利益相反ワーキング・グループ報告書

平成14年11月1日
科学技術・学術審議会・技術・研究基盤部会・産学官連携推進委員会・利益相反ワーキング・グループ

参考資料

はじめに

  知の時代に入り、我が国の知の基盤を支える大学の役割はますます重要となっている。産学官連携の一層の推進だけでなく、大学の多様な知的活動を通じた社会貢献への期待、さらには大学の在り方そのものに対する社会の関心も、これまでになく高まっている。
  一方、産学官連携が進み、技術移転の推進や兼業の規制緩和等により民間企業と大学・教職員との関係が深化してきたことにより[1]、大学の教育・研究への影響に配慮する必要性も一層高まりつつある。
  特に、国立大学については平成16年度に法人化を控えている。法人化により国立大学に関する予算・組織・人事等に関する規制は大幅に縮小し、国立大学法人はこれまで以上に弾力的に産学官連携活動を推進することが可能になる。それとともに、各大学は独自の教育・研究の基本理念や目標を自ら明確にし、組織として産学官連携や技術移転にどのように取り組んでいくかを明らかにすることが求められる。
  本報告書は、今後、我が国の大学が産学官連携や技術移転を進めていく上で避けることのできない、利益相反(責任ある地位にいる者の個人的な利益と当該責任との間に生じる衝突)と呼ばれる課題への対応について、基本的な考え方を整理し、各大学が検討する際の参考となる資料を提示するものとして作成した。
  利益相反への対応としては、金銭的情報の開示により学内での透明性を高めると同時に、各大学の基本理念に照らし、インテグリティ保持の観点から特に必要性が高い場合には何らかの対処を行うことが必要と考えられる。ただし、具体的な利益相反にいかに対処するかという点に関しては、大学ごとのポリシーに依存するものであり、また、事例に応じて様々な選択肢が可能である。本ワーキング・グループでも一つの事象に対し様々な評価・見解が示された。
  従って、本報告書では、利益相反事例に対する対処のルール化ではなく、学内においていかなるマネジメント・システムを設けるべきか、という点に議論の焦点を絞り、一つのモデルとなるべきマネジメント・システムの在り方を提案することとした。各大学においては、まずそれぞれの教育・研究に対する基本理念と産学官連携の方針を明確にした上で、それらの方針のもとに、独自の利益相反ポリシーとマネジメント・システムを構築することを強く期待するものである。
  なお、本ワーキング・グループにおける検討の最も重要な視点は、産学官連携活動を進めている教職員個人を支え、意欲的な教職員の能力が最大限に発揮できるような環境づくりという点であった。各大学においては、本報告書の内容を参考にしつつ、新たな時代における大学と社会との関係の在り方について議論を深め、利益相反という課題にも適切に対処することにより、大学としての使命を全うしながら「科学技術創造立国」の実現に貢献するための一助としていただきたい。

1.利益相反とは何か

(1)利益相反とは何か(概念整理)

1.産学官連携の推進と利益相反

  我が国の大学は、従来、教育・研究を伝統的使命とし、優れた人材の養成と学術研究の発展への貢献を通じ、我が国のみならず人類全体の社会・経済・文化等の充実発展に大きく貢献してきた。今後の社会・経済の更なる高度化・複雑化や国際社会の進展、生涯学習需要の高まり等に伴い、大学は、教育・研究の質の高度化への要請や社会の需要の一層の多様化等に適切に応えるとともに、長期的観点に立った教育・研究の展開によって社会をリードしていくという重要な役割を担っている。
  教育・研究活動を通じた長期的観点からの社会貢献に加え、新たな「知」の時代を迎えた今日、大学には自らの研究成果を社会との日常的連携を通じて活用することにより積極的に社会に貢献することが一層強く求められている。特に、新技術・新産業の創出による我が国経済の活性化が重要な課題となっている現在、産学官連携を通じた大学の研究成果の社会還元への期待はこれまでになく高まっている。
  産学官連携は教育・研究の成果を社会貢献に活かすための一形態であり、大学が産学官連携を通じて研究成果の社会還元を進めることは、大学がその存在理由を明らかにし、大学に対する国民の理解と支援を得るという観点からも重要である。
  しかし、真理の探究を目的とし、人類共有の財産とするための研究成果の公表を原則とする大学と、利益追求を目的とし、営業上の秘密を競争の源泉の一つとする企業とは、もとよりその基本的な性格や役割を異にしている。産学官連携を進める上では、大学や教職員が特定の企業等から正当な利益を得る、又は特定の企業等に対し必要な範囲での責務を負うことは当然に想定され、また、妥当なことである一方で、このような両者の性格の相違から、教職員が企業等との関係で有する利益や責務が大学における責任と衝突する状況も生じうる。このような状況がいわゆる「利益相反(conflict of interest)」といわれるものである。
  例えば、特許の実施契約や教員による技術指導は産学官連携の基本的な活動形態の一つであり、実施料収入や兼業報酬といった形で教員個人が金銭的利益を得るのが通常であるが、たとえ、当該教員が正当に大学の職務を遂行していたとしても、特定の企業から金銭的利益を得ているために、社会から疑念を抱かれる可能性も否定できない。「研究テーマが当該企業の利益のために設定される等学術研究上の有意性に欠けるのではないか」「当該企業に有利なデータ収集等がなされる等研究の客観性に欠けるのではないか」「研究結果が正当に社会に公表されずに学術研究の進展を妨げているのではないか」等である。また、その施設設備や研究経費等、活動の基底部分を公的資金によって支えられている教員が、社会的利益を圧迫してまで多額の個人的利益を得ることについて、必ずしも全ての国民の理解を容易に得られる訳ではない。産学官連携の成功により教員が得る利益が多額になればなるほど、課題は一層深刻に感じられるであろう。学生が参加している場合には、教育上の責任について問われる可能性もある(狭義の利益相反の問題)。
  また、教員が企業の役員や技術指導等の兼業活動を行っている場合には、このような企業の業務に関する責任を優先したために、休講が多い、あるいは研究室に不在がちで学生への対応が不十分、といった問題が生じる可能性もある。教員が兼業として行う企業役員の職務やコンサルティング活動等は大学の職務外の行為(いわば「副業」)であり、このような兼業活動を理由として大学の職務に支障が生じることは回避しなければならない(責務相反の問題)。
  利益相反とは、このように教職員や大学の産学官連携活動に伴い日常的に生ずる状況のことであり、適切な対応を怠れば、場合によっては大学のインテグリティ(integrity)[2]を害し、ひいては大学の教育研究活動を阻害するおそれがある。大学が自らのインテグリティを保持しながら産学官連携を通じて社会貢献という使命をも果たしていくためには、利益相反に関する適切な対応が不可欠である。

