特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第4回) 配付資料

1.日時

平成20年9月29日(月曜日) 13時30分~16時

2.場所

中央合同庁舎第7号館 東館3階 文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. これまでの議論の整理
  2. 就学指導の在り方について
    1. 事務局による説明
    2. 齋藤委員による発表
    3. 自由討議
  3. その他

4.配付資料

5.議事要旨

  • (1)高倉座長より挨拶が行われた。
  • (2)事務局より配付資料の確認が行われた。
  • (3)事務局より、これまでの議論の整理について説明がされた。
  • (4)就学指導の在り方について、事務局及び齋藤委員より説明のあった後、質疑応答。その後、自由討議となった。

 (3)、(4)の概要は以下のとおり。

概要

事務局による、これまでの議論の整理について

【委員】
 第1回会議の配付資料3‐1「特別支援教育の対象の概念図」に、幼稚園教育が含まれていないのは良くない。発達障害の子どもは幼稚園に相当数在籍しており、保育という形態の下で幼稚園教育を受けているが、ある程度の効果を発揮している。また、発達障害については早期発見・早期対応が大変効果的であるが、幼稚園教育の段階は、親として分かってはいても、受け入れるには時間がかかるという3年間。前向きに受け入れる親もいるが、逆に幼稚園に対して極めて過大な要求をしてくるということも起こり得る。さらに、現在の私立幼稚園教育の場においては、原則として愛の手帳等の手帳を持っていないと支援の対象にならないという問題があり、発達障害のある子供についての公的支援が何もない。

事務局による、就学指導の在り方に関する説明について

【委員】
 現実的には、就学指導で一番問題になるのが自閉症であるが、特別支援学級の対象については情緒障害の中に自閉症も含むという整理になっていて自閉症という言葉がなく、また、知的障害特別支援学校には多くの自閉症系の発達障害のある子が在籍しているにもかかわらず、これが全く表へ出てこないということは非常に大きな問題なのではないか。

【事務局】
 ご指摘の点については、中教審の答申でもまとめられ、また、様々な団体等から意見等もいただいており、現在、自閉症についての教育課程の在り方等も含め、検討課題としているところ。

齋藤委員による、横浜市の就学指導に関する説明について

【委員】
 横浜市には公立幼稚園がなく私立幼稚園のみということだが、その子どもたちの大部分は市立小学校に行くことになるので、そこの接続が問題。現在の形からもう一歩前へ踏み出さなくてはならない。また、首長部局と教育委員会がばらばらに特別支援教育を進めていくと、公私格差が出てきてしまう。これは全国的な問題だと思うが、各地方自治体において今後考えていただきたい。

【委員】
 横浜市の就学指導委員会の後、県立特別支援学校に行く子どもには県の就学指導委員会を開くということだが、その趣旨について教えていただきたい。

【発表者】
 横浜市内には市立と県立の特別支援学校がほぼ同じ数ずつあり、県としても県立の特別支援学校に来る子どもを一人一人についてきちんと把握したいという考えがあるので、県立に就学する子どもに限って、県の就学指導委員会で審議するというシステムをとっている。

【委員】
 横浜市の就学相談システムについて、最初に保護者あるいは子どもが小学校長と相談するという体制をとっているとのことだが、あえて副学籍をつくる必要性は何か。

【発表者】
 相談システムは平成11年度から、副学籍による取組は昨年度からスタートしており、タイムラグが少しあるが、そこの制度上の整備というのは十分にされていないのが実情。本来は小・中学校等に在籍するはずの子どもが、障害があるということで特別支援学校に行っているという理解のもとに各学校で対応している。

【委員】
 横浜市の就学指導委員会は、平成19年度は268名の審議を行ったとのことだが、経験上、1人につき相談するのに早くて1時間ぐらいかかる。どのように268件も審議しているのか。

