多様な障害に対応したプログラミング教育

  • 学習活動の分類:

    C教育課程内で各教科等とは別に実施するもの

  • 対象学年:

    小学校第1学年, 小学校第2学年, 小学校第3学年, 小学校第4学年, 小学校第5学年, 小学校第6学年

  • 教材タイプ:

    ビジュアル言語, タンジブル, その他

  • 使用ツール:

    Ozobot, Viscuit, プログラミングロボ コード・A・ピラー

  • 実施主体:

    富山県教育工学研究会

  • 実施都道府県:

    富山県

  • 事業区分:

    総務省事業

  • 情報提供者:

    管理者

  • コスト・環境:

    1)Code A Pillarロボット、難易度に応じたスタート地点とゴール地点を設定した学習環境、学習支援教材「戦略ボード」、ドローン蝶
    2)Ozobotロボット、iPad学習教材実行環境1台、迷路教材、難易度に応じた問題シート、作戦ボード、学習の手順やコードシールの貼り方をわかり易く説明した学習支援教材
    3)Viscuit、iPad 学習教材実行環境13台、絵を描く方法や、その絵を動かすためのメガネの使い方等を分かりやすく説明した学習支援教材「お助けシート」、メガネの仕組みを分かりやすく説明したり考えたりするための学習支援教材「確認ボード」、「海の世界」や「おばけの世界」を描くための素材集
    4)交流学習の学習環境
    特別支援級で学ぶ児童が、ミニ博士となって、通常級の2年生に学習したプログラミングを教えるという交流活動の学習環境は、「ピラーちゃんゾーン」「ビスケットゾーン」「オゾボットゾーン」の3つの活動フィールドを準備
    5) Wi−Fi環境について
    富山市立芝園小学校での実証では、学内ネットワークから独立した、独自の環境を構築した。インターネットへの接続は会場、設置にかかる費用および必要とされるインターネット側の帯域等を考慮し、NEC社製LTEホームルータ(Aterm HT100LN)とOCN社のOCNモバイルONEサービスの組合せを使用した。また学習用の端末はWi-FiにてLTEホームルータと接続したが、機器の仕様上、5台を超える機器の接続時に速度が低下し、接続が切れるなどの症状が発生する。そのためLTEホームルータにNEC社製Wi-Fiアクセスポイント(Aterm WR8750N)をEthernetにより接続し、5台を超える機器に対応した。

概要

富山市立芝園小学校では、富山県唯一となる知的障害、自閉症・情緒障害、肢体不自由、病弱、難聴等5種類の特別支援学級が開設されている。これら障害ある児童生徒を対象に、論理的思考力の向上のみならず、認知や運動、学習、コミュニケーション能力など、発達の諸側面ならびに自己効力感の向上を目指したプログラミング教育に取り組んだ。具体には、ピラー型ロボットやオゾボットロボット、ビスケットによるアニメ表現を用いたプログラミング学習カリキュラムとそれに対応した教材を開発し、これらを活用した授業実践を行った。選択したロボット教材やプログラミング言語は、障害のある児童にとって、彼らの行動が外界の反応という形で即時的に返ってくる「応答する環境」が学習への興味づけと持続に効果的であるという研究成果や対象とするロボットの構造がシンプルで機能が分かりやすいという点で選択した。
また、同時に、授業を支えるメンターの育成にも取り組んだ。
実施モデル開発にあたっては、児童の能動的学習や学習への持続的参加を促すための工夫として、一連の学習が、最初に「はらぺこあおむし」の物語を読み、学習への興味関心を高めつつ、「いもむしの成長にかかわる物語」というストリーのある教材や学習環境で行われた。学習カリキュラムは、「いもむしロボット『ピラーちゃん』をうごかしてみよう」「たこ焼きロボット(オゾボット)を動かしてみよう」「コンピュータ『ビスケット』をうごかしてみよう」の各テーマで2回ずつ、計6回の学習と、学習の成果を活かして、通常級の2年生のお友達に、プログラミングを教える交流学習から構成した。特にこの交流学習では、「Teaching is best learning」の考えのもとに、本事業でプログラミングを学習した対象児がミニ博士になって、通常級のお友達に教えるという状況設定で実証授業を行った。
ピラーちゃん、オゾボットを用いた学習では、常にPDCAサイクルで学習が進められ、写真にあるように、ロボットに目的行動をさせるためのプログラミングに取り組んだ。動かす前に戦略ボードや作戦ボードを使い論理的に考える(P)、考えたとおりにピラーちゃんを組み立てたり、オゾボットコードを配置し実行する(D)、目的の行動が取れたかチェック(C)、上手く行かなかったら再度考え考える(A)を繰り返す、合目的行動のためのプログラミングに取り組んだ。課題は、簡単な問題から高度な問題へ段階的に難易度があげられた。ここでは、論理的思考力、協同作業能力、コミュニケーション能力などの育成が図られた。
ビスケットでは、各自がアニメーションを作成するプログラミングを学習するのみならず、最終目標は、グループで「海の世界」又は「おばけの世界」づくりに取り組む課題であった。各自の絵コンテを協働することで、素晴らしい動きのあるアニメーション作品ができ、互いの作品を評価する活動で協働作業能力やコミュニケーション能力の向上につながった。

学習交流の様子を写した写真
写真 ピラーちゃんの説明をするミニ博士

交流学習では、写真に見られるように、活き活きとした表情で通常級の友だちに教える姿が見て取れて、自己効力感やコミュニケーション能力の向上に向けたプログラミング教育の可能性が明らかになった。
児童のアンケート結果からも、「ロボットが自分の指示通りに動いたことがうれしかった」「友だちと一緒に相談しながら取り組んだことが楽しかった」「今後もプログラミングを勉強したい」など、本実証モデルによる学習に肯定的な意見が多く見られた。客観的指標として、学習の前後で種々の認知機能検査や行動記録も実施したが、特に、DN−CAS検査では、有意にプランニング能力の向上が見られ、本モデルでの教材や教育方法の効果が明らかになった。

参考添付資料

関連教材情報