2.米国における議論の背景と概念整理

  利益相反の概念は、米国における産学官連携の進展の過程で発展してきたものである。
  米国では古くから技術移転が行われていたが、特に1980年のバイ・ドール法[3]制定以来、産学官連携推進のための施策が展開され、大学は教育・研究という伝統的な使命に加え、技術移転や新産業創出といった形での新たな社会貢献を求められるようになった。その結果、大学の研究成果に基づいた新技術・新産業の創出が活発になり、90年代における米国のハイテク産業の興隆につながったと言われる。
  しかし同時に、大学と産業界の関係が密接になり、教員が企業からコンサルタント報酬や未公開株という形で個人的に金銭的利益を得たり、兼業等の外部活動において企業に何らかの責任を負うといった場面も増加した。このような大学を取り巻く状況の変化に関しては、経済発展への大学の貢献が評価される一方で、「本来の教育・研究に負(マイナス)の影響を与えるのではないか」という懸念が生じるようになった。
  このような中で、大学本来の使命に対する社会の信頼を維持しつつ、社会貢献という大学の新たな役割を果たしていくための必要条件として、「利益相反」への対応の重要性が指摘されるようになり、大学関係者の間で今日までさまざまな議論がなされてきている((2)2参照)。
  なお「利益相反」とは、一般には「責任ある地位に就いている者の個人的な利益と当該責任との間に生じる衝突」[4](Webster’s Third New International Dictionary of the English Language Unabridged(1986)) を言うものと考えられているが、産学官連携に係る利益相反の具体的な内容・範囲については各大学の利益相反ポリシー等でそれぞれ異なった記述がされており、明確な統一的定義は見出し難い状況にある。
  例えば、スタンフォード大学のResearch Policy Handbookにおいては、利益相反について「その人の個人的な利益と大学における職業上の義務が競合し、客観的にみて教員が個人的な利益を優先させて活動したと思われるような時に発生する」と解説されている。
  また、大学教職員が兼業する場合の兼業と本務との時間配分等の問題については、2つの「責務」が相反する問題、すなわち責務相反(conflict of commitment)と呼ばれ、利益相反と区別して論じられることが多い。
  さらに、これまで米国で利益相反として論じられてきたのは、主に「教職員個人」の利益にかかわるものであるが、技術移転の活発化に伴い「大学組織」が実施料収入や株式保有に伴う利益を得る場合も増加しつつある。このような場合の利益相反は「大学(組織)としての利益相反」として、個人としての利益相反とは区別して議論される。

3.本報告書における概念整理

  上述のように「利益相反」という用語[5]には複数の意味内容が含まれているが、本報告書では、以下のように概念整理することとする。

本報告書における概念整理

  • ア)広義の利益相反:
      狭義の利益相反(イ)と責務相反(ウ)の双方を含む概念。
  • イ) 狭義の利益相反:
      教職員又は大学が産学官連携活動に伴って得る利益(実施料収入、兼業報酬、未公開株式等)と、教育・研究という大学における責任が衝突・相反している状況。
  • ウ) 責務相反:
      教職員が主に兼業活動により企業等に職務遂行責任を負っていて、大学における職務遂行の責任と企業等に対する職務遂行責任が両立しえない状態。
  • エ) 個人としての利益相反:
      狭義の利益相反のうち、教職員個人が得る利益と教職員個人の大学における責任との相反
  • オ) 大学(組織)としての利益相反:
      狭義の利益相反のうち、大学組織が得る利益と大学組織の社会的責任との相反

※  狭義の利益相反と責務相反の異同
  どちらも大学における責任の遂行が問題となる点では同じであるが、その要因が「企業等から得る利益」である場合には狭義の利益相反、「企業等に対して負う責任(責務)」である場合には責務相反、と区別することができる。

  利益相反の概念それ自体は、「大学における責任が果たされていないこと」をさすのではない。その状態自体に問題があるというよりも、むしろ、そのような状態に大学が無関心であることによって、社会一般の目からすれば大学における責任が果たされていないかのように見えてしまい(アピアランス(appearance)[6]の問題)、大学のインテグリティ、すなわち大学に対する社会的信頼が損なわれるおそれがあるという点において問題となる。
  なお、本ワーキング・グループでは、主に、教職員が安心して産学官連携に取組める環境づくりという観点から検討を行った。従って、本報告書では、大学(組織)としての利益相反よりも、個人としての利益相反への対応策を中心にまとめることとする。
責務相反については、教職員の服務制度と密接に関連するが、国立大学については法人化後の制度設計がまだ検討段階にあるという事情もあり、現段階では十分な議論がなされなかった。これらの課題については、国立大学法人の具体的な制度設計に応じて、より詳細な検討を行うことが必要である。また、教職員の勤務形態や兼業制度は、大学(学校)法人の就業規則等により定められるため、各大学では、教職員の職務と責務相反の問題について十分認識を深めた上で、適切なルールを作成すべきである。
  また、大学(組織)としての利益相反については、具体的には、大学が特定企業と大規模な研究契約を締結する場合や大学が組織有の特許等について企業に実施権を設定する場合、TLO(技術移転機関、Technology Licensing Organization)等に大学が出資する場合等に生じるものである。私立大学ではすでにこのような状況がみられることもあり、我が国においても重要な課題であるが、大学と産学官連携を取り巻く制度や状況の展開が急であるということもあり、本ワーキング・グループとして、限られた時間内で深く議論することはできなかった。従って、大学(組織)としての利益相反については、本報告書では問題意識と検討の方向性を指摘することにとどめるが、今後必要に応じて各大学でマネジメント・システムが検討されるよう期待するものである。

4.法令違反と利益相反との相違

  利益相反は「法令違反」とは異なった概念である。法令上の規制に対する違反行為については、法令で定められた一定の制裁・責任(刑事罰、行政罰、民事上の損害賠償責任等)が課せられ、かつ、公権力(司法や行政)による強制力を伴っている。
  これに対し、法令上は問題とならない利益相反は、法令上規制されていない行為を行っているにもかかわらず、周辺の状況によって、社会から「大学における責任が十分に果たされていないのではないか」と疑われる可能性がある状況である(社会的受容性の問題)。このような「状況」は、法令上直ちに問題とはならないが、社会的存在としての大学がインテグリティ、すなわち社会からの信頼を得つつ発展するために、誠実かつ適切な対応が要求されるという性質の事柄である。
  なお、法令違反と利益相反との主な相違点について以下のとおり整理することも考えられる。

法令違反への対応 利益相反への対応
責任の性質 法令上の責任(刑事罰、行政罰、民事上の損害賠償責任等) 社会に対する説明責任、社会的責任
責任の主体 規制に違反した個人・法人の責任者等 大学(組織)
違反・相反状態への対応方法 一律に回避されるべき状態 必ずしも回避する必要はなく、情報開示やモニタリング等、透明性を高めることによりマネジメント可能
判断基準 法令による一律のルール 各大学ごとのポリシーによるルール
利益相反委員会で個別に判断、多様な対応方法が可能
最終的な判断権者 裁判所 大学

(2)利益相反がなぜ問題なのか(問題の所在)

1.利益相反と大学のインテグリティ

言うまでもなく、大学の本来の使命は人材養成と学術研究である。そして、大学は、これらの機能を果たす機関として法令上の位置づけを与えられ、公的研究資金の供与や税制上の優遇措置等の公的支援を受けている。その意味において、大学は国公私立を問わず、広く国民に対し、教育・研究を適切に遂行する責任を担っていると言える。
利益相反が生じている状況は、このような教育・研究に関する社会的責任が十分に果たされていないのではないか、との社会の疑いを惹起しうる状況である。このような状況に対し大学が適切な対応を怠れば、大学のインテグリティを損ないかねず、結果として産学官連携の推進自体が阻害されるおそれがある。そのため、大学においては、利益相反がより深刻な事態に陥ることを未然に防止するとともに、社会への説明責任を果たす観点から、教育・研究上の責務が適正に果たされていることを自ら審査・実証するための、透明性の高いルールとシステムを整備することが必要となる。