【発表者】
 相談については1人の子どもについて2時間半程度を要するが、就学指導委員会の場ではその子どもの状況等について整理した上で審議をするので、あまり時間はかからない。就学相談の段階で保護者の意向や本人の思いをきちんと聞き取り、それを就学指導委員会に生かすような形にしている。件数が多くなると、実質的に1人の子どもについて丁寧に時間をかけるのは難しい状況。

【委員】
 LD、ADHDの通級指導教室をつくっていないのは、何か意図があるのか。

【発表者】
 LD、ADHDについては、情緒障害や言語の通級指導教室で、平成18年度より以前から続けてきたという経過があり、現状も、届け出の数としては情緒障害通級指導教室の中にLD、ADHDの子どもが含まれている。

【委員】
 特別支援教室構想を進めているとのことだが、実際には特別支援学級を柔軟に運営しているのか。あるいはそれとは別に特別支援教室という形でやっているのか。もし特別支援教室としてやっているのであれば、各学校に1つぐらいなのか、また、様々な障害のある子どもが入ってくることが想定されるが、どのような専門性のある教員が担当しているのか。

【発表者】
 横浜市の特別支援教室は、通常の学級の子どもを対象とし、教科の補充的な指導に加え、子どもたちが安定して学習ができるような個別のアドバイスも行っている。現状では、校内で対応可能な教師を捻出している。また、特別支援教育コーディネーターの活動の後補充という名目で、県から非常勤も加配されているが、不確定な非常勤の加配であり、非常に厳しい状況。高い専門性が求められるが、現状では、専門的な研修を受けた校内の特別支援教育コーディネーターにアドバイスをしてもらうなどしている。指導方針がしっかりと整理された中で一貫した指導ができるよう、現在百数十校で、研究と併せて実施しているところ。

【委員】
 横浜市には7カ所の地域療育センターがあり、地域別にかなりカバーしているという話があったが、幼児期からそこで様々な支援が行われており、就学指導委員会で審議にかけられる子どもの大多数は既にチェックされているので、つなぎの部分は全く問題ないと思われる。

【発表者】
 現在、療育センターが幼稚園の支援を強力に進めており、年に数回幼稚園に訪問し、発達的な課題のある子どもについて見て、幼稚園の職員にアドバイスをしている。また、療育センターの職員が一定期間幼稚園に行き一緒に活動をしたり、逆に幼稚園の職員が療育センターに行くなど、相互交流の動きもあるとのこと。学校への支援が始められる前から幼稚園、保育所への支援もかなり力を入れてやっているというのが横浜市の特徴。

【委員】
 特別支援教室について、通級も特別支援学級も利用してない子どもが利用しているということか。また、通級のように日中の授業時間の中で取り出して指導を行うということか。

【発表者】
 特別支援教室を利用している子どもは、通級による指導や特別支援学級の子どもではなく、通常学級に在籍をしていて、指導・支援に困難のある子ども。ただ、保護者の了解がないと場を変えて指導を行うことは難しく、また、教育課程の問題で、どのような指導をどこまでやって良いのかということが大きな課題になっている。時間帯は、放課後等ではなく、学習時間と並行で、子どもに負担のないようにやっている。

就学指導の在り方について、自由討議

【委員】
 就学指導について、就学相談としての役割を持たなくてはならないということが以前から言われている。「就学指導委員会」という名称の変更について検討してほしい。「指導」ではなく「支援」が適切ではないか。

【委員】
 就学先の決定は、あくまで保護者の選択ではなく、就学指導として教育委員会が措置をしなければならない。当然、「就学指導」という言葉を使用するのに問題はない。相談の部分については「就学相談」や「教育相談」等の言葉で考えていくべきかと思うが、措置については「就学指導」が適切なのではないかと思う。

【委員】
 情緒的な問題だが、もし自分が親の立場であれば、学齢期の就学の場や教育内容を教育委員会に指導されたくはない。教育委員会と保護者が対等の立場で積極的に考えられるという意向を表す名称にすることが大事。

