資料2‐1 就学指導に関するこれまでの提言(抜粋)

1.21世紀の特殊教育の在り方について-一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について-

 (平成13年1月 21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議)

第2章 就学指導の在り方の改善について

1 乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備について

  1. 市町村教育委員会は、住民に最も身近な地方公共団体として、教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備すること。また、教育委員会や学校、医療機関、児童相談所、保健所等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、教育・発達相談の機会の充実を図ること。
  2. 国は、各地域において教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制が整備されるようその体制の下で組織される特別な相談支援チームの機能や構成員等について検討すること
  3. 都道府県教育委員会においては、県段階での福祉、医療等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において福祉、医療等と一体となった相談支援体制を整備し、その成果を域内の各市町村に普及させるよう努めること
  4. 盲・聾・養護学校においては、その専門性や施設・設備を生かして地域の特殊教育の相談センターとして、市町村教育委員会、特殊教育センターや福祉、医療関係機関等と連携しながら教育相談を実施したり、特別の相談支援チームに参加するなどその役割を果たすこと。

2 障害の程度に関する基準及び就学手続きの見直しについて

  1. 特別な教育的ニーズに応じた教育を行うため、学校教育法施行令第22条の3に規定する盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒の障害の程度に関する基準を医学、科学技術等の進歩を踏まえ、教育的、心理学的、医学的な観点から見直すこと。
     また、市町村教育委員会が、児童生徒の障害の種類、程度、小・中学校の施設・設備の状況等を総合的な観点から判断し、小・中学校において適切に教育を行うことができる合理的な理由がある特別な場合には、盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であっても小・中学校に就学させることができるよう就学手続きを見直すこと
  2. 特殊学級において教育すべき児童生徒や通常の学級において留意して教育すべき児童生徒については、その特別な教育的ニーズに応じた教育を行い、全国的に一定の教育水準を維持する必要があるため、その対象範囲等について明確にすること。
  3. 市町村教育委員会が盲・聾・養護学校に就学すべき児童生徒であると判断を行ったことを明確にするため、市町村教育委員会がその保護者等に対し、その判断の結果を通知するよう就学手続きを見直すこと。また、障害のある児童生徒が、その住所の存する都道府県教育委員会が設置した盲・聾・養護学校以外の学校に就学する場合の手続きを明確にすること
  4. 就学指導が円滑に行われるために、市町村教育委員会は、保護者等の求めに応じて、専門家の意見を聞く機会や、子どもが一日入学し体験授業を受ける機会を提供するなどの工夫をし情報提供に努めるとともに、児童生徒の保護者等が意見表明をする機会を設けること。また、市町村及び都道府県教育委員会は、児童生徒の障害の状態に応じ、盲・聾・養護学校と小・中学校との転学、特殊学級と通常の学級間の異動等を円滑に行うことができるよう転学手続き等の簡素合理化に努めること

3 就学指導委員会の役割の充実について

  1. 就学指導委員会は、その位置付けを明確にすること
  2. 市町村教育委員会に置かれる就学指導委員会は、障害のある児童生徒の就学指導に当たり、児童生徒の障害の種類、程度や必要な教育的支援等について専門的な立場から調査や審議を行い、教育委員会に助言を行っているが、今後は、早期からの教育相談の成果を活用したり、保護者が意見表明する機会を設けるとともに、特殊学級や通級による指導等の教育的支援の内容等について校長に助言することなど機能の充実を図ること。
     また、市町村教育委員会は、幅広い分野の専門家や地域の有識者等を就学指導委員会の委員とするよう努め、小規模の市町村教育委員会は、共同で就学指導委員会を設置することも検討すること。都道府県教育委員会においては、市町村の就学指導体制の整備充実を支援すること。
  3. 都道府県教育委員会に置かれる就学指導委員会については、これまでの専門的な立場から調査や審議を行い教育委員会に助言するほか、市町村教育委員会の判断と保護者等の意見が食い違う場合、客観的な立場から専門的な助言を行う等の機能を果たすことについても検討すること

2.今後の特別支援教育の在り方について

(平成15年3月 特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議)

