審議会情報へ

文化審議会

2002/07/02 議事録
文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会国際小委員会(第1回)議事要旨

1  日  時   平成14年7月2日(火)10時30分〜13時

2  場  所 三田共用会議所第2特別会議室

3  出席者 (委員)
齊藤、井上、今村、上原、加藤、久保田、小泉、児玉、関口、大楽、道垣内、半田、前田、増山、山地の各委員、北川会長
(文化庁)
丸山長官官房審議官、村田国際課長、岡本著作権課長ほか関係者

  配付資料

資料1     著作権分科会・国際小委員会委員名簿
資料2   小委員会の設置について(平成14年5月7日  文化審議会著作権分科会決定)
資料3   著作権をめぐる最近の動向について
  −1 知的財産戦略会議の開催について(平成14年2月25日  内閣総理大臣決裁)
  −2 知的財産戦略専門調査会の設置等について(平成14年1月30日  総合科学技術会議)
  −3 司法制度推進計画(抄)(平成14年3月19日  閣議決定)
  −4 文化審議会答申「文化を大切にする社会の構築について」(抄)(平成14年4月)
  −5 高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部の運営について(平成13年1月22日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)
資料4   著作権に関する主な国際的動向
  −1 海賊版対策について
  −2 放送機関に関する条約(仮称)について
  −3 第7回著作権等常設委員会の概要について
  −4 視聴覚的実演に関する条約(仮称)について
  −5 著作権に関する世界知的所有権機関条約(WCT)
  −6 実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)
  −7 WCT・WPPT加盟国リスト
  −8 ヘーグ国際私法会議について
  −9 日米規制改革・競争政策イニシアティブについて
資料5   審議事項例
資料6   国際小委員会のスケジュール

概  要
(1) 開会

(2) 委員及び文化庁出席者紹介
  事務局から委員及び事務局の紹介が行われた。

(3) 議事
1 国際小委員会主査の選任について
  文化審議会著作権分科会運営規則第3条第3項の規定により当該小委員会に属する委員及び臨時委員の互選により選任することになっており、事務局より齊藤委員に昨年度に引き続きお願いしてはどうか、との発言があり、満場一致で齊藤委員が主査に選任された。
  また、文化審議会著作権分科会運営規則第3条第5項の規定に基づき、半田委員が副主査に指名された。

2 国際小委員会の概要について
  事務局より、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務等について説明が行われた。

3 著作権の国際的動向について
  事務局から資料に基づき説明があった後、各委員により以下のような意見交換が行われた。

(○:委員  △:事務局)
資料4の「8.フォークロアの表現の保護」について、先進国が反対した理由を教えてほしい。また、「4ケーススタディ」とは法的な保護に関するものなのか。

  米国をはじめとする先進国は、権利の帰属先、国境を越えて存在するフォークロアの取扱等、具体的な国際条約を作成する前に基本的な考え方を整理する必要があるという理由から、現時点で具体的な条約作成等を行うことには反対したが、議論を継続していくことについては反対していない。また、ケーススタディについては、一部の国で著作権法や商標法上、フォークロアについて特別の規定を設けていたり、慣習法上保護されている場合があり、このような各国の保護の実態を把握することの重要性について各国の合意が得られたことから、WIPO事務局が検討することになったものである。

  WIPOにおいて視聴覚的実演の保護に関する条約の検討が再開された際、日本の条文案は本小委員会で作成されるのか。あるいは、他の機関、小委員会で作成されるのか。

  従来、日本の著作権法制においては、まず国内法を条約の保護のレベルに引き上げてから、内国民待遇によりその保護を外国の権利者も均霑するという形で新条約に対応してきた。このため、条約策定に当たっては、国内の権利者に対し付与すべき権利をまず検討することになるため、本小委員会ではなく映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会等において検討することとなると考える。本小委員会においては、あくまでも我が国が条約交渉上果たすべき役割について大局的な観点から検討していただきたい。

