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著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第2回)議事録・配付資料

1. 日時
平成19年4月27日(金曜日)9時30分〜12時30分

2. 場所
如水会館 3階 「富士の間」

3. 出席者
(委員)
上野、大渕、梶原、金、久保田、佐々木(正)、佐々木(隆)、里中、椎名、渋谷、瀬尾、津田、常世田、都倉、中山、野原、平田、松尾、三田の各委員、野村分科会長
(文化庁)
吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,ほか関係者

4. 議事次第
(1) 開会
(2) 関係者ヒアリング
(3) 閉会

5. 配付資料
資料1−1   社団法人日本文藝家協会
資料1−2 協同組合日本脚本家連盟
資料1−3 協同組合日本シナリオ作家協会
資料2 日本音楽作家団体協議会、社団法人音楽出版社協会、社団法人日本音楽著作権協会
資料3 社団法人日本漫画家協会(PDF:52KB)
資料4 社団法人日本芸能実演家団体協議会(PDF:119KB)
資料5−1 社団法人日本民間放送連盟
資料5−2 日本放送協会ライツ・アーカイブスセンター
資料6 社団法人日本書籍出版協会
資料7 社団法人音楽電子事業協会、ネットワーク音楽著作権連絡協議会
資料8 国立国会図書館
資料9 青空文庫
資料10 クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
資料11 エンドユーザー

参考資料1 ヒアリング予定者一覧
参考資料2 ヒアリング実施要領
参考資料3 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第1回)議事録
(※(第1回)議事録へリンク)

6. 議事内容
【大渕主査】 おはようございます。まだ若干お見えでない方がいらっしゃいますが、定刻となりましたので、ただいまから過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の第2回を開催いたします。本日も皆様御多用の中、御出席頂きまして、まことにありがとうございます。
 まず、本日の会議の公開につきましては、予定されております議事内容を参照いたしますと、特段、非公開とする必要はないと思われますので、既に傍聴の方には御入場頂いているところではございますが、特に御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】 それでは、本日の議事も公開ということで、傍聴者の方にはそのまま傍聴頂くことといたします。
 それでは、まず事務局のほうから配付資料の確認をお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 お手元の議事次第の配付資料一覧と見比べながら御確認頂ければと思いますが、資料1から資料11までございます。
 なお、資料1については資料1−1から資料1−3まで、資料5についても資料5−1と5−2の合計14点資料がございます。
 それから、参考資料1が本日のヒアリング予定者一覧、参考資料2がヒアリング実施要領、参考資料3が前回の小委員会の議事録となっております。
 過不足等ございましたら、事務局まで御連絡下さい。
 以上でございます。

【大渕主査】 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、前回の小委員会で御議論頂きました通り、今回と次回の2回に渡りまして、当小委員会が検討を進めるに当たって特に留意すべき事項、あるいは検討の視点、方向性などについて、関係の方々に幅広くヒアリングとして御意見を伺うこととしております。
 まず、参考資料1をご覧下さい。今回と次回のそれぞれで、この資料にございます方々に意見発表を頂くよう調整いたしまして、本日はお忙しい中、15名の皆様にお越し頂いております。皆様、御協力頂きまして、まことにありがとうございます。続きまして資料2をご覧頂きたいと思います。こちらはヒアリング実施要領でございますが、この資料にございます通り、多数の方にお伺いする関係で1分野15分と限られた時間になっておりますが、この時間を使いましてヒアリングを実施いたします。15分の中で、意見発表につきましては、5分から7分ということで発表者から御意見を頂戴いたしまして、それに引き続き7分程度の質疑応答の時間を設けたいと思います。多数の分野の多数の皆様から御意見を伺う都合上、発表者の皆様におかれましては大変恐縮ではございますが、おっしゃりたいことは多々あろうかとは思いますが、ペーパー等を組み合わせるなどいたしまして、予定時間を厳守して御発表頂くようお願いいたします。
 なお、1分野で複数名の発表者がおられる分野がございますが、その分野につきましては、恐縮ではございますが、複数名の発表者の方の時間をあわせて、先ほどの5分ないし7分の間で御発表をお願いできればと思います。
 それでは、早速、ヒアリングに入りたいと思います。

(1) 文芸分野
【大渕主査】 まず最初に、文芸の分野からでありますが、社団法人日本文藝家協会の坂上弘様、協同組合日本脚本家連盟の寺島アキ子様、協同組合日本シナリオ作家協会の西岡琢也様に御発表をお願いいたします。それでは、よろしくお願いいたします。

【社団法人日本文藝家協会(坂上)】 文藝家協会の坂上でございます。時間厳守をいたしたいと思いますので、私のほうからは著作権の保護期間を著作者の没後70年に改正して頂きたい、それを強く要望するということで、その1点に関してだけ申し上げます。
 著作権の保護期間というものが欧米の主要国ではほとんど70年になっておりまして、特にEU関係はほとんど70年になっているという現状があります。これは文芸活動の現在の姿を非常に考えさせられる状態で、私ども作家の国際交流もグローバルな活動というものが随分大きくなってまいりまして、実際に交流の場などでは日本の保護期間が50年ということでは、非常に返答に困るような議論も出てきております。私どもも日本の著作権の保護期間というのは歴史的にステップを踏んできているので、その途上にあるということを申し上げているわけですが、現状では過去の日本文学の、あるいは文芸の紹介というようなことではなくて、村上春樹さんやよしもとばななさんたちのように海外で受け入れられ、翻訳され、ベストセラーになっているという意味での国際的な著作物が非常に多くなってきております。
 こういうことを踏まえますと、日本が知的財産立国ということでコンテンツを世界中で利用されていく国になっていながら、著作権保護期間が50年に留まっていることは非常に暗澹たる思いがいたします。
 実際に50年ですと、例えば2007年になり高村光太郎は保護期間がすでに切れました。2010年には永井荷風、2011年には火野葦平、こういう日本の代表的な人たちのものが切れるということになりますが、これらの著作物が実際にはたくさんの関連したコンテンツの中で使われておりまして、そういうことによってコンテンツの全体の産業、付加価値、そういったものがますます大きくなっているのが世界の現状だと思います。
 そういうことを踏まえまして、私どもは著作権問題を考える創作者団体協議会、全部で17団体おりますけれども、その17団体が一緒になって70年の延長を議論し、推進していきたい。そういう意見でございます。

【大渕主査】 ありがとうございました。引き続きお願いいたします。

【協同組合日本脚本家連盟(寺島)】 私は御質問の4点について、レジュメでも申し上げました意見に沿って申し上げようと思います。要するに過去の著作物の利用の円滑化方策についてということは、放送に関して言えば、テレビというのはアップ・トゥ・デートのものですから、過去のものがそう使われることはないのです。もちろん特殊な時間枠で使うということはありますけれども、一般的な放送でいえば、過去のものというのは、つまり脚本とか文芸ということではなくて考えてみても、そういう過去のものを扱うという特別な枠で使うのであって、一般の放送ではアップ・トゥ・デートなものが圧倒的に主流だということがあります。
 それから、著作者不明については、脚本家連盟ではまず連盟員に関してはあり得ません。でも、脚本家の団体というのは私どもとシナリオ作家協会さんがありますので、脚本家連盟に属している1,800人に関してはきちんと定期的に連絡を取っておりますので、、著作者不明ということはまずない。亡くなれば遺族にすぐ連絡をとりますし、不明ということはありません。ただし、連盟員以外の人のことまで情報を得ることはとてもできません。もっとも脚本家の場合には、おそらくテレビ、映画で使われている脚本は、シナリオ作協さんと一緒だと90パーセント以上の人を押さえていますから、うちにも入っていない、シナリオにも入っていないという人は数パーセントしかいません。それ以外の人は団体できちんと定期的に連絡するなどをしているし、亡くなれば遺族と連絡をとりますから、著作者不明になることは現時点ではあり得ません。
 それから、アーカイブへの著作物の収集・保存と利用の円滑化方策についてですけれども、これは私どもは脚本の団体ですから、アーカイブのような事業をなさるのは、例えばNHKさんとか民放さんとか、番組のいわばコンテンツを扱っている人たちだと思います。その意味では、放送の分野ではNHKさんが埼玉県にアーカイブ施設を作っていらっしゃいますし、それから民放局とNHKが共同して横浜にアーカイブ施設を作っています。そこにドキュメンタリーのいいものはほとんど収集されていますが、ドラマの場合は、ドラマも最近、横浜のアーカイブは一部収集するようになりましたが、収集しても連続ドラマを全部見に来る人はおりませんし、連続ドラマの何回目だけを見たいなんていう人もあまりいないでしょうし、実際には今横浜でやっていらっしゃる程度かなと思っております。
 保護期間のあり方については、将来の問題としてあり得るかもしれないけれども、現時点では保護期間、戦時加算について問題はありません。それから、意思表示システムについては、現在、放送、映画の分野では、個人でも団体でも使っておりません。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、引き続きお願いいたします。

