4.米国の大学の利益相反ポリシーの例

スタンフォード大学の利益相反ポリシーの概要

一般原則

  • その人の個人的な利益と大学における職業上の義務が競合し、個人の職業上の行為や決定が個人の利益を考慮して決定されるのではないかと第三者が疑問を抱く場合に生じるもの。
  • 利益相反は、技術移転の促進による公益の増進が大学の使命であることから生じるもの。教員のコンサルティングや研究成果の商業化はこの使命の達成のための重要な手段であり、教員がコンサルティング報酬や実施料収入を得ることは適切なことである。しかし、大学の活動における個人の活動や決定が個人の金銭的利益を考慮してなされることは適当ではない。スタンフォードは公共の信頼を得た機関であり、教員はその地位を尊重し大学のインテグリティを損なわないよう活動しなければならない。

利益相反ポリシーの要旨

  • 教員は各学期を通じてキャンパスに相当程度いなければならない。
  • 教員は大学への一次的な忠誠を減じるような他の職業活動(例えばフルタイムの教員であれば外部の経営に関する重要な責任を負うことなど)を行うことは許されない。
  • 教員は学術活動の成果の開放的かつ適時の交流を促進すること、学生等への指導が個人の商業上の利益と独立になされること及び学内での学術情報の自由な交流に影響を与える可能性のある第三者への義務について学生や同僚に知らせることを通じて、学問の自由の環境を醸成しなければならない。
  • 教員は外部のコンサルティング活動や大学の教育、研究及び社会貢献の使命に関連のない目的のために、大学の資源(施設、職員、設備、秘密情報)を使用してはならない。
  • 教員は大学の活動において創作されたあらゆる特許化可能な発明を開示しなければならない。これらの発明の所有権は資金源にかかわらず大学に帰属し、発明者は実施料の分配を受ける。
  • 教員は大学に対し(直近の家族※1を含めて)コンサルティング契約を結んでいるか、相当程度の金銭的利益※2を有しているか、外部団体で雇用されているかどうかを大学に開示しなければならない。
    • ※1 扶養している配偶者、国税局の定める子供、同棲者
    • ※2 会社の株式の0.5%以上、又は100,000ドル以上に相当する株式利益
  • 教員の客観性が疑問視されうる状況においては、学部長は研究計画の適切性の審査、研究の実施の監督及び開放的かつ適時の成果の公表を確保するために、独立の監視委員会を設置することができる。
  • 教員は毎年大学の利益相反ポリシーを遵守していることを学部長に証明する。また、教育研究活動のスポンサー(将来スポンサーになるものを含む)その他教員を通じて大学と金銭的な関係にある外部団体との金銭的関係に関する情報(直近の家族に関する情報を含む)を開示しなければならない。また、毎年の報告とは別に、教員は利益相反の問題が生じうる状況があれば速やかに学部長や学科長に相談する。
  • 学部長は利益相反に関する開示情報の審査手続を整備しなければならない。このような審査は学部の代表者を含む委員会で行うものとする。

※ “Research Policy Handbook 4.1 Faculty Policy on Conflict of Commitment and Interest” (http://www.stanford.edu/dept/DoR/rph/Chpt4.html)に基づき、研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室で概要を作成。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の利益相反ポリシーの概要

一般原則

  • 教員が大学の行動基準を遵守していたとしても、独立した第三者が研究代表者の職業上の行為や決定が個人の金銭的利益の考慮によって不適切に影響を受けているのではと疑問を抱かれるような、研究代表者※の個人的利益と研究上の利益との集中がある場合に利益相反又は利益相反の認識が生じる。
    • ※ 「研究代表者」(investigator)とは、受託研究(sponsored research)の計画、実施又は報告の責任を有する職員のこと
  • このような状況は現代の研究大学においては一般的なものであり、個人の性格や行動を非難するようなものではない。
  • 大学は研究代表者に対し、定期的ではないが、外部の要求によって、あるいはプログラムごとに、個人の金銭的利益の開示を求める。
  • このような開示手続は、公的機関における受託研究に関する実際の又は潜在的な利益相反を認定し管理するための方法として、最も広く受け入れられているものである。

ポリシーの目的と範囲

  • このポリシーは、受託研究と関連する相当程度の利益相反があり、受託研究に直接かつ相当程度の影響があるように思われる場合における、開示と独立審査の手続を定めるもの。
  • このポリシーは、PHS、NIH、NSFからの受託研究に自動的に適用される。

