ここからサイトの主なメニューです

次代を担う自立した青少年の育成に向けて−青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す方策について−
(平成19年1月中央教育審議会答申)(概要)

第1章 今なぜ,青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促す必要があるのか

  •  青少年には,社会を構成する一員として一定の役割を担おうという「自立への意欲」持ち,社会参画を果たすよう成長することが期待される。
     我が国社会の活性化と持続的発展のためにも,大人の責任として,社会全体ですべての青少年が「自立への意欲」を持てるよう促すとともに,成長過程全体にわたって心の体の調和の取れた成長を促すべき。

第2章 青少年の意欲をめぐる現状と課題

  •  「意欲に欠ける」と見られる青少年の状態やその原因は具体には様々である。個々の青少年の状態を的確に把握し,各状態に対応した手当てが必要。
    • 1基礎的な体力の低下や不足が見られる場合には,正しい生活習慣,運動習慣の下での充足感のある生活を送らせることが必要。
    • 2青少年の価値観等と社会的期待との相違が見られる場合には,実社会とのかかわりを通じて社会のルールやマナーを体得させることが必要。
    • 3意欲から行動に移る段階でつまずいている場合には,体験を通じて目的達成に必要な手段方法を学習させることが必要。特に青少年同士の切磋琢磨(せっさたくま)や試行錯誤を通じて,身近なモデルから学習させることが効果的。
  •  青少年の生活実態等について,各種データ及び研究成果等から以下のような課題が見られる。

1基本的生活習慣の乱れ

 生活習慣が乱れると不定愁訴を感じ集中力が低下する。規則正しい生活習慣は自然には身に付かないため,親子関係が密接な幼児期に家庭において身に付けさせる必要がある。

2希薄な対人関係(子どもへの保護者,特に父親の関与の度合いの低さ,地域の大人の青少年へのかかわりの少なさ,仲間と交流する体験の少なさ)

 子どもの発達の基盤として乳幼児期での親子間の愛着形成が重要である。
 良好な親子関係を築くとともに,地域の大人の働きかけや異年齢集団等での体験により,自己を客観視する力や自立性・主体性を育成する必要がある。

3直接体験の少なさ(スポーツ等の体を動かす体験の少なさ,自然体験の少なさ)

 成長期に十分に体を動かさないと心身の発達全体に影響を及ぼすため,スポーツ等を青少年の生活に意識的に取り込む必要がある。また,集団での自然体験は社会性の育成効果が高いことから,自然体験活動の機会を増やす必要がある。

4情報メディアの急速な普及に伴う問題

 情報メディアの青少年への影響について,今後より一層の研究の進展が期待される。情報メディアを悪用した犯罪等から青少年を守るとともに,情報メディアを活用して青少年の社会性を高める等の方策が必要である。

第3章 青少年の意欲を高め,心と体の相伴った成長を促すために−重視すべき視点と方策−

提言1. 家庭で青少年の自立への意欲の基盤を培おう

視点:
  • ○家庭の役割を強く自覚し,家族全員で子どもに積極的にかかわる
  • ○学校や企業,地域社会が家庭での自立への基盤づくりを支援する
方策:
  • ◎ 求められる基本的生活習慣や基礎的な体力の重要性について,実践的な調査研究等を通じて啓発する
     基本的生活習慣が健康や意欲に及ぼす影響や体力向上のための効果的な家庭での取り組み方等について,実践的に研究してその結果を広く提供し,自治体・事業主及び地域の子育て支援をより一層促す。
  • ◎ 家庭での基盤づくりを進める国民運動を展開し,地域での取組を支援する
     望ましい生活習慣の確立や子どもの体力向上,子どもの家事分担に向けた啓発活動をさらに国民運動として推進し,社会的機運を醸成するとともに,企業等に対して雇用者の「仕事と生活の調和(ワークライフバランス)」の実現を図るよう強く促す。これまでの学校・地域や企業等の好事例を全国へ普及する。

提言2.すべての青少年の生活に体験活動を根付かせ,体験を通じた試行錯誤や切磋琢磨(せっさたくま)を見守り支えよう

視点:
  • ○多様な体験活動の機会を提供し,体験活動をすべての青少年の生活に根付かせる
  • ○体験を通じた青少年の試行錯誤や切磋琢磨(せっさたくま)を大人が見守り支援する
方策:
  • ◎ 青少年の生活圏内に多様な体験を提供する場や機会をつくる
     国や自治体等において,青少年の生活圏内に多様な体験活動を提供する活動拠点づくり(「放課後子どもプラン」「総合型地域スポーツクラブ」「伝統文化子ども教室」等)を進めるとともに,学校において,青少年の生活に体験を通じた学習を根付かせる。
     各地域の青少年団体の組織基盤の充実を図るため,「子どもゆめ基金」等の助成事業の充実や,税制上の優遇措置の活用促進を進める。
  • ◎ 青少年教育施設等を中核として,教育効果の高い体験活動を計画的に提供する
     独立行政法人国立青少年教育振興機構が我が国の青少年教育の中核機関としての機能を果たし,公立・民間施設等と連携協力し,青少年の発達段階に応じた教育効果の高い体験活動プログラム(幼児;五感を存分に使い自然とふれあう体験活動,小中学生;主体性を育む長期サマーキャンプ,高校生・大学生等;自然体験活動のリーダー養成等)の開発を進め,その普及を図る。

