13.「人事制度についての参考事項」

(平成14年11月13日 国立大学協会国立大学法人化特別委員会) -抄-

2.就業規則について

1.総論的事項

(1)各大学は、先行独立行政法人、私立大学などの就業規則を参考としつつ、人事制度に関する諸事項を盛り込んだ参考資料1に例示するような就業規則を定め、所轄の労働基準監督署に届けることが必要となる。

(2)就業規則は、原則、事業場単位(各キャンパス単位など)で作成することとなる。また、性格の異なる事業場ごとに、場合によっては職種ごとに、定めることが求められる。この場合、事業場の単位の取扱いを含め、就業規則を定めるに当たっては、各大学が労働基準監督署とあらかじめ相談することが望ましい。

(3)就業規則を定めるに際しては、各大学と過半数労働組合もしくは労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要となる。この場合、労働者の対象範囲(例えば、非常勤講師の取扱等)については、私立大学の例等を参考としつつ、あらかじめ労働基準監督署と相談することが望ましい。

(4)就業規則の作成に際しては、事務レベルにおいてある程度準備作業を進めることが可能なもの、先行独立行政法人や私立大学の例を参考に形式や手続きなどに関して細かな実務的作業を伴うものなどがあるが、こうした作業は各大学の事務部門に依存するところが大きく、これらの事務的準備 作業が円滑に進むよう、実務専門家を招いての研修など各大学における工夫が必要である。
また、学内における検討で合意が得られたものについては、規則化していくことが必要である。

(5)法人化後の各大学が直面する人事労務事項に関連して、調査研究・情報提供等を行うために新連合組織がどのような役割を果たすかに関しては、各大学の意向を確認しつつ、別途検討されるべきであろう。

2.各論的事項

(1)服務について

  非公務員型による法人化がなされるとした場合、公務員としての規制が外れ、いわば原則自由、例外規制となるが、各大学の職員が無原則に自由となるのでなく、教育研究の一層の充実という観点から、各大学においては高い自己規律のもとに透明性の高い服務に関するルールを定めることが必要である。
  現行では、国家公務員法等により服務上・身分上の義務規定が置かれているが、法人化後は、以下の事項につき、民間企業や私立大学などの状況を踏まえ、所要の規定を設ける必要がある。

  • 誠実に勤務する義務
  • 職場の秩序を保持する義務
  • 業務上の秘密を守る義務
  • 職務に専念する義務
  • 他の事業に従事することの制限
  • 倫理を保持する義務
  • セクシュアル・ハラスメントの防止

以下、主要な事項についての考え方をまとめると、次のとおりである。

1.勤務時間の管理
  • ア 労働基準法に則り、以下の内容を含む勤務時間についての規定を整備することが必要である。ただし、教員の勤務時間管理については特殊性を考慮することが必要であろう。
    • 勤務時間(1週40時間=8時間×月-金5日間)、週休日・休日、年次有給休暇、病気休暇等(現行と同様の内容となると思われる。)
    • 休憩時間(労働基準法の適用に伴い、45分とすることが必要となる。)
  • イ 教員は、その業務の性格から時間外労働になじまないが、論文審査、入学試験関係等の業務の場合は、時間外労働を命ぜられることもある。
    また、附属学校教員の手当と時間外勤務との関係については、別途、制度上、検討する必要がある。
  • ウ フレックスタイム制については、各大学において必要に応じて導入を検討する。
  • エ サバティカル・リーブについて、各大学いおいて必要に応じて導入を検討する。
  • オ 勤務時間との関係において、教職員の研修の位置付けを明らかにすることが必要である。
  • カ 裁量労働制
    • 教員以外の職員については、情報処理業務など、現行の専門業務型を中心に適用を各大学の判断において検討する。
    • 教員についての幅広い導入には厚生労働省の政策変更が必要であり、現状では一般的導入は困難な状況にある。(労働基準法上、大学教員の業務は授業など時間配分の決定に際し裁量に委ねることが不適当な部分があるため、専門業務型裁量労働制の対象とならないとされている。)
    • こうした現状を踏まえ、教員については、兼職兼業の緩和、勤務時間管理の弾力化、フレックスタイム制の導入等とのバランスを考慮の上、裁量労働制に拠らなくても事実上、その必要性が解決されるか否かを検討することが必要であろう。また、すべての教員を対象とした裁量労働制の導入が困難としても、「一定の要件の下での裁量労働制」導入の可能性について、引き続き文部科学省と厚生労働省との間での検討が必要である。
2.兼職兼業

非公務員型となることを踏まえ、以下のような点で規制を緩和することが考えられる。

  • ア 勤務時間内に従事する兼職兼業の範囲の拡大
    • 勤務時間内に職務として従事する兼職兼業の範囲を各大学法人が決定する。
      (例)大学管理特許の実施に関する技術指導、審議会・各種委員会の委員、学内活動を目的とする法人等の役員
    • 教職員が個人として受領できる対価は、原則旅費等の実費であるが、研究費等に学外報酬を充当することは考えられる。
  • イ 勤務時間外での兼職兼業の範囲の拡大
    • 営利企業の役員等の兼業については、現行の承認基準(TLO役員、研究成果活用企業役員、監査役)を参照しつつ、産学官連携を推進する観点からその範囲について検討する。学長が承認し、その承認状況を公表する。
    • 営利企業の役員等以外の兼職兼業については、利益相反・責務相反の問題がないこと等、現行の承認基準を参照しつつ、学長が承認する。
      (例)営利企業への技術指導・助言、非常勤講師、公益性の高い法人の役員・顧問等
  • ウ 勤務時間帯の取扱いの弾力化
    • 組織全体・個人の職務遂行に支障がない場合に限り、通常の勤務時間帯における兼職兼業(産学官連携、地域社会貢献等にかかわるもの)を可能とするよう、学長の判断により、勤務時間の割振り・勤務日の変更(勤務日を土曜可とする措置を含む。)を弾力的に実施する。
    • この方法によって対処できない場合には、学長の判断により勤務時間を割く措置を講ずる。この場合には、割いた勤務時間数に応じて給与は減額される。
  • エ 短時間勤務の検討
    • 週40時間勤務を常態とするこれまでの通常勤務を週3日あるいは年間9ヶ月勤務する等の新たな勤務形態(短時間勤務制)による教職員の雇用に対するニーズが大きくなる可能性がある。こうした事態に対応しうるよう、今後、短時間勤務を前提とした教職員の雇用について各大学で検討することが必要である。
    • 文部科学省においては、短時間勤務制の職員への国家公務員共済組合法の適用等について、常勤職員の範囲を踏まえつつ検討する必要がある。
3 倫理保持の規程の整備

  国家公務員倫理法において、国家公務員に準じた取り扱いとすることが求められているが、大学の特性を踏まえて、内容について一部緩和することが可能である。

  • ア 本省幹部職員に適用されている「みなし利害関係者」(他の職員の利害関係者を幹部職員の利害関係者とみなす)は不適用とし、利害関係者を以下のように限定する。
    • 物品購入契約・共同研究・受託研究契約の相手方
    • 受験生および懲戒対象の学生等(院生・研究生)
  • イ  贈与等の報告・閲覧の限定
    • 現在、事業者等から1件5千円を超える贈与等を受けたときには贈与等報告書の提出が必要であるが、これを利害関係者からの贈与等に限る。報告者の範囲についても検討する。
    • 株取引・所得等の報告義務を不適用とする方向で検討する。
    • 各大学限りにおいて贈与等報告書を閲覧に供する。

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