【協同組合日本シナリオ作家協会(西岡)】 協同組合日本シナリオ作家協会の西岡です。資料1−3に3枚にわたって書いてあるので、ポイントだけ申し上げますが、2番と3番についてだけ申し上げます。
 アーカイブに関しては、映像に関するアーカイブという議論なんでしょうけれども、我々脚本家にとっては脚本自体が大切な著作物でありまして、今、大谷図書館という昭和30年でしたか、昔から脚本の保存・収集に当たっていらっしゃいますけれども、脚本それ自体の保存・収集に当たって非常に篤志的な、あるいはボランティア的な方法で今行われているというのはどうかなと思いまして、日々作られているテレビ、映画に関して十全に保存・収集がなされているとは思えない。脚本家の厚意だったり、あるいは働く人のボランティア精神によって支えられているというのが大谷図書館の現状なので、脚本それ自体への目配りもして頂きたいなと思って書き添えました。
 3番目の保護期間に関しましては、昨今、映画、テレビの場合、小説を原作としたドラマ、映画が非常に多くなっておりまして、我々はもちろん脚本という著作権者、創作者ではありますけれども、別の小説というものを使用する、脚色するという立場の2つの面を持っているということがあります。協会の中でも原作を使う場合の利用者としての我々の側面というものも考えるべきではないかということで、保護期間に関して50年のままでいいのではないかという発言もあることはあるのですけれども、最終的には我々は創作者としての立場を尊重して、第一義的に考えたいと思い、70年の期間の延長をお願いしたいと思っております。
 最後のほうに書いてありますのは、脚本家にとっての現状をちょっと書き添えておきましたけれども、これは我々組織が対応すべき問題ではありますが、現状、映画の制作、作り方の世界が非常にさま変わりしておりまして、かつて5社、4社で作られたものが今は映画制作委員会方式という、他業種の異産業、違う産業の人たちの出資のもとで作られる場合が多くて、それにかかわるときに著作権侵害の問題が色々発生している。それに加えて脚本家のエージェントの問題が出てきまして、様々な現在進行形の問題があるということを書き添えておきましたので、議論の一助になればと思います。
 以上です。

【大渕主査】 御発表ありがとうございました。では、質疑応答に移りたいと思います。ただいまの御発表につきまして御質問等ございましたら、お願いいたします。

【中山委員】 日本文藝家協会にお伺いします。外国との関係で日本が50年だと恥ずかしいというお話なんですが、なぜ恥ずかしいのかということをお伺いしたいと思います。私は著作権法の学者ですし、著作者でもありますが、むしろ胸を張って、外国に対しておたくのほうが間違えている、全然恥ずかしいことはない、という気持ちですが、なぜこれが恥ずかしいのかということを説明して頂きたいと思います。

【社団法人日本文藝家協会(坂上)】 中山委員がおっしゃる恥ずかしいということばへの説明はちょっと難しいんですが、要するに著作権というものの価値は、私どもはコインの両面といいますか、2つあると思っているんです。1つはかけがえのない著作物を作ったという価値そのものの絶対的な価値であり、もう1つは著作物が活用、利用されて付加価値を生んでいくという部分がございまして、70年と50年では付加価値の作られ方、創造のされ方、生まれ方、そういったところに非常に違いが出てくるという基本的なことがあると思います。
 70年で保護されている国と50年で保護されている国の間で文化的な価値のやり取りをする場合に、私どもは50年で切れているから、おたくの70年の価値を認めないで活用させて頂くということを言うこと自体は、ちょっと議論にならないし、そういうことが私ども文芸家同士で議論しているときには返答に困るという意味です。そういうようなことで申し上げております。

【中山委員】 要するに作者あるいは著作権者が儲けないから、恥ずかしいということなのか。つまり著作権というのは、特許権も同じですけれども、権利者が儲けるためのシステムではなくて、そのインセンティブを与えて情報の豊富化を招くということ、つまりいかにして文化の発展を招くか、発展を促進させるかという観点から考えるべきなのであって、著作者が儲けないから恥ずかしいというのは、どうも私は理屈に合わないような気がするんです。

【社団法人日本文藝家協会(坂上)】 すみません、そういうふうに取られるとちょっと困ります。僕は確かに返答に困ると申し上げましたが、著作権の保護期間がこれだけあるということは、その期間の中で著作権を大切にして、それをどう活用するかということを考えていかなければならない期間が70年であると思っておりますので、著作権者が儲かることではありません。社会全体が文化的付加価値を生み出していくという創造発展の仕組みだと思います。

【中山委員】 その場合にパブリックドメインにすることが社会全体の文化の発展に役に立つのか、あるいはあと20年間を権利者に独占させることが文化の発展に役に立つのかという議論をした上で、後者であるならば恥ずかしい、前者であれば恥ずかしくないということになると思うのですけれども、その点はどうでしょう。

【社団法人日本文藝家協会(坂上)】 文化の発展ということは、金銭や絶対価値論だけではどうしても発展できません。文化を発展させるための我々の国全体、社会全体の持続可能な、それが価値だと思うんですが、それがないと文化の発展にも寄与できない。ただ、只になったから利用されるという形では、ある程度利用される形になるかもしれませんが、社会全体のレベルになりません。むしろどうやって活用するかというところにデータベースを作ったり、仕組みを作ったり、またそこにいろんな人たちが関与して、国民総生産の価値創造の力の1つが上がっていくというのが活用という概念だと思うんです。そういうことで申し上げました。

【大渕主査】 他にいかがでしょうか。それでは、時間の関係もございますので、この分野は終わりにしたいと思います。それでは、発表者の方々、ありがとうございました。

(2) 音楽分野
【大渕主査】 それでは、引き続きまして、音楽の分野から、日本音楽作家団体協議会の川口真様、社団法人音楽出版社協会の朝妻一郎様、御発表をお願いいたします。

【日本音楽作家団体協議会(川口)】 それでは、申し上げます。私は作曲と編曲の仕事をしております川口真と申します。音楽作家の立場から、著作権の保護期間の延長について意見を申し述べます。
 私は保護期間は作家の没後70年に延長するということに賛成です。この問題を論じるときに3つの視点があるように思われます。
 1つは文化的な視点です。著作権制度が文化・芸術の振興・発展に果たしている役割は大きいものがあります。創作者が作った創作物の創造性を尊重し、その著作権に手厚い保護を与えるということは作家にインセンティブを与えますし、その結果、多くの優れた芸術作品を多くの人たちが享受できるということになると思うので、それに貢献していると思います。著作権を保護することが著作物の円滑な利用や流通を妨げているという意見や、早く保護期間が終わってPDになって、ただで使えるほうが良いではないかという意見は間違っていると私は思います。これは文化・芸術をただ経済的な合理性の面からのみ見ているということで、間違っていると思うわけであります。この観点からも保護期間の延長は必要だと思われます。
 次の視点は国際的な調和であります。今の時代は膨大な量の著作物が国境を越えて流通する中で、保護期間の相互主義、国際的な協調は不可欠であります。ある外国の作家の作品が、その作家の自国や他のほとんどのすべての国で死後70年の保護を受けているのに、日本に来ると50年しかない。あるいはまた、日本の作家の作品がほとんどの諸外国で70年の保護を受けているのに、自分の国では死後50年しか受けられない。これはおかしいと僕は思います。それで良いのだという意見がありますが、それに納得できる意見はその中にありません。日本が国際社会において文化国家として信頼される地位を得るには、最低限欧米諸国並みの保護水準を確保するということは絶対に必要だと思います。
 もう1つの観点は知財立国推進という視点であります。我が国が知的財産の創造、保護、活用を目指し、コンテンツの流通振興をもって経済活動の基盤に据えるという知財立国を目指すのであれば、保護期間を今の低い水準のまま放置することはできないはずです。今後、多くの日本の文学作品や漫画、アニメ、音楽などが海外へ進出する中で、著作権保護の充実なくして真の知財立国はあり得ないと私は思います。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、引き続きお願いいたします。