2.米国における議論の経緯

  米国では、比較的早くから技術移転と利益相反問題の重要性が認識されている。例えば1964年には、大学関係者の団体であるAAUP[7]とACE[8]が共同で「大学での政府支援研究における利益相反の防止」[9]という文書を出し、大学からの技術移転の重要性と、大学の主体性維持のための利益相反の重要性を指摘した。
  その後、1980年のバイ・ドール法の制定を契機に、大学からの技術移転が一層活発になった。同法のもとで、大学には連邦政府の資金によって大学で生まれた特許がTLOを通じて産業界に移転されるシステムが整備され、それと共に大学関係者の間で利益相反に関する議論も並行してなされてきた。特に、90年代に入って技術移転による経済活性化が国家の優先施策として改めて強調されるようになったことを受け、より充実したガイドラインが必要との認識が高まったため、AAU[10](全米大学協会)は1993年に「金銭的利益相反に関する枠組み文書」[11]を発行、多くの大学では現在この文書に示された枠組みにのっとって利益相反ポリシーを整備している。なお、AAUはさらに2001年に金銭的利益相反に関するガイドライン[12]を作成・公表している。その中では、例えば、個人としての利益相反の運用ガイドラインとして

  • 研究における金銭的な利益相反への対応には、大学に頑健なマネジメント・システムが必要。
  • 金銭的利益は相反しない場合が多く、利益相反はマネージが可能な場合が多い。
  • 研究者の金銭的な情報を学内の責任者に開示するものとする。
  • 学術論文の公表や口頭発表の際に金銭的な情報を併せて公開するものとする。

  等の10項目を、共通のマネジメント方法として挙げている。また、大学関係団体のほか、政府資金を供与している機関においても、各大学の取組を促進するための方策が講じられている。例えば、NIH[13](国立衛生院)、NSF[14] (全米科学財団)では連邦規則[15]により、大学への助成金交付の際の条件として、利益相反ポリシーを整備していること、研究者に対し金銭的利益の開示を要求していること等当該大学において一定の対応策がとられていることを求めている。
  米国におけるこれらの取組は、関係者の間で長年積み重ねられてきた議論と経験の結果であり、我が国における対応策を議論する際の参考として有用であろう。米国の取組の特徴としては、1統一的なルールが存在せず、各大学のポリシーに委ねられている、2教職員の金銭的情報の大学への開示を重視する、3大学関係団体が包括的なガイドラインを作成している、といった点が挙げられる[16]

3.我が国における状況

  我が国においては、利益相反問題について議論の蓄積はまだ十分とは言えない。産学官連携の進展に伴い、関係者の間で問題の重要性が認識され始めてはいるが、利益相反の範囲やとるべき対応策について、大学関係者で共通理解が得られているとは言い難い。
  一方、近年の産学官連携の機運の盛り上がり[17]と関連施策の展開により、我が国における産学官連携活動は急速に拡大している。例えば平成9年以降国立大学教員の兼業規制の緩和により教員がコンサルティング兼業で報酬を得ることは日常化し、平成10年に制定された「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」のもとで27のTLOが承認(平成14年11月1日現在)される等技術移転体制の整備も進み、教員が特許の実施料収入を得る事例も増加しつつある。また、平成12年の人事院規則の整備等により国立大学教員の役員等兼業が可能になって以降、役員等兼業件数は着実に増加し、現在取締役の兼業承認を受けている教員は80人を超えている(平成14年10月末現在)[18]
  さらに、国立大学については、平成16年度に予定されている法人化以降、各大学や教職員の自由度が増すことが想定されており、法人化を契機として利益相反の課題が一層意識される可能性が高い。また、非公務員型になることにより、これまで国家公務員法や国家公務員倫理法等法令の下にあった服務関連の規定が、各大学の就業規則等に委ねられることになり、各大学がそれぞれの判断でルールを作成することが必要となる。
  このような状況にもかかわらず、ほとんどの大学では、個々の事例として問題となりうるケースがあることを認識しているものの、利益相反への体系的な理解、取組はほとんどなされていないのが現状である。今後、産学官連携が一層活発になることが予想されている中、利益相反に関する対応方針の確立は各大学において早急に取り組むべき課題である。

2.利益相反への対応に関する基本的な考え方

(1)大学が利益相反に取り組む目的

  先に述べたように、利益相反への対応策を講ずることは、大学の本来の使命たる教育・研究に対する責務が全うされていることを担保し、大学のインテグリティを維持・確保するとともに、産学官連携の健全な推進を図るために必要不可欠なものである。
  また、利益相反自体は直ちに法令上の違反行為に至るとは限らないが、利益相反を常に注視し適切に関与することにより、法令違反に至ることを事前に防止する効果もある。
  我が国における産学官連携では、これまで個人としての「お付き合い型」が主流であり、利益相反についても個々のケースごとに個人の判断と責任に委ねられてきた。しかし、連携をより効果的に行うため、昭和58年度の共同研究制度の発足以降、国立大学における共同研究センターの整備開始、研究協力部課等の設置、平成10年の大学等技術移転促進法の制定によるTLOの整備等、従来の個人ベースのお付き合い型の産学官連携から「契約やルールに基づく組織的な産学官連携」への転換が進められている。さらに、大学教員の特許についても、昭和52年の学術審議会答申を踏まえた昭和53年の通知[19]以来、個人有が原則とされてきたが、国立大学法人化を契機として原則組織帰属・管理とすることが検討されている。このような組織的な産学官連携の推進という施策の流れの中で、利益相反が産学官連携に伴い日常的に生ずる状況であることを踏まえれば、大学が組織として利益相反への対応策を講ずることが当然に求められるであろう。
  大学が利益相反への対応策を講ずることは、大学が教職員個々人の産学官連携活動に適切に関与することにより、より深刻な事態に陥ることを未然に防止するという、組織としてのリスク管理の一局面でもある。
  また、前述のように、これまでほとんどの場合教職員個人が利益相反に関する社会への説明責任を負ってきたが、このような状況が教職員にとって一種の負担となり、意欲ある教職員が産学官連携で十分に能力を発揮できない要因の一つとなっていたことも考えられる。このような教職員個人の責任と利益を大学が適切に分担することにより、教職員が安心して産学官連携に取り組める環境を整備するという観点からも、大学が利益相反に関する学内のルール、システムを整備することが重要である。

(2)教育上の責任の重要性

  言うまでもなく、優れた人材の養成は大学の中核的責務であり、学生の教育に対する教職員の責任は極めて重要である。産学官連携活動に学生が関与することについては、現実の経済・社会が抱える課題を体得できる、ビジネスの現場での技術開発競争を体験できる、等の利点も多く認められるが、教職員が企業向けの活動を優先させることによって、教育の機会が狭められたり、学生の独自性と学問の探究が阻害される等、教育面で支障が生じないよう、最大限の配慮を払う必要がある。
  なお、学生の国立大学における法的位置づけについては、かつては特別権力関係論により大学に包括的支配権を認める見解もあったが、現在では学生と大学の間の在学契約に基づき当事者が互いの権利義務を負うという契約関係にあるとする見解が主流である。
  従って、学生を産学官連携活動に関与させる場合には、教育指導の観点だけでなく、学生の教育を受ける権利の保障、学生が選択できる自由の確保、といった観点も併せて考慮する必要がある。