金銭的利益の開示

  • 研究者が受託研究に関連して相当程度の金銭的利益※を有する場合には、そのような利益について詳細に記した開示フォームを提出することが要求される。

※ 「相当程度の金銭的利益」の例

  1. 単一の営利法人から過去12ヶ月間に、研究者、その配偶者及び扶養している子全体の累積で1万ドルを超える収入
  2. 単一の国・公共機関又は非営利法人から、過去12ヶ月間に、研究者、その配偶者及び扶養している子全体の累積で1万ドルを超える収入。ただし、後援、講義、委員会等から得たものは除く。
  3. 単一の営利法人についての、研究者、配偶者及び扶養している子全体の累積で1万ドルを超えるエクイティの取得
  4. 研究者が役員、パートナー等の地位に就いていること
  5. 研究者、配偶者又は扶養している子が、学長以外の者に移転される特許権、特許を受ける権利又はソフトウェアの著作権に関し、知的財産権上の利益を有する場合

※ 「受託研究に関連」の例

  1. 研究者のプロジェクトの進行と成果が、金銭的な利益を有している法人の製品又はサービスの開発、製造又は改良と関係している場合
  2. プロジェクトにおいて使用される、又はプロジェクトの成果物となる医薬品、装置、手続又はその他の製品を製造・販売する法人に金銭的利益を有している場合
  3. 単一の法人からの、過去12ヶ月間に1万ドル以上のコンサルティング収入を得ており、かつその法人に関する金銭的利益(又は当該コンサルティングに関する金銭的利益)が研究によって影響を受けるであろうことが合理的に予測される場合
  4. 研究者がある法人に金銭的な利益を有しており、かつ、受託研究がその作業の一部の委託を申し出、不動産賃借を申し入れ、その参加者の紹介を行い、又は当該法人から物品を購入する場合
  5. 研究者が金銭的利益を有している企業がコンソーシアムに参加又は受託研究に参加する場合

開示された情報の審査

  • 大学審査官(University Reviewing Official)又は独立審査委員会(Independent Substantive Review Committee)※は、金銭的利益が直接かつ相当程度に受託研究計画に影響を受けるか(受けるように見えるか)どうかを決定するため、開示された情報を審査する。
    • ※ 学長又は研究所長が任命する委員からなる。開示情報と受託プロジェクトの関連情報を審査し、当該プロジェクト資金を受け入れ可能かどうかを学長や研究所長に勧告する委員会。
  • 審査官又は独立審査委員会は、プロジェクトが金銭的利益に直接かつ相当程度影響を与えることとみなす合理的な理由がなく、また、金銭的利益が研究計画等に影響を与えないことを決定した場合には、更なる審査は行わない。
  • 研究代表者又は審査官が、プロジェクトが金銭的利益に直接かつ相当程度影響を与える可能性があり、また金銭的利益が研究計画等に影響を与えうると結論づけた場合には、開示された情報やその他の書類が独立審査委員会に提出される。独立審査委員会は、研究の実施の適否や利益相反の管理のために必要な条件や制限について、学長(研究所長)への最終的な勧告を行う。

利益相反の管理と除去

  • 金銭的利益が受託研究に直接かつ相当程度影響を受ける場合には、審査官や独立審査委員会は研究の停止や、利益相反の管理のための特別の条件、制約※を付することを勧告する。

※ 特別の条件、制約の例

  1. 金銭的利益の一般への公開
  2. 独立した審査者によるプロジェクトのモニタリング
  3. 研究計画の修正
  4. 研究への不参加
  5. 関連する金銭的利益の剥奪
  6. 実際の又は潜在的な相反を生み出す関係の分離

制裁

  • 金銭的利益の情報開示を怠った場合や研究の実施にあたって課せられた条件や制約を遵守しなかった場合、大学の教職員に関する管理規定その他懲戒規定に従った懲戒処分の理由となる。

責任と管理体制

  • このポリシーの実施は、学長、研究所長等が行う。
  • 開示情報、審査官の決定、独立審査委員会の勧告及び利益相反の管理のための大学の行為に関する記録は、採択課題の終了、完了後3年又は記録に対する資金提供者の行動が決定されるまで、保存されなければならない。

  ※ University of California Policy on Disclosure of Financial Interests and Management of Conflicts of Interest Related Sponsored Project”http://www.ucop.edu/research/disclosure.html)に基づき研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室で概要を作成。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)