【社団法人音楽出版社協会(朝妻)】 音楽出版社協会の朝妻と申します。音楽出版社というのは音楽著作権の管理、開発を仕事にしています。作詞・作曲家の方々から、あるいは海外の著作権者からお預かりした音楽作品を実演家、レコード会社、放送局などにできるだけ多く使って頂き、一般ユーザーの方々に楽しんで頂く、できるだけ多くの機会に音楽を使ってもらえるようプロモートするというのが仕事でございます。それから、それらの使用料がきちんと作家の方々に入るよう管理するということをやっております。そこで、著作権の保護期間延長ですが、今、川口先生からお話があったように、保護期間70年はEU、アメリカなどをはじめ世界の70カ国近くで実施されております。日本の国内だけでなく、世界の音楽を日本に受け入れ、日本の音楽を世界に向けて発信しようとしている私たちは、そこで使われている共通のルールに従ってビジネスをしていかなければなりません。今、川口先生がお話になったように、音楽だけではなく、デジタル化、ネットワーク化が急激に進んだ現在においては、著作物全般の流通保護を的確、かつ効率的に行うためには国際的な協調が必須となっています。特に現在、日本の基本方針として、コンテンツの流通促進が打ち出されている時にあっては、日本だけが自分たちに有利な特別なルールを使っている現状は、海外諸国からしても無視できない大きな問題になっていて、一日も早い解決が求められています。
 我々は逆に、世界から注目されている問題の解決が、同時に今まで我が国の課題である戦時加算の問題を処理するまたとないチャンスになると考えております。戦時加算は御存じのように、連合国の著作物について、1941年から平和条約までの約10年間分を加算するというものですが、日本が戦時中、連合国の著作物を保護していなかったという前提に立つ、明らかに不平等なものです。ベルヌ条約が定める保護期間についての相互条約も相互主義も適用されておりません。
 我々は今、ちょうど世界の国々から保護期間の延長を求められていますが、一部の作品だけで、しかも戦時中の10年の保護という戦時加算よりも、すべての作品について20年の延長が実現するほうが各国の著作権者にも歓迎されることは言うまでもありませんので、我々としては日本の保護期間の延長を実現するために努力するので、連合国がそれぞれの国の政府に戦時加算に関する権利の放棄を働きかけるよう話をしているところです。
 現在、アメリカの音楽出版社協会(NMPA)との話においては、既にその趣旨に同意してくれて、国務省や通商代表部に働きかけてくれていますし、国際音楽出版社連合(ICMP)という団体がありますが、ここでも理事会で各国の政府にそれぞれの国が日本の保護期間延長を促進するために、それぞれの国の持っている戦時加算の権利放棄を働きかけるように動いて欲しいという要求を出しておりますし、先月開かれました著作権協会国際連合、CISACといいますけれども、CISACの理事会ではJASRAC(ジャスラック)が戦時加算撤廃を訴え、全会一致で支援実施が承認されました。また、5月の総会での決議・採択も決定しております。
 今後、国際市場で世界的なプレイヤーを目指す我が国の著作権ビジネスのためにも、不平等な戦時加算廃止につながる保護期間延長にぜひ御理解をお願い申し上げまして、私のお話とします。ありがとうございました。

【大渕主査】 御発表、ありがとうございました。では、質疑応答に移りたいと思いますが、御質問、御意見等ございましたらお願いいたします。

【金委員】 川口さんの主張の中で、保護期間を延長することによって創作のサイクルの源泉を豊かにするというような表現がありますが、一方では保護期間を延長することによって、過去の著作物を土台にした創作活動というものが阻害される可能性があるというという認識はお持ちでしょうか。

【日本音楽作家団体協議会(川口)】 そうですね。それは一面あると思います。ただ、私が思いますのは、芸術というのは模倣から始まるという考え方もありますけれども、最初の創作性、オリジナリティをすごく大切にして、それを手厚く保護するということは基本的なことだと思いますので、早く切れたほうが良い作品がたくさん生まれるというようなことにはならないように私は思います。

【瀬尾委員】 時間もないので簡単な質問を1つ。先ほどいろんな意味で感覚的な問題がたくさんあったので、川口さんに御質問です。
 先ほどの中山先生と同じことを質問させて頂きたいと思います。直観的な問題なんですが、理屈を付けていくと大変難しいんですけれども、単純に50年と70年で、世界中の中で70年がこれだけある中で、日本が50年だと恥ずかしいと思いますか。

【日本音楽作家団体協議会(川口)】 それは恥ずかしいとか、恥ずかしくないという問題とは僕は関係ない。私は恥ずかしいとも思わないし、恥ずかしくないとも思わないですけれども、大部分の国が70年にしているのにはそれなりの理由があると思うんです。ですから、それは私が考えるには、さっき申し上げたような理由で、要するに著作権を手厚く保護することが文化・芸術の発展に資するところがあるということが根本にあって、そういう政策をとっているんだと思いますから、我が国も世界のほとんどの国と同じような理由で70年にするということは妥当なんじゃないかと。あまり恥ずかしいとか、恥ずかしくないとか、そういう感覚はありません。

【中山委員】 世界各国が長くしたには理由があって、そんな単純なものではないと思うんです。ただ文化の発展には著作権法の保護が必要であるというのはその通りなんですが、今問題になっているのは、50年を70年にするとどのくらい文化の発展に役に立つかという、その1点なんです。つまり50年だとばかばかしいから、もう音楽は作りません、70年にしてくれたら一生懸命作りますという状況があれば、これは70年にする合理性があると思うのですけれども、私も色々物を書いていますが、見たこともないひ孫のために書くという観念で書いたことは1回もないですね。果たして20年延ばすことによってどのくらい情報の豊富化に役に立つのかという、そのあたりのことをちょっとお聞かせ願いたい思います。

【日本音楽作家団体協議会(川口)】 どのぐらいという何パーセントとか、何ポイントとかいうようなことは言えるような問題じゃないと思いますし、それから先ほど申し上げましたが、我々は50年が70年になったから、それで儲かるとか、そういう感覚はあまりないです。それからまた、自分の作品が子供、孫の代まで残っていて、それがやっぱり儲かるというか、経済的に利益があるとか、そういうふうな観点とはちょっと違うところで、経済的なことだけで言っているんじゃなくて、それからどのぐらいの利益があるとか、そういうことではなくて、そういうふうに延ばしたほうが文化・芸術の発展に役立つのではないかとしか思えないので、そういう主張をしているのでありまして、延ばしたことがどのぐらい役に立つだろうかということは私は分かりません。

【常世田委員】 オリジナリティの点についてなんですけれども、たしか3年前だったと思いますけれども、作曲家の坂本龍一さんがNHKの番組で、自分が作曲するときにオリジナリティは10パーセントだと。90パーセントについては、先人のものが影響されているんだとはっきりおっしゃっているんですが、こういうことについてはどうお考えでしょうか。

【日本音楽作家団体協議会(川口)】 それは僕はある程度その通りだと思いますけれども、それは著作権があるとかないとかいう問題じゃなくて、先人の作ったものに触発されて、それからインスパイアされて曲を作るというのはどんな場合にもありますし、それは音楽以外のものでもあると思うんです。ですから、これは直接、保護期間の延長問題とは関係がない問題ではないかと私は思います。

【大渕主査】 他にいかがでしょうか。それでは、ありがとうございました。

(3) 実演分野
【大渕主査】 予定によりますと、次は漫画の分野の方からお聞きするのですが、少し到着が遅れておられるようですので、後に回しまして、先に実演の分野から、社団法人日本芸能実演家団体協議会の椎名和夫様からお願いいたします。

