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教育行政

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社会教育士

社会教育主事 ver.

住民自治を支える「学び」の伴走者

中曽根 聡さん

[ 東京都 ]

杉並区教育委員会事務局 学校支援課
社会教育主事

中曽根 聡さん

平成元年に社会教育主事として杉並区立社会教育センターに配属。平成14年度頃より、杉並区の庁内プロジェクト「人・まち・夢プラン~協働による新しいまちづくりに向けて~」の検討にかかわったことから、地域人材育成プログラムの枠組みづくりを担当。平成23年度に教育改革推進課(翌年に学校支援課に名称変更)に異動し、杉並区教育ビジョン「共に学び共に支え共に創る杉並の教育」(杉並区教育振興基本計画)の策定をはじめ、ビジョンを具現化する、学校運営協議会の拡充や、区内の学校支援や地域教育の取組の充実に取り組む。兼務先の社会教育センターでは、住民一人ひとりの持ち味や可能性を引き出す、教育の特性を生かした地域人材育成プログラムとして「すぎなみ大人塾」を開催し、地域の多様な大人のネットワークづくりに取り組んできた。所属する特別区社会教育主事会では、研究者や雑誌編集者と協働して、「すぎなみ大人塾」卒塾生をはじめ首都圏の住民を対象に「学びのクリエイターになる!」講座を開催し、地域のなかに学びを生み出す仲間を広げる活動も展開してきた。

Q. 中曽根さんは、専門職の社会教育主事として勤務されています。社会教育主事の仕事ってなかなかわかりにくいこともありますが具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

  •  社会教育主事の仕事というと、ひとつは社会教育事業をどういった枠組みで進めていくかという計画づくりがありますし、社会教育は行政だけが行っているわけではないので、様々な社会教育関係団体の求めに応じて、または一緒になって、社会教育施策を進めていくこともありますね。また、研修会など大人が学ぶ場を企画して運営していくなどといったこともあります。

  •  私の担当業務としては、学校支援課では、コミュニティ・スクールの設置拡充に関わって、学校運営協議会委員の選定や、委員への研修、成果検証などを行っています。社会教育センターでは、「すぎなみ大人塾」という地域人材育成を目的とした成人向け講座の事業を平成17年度に立ち上げ、これまで携わってきました。「すぎなみ大人塾」はこれまで地域とのつながりがなかった方々が地域参画への第一歩として参加してもらえるような講座として、年間3コースほど計画して実施している事業です。受講者は、「何をして良いかわからないけど自分の持っているスキルを活かして地域に貢献したい」といった生きがいづくりの要素から地域に参加しています。主役は受講者であり、その受講者の関心に合わせて外部講師や学習支援者を選定したり、大人塾の中から出てくる受講者発の自発的な活動を行政の担当部署につないだりしています。

会議風景
懇談風景

Q. これまで社会教育主事として仕事をされてきた中で、地域住民や関係者と幅広く関わることが多かったと思いますが、その際に大切にされてきたことはありますか。

  •  私が一番大事だと思うのは、色々な団体や個人の方が私に学習や活動の相談にいらした時に、その方の立ち位置に合わせて、次の一歩としてどのように踏み出していけば良いのか、一緒に考えていくことです。相談に来る人がいることは私自身の次の仕事やアクションへの「エネルギー」になってきたと思います。

  •  住民の学びや活動の種になる相談は活かさなければもったいないし、むしろひとつの講座をやるよりも一人ひとりの相談に応えることが住民自治の根底にある価値からすればより大事なことだと思います。

中曽根さんの仕事風景

中曽根さんってどんな人?

「すぎなみ大人塾」卒塾生すぎなみ協働プラザ 運営責任者 朝枝 晴美さん

「すぎなみ大人塾」卒塾生すぎなみ協働プラザ 運営責任者 朝枝 晴美さん

中曽根さんは提案もしてくれるし、相談にも乗ってくれるから活動しやすいです。中曽根さんのような社会教育主事が教育委員会だけじゃなくて、色々な部署にいてくださると良いのになあと思います。

