平成19年1月30日
中央教育審議会
平成17年6月,中央教育審議会は,文部科学大臣から「青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について」の諮問を受けた。諮問では,青少年の意欲を高めるために重視すべき視点についてと,青少年の意欲を高めるための方策についての二つの事項を中心に検討を行うことが求められた。
次代を担う青少年(注1)を自立した存在として育成するためには,青少年期を大人への準備期間として,人格の基礎を築き将来の夢や希望を抱いて自己の可能性を伸展させる時期とするとともに,自らの人生をどう設計していくかについて考える時期とする必要がある。自己や社会の様々な物事に興味・関心を抱き,知識・技能の獲得や課題の克服,目標の達成等へ向かって意欲を持つことが,成長のための行動の原動力となるのであり,青少年期には特に,このような意欲を持って生き生きと充実した生活を送ることが重要である。
また,次代を担う青少年が社会の形成に参画する意欲を持つことは,我が国の未来へ希望を託すために重要である。このため,社会を構成する我々大人には,青少年に対して特別な配慮と支援を行い,その健全な成長を期する責務がある。
このような認識の下に,本審議会では,スポーツ・青少年分科会において,青少年の意欲を高めるために大人の責任としてなすべきことについて審議を重ねてきた。
審議に当たっては,まず,学校教育における学習意欲向上方策の検討も参考としつつ,青少年をめぐる現状とその背景を検証するため,青少年の生活実態や青少年を取り巻く現状についてこれまでの研究成果等を整理するとともに,医学,心理学,社会学等の学問分野の最近の研究成果について有識者から意見を聴取した。これらを踏まえ,青少年の意欲を高めるために重視すべき視点と方策について,青少年の生活習慣の確立や体力の向上,多様な体験活動(注2)の推進や有害環境対策といった分野を中心に検討を重ねてきた。平成18年9月には,それまでの審議内容を「中間まとめ」として取りまとめるとともに,それをパブリックコメントに付し,各方面の御意見を頂いた。それらを基に,さらに議論を深め答申を取りまとめた。
この答申は,全体を3章構成とした。第1章においては,青少年の自立への意欲を高めるに当たり,大人の責任としてそのための支援を行うべきであるという本答申の基本的立場を明らかにした。第2章においては,青少年の意欲をめぐる現状と課題について,理念的な類型化とデータ及び研究成果に基づく整理を行った。これを踏まえて第3章においては,青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促すために重視すべき視点と具体的方策について,五つの提言を行った。
この答申を機に,青少年が意欲を持って充実した生活を送るための取組の重要性について,教育関係者のみならず我々大人一人ひとりの認識が深まり,それぞれの立場で何ができるかを真剣に考え,行動に移すきっかけとなることを期待している。