【委員】
 横浜市のデータを見ても、自閉症系の子どもが特別支援学校の児童生徒数増加の要因になっている。自閉症も対象になっているということを正面から示しておくべきではないか。また、虐待系の子どもたちについては療育センター等にも来ないので把握が難しく、ADHDのように見えるかと思うが、本来の情緒障害の対象になる。今後、本来の情緒障害の子どもはおそらく増加していくので、発達障害系の問題と情緒障害をしっかりと分けていかないといけないのではないか。

【委員】
 学校現場でも一番困っているのが、療育センター等を利用していない子ども。虐待系の子どもの場合、保護者がすぐに状況を把握することができず、その見極めが現在の教育委員会のシステムではできない。おそらくADHDと思われている子どもの中には、かなりの数の虐待系の子どももいるのではないかという印象は受ける。

【委員】
 就学指導を進めていく中で一番大切なのは、移行期において、いかに適切にサポートできるような個別の教育支援計画や個別の指導計画を引き継いでいくかということだと感じているが、横浜市では、移行期の個別の教育支援計画等のつなぎは十分にできているか伺いたい。

【発表者】
 例えば地域療育センターに通っている子どもにはしっかりとした個別の療育計画があるが、機関同士でその情報のやりとりをするには個人情報の問題等があり非常に難しく、現状では保護者から聞き取ることが中心である。関係機関との連携をこれからさらに深めていくが、そこが大きな課題になっている。それがうまくいけば、非常に子どもに合った個別の教育支援計画等を作成でき、より早い時期から指導・支援がスタートできると考える。

【委員】
 今後、適切な就学を含めた検討において、療育機関が中心になってやってきている段階から学校につないでいく、そこのつなぎの部分の中で就学指導委員会の相談員等が入って移行期をつなぎ、個別の教育支援計画等をベースにしながら就学も含めて考えていけるような体制ができれば、今の就学の問題もかなり解決する部分があるかと思う。

【委員】
 ある政令指定都市では、障害者施策全般を担当する福祉のほうで、障害のある子どもの情報を共有できるようなツールとして、計画というよりも、ノート、ファイル、あるいは手帳等を考えているということを聞いている。それに乳幼児期からの様々な記録を書き込んでいき、保護者が保管していく。就学の際や新しい医療機関にかかる際等、節目に応じて保護者の了解の上でその情報を各機関が利用し、そのような機関で行った支援や得られた情報について、また保護者の了解を得ながらつけ加えていく。これはある1つの例だが、似たような例が、県単位、あるいは県の教育委員会単位で幾つかあるということも聞いているので、そのようなツールというところから議論を進めていき、体制について検討するのは良いのではないか。

【委員】
 ご指摘のあった情報を共有するためのツールについては、個人の医療・療育等、育ちに関する記録をノートにして保護者が持ち、必要なときにそれを見てもらえば本人の今までの生育データが全て分かるようなノートを作ろうということで、育成会において全国レベルで発信しており、様々な県で可能だと思う。今後、全国的にそのようなノートが作られると思う。

【委員】
 齋藤委員の説明資料に、児童相談所や地域療育センターなど他機関との連携が重要となる相談が増えているとあるが、それに対してどのような形の連携を考えているか。

【発表者】
 教育委員会主催で市内の4つの児童相談所とリハビリセンターも含めた7つの療育センターの相談の実務担当者が一堂に会し、様々な情報交換をしたり、特に気になっている子どもについては個別にやりとりをするというような会議を開催している。また、教育委員会の相談に関わる意見が療育センターに入ることもあり、そのような場合にはお互いに情報交換をしている。全体の顔合わせは年に2回だが、それをやることで非常に情報交換もしやすい。