(3)対象者の範囲

  利益相反を議論する際の対象者の範囲については、利益相反が大学のインテグリティの問題であることからすれば、大学のインテグリティを維持する上でその者に係る利益相反のマネジメントが必要かどうかという観点から、その範囲を決定することが適切である。
  諸外国の例では、利益相反を主に教員(研究者)に由来する問題として捉えている大学が多い。我が国でも、基本的には「自分自身で研究費を獲得してくる研究の第一線にある教員(教授、助教授、講師、助手)」を対象とするが、大学の管理運営や産学官連携に関与するその他の大学職員(技術移転担当者等)についても同様の問題が生じうることに留意しておく必要がある。また、インテグリティ確保の観点から、ポスドクや大学院生に係る利益相反によっても、場合によってはマネジメントの対象とする場合がありうると考えられる。
  加えて、国立大学では、法人化に当たり「非公務員型」が採用されることによって、より柔軟で弾力的な雇用形態が認められ、「教員」「事務職員」「技術職員」という伝統的な区分けが相対化していく可能性もあることに留意する必要がある。特に、産学官連携の分野では、各大学の人事戦略に基づいて、専門的知識・技能等を重視した人材配置が期待されており、その場合には、これらの職員も対象に含まれうる。

(4)どのようなアプローチをとるか

  利益相反への対応策としては、まず、「望ましくない行為を列挙して予め禁止する」という、行為規範的アプローチが考えられる。(国家公務員倫理法における利害関係者との禁止行為の規定と同様の考え方)[20]
  しかし、「してはいけない」行為を列挙することは、産学官連携自体にマイナスのイメージをもたらし産学官連携を阻害しかねず、産学官連携の健全な推進、という利益相反対応の基本的な目的に反する結果となる。また、同一の行為であっても、異なる状況や大学ごとの事情により、多様なマネジメントが可能であろう。
  従って、産学官連携を阻害しないためには、「個別事例に応じて多様な解決方法を提案・実施するために、一定の手続・体制を整備する」という考え方、すなわちマネジメント・システムの構築というアプローチが有効である。
  もっとも、マネジメントの円滑な実施を図るためには、いかなる事例が利益相反であり適切な対処が必要とされるのかを教職員に理解してもらうよう、利益相反の具体的な事例をいくつか示すことも必要である。[21]
  また、マネジメント・システムの構築に当たっては、社会的な利益が期待できるにもかかわらず不適当な状況に至るおそれがある場合に、それをやみくもに回避することを主眼におくのではなく、社会や大学そして教職員の正当な利益配分を管理しつつ、関連情報を学内でできる限り開示することにより透明性を確保し、ひいては国民の疑惑を生じさせないようにするという観点を重視する必要があろう。このように学内での透明性を高めておけば、利益相反に関する関係者の意識も向上し、不当なバイアスの介入を事前に予防することにも資すると考えられる。
  なお、利益相反は、大学のインテグリティ確保の観点から教職員の有する金銭的利益にかかる情報の開示等を通じて学内の透明性を高めておくことは重要であるが、必ずしもすべての場合に産学官連携活動等を制限するような対処が求められるものではなく、インテグリティ確保の必要性がより高いと思われる場合に限り一定の対処が必要なものと考えられる。そして、どのような場合に対処が必要かという点については、各大学の教育・研究や産学官連携に関するポリシーに照らし判断されるものである。

(5)個人としての利益相反に関するマネジメント・システムの枠組み

  本報告書では、特に個人としての利益相反に対するマネジメント・システムの枠組みについて議論を行った。具体的には、(4)で述べたようなアプローチに従って、以下のようなものが適当と思われる(具体的には3.参照)。

教職員の金銭的情報の学内での開示(報告)
  ↓
利益相反アドバイザーが具体的な事実関係を調査・検討
  ↓
必要がある場合には利益相反委員会で審議、適切な対応方法を提案
  ↓
定期的なフォローアップ

  これらのシステムを有効に機能させるためには、学内に責任ある専門の部署を設けることが必要である。特に、日常的な相談窓口となる利益相反アドバイザーを設置すること、及び、利益相反対応への最終的な権限を持つ組織として利益相反委員会を設置することが望ましい(具体的な在り方については3.で詳述する)。
  なお、医学・医療の分野における臨床研究に係る利益相反については、特に慎重な対応が求められる。それは、患者の生命・身体に関わるとともに、医学研究の現場で治療法が考案され、その現場の研究者が治験を実施し、かつ、研究者自らが考案した治療法を商業化するベンチャー企業の事業に関わることが多いという特性があると考えられるからである。従って、通常の利益相反マネジメント・システムに加えて、さらに厳格な対応策をとることも考えられる。本報告書の内容を踏まえつつ、医学・医療関係者を交えて十分な議論がなされることが望まれる。

(6)各大学における利益相反ポリシーの作成

  これまで述べてきたように、利益相反問題は各大学における社会的な説明責任の問題であるため、本来的に各大学が自主的に対応策を講ずるものであって、すべての大学に一律のシステムやルールを適用することは妥当ではない。
  また、そもそも各大学がどのような教育研究に関しどのような理念で取り組むのか、その中で産学官連携をどのように位置づけるか、という各大学の方針によって、整備すべきシステムや具体的事案への対応も自ら異なるであろう。例えば、基礎研究重視の大学や人文系のみの大学等では、そもそも産学官連携に係る利益相反が生じる可能性が低く、体系的な取組が特段求められない場合もあろう。大学の規模や地域性によっても必要な体制やシステムは当然異なってくる。また、特にベンチャー創出支援による社会貢献に重点を置く大学では、ベンチャー支援のための株式保有や役員就任に伴う責務相反等について、許容範囲を比較的広く捉えることも考えられる。
  このような観点から、利益相反への対応策については全国一律ではなく、各大学が固有の利益相反ポリシーを定めることが適当である。その際には、まず前提として、大学が自らの教育・研究に関する基本理念をどう考えるか、その中に社会貢献や産学官連携をどのように位置づけ、どのような方針で推進していくのかを明確にすることが必要であり、その上で、各大学の個性・特色の一環として、必要な場合には固有の利益相反ポリシーとシステムを整備することが適当である。特に、各大学が自らの問題として、特に次代を支える若手を含む幅広い層の人たちの参画を得てポリシーを整備することが望ましい。その際には、3.で述べるシステムのモデル例や次頁の利益相反ポリシーの事項例を参考としつつ、各大学の実情に応じた柔軟な対応が望まれる。
  また、利益相反ポリシーの内容は、学内への周知という観点から、教職員にわかりやすく明確なものにすることが必要であるとともに、利益相反がそもそも大学の社会的信頼の問題であることからすれば、国民への説明責任の観点から、大学としてどのような理念を有し、どのようなルールで利益相反に対応しているかについて、基本的な部分を利益相反ポリシーとしてインターネット上のウェブ・サイト等により一般に公表することが不可欠である。

(7)コンプライアンス(法令遵守)等との関係

  なお、利益相反のマネジメント以前の問題として、法令解釈の不明確さによる萎縮的効果、ビジネス関連法規に関する教職員の知識不足、といった問題も指摘されている。このような問題については、法令解釈のマニュアルを整備したり、ビジネス関連法規に関する相談窓口を設ける等、法令面でのサポート体制を大学に整備することも重要であろう。
  また、国民からの信頼を失わないようにするためには、法令であれ、学内のルールであれ、コンプライアンス(法令遵守)の意識を高めることも重要である。

<利益相反ポリシーの作成に当たっての検討事項と順序の例>

1.大学の使命と産学官連携の位置づけ
  • 大学の使命・目的に対する基本的な考え方、大学としての理念
  • 社会貢献、産学官連携の位置づけ
  • 教育・研究活動と産学官連携活動の関係

  等

2.産学官連携に関する基本方針
  • 大学にとっての産学官連携活動の意義
  • 産学官連携の基本方針
    (リエゾン活動、共同研究、技術移転、インキュベーション等に関する大学の戦略・方針)