【椎名委員】 芸団協・CPRAの椎名と申します。よろしくお願いします。
 1の過去の著作物の利用の円滑化方策についてと、2のアーカイブへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化について、この2つにつきましては、いずれもこれまでに創作された著作物等の利用の円滑化に係る検討課題でありますので、この2つをあわせて意見を申し上げますが、前者における利用の円滑化というのは専ら商業目的の利用であり、後者のアーカイブにおける利用の円滑化というのは専ら公共目的の利用であるという点で、若干の違いがあることには留意するべき点もあるかと思います。
 まず、過去と現在のバランスについてということなんですが、先ほどから出ているお話の通り、実演家もまた過去の作品の中から演技や演奏のスタイルなど多くのものを学んできたことは明らかでありまして、文化の発展に寄与するためにも、過去の著作物等の利用が円滑に進み、アーカイブとして広く収集・保存されることは非常に重要なことであると理解をしています。
 しかしながら、一方で過去の著作物等の利用にニーズが偏重しますと、これはちょっと古い言葉ですが、実演家の機会的失業ということももたらしかねず、また実演家を取り巻く事業者等のビジネスの妨げになる恐れもあります。つまり過去の著作物等の円滑な利用と、実演家の就業機会の喪失やビジネスとの間でバランスのとれた方策が求められると思います。
 それから、いわゆる流通の阻害要因と報酬請求権化ということなんですが、著作物等の二次利用が進んでいない理由として、著作権法上の権利が阻害要因となっているかのごとく安易に語られていることがしばしばありますが、これにつきましては様々な検討会や委員会の場を通じて、こうした考え方が誤解であることについては、既に明らかになってきていると思います。これまでにも過去のものに限らず、幅広く著作物等の利用の円滑化については、既存の枠組みの中で関係者間の協議が進められてきているところであり、このような協議を通じて円満な解決が図れるものと考えております。
 また、権利者団体として集中管理の整備に向けて、様々な努力を重ねている中で、安易に報酬請求権化するなどの権利制限の方策をとることは、権利者団体が集中管理事業に取り組むインセンティブを大きく損なうことにもなりまして、これは知財立国の考え方にも逆行する暴挙と言わざるを得ません。これは度々いろんな機会に申し上げていることなんですが、許諾権というのは拒否権ではありません。許諾権は利用の対価に対する裁量権でありまして、それを利用の促進の名のもとに奪おうするのは、ただ単にビジネスを回避しようとする意味しか持たないと思います。
 次のページをご覧下さい。権利者が所在不明であるということが言われるんですが、過去の著作物等の利用の円滑化方策が求められる背景に権利者の所在が不明であるということが挙げられているんですが、これについては2種類の問題の混同があると考えています。ドキュメンタリー等の放送番組に映っている実演家以外の一般の方のいわゆる映り込みと言われる部分の、これはプライバシーや肖像権に関する問題を含む問題なんですが、そういう問題と職業的に出演している実演家の所在が不明な場合と、この2つの問題がいささか混同されて語られているように思います。前者と後者の場合にはその解決方法が大きく異なりますが、後者に属する問題であれば、これはコンテンツホルダーさんと権利者団体の協力によって一定の解決策を講じることが可能でありまして、これらの2つを混同して議論するべきではないと思います。
 それから、権利者情報を含むコンテンツ情報の精緻化の必要性ということなんですが、映画や放送番組、音楽など著作者や著作隣接権者など多数の権利者によって構成されるコンテンツにおいて、それらのコンテンツの権利処理に必要となる権利者情報を含むコンテンツ情報、これはコンテンツメタデータという言い方もしますが、その保持についてはコンテンツホルダーさんがそれぞれに行っている部分なんですが、その内容や保持の仕方などが現状まちまちであるように思います。
 そのために権利者の所在が不明である以前の問題として、そもそも権利者が誰なのか分からないというようなケースもあります。今後、あらゆるコンテンツがパッケージのような支持媒体を失って、デジタルデータとして単体で流通することを想定した場合に、コンテンツとその権利者情報を含むコンテンツメタデータとを容易に関連づけられるような一定のルールが必要であり、この部分の整備については音楽映像コンテンツ等の制作にかかわるコンテンツホルダーさんの協力が不可欠になると思います。
 将来において過去のものとなる著作物等の円満な流通を確保するためにも、今後、新たに制作されるコンテンツについては、そのコンテンツに係る権利者情報を含む最低限のコンテンツメタデータを参照可能な状態に保持するということを、何らかの形でルール化することが必要だと思います。
 また、アーカイブされるコンテンツに付帯するべき文献的な価値を持つコンテンツ情報をきちんと保持することが極めて重要な課題であると考えております。このことはコンテンツを使い捨てにせず、その文化的な価値を高めていくという側面からも、きちんと議論されるべきではないかと思います。
 次のページをご覧下さい。保護期間のあり方についてということですが、まず実演家の著作隣接権と著作者の著作権の保護期間の格差について申し上げたいと思います。
 実演家の著作隣接権の存続期間は、現行の著作権法ではその実演を行ったときに始まり、その実演が行われた日の属する年の翌年から起算して50年を経過したときまでと定められています。一方、著作権の保護期間は、自然人である著作者の場合には、創作のときから著作者の死後50年を経過するまでの間と定められています。同じ自然人であって、同じく創作的な活動を行う実演家と著作者を比較すれば分かりますように、この両者の権利の保護期間においては実質的な差異が存在しており、実演家の著作隣接権の保護期間は明らかに短いという問題があります。
 具体的な例で言いますと、著作者の著作権は生存中に保護が切れることはあり得ず、死後においても一定の期間にわたって保護を受けることができるのに比べて、実演家の著作隣接権はその実演家が存命中に既に保護が切れてしまうことすらあります。例えば20歳のときに行った実演は、その人が70歳になりますと、保護を受けられなくなるという事態が生じるわけです。
 そこで格差を埋める延長の必要性ということで、実演家としましては実質的な差異を解消、もしくは縮小するために、実演家の著作隣接権の保護期間をある程度延長する必要があると考えています。また、昨今の平均寿命の一般的な伸長を勘案しても、実演の保護期間をある程度延長することは極めて合理的なことであると考えられますが、その具体的な方法としては以下のような方策が考えられると思います。
 まず1番目に、実演家の著作隣接権の保護の存続期間の起算点について、現行のその実演が行われたときから、著作権と同様にその実演家の死後に改めるという方法です。次にもう1つの方法ですが、実演家の著作隣接権の保護期間について、平均寿命の一般的な伸長を加味した年数に改める。こういう2つの方法があると思います。
 著作権法というのは、著作物並びに実演等の文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者や実演家等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与するということを目的としています。デジタル時代における実演の利用方法は多様化し、また利用規模も年々大きくなっていくと予想されますが、これによって生み出される社会的・経済的効果と利益はとても大きいものであるという理解をしています。創作的な寄与をする実演家もまたこうした利益に平等に預かることができるように、実演家の保護期間については世界に先駆けて延長して頂ければと考えています。
 最後に意思表示システムにつきましては、これに関しましては個々の実演家のレベルであれば、あるいはそれを選択するということもあろうかと思いますが、現時点ではCPRAとしてこの問題について特段申し上げるような意見はありません。
 以上でございます。

【大渕主査】 御発表、ありがとうございました。それでは、今の御発表につきまして、御質問等ございますでしょうか。無いようなので、次に移らせていただきます。

(4) 放送分野
【大渕主査】 それでは引き続きまして、放送の分野から、社団法人日本民間放送連盟の池田朋之様とNHKライツ・アーカイブスセンターの梶原均様にお願いいたします。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 おはようございます。民放連のIPR専門部会コンテンツ制度部会の主査をやっております池田といいます。本日お出しいたしました資料は、民放連の機関決定を経ておりませんので、本日は私の制度部会主査という立場での発言と御理解頂きたいと思います。
 私どもといたしましては、まず1番目の過去の著作物等の利用の円滑化方策について意見を述べさせて頂きたいと思います。
 3つ挙げてございますが、まず著作隣接権についても裁定制度を創設して頂きたい。これにつきましては民放連からも以前から文化庁様にお願いしてございますが、著作権につきましては権利者不明の場合の裁定制度が既に存在する、という一方で、放送事業者が放送のために番組を制作する場合には、主に実演家の方につきましては放送の許諾のみを頂いて作っている、放送しているということでございますので、これを二次利用する、ビデオ化する、インターネットで配信する等におきましては、改めて許諾を取り直さなければならないという事実がございます。
 ところが、過去の著作物につきましては、その当時出演されていた実演家の方が今どこにいらっしゃるか、御存命なのか、どういう状態であるのかが分からないというケースが間々ございます。その場合にも、裁定制度がございませんので、草の根を分けてもと申しますか、探し出して許諾を得なければ、1つの番組コンテンツそのものが再利用できないということになってしまっていることがございます。その点から鑑みましても、条約との関係があると伺っておりますが、著作隣接権につきましても著作権者の不明の場合における裁定制度と同様の裁定制度の創設をして頂きたいと考えております。
 続きまして、裁定制度の運用方法の改善についてでございますが、先般、裁定制度の場合の探索方法について若干改善が図られて、著作権情報センター(CRIC)のホームページに広告を掲載することによって、探索とすると改善されておりますが、これが放送番組に関して申し上げますと、例えば放送番組の中に使用いたしました写真や絵画、また出演者等が分からないといった場合に、これをホームページに掲載するということは、その時点で既に不明の権利者の権利許諾を得なければできないという矛盾が生じております。したがいまして、現状の運用方法では若干まだ足りないと考えている部分がございます。
 したがいまして、このように裁定制度の利用を前提として、著作権者、隣接権者等を探索する場合におきましても、ホームページ等の広告掲載において何らかの権利制限をして頂かなければ、実際には実効性がないのではないかと考えている次第でございますので、その点を御検討頂きたいと思っております。
 続きまして、映画の著作物について共有著作権の行使と同様の扱いの導入ということでございますけれども、放送番組、映画の著作物全般に言えることではございますが、特に放送番組に関しましては、二次利用する際に多数の権利者の処理を改めてやらねばならないということがございます。しかも、すべての権利者の許諾を全部取らなければ1つの放送番組が動かせないという現状がございます。一方、共有著作権の場合には、正当な理由がない限り行使の同意を拒むことができないという規定がございます。放送番組のように権利者の多いコンテンツにつきましても、放送番組自体がたくさんの権利者の権利からなるコンテンツでございますので、ある意味、共同著作物という考えもあると思いますので、その点、共有著作権のような扱いをして頂ければと考えております。
 以上でございます。