提言3.青少年が社会との関係の中で自己実現を図れるよう,地域の大人が導こう

視点:
  • ○社会との関係への興味・関心を育て,社会との関係の中での自己実現を導く
  • ○地域の大人が青少年の育成に積極的にかかわっていくという価値観を醸成する
方策:
  • ◎ 社会との関係の中で自己実現を図った大人の生き方から学ぶ機会を提供する
     学校における職業体験活動の充実を図るとともに,国や自治体,学校等において,青少年に多様な大人から社会のルールやマナー,対人関係能力等を学ぶ機会を提供し,特に年齢の近い先輩層や地域の大人たちとの交流を深める機会の提供に努める。企業等にも青少年と社会を結ぶための積極的な取組を求める。
  • ◎ 青少年の努力や社会貢献を積極的に評価する
     社会全体で青少年の努力や社会貢献を積極的に評価する機運の醸成を図るため,自治体や団体の取組を広く紹介し,これらの普及を促す。
  • ◎ 地域の大人が地域の青少年の成長に継続してかかわることのできる場や機会を広げ,その連携を進める
     青少年が大学生や高齢者等の多様な年齢層と交流できる活動に対して,国や自治体等がより積極的に支援する。総合型地域スポーツクラブと学校が連携を図るとともに,自然体験活動を提供する各種団体等と学校,行政機関の地域ネットワークを構築する。

提言4.青少年一人ひとりに寄り添い,その成長を支援しよう

視点:
  • ○ガイダンスの発想に立ち,青少年一人ひとりの成長を支援する
方策:
  • ◎ ガイダンスの発想に立って青少年を支援できるよう,指導者の意識の涵養(かんよう)と指導力育成に努める
     青少年一人ひとりの課題や状態に応じてその成長を支援するというガイダンスの発想に立つ重要性を青少年教育指導者に涵養(かんよう)するとともに,ガイダンスの発想に立った指導者をユースサポーター(仮称)として育成するため,指導能力養成カリキュラムの開発等を行う。
  • ◎ 学校における教育相談体制の整備や関係機関が連携したサポート体制の充実などにより,一人ひとりの成長をきめ細やかに支援する
     各学校や地域において,児童生徒の問題行動等に対して関係機関が相互に連携した一体的な対応(行動連携)を効果的に展開できるよう,教職員・保護者・地域住民・教育委員会や警察等関係機関が連携したネットワーク,サポートチーム等の形成や,NPO等民間団体と連携した相談体制の充実を図る。

提言5. 情報メディアの急速な普及に伴う問題へ大人の責任として対応しよう

視点:
  • ○情報メディアを通じて社会のルールやマナー等を学び社会参画を図れるようにする
  • ○青少年への悪影響を予防する観点から情報メディア環境を見直す
方策:
  • ◎ 青少年の健全育成に資するコンテンツづくりを促進する
     青少年に有害なコンテンツの排除を進めるため,各情報メディア業界における自主規制の実態の情報公開を進めるとともに,PTA等民間団体によるコンテンツの質の第三者評価を促進する。
     青少年の健全育成に資するコンテンツづくりや,コンテンツ制作等を通じた青少年の社会参画の機会の提供を促すとともに,青少年や保護者にこれらの活用を促す。
  • ◎ コンテンツの作成・発信者と受信者が共により良い情報メディア環境づくりに貢献できる仕組みを整える
     放送番組について,BPO(放送倫理・番組向上機構)の意見受付制度の周知と活用を図る。
     放送以外の各業界において,BPOのような第三者的機関の設置等により,コンテンツの作成・発信者側と受信者側が共によりよいコンテンツづくりに貢献できる体制を整備する。
     情報メディア業界と青少年育成団体,行政機関等のネットワークを構築し,コンテンツに係る規制やその運用の在り方の検討,コンテンツ作成・発信に係る共通ルールづくり,作成・発信者側と受信者側が協同した啓発活動等を実施する。
  • ◎ 携帯電話等の情報メディアを悪用した犯罪等に巻き込まれないよう青少年一人ひとりに届くメッセージを送る
     キャンペーン活動を早急に実施し,情報メディアを悪用した犯罪等に巻き込まれないための対策,情報メディアを安心して安全に利用するための留意点,トラブルに巻き込まれた場合の相談機関等に関する情報等を青少年一人ひとりに確実に届く方法で提供する。
     特に,携帯電話を悪用した犯罪等から青少年を守るため,携帯電話へのフィルタリング機能の標準装備や学校における実践的な指導の充実,携帯電話の各学校での取扱いルールの策定を進めるとともに,保護者の青少年を保護・監督する力量を培うための学習機会の充実を図る。
前のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