  等

(→  産学官連携の推進に取り組む大学においては以下の事項の検討が必要)

3.利益相反ポリシーの作成と公開
  • 利益相反に対応する目的、意義
  • 利益相反の定義
  • 大学のインテグリティと利益相反との関係
  • 対象者の範囲の明確化
  • マネジメント・システムの枠組み(例:金銭的情報の開示、具体的事例ごとの判断等)
  • 学内の責任機関・担当部署の明確化
    (例:利益相反委員会、利益相反アドバイザー等)
  • 教職員の兼業に関する規定との関係の整理(責務相反)
  • 学内関係者への啓発の方針
  • 利益相反ポリシーの公開

  等

4.利益相反マネジメントに関するルールの策定、体制整備
  • 教職員に開示を求める金銭的情報の種類・範囲
  • 教職員に金銭的情報を求める頻度(年1回、学期ごと等)や機会(新たな産学官連携活動に関与するような場合等)
  • 情報開示の様式の作成
  • 開示された金銭的情報を保管・管理する責任者の明示
  • 利益相反アドバイザーの配置
  • 利益相反委員会の構成、委員の選任方法
  • 利益相反委員会で審議すべき事例かどうかの判断基準
  • 利益相反委員会で対応方策を決するための判断基準
  • 利益相反委員会の決定に対する異議申し立ての手続
  • 教職員が利益相反委員会の決定に従わない場合の対応
  • 情報公開請求への対応
  • 学内関係者への啓発(セミナーの開催、ハンドブックの作成等)

  等

3.個人としての利益相反に対応するための学内システムの在り方

(1)学内システムのモデル例(米国の例を参考に)

  これまで述べてきたような考え方に基づいて、本ワーキング・グループでは個人としての利益相反に対応するための具体的な学内システムの在り方についても検討を行った。その主な目的は、個別の事例に応じて学内で十分議論することによりそれぞれの事例に応じた対応方法を模索・議論するといった透明性の高い学内体制の整備と、一定基準以上の個人的利益に係る事例を継続的に記録・管理しておき、問題が生じたときには記録をさかのぼって事実関係に当たることができるようにし、社会的な疑義に明確に応えうる体制の整備、すなわち国民への説明責任に関するシステムの構築にある。具体的には、学内システムに必要な要素として、1教職員の金銭的情報の開示、2記録保存、3事実関係の検討、4対応方策の検討と実施、5外部への公表とアカウンタビリティ、という5つが考えられる。各要素の詳細と留意点は以下のとおりである。

ステージ1:教職員の金銭的情報の開示

  • 教職員が企業との関係で個人的に得る金銭的利益が利益相反の重要な要因となることから、全ての教職員に対し一定の金銭的情報を大学に開示する旨義務づけることが必要である。
  • 開示を求める金銭的情報の種類としては、兼業報酬、実施料収入、未公開株式等が挙げられる。
  • 開示を求める金銭的情報の範囲については、例えば、○○円以上の兼業報酬、○○円以上の実施料収入、○○%以上の未公開株式保有、といったわかりやすい基準を設けて、教職員に明確に示すことが必要である。
  • また、学部や専攻によって産学官連携の在り方や得られる金銭的利益の「相場感」が異なることもあるので、開示を求める金銭的利益の範囲については、部局によって差違を設ける、又は明確性に留意しつつ部局の裁量に委ねることも考えられる。
  • ベンチャー企業への出資等には家族が関わっている場合も多くみられるが、家族を通じた利益も教職員にとっては重要な個人的利益と言えることから、家族に関する情報についても対象となる範囲を明確にした上で、開示の対象とすることが考えられる。なお、教職員を通じて開示された家族に関する情報は、大学で適切に取り扱い、プライバシー保護の観点から外部に漏洩しないよう厳重に保管することが重要である。
  • なお、情報開示はシステムの中核であり、教職員が必要な情報をすべて開示することが、システムが有効に機能するための大前提である。従って、情報開示を要求する大学においては、利益相反への対応の意義について、教職員に対する積極的な啓発活動を行い、自発的な情報開示を促すことが必要不可欠である。逆に、適切な情報開示がなされなかった場合には、大学は組織として、その教職員さらには大学自身を「守る」ことができない、といったことを示すことが重要であろう。

ステージ2:教職員から提出された金銭的情報の記録・保存

  • 教職員から提出された金銭的情報は適切に記録し保存することが重要である。そして、社会的な疑義が提起された場合には、その記録をもとに学内で事実関係について的確な調査を行い、社会の疑惑に対する説明責任を果たしていくことが必要である。

ステージ3:利益相反アドバイザーによる事実関係の検討

  • ステージ1で開示された金銭的情報は、担当者(以下「利益相反アドバイザー」という。)のもとに集められる。
  • 利益相反アドバイザーは一定の基準に従い事実関係を検討し、教職員からのヒアリング等を通じて問題と思われる状況がないかどうかを検討する。たいていの場合は問題がないと思われるが、特に別添に規定される事例のような事案については、事実関係に関する情報を積極的に収集し、更に検討を加える。
  • 特に十分な議論が必要と思われる場合には、複数の学内関係者からなる利益相反委員会に報告する。

ステージ4:利益相反委員会による対応方策の決定

  • 大学の中で利益相反に対する最終的な権限と責任を有する機関としては、多様な観点から審査を行い組織として責任をもった判断ができるよう、複数の関係者等から構成される利益相反委員会を設置することが望ましい。構成員については、利益相反委員会の重責にふさわしい人選を行うことが重要であり、担当副学長が委員長に就任することも考えられる。
  • 利益相反委員会は、利益相反アドバイザーの報告をもとに、関係教職員のヒアリング等を通じ事実関係を検討し、当該利益相反が組織として許容できるかどうかを判断する。大学としてその状態が許容できないと判断した場合には、適切な対応方策を決定する。場合によっては、金銭的利益の放棄(未公開株の譲渡、兼業先の役員辞任等)や研究プロジェクトへの不参加を勧告することもありうる。
  • 利益相反委員会では必要に応じて適宜情報収集を行い、必要な場合には利益相反委員会で再度検討を加え新たな勧告をすることも考えられる。

ステージ5:外部へのアカウンタビリティ

  • 利益相反ポリシーが、大学への国民の信頼を維持することを目的とすることからすれば、公表可能な範囲で一定の事例を外部に公表することも考えられる。個人や家族の情報開示がプライバシーの保護と抵触するおそれもあることに留意した上で、各大学で公表する事項の範囲を決定することが必要である[22]
  • なお、国立大学法人については、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」(平成14年10月1日から施行)の適用があるものと思われる。同法においては、業務に係る情報は原則として情報公開の対象となりうるが、個人のプライバシーに係る情報は不開示情報とされている[23]。利益相反のマネジメントのために各教職員から開示された情報については、プライバシーに関わる情報は原則として不開示情報とする運用が確保されることが必要である。

(2)学内の体制整備

  利益相反アドバイザーは、教職員から開示された情報を一次的に検討し、情報収集を行った上で、一定の基準に従い利益相反委員会に報告する事例と報告を要しない事例を振り分けることを責務とする。また、日常的な相談窓口として教職員にアドバイスを行うとともに、様々な事例をアドバイザーのもとで一元管理し、教職員に類似事例の情報提供を行うことも有効である。
  利益相反委員会は、学内関係者で構成し、利益相反に関する組織の最終的な決定権限と責任を有する。(1)で述べたような個別の事例に対する審査のほか、利益相反ポリシーや個別のルール、システムの在り方等、利益相反への対応方策全般を決定する組織とする。また、利益相反委員会においては、幅広い視野から議論を行うとともに国民や社会に対する説明責任を重視する観点から、学外の有識者や各分野の専門家の意見を委員会に適切に反映させる仕組みを設けることが重要である。
  なお、利益相反のマネジメント・システムが有効に機能するためには、システムに対する学内での信頼関係が確立されることがきわめて重要である。利益相反の概念と個人情報の開示を核とするシステムの導入がこれまでの大学にない新たな試みであることを考えれば、信頼関係の構築には一定の期間を要するものと思われる。従って、長期的な観点から関係者への継続的な啓発活動を行うことが重要である。