「すぎなみ大人塾」卒塾生まちナカ・コミュニティ 西荻みなみ 代表理事 綾部 庄一さん

「すぎなみ大人塾」卒塾生<br>まちナカ・コミュニティ 西荻みなみ 代表理事 綾部 庄一さん

行政職員という感じがしない、仲間という感じがします。自分の仕事上でやりたいこともあると思いますが、みんなの土俵に降りて一緒に考えたり悩んだりしてくれる。アフターファイブもとことん付き合ってくれる。耕作放棄地を耕す事業なんかもやっていますがそこにも参加してくれています。

合同会社Active Learners共同代表 山ノ内 凜太郎さん

合同会社Active Learners共同代表 山ノ内 凜太郎さん

中曽根さんは行政の中にいながら外も中も見るというコーディネーターだと思います。地域に入り込んだり、飛び込んでいくのが上手なんだと思います。

Q. 相談を受けることが次へのエネルギーということですが、相談に来てもらえるということはそれだけ信頼をされているということですよね。そうした信頼関係をつくっていく秘訣があるのでしょうか?

  •  私は区役所にいれば行政の職員ですけど、家に帰れば一住民ですから区役所を訪れる住民と同じ立場も持ち合わせています。こうした公務員の二面性を意識して、相談があった際は、住民の言葉を心から共感的に聞くようにしています。そのような話を聞くことで、行政の職員だけど、住民の立場に立っている人という風に受け止めてもらえているんじゃないかと思います。そのように受け止めてもらえていると相手の率直な意見も出してもらいやすくなります。

  •  あとは、100人と知り合うというよりは、10人を知っている人と10人知り合うということを意識してつながりのネットワークを広げることです。地域で活動されている方から、お誘いを受けて面白そうだなと思ったら一緒になって出かけたり。行ってみるとそこでまた思ってもみない出会いがあって、新たな関係を作る上では大切な要素になっています。でもこれも仕事だと思うと大変なので、無理のない範囲で楽しむことが大事です(笑)。

中曽根さんへのインタビュー風景

Q. 地域に飛び出していく、フットワークの軽さが大切なんですね。社会教育主事をされていて中曽根さんが考える社会教育ってどういうものだと思いますか。

  •  教育行政は、教育委員会において「学校教育」と「社会教育」のセクションがあり、それらと並んで首長部局には課題別に色々なセクションがありますが、本当はその色々なセクションの根底に横たわり、ベースとなるのが社会教育なんじゃないかと思います。

  •  社会教育主事はそのなかで法的な根拠を持って、安定的に仕事が行える貴重な存在だと思います。根底に横たわっていてなかなかわかりにくい社会教育の性質を自覚しながら、だけど社会教育があってはじめて自治体の運営に求められる住民自治の機能が活発化できることを社会教育主事は認識しておく必要があるのではないかと思っています。あらゆるものが細分化してサービス化しているなかでは、「自分たちのことは自分たちでなんとかしよう!」と思える住民自治力を引き出していく、今後自治体に欠かせない機能だと思って仕事をしています。

住民の皆さんとの協力風景

Q. 住民一人ひとりに地域の問題を自分のことだと思ってもらうためのアプローチとして、例えば「学び」があるかと思いますが、住民自治を活性化していくことと「学び」はどのようなつながりがあると思いますか。

  •  「学び」とは一人ひとりがより良く生きたいと思うことであり、社会教育ではそのエネルギーをその人の中から引き出していくこと、他者と共有していくことだと思います。より良く生きたいという願いの延長に、地域的な課題を解決する活動へ展開していくプロセスを描いています。

  •  一人ひとりの願いから始まるので、関わりたいと思う人は地域課題解決に向けた活動の入口よりも広くなります。色々な人が関わって学びあえることが社会教育の最大の魅力ですね。

中曽根さんのインタビュー写真

社会教育主事は社会教育法上、教育委員会事務局に置くこととされていますが、現在、全国の社会教育主事の配置率は減少傾向にあります。社会教育主事の配置が行政にとってどのような効果があるとお考えですか。
(杉並区教育委員会事務局 次長 田中 哲さん)

