〇 国内外の遠征先や各地域においても心理サポートが受けられる環境を構築するため、HPSCによるオンラインでの心理サポートを拡充するとともに、地域
 のスポーツ医・科学センターや大学等に対してHPSCにおける心理サポートの知見をパッケージ化して展開する。

(3)NFにおけるガバナンスの確保及び組織基盤の強化

 NFは、アスリートの発掘・育成・強化、競技普及など多くの役割を担っており、国際競技力の向上、さらにはスポーツの振興を図る基盤である。NFにおいてガバナンスを確保するとともに、自己収入の確保に努め、組織基盤の強化を図り、自立してその役割を十分に果たせるよう、以下の取組を行う。
〇 NFは、アスリートが安心して競技に専念できる環境を整えられるよう、国が策定したスポーツ団体ガバナンスコードに基づき、ガバナンスの確保に向け
 た取組を進める。加えて、JOC、JPSA、JSPOは、適合性審査の結果も踏まえ、ガバナンス・コンプライアンスに関する研修等を実施するなど、国やJSCと
 連携しながら、NFの取組が効率的・効果的に進むよう支援するとともに、NFへの指導・助言を行う。
〇 アスリート自身がドーピングや八百長行為、違法賭博などの違法行為や不正行為に関わらないことが重要であることに鑑み、アスリートがそのような脅威
 にさらされたり、知らないうちに巻き込まれるといったことのないよう、関係機関・団体において、安全・安心な競技環境の確保に向け、競技の当事者で
 あるアスリートへの教育を含め、多面的に取り組む。
〇 特に、ドーピングについては、健康被害をもたらすだけではなく、自己を否定する行為であり、スポーツの根源的な価値を毀損するものであることから、
 国は、JADAやJOC、JPSA、JSPO等と協働した国内のドーピング防止教育体制を強化するとともに、ジュニアやユース世代を含むアスリートとしての成長
 の各段階に即し、各NFにおける競技特性やドーピングリスクを踏まえたドーピング防止教育の推進を支援する。
〇 国は、各NFの実情に配慮しつつ、組織の持続的な成長・拡大に向けた改革を促進するため、競技普及による会員登録者数の増加に資する取組や、先進的
 な技術の活用等による競技の多様な価値創出に向けた取組等の実施を支援するとともに、こうした取組の推進に向けて行う外部人材の活用や競技団体間の
 連携・統合等をはじめとした、NFの組織基盤の強化に向けた取組を支援する。
〇 国は、オリ競技とパラ競技の団体の組織基盤強化の観点から、共同での競技大会開催など、民間資金獲得や競技普及等における相乗効果を図る取組を促進
 する。

Ⅲ 成果の検証に基づく取組の見直し

 本プランに掲げる今後の取組については、引き続き、オリ・パラ大会等における競技成績などを踏まえて、その成果を検証し、随時見直しを図ることとする。
 

注釈


[1]「JOC Vision 2064」より引用(https://www.joc.or.jp/about/vision2064/)。

[2] スポーツ庁と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、相互の理念と研究領域を生かし、人類の活動領域拡大に伴う環境適応能力の開拓や地上における人類の心身能力の開拓などの様々な知見を相互活用するとともに、社会・国民に新たな価値を提供すること等を目的として、令和7年2月19日に連携協定を締結した。

[3] 東京都北区西が丘にある国立スポーツ科学センター(JISS)とナショナルトレーニングセンター(NTC)中核拠点の機能を一体的に捉えた、JSCが運営する我が国の国際競技力向上の中核拠点。

[4] 例えば、スポーツ庁と日本製薬団体連合会は、ハイパフォーマンスの成果をライフパフォーマンスに還元する取組の一環で、アンチ・ドーピングの知見等を活用した教育・啓発活動を協働で推進することを目的として、令和6年7月9日に共同宣言に調印した(https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop05/jsa_00071.html)。

[5] 各NFに1名ずつ配置されるNF全体の強化責任者(「別紙1」参照)。

[6] JOC、JPC に各1名配置される、各NFが行う選手強化事業の効果的推進を図り、ハイパフォーマンスディレクター等と情報共有や相互連携を行う、我が国全体の国際競技力向上に係る責任者(「別紙1」参照)。

[7] JOC、JPCに設置される、ハイパフォーマンスマネージャーの補佐を行いながら、JOC、JPCが実施する各プログラムを統括する責任者(「別紙1」参照)。

[8] 例えば、15世紀初頭頃に世阿弥が記した能の理論書である「風姿花伝」の第一章に当たる「年来稽古条々」には、年齢に応じた能の稽古の仕方や、周囲がどのように能をする者に接するべきかといった内容が記されており、現代のスポーツの強化活動にも通じる考え方が示されている(参考文献:小西甚一編訳「世阿弥能楽論集」(たちばな出版, 2004)p.30-38)。

[9] 様々な障害のあるアスリートができるだけ公平な条件の下で競技ができるよう、障害の種類・程度等によって競技のためのクラスを割り当てること。

[10] クラス分けに関して専門的知識を持ち、その判定等を行う者。

[11] アスリートの効果的なコンディショニング(ハイパフォーマンス発揮に必要な全ての要因を、ある目的に向けて望ましい状態に整えること)のために、各エキスパートが協力・協調して連携を組み包括的な活動を行うこと。

[12] オリ・パラ大会などの大規模な国際競技大会において、アスリート等が競技へ向けた最終準備を行うため、「選手村」付近の施設を活用し、医・科学、情報等に基づくコンディショニングやトレーニングなどのサポート機能を提供する施設。

[13] 代表的なものとして、激しいトレーニングの影響による、利用可能エネルギー不足、無月経、骨粗しょう症が女性アスリートの三主徴と呼ばれている。

[14]心理サポートには、カウンセリング、メンタルトレーニング、コンサルティング、心理療法、個別サポート、集団サポート、オンラインサポート、講習会を含む。

[15]セーフガーディングオフィサーは、スポーツ・インテグリティ(スポーツが様々な脅威により欠けるところなく、価値ある高潔な状態)を脅かす事柄からアスリートを守る役割を担い、ウェルフェアオフィサーと協力しながらその職務を行う。また、ウェルフェアオフィサーは、セーフガーディング及びメンタルヘルスに関する中心的な窓口の役割を担う。東京大会を契機にアスリートのメンタルヘルスへの注目が高まっており、北京大会以降、国際オリンピック委員会は、同委員会主催大会において、各国・地域のオリンピック委員会に対し、ウェルフェアオフィサーの設置を推奨している。

 

以上

<参考>

お問合せ先

スポーツ庁 競技スポーツ課

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