【大渕主査】 引き続きお願いします。

【梶原委員】 NHKの梶原です。NHKとして、前回の資料にもありましたけれども、アーカイブス番組のネット配信を行うことが知財等でも要請されていることもあって、主に4つ論点がありますが、過去の著作物の利用の円滑化についてのお話を中心にしたいと思います。
 今、民放連の池田さんのほうからの話にありましたけれども、重複する部分が多いんですが、ちょっと御容赦頂ければなと思います。
 お手元の資料に沿ってお話をしたいと思いますが、まず実際、放送番組を二次利用するに当たっての著作権処理上の課題ということで、番組を制作するときの過去の著作物の利用というよりは、実際に完成した放送番組を更に再放送だとか、ビデオ化とか、そういったことについての権利処理上の課題についてまとめております。
 まず、著作者等が不明ということで、これは2つあると思うんですが、連絡先が不明の場合と、そもそも権利者が誰か分からないというケースがございます。これは今後作る番組については、我々も色々権利情報の充実ということでやっておりますが、10年、20年前の番組を活用しようとした場合、当時はそういったいろんな二次利用ということはあまり行われていなかったということもあって、権利情報がそんなに十分にできておりません。
 そういった中で、権利者は誰なのかといったことが分からないケースがあります。例えば人形劇は、画面には人形しか出てなくて、誰が操演しているのかといったことで分からずに、なかなか権利処理が大変だということがあったりします。
 あと、2つ目ですけれども、これまで権利者団体のお話があったわけですが、ノンメンバーの方とか、そもそも権利者団体がない分野の著作物を利用しようとする場合に、交渉に時間と労力がかかる上、高額な使用料を要求されて、なかなか著作物の円滑な利用が進まないということがございます。管理事業者であれば、使用料規程にのっとってお支払いするということがあるわけですけれども、ノンメンバーなどの方については料金の規定がないということもあって、高いお金を要求されて、なかなか二次利用ができないといったことが多々あるということでございます。音楽以外の分野において、管理事業者が管理する著作物等のシェアがそれほど高くないといった現状があるのかなというところだと思います。
 その他、権利者団体とのルールが整わないとか、著作者が作品に対する不満があって、二次利用は止めて欲しいといったようなことで、進まないといったケースがございます。検討課題ですけれども、主に上2つの課題に対する検討事項ということで次に述べたいと思います。最後のその他については、この場の議論ではないと思いますので、上2つの課題について検討事項を4点ほど書いております。
 これも先ほどの民放連さんと同じですけれども、著作隣接権者が不明の場合の裁定制度の検討ということと、更に裁定制度については、もう少し簡便な方法が必要かなということを感じております。それと、3番目ですが、完成した放送番組のように、著作物の著作者以外に多くの著作権者等が存在する場合に、正当な理由がない限り、その利用を拒否できないような制度の検討が必要かなと。100人ぐらい権利者がいても、1人が嫌だと言ったら、それが全く流通しないという現状が実際にございます。それと、著作権等の集中管理をもっと進めるような施策が必要かなと感じております。
 御参考までに、平成5年放送のドラマ番組の出演者についてのデータを載せております。236人の出演者がいて、権利者団体に所属されている方が152人、個別処理が52人、不明32人ということで、これを一つ一つ権利処理をして不明な方を探してやるということでいうと、交渉に時間と労力がかかって、ビジネス的にもなかなか割に合わないといったようなこともございます。こういったことが現状だということであります。
 2枚目に参考を付けていますけれども、これは先日の会議でアーカイブスの資料が入っていまして、データについてアップデートしたものと、最後のほうに権利処理の状況について書いています。NHKアーカイブスの公開ライブラリーで、過去の放送番組を公開していますが、これは権利者団体の方々の御協力で包括的に許諾を得ているため、わりと権利処理については順調にいっていますけれども、ここの分野についても、ノンメンバーの方の権利処理において高い使用料を要求されて、公開できないといったケースがございます。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。

【椎名委員】 NHKさん資料の中で、連絡先が不明な場合とそもそも権利者が誰なのか不明なケースがあると2つ整理をして頂いているんですが、例えば僕の説明でもお話をしたんですが、コンテンツ、番組の中にどのような権利者が入っているかというのは、コンテンツホルダーさんでなければ収集し得ない話ですよね。そこのところで、そもそも権利者が誰なのか分からないから、裁定制度を使わせてくれというのはあんまりじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。

【梶原委員】 今、それはちょっとお話ししたと思うんですけれども、最近の番組についてはこういった放送番組も色々流通していくので、権利者情報を作って、相当充実してやっていますけれども、10年、20年前については、もともと放送番組をいろんな形で流通するということが行われてなかった現状がありますので、その辺の過去の番組の権利情報がないものについてのお話をしているということでございます。

【椎名委員】 じゃ、過去の番組に関する裁定制度ということですか。

【梶原委員】 というか、これは過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会ということで、一応過去ということでお話を申し上げたつもりです。

【椎名委員】 現状、放送番組に含まれる権利者というのは実演家の中での俳優さん、それから放送番組にかかわる音楽制作に関する権利者、そういったところまでのコンテンツ情報、権利者情報の保持が必要になってくるわけですが、ぜひとも今後の作品については前向きな取組みを権利者団体と一緒にして頂けますようにお願いしたいと思います。

【中山委員】 NHKにつきまして、今、お話を伺いましたけれども、民放は権利者情報についてはNHKと同じように現在はやっているのでしょうか。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 私は民放全体の現状を把握しておりませんけれども、私はテレビ東京の人間でございますが、現在の番組につきましては、少なくとも局制作番組については当然情報を取ります。ただ、外部に制作を委託している番組につきましては、必ずしも十全に得られているかどうかはまだ不明ではございますが、極力集めるようにしておりますし、我々のメタデータを整理するため今システムを構築中でございます。ただ、過去のものにつきましては、なかなか難しいところがございます。

【中山委員】 外部委託というのはどのくらいの割合があるのですか。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 それは局によって非常に幅がございますので、一概には申し上げにくいと思いますが、民放連で平均どれぐらいというのは、すみません、数字を持っておりません。

【中山委員】 それから、裁定制度の改善は私も必要だと思うのですけれども、それをやったところで限界はあるので、放送事業者が根元で将来の権利処理をしておくということをしないと多分解決はしないと思うんですが、そういうことはされておられるんでしょうか。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 現状で、例えばビデオ化が初めから予定されているドラマ番組につきましては、その段階である程度お話はすることはできますが、バラエティー等では二次利用がどのように起こるのかというのが現状分からない。それから、インターネットでの配信もまだ緒についたばかりでございますので、現時点ではすべての番組につきまして最初の段階で処理するというのはなかなか難しいかと思います。また、過去の番組につきましては、そもそも放送だけを想定して作っておりますので、そういった番組につきましては全く権利処理はされていない、放送以外の分については処理されていないのが現状でございます。ただ、これにつきましては、各権利者団体さんとお話し合いをさせて頂いておりますので、著作権等管理事業法に基づいたルールを決めさせて頂いて、それで活用できるようにすればよろしいかと思います。あと問題は、ノンメンバーの方をどうするかということになると思います。

【中山委員】 二次利用されるドラマというのは実際あまり多くないと思うのです。『おしん』など若干儲かったのがありますけども。全体で権利処理をきちんとやっているのは、番組のうちどのくらいになるのでしょうか。大体で結構ですけど。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 ドラマはビデオ化するケースが多くございますし、アニメ等も多くございます。弊社の場合はドラマが極端に少ない、またアニメが極端に多いというのがございますので、一概には申し上げられません。申しわけございません。

【椎名委員】 今のお話で、局制作であれば結構捕捉ができる、外部制作であると難しいという話があったんですが、コンテンツに付帯するべきコンテンツのメタ情報というのは、そういう契約態様に左右されずに、普遍的にコンテンツに対して情報が付帯することによって価値を持つと思うんです。だから、そういった契約態様とか、そういったことを乗り越えて、何らかコンテンツメタデータが収集できるような取組みをぜひして頂きたいと思います。

【社団法人日本民間放送連盟(池田)】 そのように検討したいと思っております。

【金委員】 椎名委員に御質問をしたいと思うんですが、先ほど流通を促進するための施策として報酬請求権化といった権利制限について断固として反対されるという立場をお話しされました。先ほどのやり取りをみていると、過去の著作物の二次利用、地上波放送以外の利用においては、今までのような既存の枠組みの中で関係者間での協議を通じた解決には限界を感じます。そこで過去の著作物に限定した権利制限策についてはどう思われますか。

【椎名委員】 過去の著作物で権利者が分からない場合に、放送事業者さん等から権利者が分からないんだけれども、探してくれという話は山ほどあります。その仕事が権利者団体の仕事の3分の2を占めると言っていいと思います。
 それから、本当に分からない場合に、これは3年ぐらい前になると思いますけれども、総務省の流通研究会のほうで、コンテンツホルダーさんサイドで何らかの救済のためのファンドレーションみたいなことを考えるというお話があって、今どうなっているのか分からないんですが、そういう形で法による裁定ではなくて、何らかのファンドレーションを用意して、権利者さんが出てきたときに何らかのお支払いができるような仕組みを考えていけば解決することで、報酬請求権化とか、裁定制度とか、そういう権利制限を伴うことまでやらなくても、まだできる努力はあるのではないかと思っています。

【瀬尾委員】 議事進行に関しまして議長に御提案申し上げます。本日時間が限られているところなので、質問はヒアリング者にだけに限るという形にしないと議論が広がってしまうのではないかと思われますので、そのようにしたらいかがでしょうか。

【大渕主査】 進行の関係もございますので、特に他になければ次に進みたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。