  日米規制改革・競争政策イニシアティブについて、米国側の反応を詳しく教えてほしい。

  米国側要望である「一時的複製」については、昨年12月の文化審議会著作権分科会の報告を受けて、いわゆる「一時的蓄積」には、「複製」となり得る場合もある、とした日本側の考え方を米国側はUSTRの報告書等で高く評価しており、来年度以降、この話が再燃することはないのではないか、と考えている。

  日本側要望に関しては、協議継続となっているのは、日本側としては不満足ということなのか。

  我々は極めて不本意であると考えている。今後、米国側から提出された資料を吟味して、対応していきたい。

  「コンテンツ海外流通促進機構」(仮称)と、「国際知的財産保護フォーラム」との関係をどう考えればいいのか。また、同機構と海賊版対策連絡協議会との位置付けはどうなっているのか。

  フォーラムではいくつかのプロジェクトをたちあげており、機構が設立されたら、自動的にフォーラムのプロジェクトの一つという位置付けとなる方向で、関係省庁等と調整している。また、フォーラムのプロジェクトのうち海賊版対策と関連の深いものについては、適宜フォローアップをし、フォーラムと機構との連携を図っていきたい。
  また、海賊版対策連絡協議会は当面の海賊版対策のためのアクション・プランについて、とりまとめたところだが、機構については所掌情報の共有等具体的に展開をしていただきたいと考えている。さらに協議会の構成員には、機構の企画委員会的な組織の中核的メンバーとなって、具体的な活動の企画をしていただければ、と考えている。

  WCT・WPPTの締結状況について、EU等先進諸国が加入していないので、条約の機能が弱まると思うが、先進諸国が加入する動きはないのか。

  EUはディレクティブを出しているので年内に加入するといわれていた。しかし、ドイツやフランスが選挙等の関係で、国内の調整が難しく、EUは全加盟国の国内法が整備された段階で締結することとなっているので、年内は難しいかもしれないが、来年のはじめには加入するのではないか。いずれにしろ本年の秋にWCT・WPPT加入会議が開かれ、条約が実際に動き出すことになるので、先進諸国の加入も進んでいくのではないか。

  半導体チップ法以来、EUは、ワン・ボート、ワン・ボイスとすることとなったが、今の説明によれば、ディレクティブを出せば条約に加入できるというのではなく、各国の国内法を整備しなくてはならないので、実態はうまくいってないように思う。EUは新条約の加入において、発言形態がワン・ボートとなっているのか。

  WIPOの中でどう決めているかも重要だが、EUの中でどうしているのか知りたい。

  資料5について、数点述べたい。
  まず、「アジア地域との連携の強化及び海賊版対策の在り方」について、レコードのように販売されているものの海賊版と、放送のように販売されていないものの海賊版とでは対応は違わざるを得ないことを認識してほしい。即ち、前者は市場に出ているレコードの海賊版が作成される、つまり一次利用における権利侵害だが、後者は、一次利用としての放送そのものがあり、その放送を違法に固定して作成される海賊版は、放送の二次利用に関する権利侵害である。損害額が明らかになるのはビデオを販売する事業を行う場合であり、事業を行わない場合には損害額の算定はレコードに比べ困難である。このように種類によって異なる特性があることも踏まえて、海賊版対策を考えていく必要がある。
  次に放送機関に関する条約についてだが、今回のWIPO著作権等常設委員会では、昨年までの状況に比べると、前向きな議論がなされた、との印象をもった。したがって、米国の対応次第では、来年度以降議論が急速に進むのではないか。その際に、条約案の作成はしなくとも、条約作成に向けての日本の対応については、本小委員会で検討していくべきではないか。
  さらに、WIPO事務局では、放送機関に関する条約は議論を収斂していく方向で努力しているが、視聴覚的実演に関する条約を放置していくこともできないとも考えている。したがって、放送機関に関する条約の策定時を外交会議開催のデッドエンドとするなどして、視聴覚的実演に関する条約についての議論を促進すべきである。また、これとの関連で、実演家の権利に関する国際的動向についても教えていただきたい。
  最後に視聴覚的実演及び放送機関に関する条約を作成する際にも、海賊版対策を検討する際にも国際私法をどう取り入れるかという問題の検討は不可避である。このため、ヘーグ国際法会議における進捗状況についても本小委員会の場で適宜教えていただきたい。