4.責務相反等

(1)責務相反について

  責務相反とは、教職員の大学における職務遂行責任と外部活動における業務遂行責任との相反・衝突である。従って、責務相反を論じる前提として、教職員の大学における職務遂行責任の内容を(特に産学官連携活動との関係で)明確に整理しておく必要がある。その上で、産学官連携活動との関係で、大学における職務遂行責任をどこまで弾力的に取り扱うかについて、各大学でルール化することが必要となる。

1.国立大学について

1)法人化後の国立大学について[24]

  国立大学教職員の勤務内容や勤務形態については、法人化後は(労働関係法令の範囲内で)原則として各大学が就業規則等で定めることになる。従って、各大学は、中期目標・中期計画の中で社会貢献や産学官連携の位置づけを明らかにした上で、就業規則や労働契約において教職員の職務内容(産学官連携活動の位置づけ)や兼業の在り方を具体的に決定すべきであろう[25]
  なお、その際、社会貢献や産学官連携が、国立大学法人法の目的・業務規定においてどのように整理されるかについても考慮する必要がある。
  各大学が定める労働条件のうち、特に責務相反との関係で留意が必要な事項は以下のとおりである。

  • *  教職員の勤務時間の制度設計
      →  裁量労働制[26]、ワークシェアリング、短時間勤務(例.週30時間勤務)
      等
  • *  教職員の職務の範囲
      →  従来の教育研究活動に加え、技術コンサルティング、TLO業務等を大学での職務に含めるかどうか(その場合の報酬の扱いをどうするか)
  • *  兼業制度[27]
      →  教職員の兼業を認めるか、認める場合の手続・基準・条件をどう定めるか、勤務時間をさいて行う兼業を認めるか[28]

  また、責務相反のマネジメントの観点からは、兼業の在り方については単なるルール化のみならず、いったん許可した事例についても、必要に応じて事実関係の情報収集を行い、大学のインテグリティが害される事態となっていないか、事後的に検証することも重要である。

2)国立大学における現状

  国立大学教職員は国家公務員であり、兼業等の服務については法令上の規制に服している。具体的には、まず国家公務員法により職務専念義務が課せられており[29]、その帰結として、職務外の行為は原則として禁止され、人事院の承認又は所属庁の長等の許可がある場合に限り兼業が認められるという制度が採られている(同法第103条、第104条)。
  なお、国家公務員の職務の範囲は「法律、命令、規則又は指令による職務」(同法第105条)と規定されているが、国立大学教員の職務については、学校教育法上の規定(学生の教授、研究指導又は研究従事)[30]のほかは法令等による特段の規定はない。実態としては、共同研究センターにおけるリエゾン活動や技術相談は「公務」として行っており、企業での技術コンサルティングや役員就任については、職務外の行為として人事院規則や文部科学省の通知で認められた範囲において「兼業」として行うことが可能である。
  兼業については、「本務の遂行に支障がないこと」との条件が課せられており、現行の運用では(国立大学教員としての)勤務時間の外で行うことが原則とされている。この点において、責務相反の問題は一定の範囲でルール化されている。また、役員兼業については、その重責にかんがみて、半年ごとに活動状況を報告し人事院が事後的に問題がないかを検証するとともに一般に公表することになっているが、これも責務相反マネジメントの一つの方法と考えられる。

2.公私立大学について

  公立大学の教職員については、地方公務員であることから、その勤務形態や兼業の扱いは国立大学における現状と同様、地方公務員法によって職務専念義務が課せられ、営利企業等への従事についても各地方公共団体の人事委員会規則等により許可の基準が定められている[31]。各地方公共団体又は各大学において、これらの規定に従い、責務相反が適切にマネジメントされるべきである。
私立大学については、法人化後の国立大学と同様、各大学の就業規則等で教職員の職務内容や勤務形態が決定されている。従って、1.1)で述べた法人化後の国立大学における取扱いと同様に、労働関係法令の範囲内で、各大学の使命や基本理念を踏まえた上で、就業規則等で職務内容を決定し、責務相反の観点から、産学官連携に係る兼業活動について適切にルール化されるべきである。

(2)国立大学法人における倫理規程の在り方

  国立大学教職員については現在国家公務員であることから、国家公務員倫理法の適用があるが、法人化後は、非公務員型のため国家公務員倫理法の規制は直接には及ばない。ただし国家公務員倫理法第42条において、みなし公務員規定のある非公務員型独立行政法人については「この法律の規定に基づく国及び特定独立行政法人の施策に準じて、職員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるようにしなければならない」と規定されている[32]。従って、本規定に基づき、各国立大学法人において倫理を保持するための規程が作成することが想定される。
  その際、リエゾン活動や大学発ベンチャーへの関与には、特定企業への情報の開示や優先的取扱いが当然に必要となることを踏まえた上で、これらの活動が不当に妨げられないよう、特別の規定を設ける等の配慮が必要である。
  同時に、規程の運用においては、できることとできないことを明確にし、教職員の産学官連携活動の自由を確保しておくことが必要である。

5.大学(組織)としての利益相反

(1)具体的場面

  大学(組織)としての利益相反は、大学がエクイティ(株式等)を保有する場合や組織有特許のライセンス活動の場面等で生じうる。現在の国立大学では、制度上の制約からほとんど問題となりえないが、私立大学ではすでに学校法人がTLOやベンチャーに出資することや、法人有特許の専用実施権をベンチャー企業に付与する事例がみられることに加え、法人化後は国立大学についても同様の活動が可能となる余地があり、大学(組織)としての利益相反が生じうる状況にあると言える。

(2)対応の方向性

  大学の従来からの基本的な使命である教育と学術研究に対して、産学官連携や技術移転等、いわゆる「第三のミッション」たる社会貢献に伴う負の影響が及ばないよう、リスク管理が重要であり、今後必要に応じて各大学で具体的なマネジメント・システムについて検討することが必要である。
  なお、諸外国では、大学や国が出資して有限責任の会社(株式会社等)を設立し、産学官連携や技術移転に係わるエクイティの保有等はこの会社が行うことで、教育・研究に直接の影響が及ばないようにする、あるいは、産学官連携の推進を図るための研究組織を他の教育・学術研究を主とする組織と明確に分離する(例えばキャンパス配置等)といった方策をとっている例が見られる。