(5) 書籍分野
【大渕主査】 引き続きまして書籍の分野で、社団法人日本書籍出版協会の金原優様にお願いいたします。

【社団法人日本書籍出版協会(金原)】 日本書籍出版協会の金原でございます。こういう機会を与えて頂きましてありがとうございます。
 それでは、早速、資料6に基づきまして、出版の立場からの意見を申し上げたいと思います。ちょっとご質問を頂いた順番と違っておりますが、差し支えなければ資料6の順番に従いまして、ポイントだけ説明をさせて頂きたいと思います。
 まず、保護期間の延長のあり方ですが、出版社は著作物を伝達する立場ということでありまして、権利者の立場と利用者の立場と両方の側面があるということで、この保護期間の延長については判断が非常にしにくい状況であるというのが正直な感想であります。出版社としても、著作物を伝達する過程において、創作性を有していくという状況もあるわけですので、その意味においては保護期間の延長というものは、ある部分賛同するという意味合いもあります。また同時に、著作物を伝達する中では、著作者の権利を代理行使しているという側面もありますので、その意味では著作者の立場も尊重しなければならないということであります。一方で、利用者という立場もありますので、判断が非常に難しい。意見を求められた状況において、どちらでもないというのは非常に申しわけない対応なのかもしれませんが、実際問題としてはそういう意見であります。
 10年ほど前にも同じようなことにつきまして、この保護期間の延長について意見を申し上げたことがありますが、ある一定期間が経過した後では、人類全体の共通の知的財産として、それを公に利用できるような形にするということについて異存があるということではありません。しかし、それも著作者の権利のことを含めて考えなければならないということだろうと思います。
 しかしというか、同時に、この資料にも書きましたが、国際的なハーモナイゼーションというのが非常に重要ではないだろうかと思います。欧米のほとんどの国が死後70年ということになった状況において、これを日本でどのようにするかというのは、著作物から得られる対価とか、それだけではなくて、協調性という意味からも考えなければならない。私ども出版としては海外の著作物、出版物も流通に携わるという立場もありますので、そのような形でも海外権利者、あるいは海外出版社の代弁をせざるを得ない、そういう立場もあります。
 それから、やはり重要なのはというか、大きな問題としては戦時加算の問題でありまして、日本が約10年間保護期間を更に加えて保護しなければならないということについては、戦後の期間を考え、またこれまでの実績から考えて、戦時加算そのものの制度というものを何らかの形をもって廃止すべきではないか。あるいはそのような状況があるならば、10年間という問題を加えた、あるいはそれを含めた状況で50年、70年、あるいはその中間の60年というのもあるのかもしれないんですが、そのアンバランスな状況を改善して頂きたいと考えます。
 続きまして、過去の著作物の利用の円滑化の問題ですが、現在、裁定制度というものがありますが、この裁定制度の利用については大変な時間と手間がかかるのが実態であります。出版物には様々なものがありまして、非常に大きなものもありますけれども、販売部数も、あるいは価格も非常に低いものもある。となると、必然的にその使用料もそれほど大きな金額ではないというものもあるわけでありまして、裁定制度にかかる費用のほうが実際の著作物の利用にかかる使用の対価を上回るというケースもかなりあるわけです。
 したがいまして、過去の著作物の利用の円滑化については、当然促進をして頂きたい、あるいは促進していきたいと考えておりますが、このようなものが低額、あるいは簡便な方法で利用できるような制度をぜひ作って頂きたいと考えます。それは官民挙げたデータベースの構築というものもあるでしょうし、また著作権等管理事業の円滑化というものもあるだろうと思います。そのような制度をぜひ考えて頂きたいと思います。
 ちなみに、最後のところに書いてありますが、我々の出版界の国際的な組織であります国際出版連合では、裁定制度というものではなくて、十分な調査をした上で、過去の著作物について利用できる制度を作っていきたいということを現在検討中であります。
 アーカイブの問題ですが、絶版等の入手困難な出版物ということでは、利用せざるを得ない、あるいは利用したいという状況は理解をいたしますが、絶版という定義をもって利用できるということについては、出版協会としては反対であります。絶版というのは判断が非常に難しい状況でありますし、また出版物の多くは現在、印刷媒体のみならず、オンデマンド出版のような形で流通しているものもあります。それから、例外でしょうけれども、1つの著作物が2つ以上の出版物によって流通するというケースもあります。
 そのような状況で、1つが絶版になったからといって、著作権が消滅するということではもちろんありませんので、このようなことについては、要望については理解いたしますが、制度については非常に慎重に、特に権利制限は拡大運用、拡大解釈をされる傾向がありますので、慎重にして頂きたいと思います。
 最後の意思表示システムですが、このような制度を運用することについて、出版協会としては賛成であります。ただ、私どもの出版はほとんどが商業出版社の集まりでありまして、これが果たしてどの程度浸透するかというのは非常に難しい問題ではないかと思います。一部の限定的な範囲において、このようなマークを付けることによって利用を促進するということについては、もちろん賛同いたしますので、もし制度として必要であれば出版業界の中でも徹底していきたい。現在でもそのような制度を運用するということについて、協会の中でも図っております。
 ただし、ここにも書きました通り、権利を持ってない人がそのような表示をしたり、あるいはそれを信じてしまったけれども、実際はそういうことができなかったということについて、利用した出版社がその責任を追及されるようなことのないような制度も作っていく必要があるのではないかなと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、ただいまの御発表につきまして御質問等ございますでしょうか。

【金委員】 著者の死後50年が経った段階で、出版社にとって何らかの経済的な利益を生むと考えられる出版物の比重、パーセンテージはどれぐらいになっていますか。

【社団法人日本書籍出版協会(金原)】 パーセンテージということでお答えするのは非常に難しいと思いますが、著作者が亡くなってから50年以降も更に出版物として価値があるというのは、主として文芸作品にはかなりあるのではないかなと思います。私は個人的には自然科学系の専門書の出版ですので、そのようなものについては50年間という期間、ということは具体的には発表後50年以上の期間が当然経っているわけですので、出版物の種類によってかなり状況は変わると思いますが、先ほど申し上げたように、文学的な作品においてはかなりその価値は残っているだろうと思います。

【金委員】 価値が残っているのがわかりますが、その価値が実際に具現化される確率はどれぐらいあるのでしょうか。パーセンテージじゃなくていいんですが。

【社団法人日本書籍出版協会(金原)】 それもお答えは非常に難しいところですが、現実問題として既に著作権の切れた作者のものであっても、夏目漱石であるとか、かなり古い方の作品については当然流通をしておりますので、また出版物として新たに発行されるということもあるわけです。パーセンテージとしては難しいと思いますが、かなりの部分において出版社としてそのようなものを出版物として発行していくということは、あるのではないかなと思います。

【大渕主査】 他にいかがでしょうか。
 それでは、本日は3時間という長時間にわたっておりますので、現在、私の時計で10時45分でありますが、10分だけ休憩して、10時55分に再開したいと思いますので、少し前に席にお戻り頂ければと思います。とりあえずお疲れさまでした。
 再開後は、漫画の分野の方が御到着になりましたので、その分野から再開したいと思います。

(休憩)

【大渕主査】 それでは、再開したいと思いますので、席にお戻り頂ければと思います。
 それでは、先ほど申し上げましたが、お1人もしくは1分野につき5分から7分で御発表頂ければと思います。

(6) 漫画分野
 漫画の分野から、社団法人日本漫画家協会の松本零士様、御発表をよろしくお願いいたします。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 遅れてまいりまして、どうも申しわけありませんでした。漫画家、つまり創作者の立場から私は主に発言いたします。
 まず、70年問題という大問題が今展開しておりまして、漫画またはアニメーションというのはその利用の幅も印刷物からのネット配信、アニメーションというようにあらゆる分野に展開しているわけです。各国との権利関係の年限というのを概ね統一しておいてもらわないと、立場として非常にやりにくいです。そして、漫画というのには国境はありません。63億全部の各言語圏別に流通しております。すべてのものが翻訳されて出ておりますし、今度の16日にはフランス大使館で、フランスの漫画家及びアニメーション関係者が来て、懇談会やセレモニーがあるはずです。それから、フランスとの合作の問題まで、直接やってきて話が始まるわけです。
 そういう中で、日本の創作者の作品のみが50年で、相手のほうが70年というと、これは非常にやりにくい問題が生じてくる。その利用方法についても感情的な確執が起こりかねないです。それから、創作者側と利用者側、それを制作あるいは発表して、営業として使う側もあり、意見が多少食い違うのは立場上やむを得ないと思うんですが、なるべくそこを穏便に統一しながら、70年問題を解決して頂きたいというのが切なる願いです。
 そして、漫画家という立場、創作者というのは、個人の能力だけに頼って仕事をしている孤独な存在です。生涯それに命をかけながら、ペンを握ったまま死ぬというのがほとんど全員に共通する問題。その悲痛な生涯、悲痛とは思いません。志を自分で立てたんですから、それはそれでいいんですが、ただ亡くなった後50年で切れる。今の長寿化の社会から言いますと、その子供たち、孫たちまで、おやじが、またはお母さんが一生懸命働いて、生涯をかけてなし得たことが、自由に誰でも使って無に帰する問題になるのかと思うとやりきれないです。
 それから、お金の問題だけではありません。作家というもの、創作者というのは、プライドをかけてその仕事に生涯をかけるわけです。それが自由利用ということになりますと、意訳、改訳、改変、本人の意図しない形で色々映像化されたり、改変されたものが各種の分野で使われる可能性があります。そういう意味からも70年という、まず世界の大勢がそうであれば、戦時加算の問題も解決した上で調整して、ほぼ同格、統一して頂きたいというのが切なる願いです。
 そして、世界中に媒体として広がっているというのは、ある意味では日本の色々なもの、著作物の中では、漫画という分野は非常に珍しい存在だと思っております。
 もう一度言いますけれども、各言語圏別に地球上全域に広がっております。そして、現在の状況はといいますと、漫画・アニメーションは電子媒体を含めてDVDやビデオ、放送、あるいは出版物を含めて翻訳されたものが出ておりますが、その対価というものは今の現在ですら直接入ってくるものは約100分の1です。実は100倍のものが手元に来て、日本に入って来ていいはずなんですが、その金銭は大きく国益を損じていると信じております。
 そして、もう一度言いますが、保障のない世界で、年金も、定年も何もないわけです。そういう中で生涯をかけて頑張った各創作者のプライドにかけても、せめて世界が70年なら70年に概ね合わせて、いろんな問題はあるでしょうけれども、そういう形にして頂きたい。それと、個人の意思というのもまた大事ですから、自分のものは自由に使っていいという人がおいでならば、それは意思表示制できちんとそういうことを言えば、それは自由に使える。個々の個人の問題に帰結すると思うんです。そういうわけで、大勢として基本的には70年というのを何とか貫いて頂ければというのが、創作者側としての切なる願いです。
 そして、過去の作品でもいつ蘇るか分からないという事態があるんです。そのときに権利関係が切れていたら、蘇ってくれても何もならないです。遠い過去の作品と思われるものが突如として大ウケにウケて、その時代にマッチしたために、先走った作品がそのときにちょうど良くなって、再生されるという例はたくさんあります。無数にありますので、どうかそういう点を留意されて、私どもといたしましては70年に延長して頂いて、世界の大勢に合わせて頂きたいというのが切なる願いであります。
 意見としては非常に単純明快でありまして、生涯保障のない世界で生きた創作者のプライドにかけても、願わくばそれが死後70年、改変されたり、意訳されたり、違う方向性に持っていかれないためにも、お金の問題だけを言っているわけではないんです。作品の利用法としてその許諾をする遺族、そういったことも考えた場合に過去の作品ということになると、そういう遺志も尊重しなければいけないと思います。
 もう数年で私の父親の権利は切れますと言って、涙ぐまれた娘さんの涙が忘れられません。それは今年あったことです。あと3年で切れますと。しかし、全員が知っているタイトルの持ち主なんです。若死にしたためにそういうことになります。ですから、そういうことを考えても悲痛なものです。かの偉大な手塚さんや私の友人であった石森氏の作品でも、死後という問題になると、刻々と時間が経過しつつあるんです。ですから、ディズニーの防衛策のようにとは言いませんけれども、ある程度のそういう意味での権利関係の防衛、防御というのは絶対に必要だと固く信じております。
 これ以上話しますと時間を超えますので、私の意見はそういうことであります。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、ただいまの御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

