資料1 特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議(第1回~第3回)における主な意見

1.各学校における特別支援教育の推進体制の整備について

  • 特別支援教育はかなり進んだがまだ完成地点ではない。形や枠ができたところでありこれから実効性あるものにする必要がある。
  • 小中学校では形の上での体制整備はほぼ完了。個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成・活用など中身の充実が課題。コーディネーターや校内委員会も質を精査すべき時期。
  • 幼稚園、高校は小中と違いこれまでの特殊教育のノウハウがなく、どのような形で特別支援教育の推進を図っていくかが課題。
  • 特別支援教育推進の基盤として特別支援学校は必要であり、今後専門性を高めていくことが課題。
  • 通常学級の教員は、発達障害等の理解度や知識、経験が不足している場合が多い。多忙も問題。
  • 現在の制度や仕組みの中で通常学級の教員に特別支援教育で要求されていることをすべてやらせようとしても無理。通常学級では、教員の資質向上だけでなく外部のPT、ST、OT、心理士等の活用など教員を支えるシステム作りが必要。学校単位の専門性の担保、地域単位での支援体制を如何に整備するかを考えるべき。
  • 障害のある子どもは、必要に応じて個別又は少人数での特別指導が必要。
  • LD、ADHD、高機能自閉症の子どもについて通常学級の支援方策が課題。
  • 巡回指導は、子どもの変容を見取り教員との関係を構築するためにも年1、2回ではなく、月1回とするなど定期的に行うべき。
  • 特別支援教育コーディネーターを専任化すべき。
  • 小学校にもスクールカウンセラーを置くべき。
  • 特別支援教育支援員は不交付団体にも工夫すべき。
  • 特別支援教育のための教員の配置も考えるべき。
  • 周囲の子どもや保護者、社会全体の理解不足が、地域の支援体制を進める上でのネック。
  • 校内委員会やコーディネーターについて保護者の認知度が低い。

2.乳幼児期から学校卒業後まで一貫した支援について

  • 小学1年生の問題が大きく保育園との連携が難しい。
  • 幼稚園、小・中・高等学校等での推進体制整備の課題について、接続を含めて検討する必要がある。
  • 幼児期から個別の教育支援計画を含めた形で様々な教育関係者が集まり、どのように支援するかを作ることは、質の高い教育支援を行うために重要な視点。
  • ライフステージを通した相談・支援について、移行期の支援が重要。支援の繋がりに切れ目が生じないよう関係者の連携強化が必要。また、どの時期に誰が責任を持ち担当するのか、窓口の一本化や伴走者は必要か等、具体的の議論が必要。これまでの各県の取り組み状況をみながら課題を整理すべき。
  • 個別の教育支援計画は、福祉・医療等の社会的資源が少なく横のつながりが不十分な場合がある。指導要領に位置づけても本来の趣旨がどこまで達成できるか心配。特に移行期の労働・福祉との連携の在り方を議論する必要がある。
  • 特別支援教育とは、従来の学校の在り方が障害種別や程度に拠っていたところから、ノンカテゴリーで個に応じた支援を行うこと。最終的には個別の教育支援計画や指導計画をどのように作成し、活かしていくかが重要。どの程度活用されているか調査すべき。
  • 個別の教育支援計画や指導計画について、PDCAサイクルの定着が大事。将来的には担当教員以外の者が入り策定・評価するシステムが良い。
  • 個別の指導計画について、現状は心理検査の活用や専門機関と連携して得た情報・アドバイスを入れた指導内容や目標の設定となっていない。
  • 個別の教育支援計画や指導計画について、就学前は児童福祉法において、学校教育段階は学校教育法に義務づけて定着させ実効性あるものにすべき。
  • 中学で通級指導の生徒が高校に入る状況。中学、高校間の接続・連携も必要。
  • 就労は都道府県により格差がある。一般就労への道筋をより多く確立する必要があり何が問題か議論すべき。
  • 学校卒業後、円滑に地域生活や就労への移行ができるよう、教育、福祉、就労施策の連携が重要。ハローワークや進路指導協議会等に関しても検討すべき。