第2章 今後の特別支援教育の在り方についての基本的な考え方

1 特別支援教育における基本的視点

(3)<略> 一人一人の児童生徒の教育的ニーズが何かについて、市町村の教育委員会は、児童生徒本人の視点に立って、専門家はもちろん保護者等関係者の意見等を踏まえて正確に把握するとともに、教育的支援を行う関係者、関係機関等の役割分担を明らかにして適切な教育を行うことが重要である。その際、都道府県の教育委員会は、市町村における教育的ニーズの把握が適切になされるよう、市町村に対する支援や連携について考慮する必要がある。
児童生徒一人一人の教育的ニーズは多様であり、また不変のものでもない。小学校又は盲・聾・養護学校の小学部に入学した者もその実態等に応じて就学先を変更することによりその者の教育的ニーズに対応した教育が可能な場合があることに留意する必要がある。また、小・中学校の特殊学級や盲・聾・養護学校等の利用可能な人的・物的資源を児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて弾力的に活用して適切な教育を行っていくという観点からも、教育の場を固定したものと考えるのではなく、児童生徒の実態等に応じて弾力的に教育の場を用意するという考え方に立って取り組むことが必要である。

(4)<略> これまでの特殊教育は、障害の程度に応じて、教育や指導上の条件が整った場で手厚くきめ細かな教育を行うことを重視し、障害のある児童生徒の就学指導の制度としては、やや画一的な面があった。前述の「21世紀の特殊教育の在り方(最終報告)」の提言を受け、国は、学校教育法施行令を改正し、盲・聾・養護学校へ就学すべき基準(就学基準)と就学手続の見直しを行った。これにより、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教育的対応を適切に行うことが制度的に可能となり、今後は、地方分権の趣旨も踏まえて盲・聾・養護学校など特殊教育において整備された人的・物的資源を活用して、現行制度の一層の弾力化や効率的運用、教育、福祉、医療等の関係機関の連携の充実等により、一層質の高い教育を行うことが重要である。

6 地域の総合的な教育的支援体制の構築と当該地域の核となる専門機関の必要性

(4)このほか、就学後の児童生徒の教育的ニーズの変化を学校においてフォローアップする体制を整備するため、盲・聾・養護学校への就学後も児童生徒の学齢簿を管理する市町村の教育委員会等が中心となって児童生徒本人や保護者に対する相談支援を継続する体制を構築することなどは総合的な支援体制を構築する上で重要な要素と考えられる。このため、都道府県教育委員会等は、上述の広域特別支援連携協議会等において関係部局と連携しながら全体的な企画調整を積極的に進めていく必要がある。

3.特別支援教育を推進するための制度の在り方について

(平成17年12月 中央教育審議会答申)

第6章 関連する諸課題について

1.総合的な体制整備に関する諸課題について

  1. 個別の教育支援計画については、今後、小・中学校も含めた策定の推進を検討するとともに、関係機関と連携した効果的な運用方法を確立する必要がある。また、今後の運用状況を踏まえつつ、「個別の指導計画」と併せて学習指導要領等への位置付けを行うことや、就学相談・指導や卒業後の就労支援における活用などを検討する必要がある

2.障害のある児童生徒の就学の在り方について

 児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して適切な指導及び必要な支援を行うという特別支援教育の理念にかんがみると、障害のある児童生徒の義務教育諸学校への就学相談・指導は、就学時のみならず就学後を含めて一層重要な役割を担うこととなる。このため、その在り方については、以下の観点を含め、引き続き検討し、必要な見直しを行うことが適当である。その際には、国際的な動向や平成14年9月から実施されている認定就学制度の運用状況等にも十分留意することが必要である。

1.就学指導に際しての児童生徒の教育的ニーズの的確な把握及び反映の一層の充実
  • ア)児童生徒の教育的ニーズをきめ細かく把握しこれを就学先の決定に反映するための調査・審議を専門的に行う機関である就学指導委員会等の構成、開催方法等
  • イ)児童生徒本人及び保護者の意向を把握しこれを就学先の決定に反映するための就学指導の在り方
  • ウ)乳幼児期からの相談体制の構築を含めた就学前からの教育相談の在り方
  • エ)個別の支援計画の活用を含めた関係機関等と連携した就学指導の在り方

 など、就学指導に際して児童生徒の教育的ニーズを的確に把握しこれを教育内容や就学先の決定に反映する取組を一層充実する観点

2 就学後における児童生徒の教育的ニーズの的確な把握及び反映の一層の充実
  • ア) 就学後における継続した就学相談・指導の在り方
  • イ) 校内委員会等の校内組織の在り方
  • ウ) 児童生徒の教育的ニーズを反映した転学の弾力化

 など、就学後において児童生徒の教育的ニーズを的確に把握しこれを教育内容や就学先の決定に反映する取組を一層充実する観点

3.就学指導についての的確な説明及び情報提供の一層の充実

 障害のある児童生徒の就学指導の過程や就学先における教育内容等について、児童生徒及び保護者に対する説明及び情報提供を一層充実する観点

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)