【金委員】 寿命と保護期間の件で御質問したいと思いますが、もし妻子が著作者より20年以上長く生きるのであれば、著作権保護期間を50年から70年へと20年延長することは合理的な判断だと思いますが、おそらく寿命が延びるのは妻子だけではなくて、著作者も延びると思うんです。そういう意味では延びる寿命は相互に相殺されていく。そういう観点から考えると、人間の寿命が延びたからといって、保護期間を20年間プラスしようというのは根拠が弱いんじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 相互に延びるわけですから、今の現状とそれは変わらないと思います、保護期間というのは。子供も長生きする、おやじも長生きする、親も長生きするのと、その生まれた時間ということを考えますと、なるべく保護期間は長いほうがいいと思うんです。何のために生涯をかけて仕事をするか。プライドをかけた創作者として仕事をするわけです。決して金銭だけのためのことを言っているわけじゃないんです。なるべくその保護期間が長いほうがその真意を貫く時間が長いということで、こういう意見を言っているわけです。

【金委員】 そうすると、寿命とは関係ないという話ですね。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 そうです。極端な場合ですね。ただし、長寿化も緩やかに影響してくる。それから、作家というのは非常に無理をします、徹夜徹夜で。私だって3日も寝ておりません。この年になってそういうハードな作業を繰り返す、そういう体質じゃないと向かないわけです。ですから、私は運がいい方で、ほとんどの人が50代で倒れたり、早い人は40代で倒れたりして亡くなっております。そういうことを考えると、非常に厳しい世界なんです。自分1人で闘わなければならない。何の保護もない、体力の問題。その消耗度が激しいですが、それでも命をかけて仕事をしているわけです。だから、保護期間を延ばして下さいという切なるお願いになるわけです。そういうわけです。

【津田委員】 純粋な興味なんですけれども、松本先生のところに主人の著作権が切れてしまうというのを訴えてこられたのは、どなたの御遺族なのかなと。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 『黄金バット』を書かれた永松健夫さんの御遺族です。非常に有名な作品なんですが、今でも色々利用される可能性はあるんですが、非常に早く亡くなられたんです。40代ぐらいで亡くなられたんだと思うんです。そういうことがあります。『黄金バット』という名前を知らない人はほぼいないはずなんですね、どんな作品かというのは別にしても。

【瀬尾委員】 今日は冒頭に中山先生から恥ずかしいということについて出てきて、私は実はその発言はすばらしいと。私自身はあまり考えたことがなかったので、それに今日はちょっとこだわって色々お伺いしてみたいと思うんですけれども、私は恥ずかしいと思っているんです、創作者として50年、70年というのは。恥ずかしいとか恥とかいうのは感覚の違いだと思うんですけれども、美しい国という今の方針でいうと、恥ずかしい国は美しくないですよね。端的に松本先生にお伺いしたいんですけれども、みんなが70年のときに50年って恥ずかしいと思われますか。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、美しいとか美しくないとかいう問題じゃなくて、お互いの権利関係として対等にこれから各国とお付き合いしていくためには、揃えておく必要があると思うんです。ですから、それは恥ずかしいとか恥ずかしくないとかいうものではない。もちろん作家のプライドは別ですよ。そうじゃなくて、相互の利用関係で同じ年限にしておかなければ、お互いに齟齬をきたす。外国に対しても失礼なことが起こる。その反対も、こっちが腹を立てるようなことが起こる。お互いの協調のためにも、穏やかに事を進めていく、共に仕事を進めていくためにも必要だと。そういうことなんです。

【瀬尾委員】 国際バランスということですね。

【社団法人日本漫画家協会(松本)】 国際的なバランスです。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。