6.大学の取組の促進

  再三述べてきたように、利益相反への対応は大学のインテグリティを左右する問題であり、産学官連携を組織的に推進しようとする大学は利益相反を自らの課題として、真摯に取り組むことが重要である。我が国における利益相反に関する議論がまだ緒についたばかりであるということを踏まえれば、まず各大学において、本報告書に示された考え方を参考にしながら、学内で利益相反に関するセミナーを開催する等、利益相反に関する教職員の意識と理解を向上させることが求められる。同時に、学内関係者のみならず、連携の相手方である産業界やTLOの関係者も交えて議論を行うことも重要である。
  さらに、すでに利益相反についてある程度議論が進められている大学にあっては、本報告書の基本的な考え方を踏まえた上で、必要な利益相反ポリシーの作成やマネジメント・システムの在り方、管理のルール等について、具体的な検討や事例集の作成等を始めることも可能であろう。特に知的財産本部が整備される大学等では、諸外国の取組に知見を有する外部人材を活用する等して、知的財産活用や産学官連携に関する戦略的取組の一環として利益相反についても積極的に議論を行うとともに、これらの研究の成果や経験(や「良い実践」・「良い手本」(good practices))を他の大学と共有することを通じて、その他の大学の取組を促進することが期待される。
  国立大学協会においても、法人化後の兼業や勤務時間、倫理に関するガイドラインを作成するに当たっては利益相反との関連にも十分注意を払うとともに、他の大学関係団体とも連携しつつ、利益相反への取組に関する大学相互の情報交換やガイドライン作成等に積極的な役割を果たすことが期待される。
  また、米国や英国では、公的資金の適正な使用の確保という観点から、政府資金提供機関が大学への資金提供に際してルール化を条件としたり、ガイドラインを作成するなどして各大学の取組を促している。我が国においても、大学に公的資金を提供する機関(各府省、日本学術振興会、科学技術振興事業団、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)等)が資金を提供する際に、利益相反に関する対応を適格性の要件の一つとして判断要素とすること等を通じ、各大学に取組を促すことが考えられる。
  大学のみならず、独立行政法人研究機関・特殊法人等においても、各法人の特色に応じて、本報告書の内容を参考としつつ、利益相反のマネジメントに取り組むことが期待される。

<別添>利益相反が発生しやすい具体的場面

(1)大学発ベンチャー関連

※ 大学発ベンチャーを大学が支援する場合は特に利益相反が生じやすいので、詳細な検討が必要。

1.狭義の利益相反

【参考事例】
  A教授は自己の研究成果の事業化を図るため、ベンチャー企業B社を設立。A教授は発行済み株式総数の3割を保有し、かつ研究開発担当の取締役に就任した。A教授は自己の個人有特許についてB社と実施契約を締結しており、A教授はB社の売り上げに応じ実施料収入を得ることになっている。

  • 1)B社はA教授の技術を製品化するに当たり関連技術の開発が必要となったため、開発担当役員であるA教授の提案により、A教授の研究室と数度にわたり共同研究を実施。これらの共同研究の成果もあり、B社は製品開発に成功、売り上げを順調に伸ばし、これによりA教授は個人的に実施料収入と取締役としての成功報酬を得た。
  • 2)その後B社はこれを主力製品として株式公開に成功、A教授は保有していた株式を売却し多額のキャピタルゲインを取得した。

【検討の視点】

  • A教授は、B社との間で、未公開株式、役員報酬及び特許の実施料収入に関し、金銭的利益を有している。
  • A教授は、B社との共同研究によって個人的な金銭的利益を得る関係にあるが、共同研究は大学教員としての立場で行うものであり、研究テーマの選定や成果の扱い等は大学の使命・責務に沿ったものでなければならない。

【留意点】

  • 一般的に大学発ベンチャーと教員との個人的関係は密接であり、教員がさまざまな私的利益を得ることが当然に想定される。具体的には以下のとおり。
    • *  教員が取締役や技術顧問として兼業
        (個人的利益:兼業報酬、成功報酬等)
    • *  教員やその家族が出資
        (個人的利益:配当益、株式公開によるキャピタルゲイン等)
    • *  教員の研究成果(これまでは多くが個人有特許)がベンチャーの事業の中心である
        (個人的利益:個人有特許の場合は実施料収入等)
  • また、教員の責任の観点からは、以下のような場面で顕著な問題となる。
    • *  大学とベンチャー企業との共同研究
    • *  当該教員の指導のもとにある学生が当該ベンチャー企業に派遣される
    • *  ベンチャー企業から研究員が派遣される(受託研究員)
    • *  ベンチャー企業の製品(試料等)を教員の研究室が購入する
    • *  ベンチャー企業が公的な審査や評価を必要とする際の、審査委員に当該教員が就任している
  • さらに、ベンチャー企業は一般に、初期の厳しい経営状況(いわゆる「死の谷」)を乗り越えて極大成長するという特性を有しており、創業当初から役職員には早期の株式公開を目指すことが当然に求められる。従って、ベンチャー企業で役員や技術顧問として兼業する教員は、最大限の努力を払い株式公開に貢献することをベンチャー企業に対する責務として負っているとともに、その結果として私的利益を当然に伴うこととなる。
  • 従って、大学において大学発ベンチャーへの教員の関与を認める場合には、利益相反が生じやすいことを十分に認識し、本文で述べるようなマネジメント・システムを併せて整備することが必要である。
2.責務相反

【参考事例】
  A教授は自己の研究成果を活用して、集積回路の設計・開発等を業務とするベンチャーB社を設立、経営を担当する適当な人材が見つからなかったため、大学の許可を得て自ら代表取締役に就任した。A教授は通常は大学での勤務時間外にB社の業務に従事していたが、開発した製品に欠陥があることが判明し取引先のメーカーとトラブルになったため、その対応に追われ、たびたび大学での講義を休講にしたり、会議を欠席したりした。

【検討の視点】

  • A教授がベンチャーの役員を兼業するためには、各大学の定めたルールに従わなければならない。
  • A教授は、大学との労働契約等により、大学での講義や会議に出席する義務を負っている。
  • 同時にA教授はB社の取締役として、B社との委任契約(商法第254条第3項)に基づき、善管注意義務(民法第644条)及び忠実義務(商法第254条の3)等をB社に対し負っており、トラブルの際にはB社のために忠実に職務を遂行する義務を負っている。
  • なお、これらの義務は特定の事務処理を目的とする義務であって一定時間の勤務により果たされる性質のものではない(労働契約による時間を定めた労働義務(週40時間勤務等)と異なる)。従って、大学の勤務時間内であっても、善管注意義務や忠実義務が求められる可能性もある。

【留意点】

  • 兼業活動については大学の勤務時間外においてのみ認めることとすることで、本務遂行への支障はある程度回避できる。
  • しかし、1で述べたように、ベンチャー企業の役職員は最大限の努力を払って早期の株式公開を目指す責務を負っており、教員とベンチャー企業との関係において大学の職務が優先されるとは限らないことを認識しておく必要がある。
  • このような事情にかんがみれば、大学が取締役への就任を兼業として認める場合には、勤務時間外の兼業を条件に認めた場合であっても責務相反の可能性が解消されないことを前提に、大学での勤務が損なわれる場合には大学を休職にする等の条件付けを明確にした兼業に係るルールを策定する必要があろう。

(2)特許・技術移転

【参考事例】
  X大学のA教授は大学での研究に関連した発明を行ったため、発明委員会に届出を行い大学は権利を承継して特許化した。X大学では、組織有の特許は知的財産本部が効果的な活用と大学への適切な利益還元という観点からライセンス先の企業やライセンス条件を決定することとなっている。
 当該特許は知的財産本部の決定によりB社に対して独占実施権が設定されたが、B社は以前A教授の個人特許のライセンスを受けており、A教授はB社から高額の実施料収入を得ていた。

(利益相反となりうる場合の例)

  • 1)A教授が学内TLOにおけるライセンスの責任者であった場合
  • 2)TLOの依頼によりA教授がライセンス先としてB社を推薦した場合

【検討の視点】

  • A教授は、B社から個人的に高額の実施料収入という金銭的利益を得ている。
  • 他方、A教授は、知的財産本部のライセンス担当者として、研究成果の効果的な活用と大学への適切な利益還元という大学のポリシーに従って、適切なライセンス先とライセンス条件を決定する責任を負っている。