3.障害のある児童生徒の就学について

  • 特別支援学校や特別支援学級に対する保護者の理解が進み、小学部でも特別支援学校志願者が増え、逆に特別支援学級に押し戻すような教育相談も行われている。
  • 教育委員会で特別支援学校への就学が望ましいと判断された子どもが、特別支援学級や通常学級に就学するケースが増え、小学校での対応の難しさを来している。
  • 就学指導委員会の判断と異なる就学をする場合も多い。小学校就学後、途中で就学先が変わる子どもも増加。ある程度経過した上で様子を見て、保護者との相談も踏まえた上で引き続き就学指導を行う必要がある。
  • 現行の就学指導制度は、自己決定と本人参加というような国際的な流れと合致しているのか疑問。就学の義務制ではなく選択制にすべき。
  • 非常に厳しい状態の子どもが保護者の意向で小学校に就学する場合、支援員をつければそれで済むものではない。その子にとって本当に適切な学校に就学させることが必要。教育委員会の教育的措置として一定の就学手続きは必要。
  • 保護者の希望と本人にとって本当に必要なニードは異なる。親の意向だけで専門的な教育ができない場に就学させるのはある意味教育の放棄。成人した状態からさかのぼって今教育的に何が必要かの視点を持つことが重要。
  • 中学、高校、卒業後に向けての情報不足の中、単なる学校の選択だけの就学支援となっていることが課題。入学後のアフターケアも不十分。
  • 本年度から就学支援シート(幼稚園や保育園で行ってきた支援、専門機関による療育経歴や課題等が記入されたもの)を活用しているが、このようなものがさらに導入され活用されることを願う。
  • いかに早い時期から適切な相談体制ができるかが非常に大きな話。適切な就学指導につなげるためには、就学の話だけではなく、どのような支援がその子にとって必要かという長いスパンからの相談体制づくりが必要。
  • 就学相談にかからずにいわゆる気にかかる子どもが入学する場合の対応も困難。5歳児健診を行い社会性やコミュニケーション能力を専門家が判断すべき。就学時健診は特別支援教育に対応せずに行われており改善が必要。
  • 通常学級、特別支援学級、特別支援学校の制度の落差が大きいこと、硬直性があること、一発で振り分ける方式になっていることがネック。落差のない連続性のある制度にすべき。また、双方向の柔軟性のある仕組みにすべき。
  • 特別支援学級から通常学級に逆戻りする子どもは多く、また、体験入学をする例などもあり、今現在全く硬直していないと思う。
  • 硬直性について、現在の就学指導の体制そのものの中でも、取組方法や取り組む人の意識により経過を見て適宜見直すなど改善は見られる。
  • 個別の支援計画をきちんと作成し、子どもにとってその都度最適の場を考えれば良いという様にならないか。就学指導という言葉もやめて良いのではないか。
  • 法的、行政的なシステムの中で、硬直的又は一発振り分け方式でない方向に持っていけるのかどうかという点からも検討すれば、現実的な方向性が出せるのではないか。
  • 現在の特別支援学校や特別支援学級は法律による定数措置で守られた制度でもある。連続性や柔軟な制度もわかるが、逆に現在守られている制度が弱くなる可能性もある。一定の境目が明確となるように制度設計がある程度しっかりしていないと難しい。
  • インクルージョンについて、在籍は地元学校の通常学級とし、必要に応じて特別支援学級や特別支援学校において、専門性があり少人数での教育を受けられるよう選択できるシステムが良い。
  • 在籍は地元の学校で一緒に過ごす時間を確保する考えが根本になければ、いくら専門的な教育を行ったとしても住みやすい世の中にならない。
  • 一緒に過ごすことは理念としては正しいとしても、きちんとした教育がなされない場合は形を変えた放置である。
  • 一部でフルインクルージョンも言われているが、専門性や特別の場における指導は必要。
  • まずは教員の専門性をしっかり保障しなければ適正就学どころではない。
  • 認定就学や権利条約に定める合理的配慮の検討が重要。特別支援教育と通常教育それぞれが両輪の形で進めることが認知されれば一番良い。