【委員】
 就学期または就学移行期において、就学前までの保護者の様々な苦労を、例えば齋藤委員の説明資料にある養護教育総合センター等でどのような形で吸い上げるのか等、そのような問題がこれから総じて就学指導や就学相談自体に関係してくる。その土台になるのは保護者の一番悩んでいる部分。それを教育の場面でも保育関係も含めて皆、適切に察知をしていかなくてはならず、それらをどのように進めていくのか。また、推進していくところは何なのか。説明資料の中で、相談を受けた小学校長がそれをどこに持って行くのかについては矢印がない。図式的な説明も含め、具体的に話を聞きたい。

【発表者】
 説明資料上は学校長から養護教育総合センターへの矢印が片方向だが、実際は両方向で、学校での様子を学級担任から上げてもらったり、学校長に聞き取りをする等を行いながら、養護教育総合センターで相談にあたっている。それから、相談報告という形で、相談報告書を学校長あてに送付する。それを校内の個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成する際の参考にしてもらう。

【委員】
 東京の副籍、埼玉県の支援籍、横浜の副学籍等によって、特別支援学校と小・中学校等との直接交流が進められているが、これらは例えば就学指導や就学相談とはどのような兼ね合いを持つものか。

【発表者】
 横浜市の副学籍については、入学前に学校の説明会で副学籍について保護者に知ってもらい、早い時期から小学校等との交流ができるようにするため、環境的な準備をしている。

【委員】
 個別の支援計画や個別の教育支援計画が幼稚園、保育園の段階でしっかりと計画・実行され、保護者が納得の上であれば、就学指導のところで突然不安になることも、一発で決まるようなこともないだろう。

【委員】
 相談支援ファイルについては、例えば文部科学省が実施している「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」において、グランドモデル地域の中で今年度から行われているところだが、これは過渡的なスタイルだと思っている。保護者が保管をするというのは今一番やりやすい方法ではあるが、虐待の問題や家庭環境の問題等、そこでは扱えない問題が必ずあり、個別の支援計画や個別の教育支援計画がしっかりと整備された段階においては、そちらに移るべき。どこが個別の支援計画や個別の教育支援計画の保管をするのかということや、個人情報の問題、主体はどこになるのか等が十分に整備されていないために、現在、相談支援ファイルが過渡的に行われているのかではないかと思う。

【委員】
 横浜市は特別支援学級の設置率が100パーセント近いとのことだが、こういうことが進めば地域での学びが子どもや保護者に保障されて本当にありがたい。一方で、説明資料にあるデータから単純計算すると、1校あたり8人が特別支援学級に在籍していることになるが、集団として学習指導が成立するか。また、特別支援学級に在籍している子どもの障害種の内訳を教えてほしい。それから、校内通級は弾力的に行われているのか。特別支援学級に籍のある子どもでなくては、そちらに行って勉強はできないか。特別支援教室についてはどうか。

【発表者】
 学校によって特別支援学級在籍児童生徒数に偏りはあるが、特別支援学級の集団指導で学べることは多く、それは大事にするよう学校訪問のたびに話をするなど、学校指導している。また、現状では保護者のニーズに拠る交流が主となっている指導もあるが、その場合、特別支援学級の担任がついていくのは人数的に不可能ですあり、厳しい条件下にある。
 特別支援学級在籍児童生徒の障害種の内訳については、知的障害と情緒障害がほぼ同数で、最近の傾向として自閉症の子どもが非常に増えている。また、知的に遅れがない子どもでも、保護者の強い希望や教育的な必要性から、特別支援学級に在籍という判断をしている例も増えている。
 特別支援教室に通級するのは、通常学級在籍の子どもであり、特別支援学級の子どもは特別支援学級で学習をしたり、通常学級に交流したりしている。

【委員】
 資源の豊かな自治体と非常に少ない自治体とでは、就学指導の在り方についてそれぞれ異なる課題があるので、視点を分けて議論すべきではないか。

  • (5)事務局より今後の会議の運営について説明があり、閉会した。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

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(初等中等教育局特別支援教育課)