杉並区では、社会教育主事を専門職として4名配置し、それぞれ「生涯学習の推進」「家庭・地域・学校の連携協働」「社会体育の振興」「社会教育施設の運営」を担当しています。社会教育主事は普段から多くの区民の方と接していて、生の声や活動など地域の悩みを肌感覚で掴んでいる存在です。これからは行政の施策全般に横串を刺すような施策展開が必要となってきます。そういった時に現場の声を把握し、地域にネットワークをもつ社会教育主事は、今後、区政を展開していく上では非常に重要な役割を担っていると思います。住民自治を進めていくベースには「学び」があると思っています。教育行政は一般行政を支える重要な行政であり、その核となるのが社会教育主事です。社会教育主事は、意欲や想いを引き出したりコーディネートしたり、行政と地域、地域と地域などを繋げたりと教育委員会だけでなく自治体各部署で力を発揮できる頼もしい存在であり、他の職員の仕事にも良い影響を及ぼしていると思います。

杉並区教育委員会事務局 次長 田中 哲さん

中曽根さんってどんな人?

社会教育委員の会議
議長 笹井 宏益さん

社会教育委員の会議 議長 笹井 宏益さん

社会教育って現場で起こっていることが基本だと思います。だから全国で色々なケースがありますが、少なくとも杉並区で起こっていることは中曽根さんが一番わかっています。現場で起こっていることを教えてくれる先生みたいな存在です。

杉並区教育委員会事務局 生涯学習推進課
社会教育主事 齋藤 尚久さん

杉並区教育委員会事務局 生涯学習推進課 社会教育主事 齋藤 尚久さん

普通の行政職員だと自分の「持ち味」を活かすというより、自分の「持ち分」の中だけで一生懸命やろうとしてしまいますが、中曽根さんは地域の方や外部とやり取りしながら、現場を豊かにして私たちを救ってくれています。そういうことができるのが中曽根さんの持ち味だと思います。

杉並区教育委員会事務局 庶務課計画担当係長 井上 ひとみさん

杉並区教育委員会事務局 庶務課計画担当係長 井上 ひとみさん

住民自治に向けて何が一番大切か、大切な学びとは何かと思った時に一番相談に乗ってくれるのが社会教育主事ですね。私たちは様々な分野から来ていますが、社会教育主事は深く長く教育委員会にいて それ以外の相談にも乗ってくださっています。教育委員会「外」にも「社会教育士」がいると良いなあと思います。

Q. 令和2年度より、社会教育士制度がスタートしていますが、今後、全国に増えてくる社会教育士と教育委員会の社会教育主事はどのように連携していけると考えますか。

  •  社会教育主事は教育委員会に置かれるものなので、「学び」によってまちの担い手を増やすため全体を見渡すことが求められていると思います。一方、社会教育士はそれぞれに限定的な課題やコミュニティを持っていて良いと考えています。社会教育士は特定のテーマやコミュニティで活躍していただき、社会教育主事はそうして活躍されている社会教育士が見えることで、次の施策や打つ手を考えるときに、社会教育士たちとつながり何ができるかと考えたり、行政内部の関係者につないだり、教育委員会の社会教育主事として次の仕事を描きやすくなると思います。そして何より地域に社会教育士がいることが心の支えになると思います。

  •  色々な立場で社会教育士という資格を取って、「どんなことから始めようか…。」と思ったときや実際に活動していて困ったことがあれば、是非、教育委員会の社会教育主事を訪ねて来て相談していただきたいなと思っています。

Q. 地域や教育委員会外に社会教育を理解して活動している社会教育士がいるというのは頼もしいですよね。最後に、中曽根さんは専門職の社会教育主事として30年以上仕事をされてきましたが、やりがいや率直な想いをお聞かせください。

  •  社会教育主事って、どこにいても社会教育主事になってしまうんですよね。家族のなかでも地域のなかでも社会教育主事になっちゃいます(笑)。個人的に地域で活動していても、自分の意見がありながらも、頭の中のどこかでこのグループが次の段階に行くためにはどういう問題提起をすれば良いのかということを考えていたりして、社会教育主事のスタンスが自分から抜けなくなっています。でも、それも含めて面白いなと思っているので楽しいです。

  •  社会教育主事をしていて、「すぎなみ大人塾」を受講した卒塾生が、地域で活動している姿を見ていると嬉しいですね。社会教育センターだけが社会教育をしているのではなくて、まちのいたるところで社会教育が生み出されていく可能性があって、その人の持っている世界が人との出会いや新しい知識を得たことで広がっていき、ものの見方が変わっていくというのは素晴らしいことですよね。

中曽根さんの社会教育士としての仕事風景

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