4.教員の専門性について

  • 「専門性」という言葉の中身についても検討すべき。
  • 教員養成時に特別支援教育や障害児教育に関するものを必須にすべき。
  • 全校で特別支援教育に取り組む上で教員誰もが持つべき最低の資質、知識、技能に加え、特別支援教育に携わる教員として何が必要か踏まえる必要がある。
  • 特別支援学校教諭免許状取得率向上のための仕組みや特別支援学級、特別支援教室という広がりを持つ中での免許状の在り方について検討する必要がある。
  • 特別支援学校障害種別に対応した専門性は小中学校でも必要であり、専門性を担保できる仕組みをつくるべき。なし崩し的に一緒に学べる場があるということでは難しい。
  • 課題は教員養成、採用、異動に関する問題。通常学校との間で異動の多いところでは、専門性を本当に身に付けるにはかなり時間がかかる。研修の充実として国立特別支援教育総合研究所との連携も必要。
  • 特別支援学校における専門性と通常学校における専門性を分けて議論すべき。
  • 特別支援学校の教員の専門性は向上しているが、特別支援学級の教員の専門性はまだ不十分。専門的な研修の場が少ないことが心配。教員免許の部分でこの問題を取り込むべき。
  • 特別支援学級は特別支援学校並みの専門性を持つ場と考えるが、教員の専門性や校内での特別支援学級についての理解等の問題もあり現実的にはなかなか厳しく今後の課題。
  • 通級指導の教員の専門性の保証が必要。
  • 現在の制度や仕組みの中で通常学級の教員に特別支援教育で要求されていることすべてやらせようとしても無理。通常学級では、教員の資質向上だけでなく外部のPT、ST、OT、心理士等の活用など教員を支えるシステム作りが必要。学校単位の専門性の担保、地域単位での支援体制を如何に整備するかを考えるべき。(再掲)
  • 子どもの能力に応じた適切な指導方針の立て方について現場では不十分。体制整備の中で教員がどのような知識、能力、技能が必要かを考えることが重要。
  • 特別支援教育の視点だけでは特別支援教育の推進は困難。学級経営力、授業力、特別支援教育、教員としての基本的資質の総合力が求めらる。特に学級経営力が大事。研修もより具体的で実践的な内容にすべき。現場では対応力が求められる。
  • 気になる生徒をピックアップし、教員と精神科医が交流しながらケーススタディする例があるが、教員の理解を高めるためには効果的。
  • 特別支援学級増加の中、若い教員は指導教官もおらず誰に聞けば良いか、誰をモデルにすべきかという現実的な厳しい状況にある。
  • 学習指導要領の解説書に、特別支援教育の視点も入れつつ具体的な対応方法や展開例等を盛り込めば教員は取りかかりやすい。
  • 学習指導要領の大きな課題は自立活動の部分。これを基に個別の指導計画を作成するが、通常学級の障害のある子どもに使用しようとしてもわかりにくくて使えない。内容を見直すべき。
  • 自立活動を主とする教育課程の子どもの授業づくりについて、経験ある教員を育成すべき。教員の異動システムや年数的なものから保護者は不安。
  • 教科教育は下手なカウンセリングよりずっと子どもの成長と進歩を支えるもの。スクールカウンセラーを雇うよりも特別支援教育の専門性のある教員を雇う方がよほど子ども達の心のケアになる。

