3.活動実施編
(1)参加者に対する活動への意識醸成
体験機会の提供
ポイント
- 体験型のボランティア活動の機会を設定し、活動参加のきっかけを掴んでもらう。
- 学校の授業の一環としてボランティア活動を取り入れてもらい、子どもに対し体験の機会を提供するように努める。
ボランティア活動に興味・関心のある人の中には、活動に参加するきっかけがなかなか掴めないという人もいるかもしれない。また、継続的に参加することには抵抗を感じている人も少なくないと考えられる。このため、まずはきっかけとしてボランティア活動に体験的に参加してもらうことが考えられる。一度何らかの形でボランティア活動を体験した人は、そのことを足掛かりにして継続的な活動に参加することが多い。
特に学校では、授業の一環でボランティア活動を体験させるところが増えており、ボランティアへの関心を高めることに役立っている。また、子どもたちに対する学習効果が非常に大きいという以外にも、地域の活性化や子どもから親への活動参加の波及など様々なメリットがある。
参考事例
【あじさいの会】
- 配食ボランティアであるあじさいの会では、ボランティアに関する講演会を会員以外の一般の人も参加できる形で随時開催し、ボランティアのきっかけとなる機会提供を行なっている。
活動目的の確認と周知
ポイント
- 活動中も参加者に対し活動目的や理念を繰り返し説明し、意識の統一を図る。
- 必要に応じて、活動手段を変更するなど軌道修正を行なう。
- 派生的な活動の必要が出てきた場合は、活動目的に合わせて適切に対応する。
いざ活動を始めてみると、設定した目的とずれが生じるなど、当初の想定とは異なる事態が起こる可能性もある。その場合、まずは参加者に対し活動目的や理念を繰り返し説明し、意識の統一を図ることが重要である。そして、目的に沿った活動を行なうよう参加者に促したり、活動手段などを変えて軌道修正を行なう。
また、派生的な活動を行なう必要が出てきた場合は、参加者の意見をよく聞きながら、活動目的と照らし合わせた上で対応していく必要がある。
参考事例
- 参加者の中には、当初はともすれば「やると決まったから参加した」という受け身の気持ちの抜けない参加者もいたが、準備段階だけなく活動期間中にも繰り返し活動の意義を参加者に徹底する中で、参加者の意識も次第に積極化してきた。
- 本事例の担当者は、ボランティアが成功するための重要な要素として、活動の意義を繰り返し周知徹底し、意識の共有を図ることを挙げている。
- 高知女子大学の学生を中心としたエスコーターズの活動は、マスコミ等を通じて大きな話題となり、高知県知事が活動に参加するなど、中心商店街のPRとしては大きな成果となっている。しかし、マスコミで話題になったことから、学生の側にも、目立ちたいというような意識で活動に参加する者も見られるようになっているため、活動に対する意識の醸成・教育は欠かすことのできないものだと考えている。
メンバーの自主性の尊重
ポイント
- 参加者の自主性にできるだけ任せ、活動の押し付けなどはしないようにする。
- 半面、子どもや学生が主体となる活動では、学校などのフォロー体制も必要
活動を進めていくうちに、個々のボランティアから活動に対する様々な意見が出てくることがある。それは、活動方法上の課題、組織の課題、活動目的などに関わる課題など、多岐に亘ると考えられる。そのようなとき、組織のリーダー層は、参加者一人一人の意見を尊重し、無理にまとめたり活動を押し付けようとはしないことが大切である。決して指示的、命令的な態度はとらず、参加者の自主性にできるだけ任せ、必要に応じて話し合いの場を持つようにする。こうすることにより、個々のボランティア、及び組織全体の成長につながるだけではなく、リーダー層に精神的な負担をかけないというメリットにもなる。
一方で、子どもや学生が主体となる活動では、必要に応じて学校などが支援や協力を行い、周囲へ迷惑をかけずに自主的な活動を行えるようにすることも大切である。
参考事例
- 具体的な活動内容の設定に当たっては、生徒の自主性に任せるようにしている。決定した事項の中で、教師や学校のフォローが必要な場合に協力する体制をとっている。
- 一方で、学校では決定した活動に関しては、受け入れ側への迷惑も考え途中でやめるといった事がないよう指導している。
- このイベントは、「学生たちの自主的な活動」という点が最も重要な要素であり、あえて教員側から手を貸したりはしないようにしている。
- ただし、学生自身が楽しんでできる活動であることは、周囲からは単なる遊びに見える場合もあり、地域や関係団体などの「大人」の理解が得られないケースも生じる。そのような場合には、活動の意義や目的を積極的に説明するという支援を行っている。
(2)トラブルへの対策
活動時のトラブル対策
ポイント
- 計画段階から起こりうるトラブルを想定しておく。
- 活動の現場ごとに責任者を明確にしておき、迅速に対応できるようにする。
活動をスムーズに進めるために、未然にトラブルを防ぐ取り組みをしっかり行なう必要がある。先ず、活動の計画段階から、どのようなトラブルが起こりうるかを想定しておくと、その対策も立てやすくなる。また、実施段階では活動現場ごとに安全管理やトラブル対応に関する責任者を置いて、迅速な対応を心掛けることが望ましい。
例えば、他人の家で行なう活動では訪問時のマナーの徹底、公共の場所を利用する活動では周辺住民に周知を図り理解を得ること、が不可欠となる。また、子どもが関わる活動では、帰宅時に事故やトラブルに巻き込まれる危険性が高くなるため、活動時間を早めたり保護者に連絡して迎えに来てもらうなど、何らかの対策を立てている事例が見られる。
参考事例
- 事例の中にも、想定される様々なトラブルを未然に回避すべく、様々な工夫を行なっているものが見られる。
- スノーバスターズ:雪かきに慣れない参加者がケガをすることのないよう、「屋根の上の雪かきはさせない」「3月は村外からの参加者は積雪状況によって受け入れを見合わせる事もある」「軒下に入る時は頭上を注意して活動を行なう」「道路の横断に留意することを徹底する」といったルールを設定している。
- 青森県立平内高等学校:高齢者宅を訪問し話し相手になるなどの活動を行なうみちくさボランティアにおいては、プライバシーへの配慮、金品の受け取りをしないことを徹底している。ただし、話し相手になる中でお茶・お菓子などをご馳走になることは良好な人間関係を構築する観点から認めている。
- 街道カーニバル:子ども達の身の安全を考え、小学生は保護者同伴による来場を必須とした。また、平成15年から祭りの開始時間を1時間早くしている。
- 北光クラブ:活動の終了時間が変更になりそうな場合は、参加している子どもの各家庭に連絡をして、迎えに来てもらうなどの対応をお願いしている。
- 明海大学:市との連携によるボランティア活動ということでトラブルが発生しないよう配慮することが求められている。また、市がマッチングをしていることでボランティアを必要としない施設が無理に受け入れをしようとすることもあることから、各施設を回って必要がなければ受け入れなくてよい旨を伝えている。