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資料4−3

第7回WIPO著作権等常設委員会の概要について

平成14年7月2日
文化庁国際課

1 出席者等
  2002年5月13日から17日まで、ジュネーブのWIPO(世界知的所有権機関)本部において標記会合が開催された。前回会合同様、フィンランドのリエデス氏を議長に選出した後、1データベースの保護、2放送機関の保護、3その他についての議論が行われた。日本政府から中園文化庁国際著作権専門官、水谷準総務省コンテンツ流通促進室主査、佐藤透在ジュネーブ代表部一等書記官が出席した。


2 会議の概要
1. データベースの保護
  今回会合に先立ち事務局より、創作性のないデータベースの保護に関する調査レポートとして5種類のものが配布されていた。しかしながら、これらレポートの配布が常設委員会の間際になったこともあり、ECを含む多くの国からレポートの内容につき分析作業を行う時間が十分確保できず今回検討を行うことは適切でない旨の意見が寄せられた。このため、今回会合においてはレポートについての議論は行われず、各国は配布されたレポートについて分析作業を進めた上で、次回会合において引き続き議論を行うこととなった。

2. 放送機関の保護
  今回会合においては、まず事務局作成のテクニカルバックグラウンドペーパー(SCCR7/8)についての論議が行われ、そのあと保護の客体(何を保護するのか)及びその客体に付与する権利について事務局が作成したペーパー(CRP/SCCR/7/1 rev.2)に基づき議論が行われた。議論においては、ローマ条約上既に保護されている(伝統的な)放送及び有線放送(インターネット的な要素は除外)については、これを保護の客体とすることについて概ねの合意を得えたが、所謂、インターネット放送についての取り扱いについては結論が出なかった。ただし、インターネット放送のうち新条約で保護の客体となるのは、real-time streamingのみであり、固定物の利用可能化についてはこれをインターネット放送とは見なさないということが明確になった意味では若干の進歩があった。また、「放送前信号」については、複数の政府等から、必ずしも排他的権利を放送機関に付与することに拘らず、通信法制の強化等により柔軟に対応すべきとの意見が出されたが、放送機関のNGOからは、排他的権利を付与することによる放送前信号の保護が必要であるとの意見が表明された。

3. その他
  今回会合の最後に、本委員会で将来検討(study, review)すべき事項について各国の意見が求められたが、突然の提案であったため、結論は出されず、次回会合で引き続き議論が行われることとなった。各国から提案された主な検討事項の候補は以下のとおり。

インターネットサービスプロバイダーの法的責任
インターネット上の侵害にかかる準拠法
著作権登録制度
追求権
権利の集中管理制度
フォークロアの保護
技術的手段とデジタル著作権管理    等


3 今回会合の結論等
  今回会合においては以上の議論を踏まえて、以下が決定された。
「データベースの保護」は、次回SCCRのアジェンダの項目になること
「放送機関の保護」は、次回SCCRのアジェンダの主要項目になること
9月16日までに追加の提案がある国は事務局に提出のこと
今回SCCRにおける議論及びルームドキュメント(CPR/SCCR/7/1 Rev2.)を踏まえたワーキングペーパーを事務局が議長と相談の上作成すること
次回SCCRは11月4日から8日にかけて開催されること
次回会合と合同して「real-time streaming」と「放送」に関する技術的・法的事項を検討する情報提供のための会合を事務局がアレンジすること。


(参考)

CRP/SCCR/7/1 Rev.2

WIPO
STANDING COMMITTEE ON COPYRIGHT AND RELATED RIGHTS
Seventh Session

May 13 to 17, 2002
Protection of the Right of Broadcasting Organizations

OBJECT

1) “Traditional” transmission over the air for direct reception by the general public
(伝統的な無線放送)

2) Cable originated transmission of program-carrying signals
(伝統的な有線放送)

3) Pre-broadcast signals
(放送前信号)

4) Simultaneous real-time streaming of 1) and/or 2)
(放送/有線放送の同時のreal-time streaming)

5) Internet originated real-time streaming
(インターネット上のreal-time streaming)
 

RIGHTS/RESTRICTED ACTS

1) Fixation   (固定)

2) Reproduction of fixations(複製)

3) Distribution of fixations  (頒布)

4) Decryption of encrypted broadcasts  (暗号解除)

5) Rebroadcasting(再放送)

6) Cable retransmission
(有線再送信)

7) Retransmission over the Internet
(インターネット再送信)

8) Making available fixed broadcasts
(固定物の利用可能化)

9) Rental of fixations
(貸与)

10) Communication to the public (in places accessible to the public)
(公衆への伝達)


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