5.その他

  • 特別支援教室構想について議論すべき。
  • わかりにくい困難さを持つ子どもが多く、巡回相談で最初に上がってくる子どもは自閉症や学習障害の子どもではない。学習が遅れて先生が気付くのが実態。保護者の理解の問題もあり、特別支援学級や通級に結びつきにくいところもあり、移行の場としての特別支援教室は必要。
  • 特別支援教室について、それがあるという理由で障害のある子どもが直結する恐れがあるが、それは特別支援教育の考え方ではない。
  • 定数上の扱いがクリアできるのであれば、すべての小中学校に特別支援教室を設置すれば様々な障害のある子どもへの対応が可能になるのではないか。
  • 特別支援学校の分教室と特別支援学級との兼ね合いをどう考えるかが課題。
  • 交流及び共同学習をどのようにするか検討すべき。
  • 自閉症について、通級指導では障害種に明記されているが特別支援学校や特別支援学級では明記されておらず違和感がある。
  • 自閉症の子どもは増加傾向にあり、現場の指導上、学級経営上の大きな課題。
  • 知的障害学級に発達障害の子どもが多く、教員の意見でも情緒障害学級の設置要望が高い。
  • 最近の学級崩壊は特別支援教育の子どもが要因となるものもある。
  • 高校では、入学する生徒の状況により各高校様々な対応があるが、高校で特別支援教育の考え方をどのように上手く入れ込んでいくかが非常に大切。
  • 高校におけるグレーゾーンの子どもの就学について、特別支援学校か高校かの問題も出てくる。高校での特別支援学級を検討すべき。教室不足の解消や複数障害種への対応を図る上で意義があるほか、小中学校を特別支援学級で過ごした子どもの受け皿にもなる。
  • 高校における通級指導の位置づけ、特にソーシャルスキル等の指導を行う場合、学習指導要領との整合性について課題となる。
  • 高校における発達障害について、実態としては診断を受けた生徒が多くいるわけではない。診断はないが発達障害の可能性のある生徒がいる。
  • 高等教育の中での特別支援教育を考える場合には、ギフテッドに対する教育についても検討すべき。
  • 障害種別の枠を超えた特別支援学校の設置という観点で統合化を行う際、障害種ごとの専門性を担保することが必要。
  • 学校の専門性について、認知の特性に沿った教育をもう一度見直すべき。またそのためには、例えば学習指導要領で発達障害の子どもの指導に関する事項を記載する等指導書の充実が課題。また、様々な学び方に対応した教科書の在り方について考える必要がある。発達障害の子どもも含めて自ら学べるような教科書であることが望ましい。
  • 学校の校内研究に特別支援教育の視点を入れることが大事。教科と特別支援教育の融合を取り入れることが課題。
  • すべての教科等の基盤となる特別支援教育という視点で考えれば、学習指導要領について、幼小中よりも特別支援学校が先行しても良い位の時代。教科等で特別支援教育の視点を含めた教科の専門性を打ち出すことも検討して良い。
  • 学校そのもの、教育そのものが理念として特別支援教育を打ち立てていくということをきちんと伝えるべき。
  • 特別支援教育の質、量を高めるためには、最終的には教職員の意識の高揚と保護者が支援者の一人であることが大事。PTA活動等様々な活動の中で掘り下げるべき。学校教育、地域教育、家庭教育の3者があってこそ教育は成り立つものであり、親の教育に対する自覚は最重要課題。
  • 教員はゆとりがなく特別なニーズのある子どもへの対応が困難。若手教員の育成とともに1学級の児童数も考えて欲しい。
  • 通常の学校に障害のある子どもがどの程度入るか、又は当然いることを前提にして学校経営・学校教育を行うということは確認すべき。
  • 放課後や夏休み等の居場所確保は大変重要。
  • 島嶼地区など少人数地域での対処方法や支援の仕組みを国全体としてどのように考えるかを検討すべき。
  • 特別支援学級について1人学級~3人学級等。小学校入学時から1人の教員が3年間1人の子どもを指導することが教育活動と言えるか、社会性が身につくか疑問。今後特別支援学級の運営方法が課題。
  • 障害の極めて重い子どもにどう対応するかは大事な問題。訪問教育の実態や望ましい姿を考える必要がある。
  • 医療的ケアが必要な子どもが増加。保護者は、子どもが授業中席を外さずに医療的ケアを受け、皆と一緒に教育を受けることができる体制を望んでいる。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)