  資料4−4の「2.主要論点:実演家の権利行使」について、米国が国内法で定めた権利移転についても、他の国で法的効果を持つように主張したので、EUは自国法の輸出に繋がるので受け入れることができない、として、最終的な合意に至らなかったと理解しているので、確認願いたい。

  資料5及び6について、本小委員会の審議事項には年内に決着が見られない国際的動きがある中で、本小委員会のスケジュールでは年内に報告書をまとめるとなっているが、本小委員会は解散するのか。また来年に向けて本小委員会と同様の場が設けられるのか。

  著作権分科会及び各小委員会の任期が1年と定められているので、その成果を何らかのまとめをするということで、このようなスケジュールになっている。したがって、成果の見られたものについては報告書に書き込むが、方向性が定まらないものについては継続審議をすることとしたいと考えている。著作権分科会が小委員会の設置については決めていただくことではあるが、国際的課題については、来年度以降も何らかの小委員会を設けて引き続き審議をしていくべきであると考えている。

  裁判管轄及び準拠法については、ヘーグ国際私法会議においては著作権は適用対象外となる可能性があるため、ヘーグ条約に関わらず検討を進めるべきである。また、ヘーグ条約は民事についての管轄ルールなので、損害賠償請求を行うにあたっても侵害者の特定が必要であり、特に、途上国においては、侵害者を特定できても支払能力に限界がある場合が多いので、実効性はない可能性が高い。その他、ヘーグ条約においては、差止め等の仮処分が重要であるが、これらの規定もヘーグ国際私法会議では対象外となる可能性がある。また、海賊版対策等を講じるに当たっては、国際私法ができる役割には限界があり、各国の制度を活用せざるを得ないので、各国国内法の保護水準をあげていくことが必要である。

  ヘーグ国際私法会議の結果を待っていては、海賊版やインターネット上の侵害など緊急の課題が解決できないので、本小委員会で独自に検討していくことが必要ではないか。また、WIPO等における検討についても対応していきたい。

  資料5の「アジア地域との連携の強化及び海賊」版対策の在り方」において、二国間交渉する際の相手国を特定しないと効果的な議論はできないのではないか。「国際的ルール作りへの参画の在り方」について、TRIPSの利用の仕方や産業構造審議会が出している不公正貿易報告書のフォローアップなども追加してはどうか。

  台湾や韓国における並行輸入の問題について、輸入権というよりも、契約できちんと縛られている場合には他の国に輸出された場合には権利が消尽しない、などの対応処置を「アジア地域との連携の強化及び海賊版対策の在り方」の中で検討していただきたい。

  海賊版対策、ということであれば、正規製品の並行輸入についてははずしていいのではないか。

  日本レコード協会としても並行輸入を問題視しており、海外で行われている行為に端を発しているという点からみれば、海賊版対策の範疇に入るのではないか。

  前述のとおり、条約秩序の提案をするのであれば、国内法の担保がまず先である。この問題については法制小委員会の審議事項の一つとなっているが、現在関係者間で検討中である。

  資料6で、「著作権の戦略的な対応」とあるが、知的財産戦略大綱に限定して審議するのか。

  知的財産戦略大綱は大まかな方向性が示されるだけなので、これに限定せず審議していただきたい。

4 次回日程
  次回日程については、事務局から7月24日(水)10時30分から日本  芸術文化振興会第一会議室にて開催する旨の発言があった。

5 閉会

(文化庁長官官房国際課)

ページの先頭へ