【留意点】

  • 独占的実施権を設定する場合において、相手先企業の特定や契約条件について教職員が何らかの(実質上の)権限を有している場合であり、相手先企業から教職員が個人的利益を得る場合には、利益相反が生じる。具体的には以下のような場合が挙げられる。
    • *  発明者の教職員が知的財産本部やTLOに所属している場合
    • *  TLOのライセンス活動に発明者の教員が指示をする場合
  • 他方において、特許のライセンス活動に当たっては実施料等支払い条件だけでなく実施者の技術的能力も重要な判断材料である、という事情から、特に発明者たる教員の意向をまったく考慮しないということは事実上困難である。
  • 従って、大学の知財担当部署やTLOの内部において、発明者の個人的利益に左右されず客観的な検討が十分行われていることが重要となる。例えば、TLOの判断が大学のポリシーのもとで必要なプロセスを踏んだ適正なものであり、将来仮に外部から説明を求められた際に説明可能であるかどうか、がマネジメントのポイントとなろう。

(3)学生関連

【参考事例】
  工学研究科の大学院生Aは、課程の修了を来年に控えていたが、指導教官Bの指導により修士論文作成のためC会社との共同研究に参加することになった(大学と雇用関係にはない)。なお、B教授はC社に継続的に技術コンサルティングを行っており、また、発行済み株式の3分の1を保有している。C社との共同研究の過程で画期的な技術に関する研究成果が生まれたため、C社は特許出願とノウハウ保持のため、共同研究に参加したB教授のほか院生Aとも守秘義務契約をかわし、共同研究の事実、共同研究の目的、メンバー、研究成果の内容等について、出願公開までは第三者に開示しないことを約した。院生Aは、まもなく民間企業への就職活動を開始したが、C社と同業他社との面接の際、研究の内容を問われ、守秘義務契約のために満足な回答ができなかった。

【検討の視点】

  • B教授はC社との関係では、兼業報酬、株式保有といった金銭的利益を有している。
  • B教授は大学との関係では、学術研究の推進という大学の使命に従って共同研究を行うとともに、院生Aの教育に対する責任を負っている。
  • 院生AはB教授の指示のもと共同研究に参加したが、そのために就職活動に支障が生じた。

【留意点】

  • 学生を産学官連携活動に関与させる場合には、教育指導の観点とともに、学生の教育を受ける権利の保障、学生が選択できる自由の確保、といった観点も併せて考慮する必要がある。
  • 学生を産学官連携活動に関与させることについては、利益相反の可能性もあるが、メリットも大きいため、マネジメントの在り方を工夫する必要がある。
  • 具体的に問題となりうる場面には以下のものが考えられる。
    • *  教員や大学の関連企業との共同研究に学生が参加する場合
    • *  教員や大学の関連企業にアルバイトとして学生が採用される場合
    • *  教員や大学の関連企業に学生が就職する場合
    • *  教員や大学の関連企業の起業活動に学生が参加する場合
    (なお、関連企業とは、出資や役員就任等の密接な関係がある企業を指す。)

  • [1]P31~33 資料1「産学官連携の推進のための諸制度の改善状況」
  • [2]インテグリティ(integrity):我が国において定着した訳語は見出しがたいが「社会的信頼」「尊厳」「らしさ」といった意味合いで用いられる。また、マネジメント・システムを機能させるうえでの手段に着目すれば「自らを一体の統合されたものとして健全に律するさま」という意味にも捉えられる。なお、語源的意味としては「完全性」「健全性」。
  • [3]1980年に行われた米国特許法の改正の通称。政府資金により得られた研究成果を政府ではなく当該研究機関に属させることができる旨を規定。
  • [4]英語の原文では” a conflict between the private interests and the official responsibilities of a person in a position of trust (as a government official)” と記述されている。
  • [5]英語で言うconflict of interestの訳語として本報告書では「利益相反」の用語を当てている。「利益相反」については、商法第265条等で用いられている(P34 資料2「法令上の利益相反の概念について」)が、そこで言う利益相反行為は取締役会の承認等一定の規制の下に置かれることが前提となっている。また、国家公務員倫理法や国家公務員倫理規程では、利益相反の語は使用されていないものの、「職員の職務との利害関係」として特定の利益相反について規定されている。本報告書でいう利益相反は、むしろ、大学(組織)における自主規制に服すべきものを中心とする。
  • [6]アピアランス(appearance)とは、ある状態が生じていることが事実か否かを問わず、ある状態であるように見えて受け取られること。見かけ。利益相反の議論においては、fact(事実)と対照的な用語として使用される。
  • [7]The Council of the American Association of University Professor
  • [8]The American Council on Education
  • [9]“On Preventing Conflicts of Interest in Government-Sponsored Research at Universities”
  • [10]Association of American Universities
  • [11]“Framework Document on Managing Financial Conflicts of Interest”
  • [12]“Report on Individual and Institutional Financial Conflict of Interest” by Task Force on Research Accountability(P35~54 資料3「個人および大学レベルの金銭的利益相反(報告と勧告)」)
  • [13]National Institutes of Health
  • [14]National Science Foundation
  • [15]42 CFR Part 50, 45 CFR Part 94
  • [16]P55~57 資料4「米国の大学の利益相反ポリシーの例」
  • [17]P31~33 資料1「産学官連携の推進のための諸制度の改善状況」
  • [18]P71~75 資料11「国立大学教員の兼業制度」
  • [19]P58~64 資料5「大学教員等の発明に係る特許等の取扱いについて」(昭和52年6月 学術審議会答申)‐抄‐、P65~66 資料6「国立大学等の教員等の発明に係る特許等の取扱いについて」(昭和53年3月 文部省通知)‐抄‐
  • [20]P81 資料15「国家公務員倫理法」‐抄‐、P82~84 資料16「国家公務員倫理規程」‐抄‐
  • [21]本報告書の別添に具体的な事例を例示したが、各大学においてさらに事例研究を行うことが期待される。
  • [22]なお、国立大学教員等の役員兼業の兼業状況については、半期毎に人事院で公表している(平成14年10月以降の研究成果活用企業、TLOの役員兼業の承認については、承認権限の委任に伴い、文部科学省において公表することとなる)。
  • [23]独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第5条第1項では、不開示情報として「個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により個人を識別できるもの又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることによりなお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」を規定している(P67~68 資料7「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」‐抄‐)。
  • [24]P76 資料12「新しい『国立大学法人』像について」(平成14年3月 国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議)‐抄‐
  • [25]P77~79 資料13「人事制度についての参考事項」(平成14年11月 国立大学協会国立大学法人化特別委員会)‐抄‐
  • [26]大学教員の裁量労働制は現行法令上認められておらず、導入には法令等の整備が必要となる。
  • [27]ここでいう「兼業」は、本来の大学における職務とは区別される職務外の行為であり、いわば企業における「副業」である。
  • [28]「勤務時間をさいて行う兼業」は、国家公務員法の体系では制度上想定されているが、現行運用上は認められていない。
  • [29]国家公務員法第101条「その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」(P69 資料8「国家公務員法」‐抄‐)
  • [30]学校教育法第58条(P70 資料9「学校教育法」‐抄‐)
  • [31]P70 資料10「地方公務員法」‐抄‐
  • [32]P81 資料15「国家公務員倫理法」‐抄‐

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