(7) 音楽配信分野
【大渕主査】 引き続きまして、音楽配信の分野から、社団法人音楽電子事業協会の戸叶司武郎様にお願いいたします。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 音楽電子事業協会戸叶でございます。よろしくお願いいたします。私どもAMEIは、NMRC、ネットワーク音楽著作権連絡協議会というところに加盟しております。このNMRCは、傘下8団体を通じまして様々な企業約1,200社が加盟しております。今日はその中でも、特にコンテンツプロバイダと言われる企業の意見を中心に発表させて頂きます。純粋な使用者の協議会でございますので、今まで発表された先生方と若干ニュアンスが違うかもしれないことを、あらかじめ御了承をお願いいたします。
 まず、CPにつきましてですが、私どもCPは非常にシンプルです。権利者と共にwin=winの関係を持ちたい。例えば音楽配信であれば、ヒット曲があってこそ初めてコンテンツプロバイダはその事業が成り立ちます。ですので、新曲をどんどん作って頂く、作詞家、作曲家の先生方にどんどん創作行為をして頂くことが我々のビジネスの発展になりますので、ロイヤリティをお支払いすることはやぶさかではございません。というよりも、枕詞に「適切な」という条件がつきますが、ロイヤリティを喜んで払わせて頂きます。
 ただし、払いたくないものがございます。それはロイヤリティを権利者に届けるためのコストです。例えばカラオケであれば、品ぞろえが10万コンテンツ、大型の音楽配信ビジネス、超大手であれば100万曲の品ぞろえ、一般の着メロ事業者であれば大体3万曲から5万曲ぐらい、こういった配信サイトが数百あるいは千近くございます。数万件の楽曲一つ一つについて、権利者、作詞・作曲家を調べ、その権利が預けられている権利管理事業者を調べ、許諾をもらい、実績を報告し、請求書を受け取り使用料を払う。こういった人間系の作業、これを総称して管理コストと言っておりますけれども、この管理コストは当然払いたくない。これは私どもCPと著作権等の管理事業者さんにおいても同じテーマであると思っております。
 最近、著作権等管理事業法が施行されてから管理コストが激しく上がってきております。また、それに伴って無許諾での使用をせざるを得ないという状況も出てきており、今、CPは大変悩んでおります。そういった状況を踏まえて、検討課題について御説明をさせて頂きます。お手元の資料の7番でございますが、課題に関しましては1番と3番の課題についてのみ御報告させて頂きます。
 まず、過去の著作物の利用の円滑化方策についてですが、2番目のちょっと長く書いてあるところ、これを簡単に御紹介します。
 権利者が移動することに伴うトラブルが最近多発しております。例えばある作家さんが、JASRAC(ジャスラック)に権利を預けていたところからイーライセンスに権利を移したと。その場合に移したことがCPには告知されません。正確に言いますと、公開はされますけれども、例えば10万曲の中の1曲1曲を我々が自ら調べに行かないと移ったことが分からない。つまりCPはJASRAC(ジャスラック)が従来どおり管理していると思って、その権利者の楽曲の使用実績を報告する。JASRAC(ジャスラック)は実績報告を受け取るけれども、その楽曲は管理対象外となっているので、使用料をCPに請求しない。結果として、その作家さんの著作物使用料が作家さんにロイヤリティとして分配されない。こういうトラブルが最近多発しております。
 そういったことに対しては、私どもは今申し上げた通りで、5万曲、10万曲を1個1個全部、毎月毎月メンテナンスをして権利者を特定して、どの団体、JASRAC(ジャスラック)なのか、イーライセンスなのか、JRC(ジャパン ライツ クリアランス)なのか、ダイキサウンドなのか、それを調べながら使用料をお支払いしております。こういった無駄な作業を、何としても円滑化ということの大前提として取組んで頂きたいというのが非常に切なる願いでございます。
 もう1点、2ページ目になりますが、無許諾使用の問題がございます。これは私が勝手に付けてしまったんですが、業界用語になっている「サブマリン作家問題」というのがございます。例えば1つの楽曲に3人の著作権者がいて、1人だけがJASRAC(ジャスラック)のメンバーだった場合、許諾率は33パーセントになります。3人のうち2人がメンバーであれば66パーセントになります。4人のうち3人であれば75パーセントになります。66パーセントや75パーセントで配信をしていいかどうか、これはすべてCPの自己判断、自己責任でやっております。つまり権利の許諾を預けてない残りの権利者とは、我々が直接交渉して、直接許諾をもらい、直接使用料を指し値で払わなければならない。
 例えば1ダウンロードにつきユーザーへの販売価格が10円、あるいは高いものでも300円ぐらいのものに対して、正体不明の権利者を探し出し、そして交渉するコスト、特に外国曲でございますとスペイン語であったりロシア語だったりすることもあります。そういった交渉コストというのは、そもそもビジネスが成り立つことができないような金額になってしまいます。JASRAC(ジャスラック)のデータベースには権利者の情報は入っておりますが、権利者の氏名、所在が分かったとしても連絡手段、あるいは連絡のコストがかかるということに対しては、何らかの対応方法が望まれる次第でございます。
 私どもCPとしては、このようなコンテンツを配信した後でサブマリン権利者から許諾を取るということをしております。万が一許諾が取れなかった場合は、CP各社が独自の対応ルールを設定したり、例えば保険商品を開発したりとか、様々な努力をしておりますけれども、もう既にこれは限界に近づいているというのが現状でございます。
 それに関連しまして、3番の保護期間について御報告します。
 NMRCでアンケートを実施いたしました。結果は賛成43パーセント、反対57パーセント、完全に2つに分かれてしまいました。ですので、団体としての賛成、反対は言うことはできません。このお手元の資料の中で、かいつまんでポイントを御報告させて頂きます。
 ちなみに、43パーセントは、賛成意見と条件付き賛成意見の合計数が43パーセントでございました。賛成意見の丸ポツの2つ目です。海外の権利者との間に軋轢が生じる恐れがございます。ネットワークですので、世界中のどこからでもダウンロードできます。多くのCPはPD楽曲をメインページに貼り付けて、無料サービスダウンロードやストリームというのをよくやっております。これはそのサイトの販売促進活動であり、入会を促進するために、例えばPD楽曲10曲ぐらいをサイトの一番取りやすい場所に貼り込んで、御自由にどうぞということをやっております。これらの楽曲が日本ではPDであっても、海外ではPDではないということになった場合に、海外の権利者から軋轢が生じる恐れがあるというのが現状でございます。
 次の丸ポツですが、企業として、これは私の勤務しておりますヤマハ株式会社の例です。当社は英語教室を全国展開しております。英語教室で教える歌の歌詞については、JASRAC(ジャスラック)に権利を預けずに自社管理しております。自社管理することで、ヤマハ以外の英語教室がヤマハの英語教室の教材の歌詞を使わないように著作権でコントロールしています。
 このように著作権というものを、企業のビジネススキームの中の戦略的なツールとして使う例が結構ございます。皆様の議論を聞いていますと、企業と著作権というと、ディズニーとか、非常に派手派手しいところだけが注目されておりますけれども、こういった戦略的ツールとしての著作権を使う企業が結構存在していることを、ぜひ御認識して頂きたいと思います。70年に延びれば、当然企業のビジネス活動も延長されますので、我々は安心して優良な著作物を制作する投資ができることが約束されます。そういう意味で企業としていい著作物を作って社会に貢献するためには、保護期間の延長というものにメリットを感じるのではないかという御意見が、もちろんヤマハ以外にもございます。
 続きまして条件付き賛成意見ですが、これは見方を変えると条件付き反対とも言えます。戦時加算の解消ですとかレコード会社の専属楽曲の権利範囲などが、一般のユーザー、CPにとってきわめて分かりにくい。これが一番の問題です。特にCPはベンチャーですとか、異業種から参入している企業が大変多くございます。そういった企業にとって法律を遵守することはもちろんですが、法律はシンプルで使いやすいということが前提にないと、企業あるいはビジネスを発展・推進していくためには大変な障害となっております。もしも保護期間を延長するのであれば、こういうイレギュラーの部分を解消して頂きたいというのが大勢のCPの意見でございました。
 あと、3ページ目でその他意見がございます。もし延長するのであれば、登録制度との連携も考えながら50年目以降を報酬請求権にしてはどうかとか、権利者そのものが権利行使のメニューを用意して、行使できるメニューを自由に選べるようにしたらどうかという意見がございました。
 最後に反対意見でございますが、権利者が分散することを大変恐れております。先ほどのサブマリン権利者の例でも分かりますように、権利者が分散すると権利者を探し出すコストというのが大変かかります。権利者の氏名や名称、所在地が分かっていると、裁定制度に乗せることができません。しかし、ブラジルやインドネシアの奥地であったりとか、住所が分かっていても本当にいるかどうか分からないような権利者と交渉するということは、私どもは5万曲、10万曲を扱っておりますので、気の遠くなるような作業でございます。それが著作権の保護期間が延びることによって、調査対象が増えその管理コストが更に増える。そういった権利者が増えるということは、何としても避けて欲しいなという部分がございます。
 簡単ではございますが、以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、ただいまの御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

【都倉委員】 経団連でコンテンツ部門を研究している部会がありまして、今、ギャガの依田さんが部会長をやっていらっしゃると思うんですが、そのヒアリングに僕はちょっとお邪魔したことがあるんですけれども、今、政府を巻き込んで民間でポータルサイトを作るという話があります。とにかくアニメから絵画まで、ありとあらゆる権利関係のデータベース、コンテンツのデータベースを作るというプランが今進んでいる。膨大なお金がかかるので、これは民間ではできないということです。
 今、お話を伺っていると、この保護期間延長反対の一番の理由は、そういう1つの毎日の作業にお金と暇が非常にかかる。70年に延長するということでもありましたけれども、僕はそれはある程度のそういう官民一体となったポータルサイト、これはすごい話らしいんですね、僕はお話しか知らないのですが。映画から、それこそパチンコの権利まで全部網羅したポータルサイトだと。これがもしそういう官民で作られるようになったら、僕はかなり今おっしゃったようなことは解決できるのではないかと思いますけれども、NMRCとしてもそういうことは当然御承知でしょう。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 はい。CCDIDモデルについても十分研究しております。
 今、都倉先生に教えて頂いた件は2つございまして、1つは、一番最初に私が申し上げた権利者が移動することに対するフォローがきちっとできるかどうかということ。ここについては経団連ポータルに非常に期待をかけております。
 ただし、2点目のサブマリン権利者につきましては、自らが権利ホルダーとして権利を正しく管理しようと思う意識のない権利者に関しては、そういったポータルサイトに登録することすらしないかもしれない。当然、私どもCPは、そういった権利者とはお付き合いはしたくないというのが本音でございます。権利を持つからには、権利を正しく活用するという気持ちを持った権利者さんとだけお付き合いしたい。そうではない人に対しては何らかの行政上の対応措置を作って頂きたいというのが、私どもの本当に切実なる要望でございます。

【野原委員】 先ほどの話とも関連する経団連ポータルサイトについて、私も非常に期待をしていますし、今、御発言のあった支払いたくないお金というのは、権利者にロイヤリティを届けるためにかかるコストであるということで、まさにその通りで、そこをいかに効率化していくかというのは非常に重要だと思います。
 1点質問なんですけれども、保護期間のあり方についての賛成43パーセント、反対57パーセントと書いてあって、賛成には条件付き賛成意見が入っているとおっしゃられたんですが、この条件付き賛成意見を外した場合の賛成意見というのはどれぐらいの比率なんでしょうか。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 すみません。その統計はとっておりませんので、後で調べて御報告いたします。

【野原委員】 そうですか。先ほど条件付き賛成意見というのは、ある意味、条件付き反対とも言えると。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 とも言えるかもしれません。

【野原委員】 そうですね。なので、その比率によって、随分とこの賛成、反対の比率は違って見えるのかなと思うのですが。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 私もざっと手計算でしましたので、それをそこまで詳しく数字を作っておりませんでした。申しわけございません。

【野原委員】 ざっくり半々とか、そういうことは分かりますか。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 ざっくり半々ぐらいです。

【野原委員】 ということは、2割ぐらいの方が条件じゃなく賛成ということ。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 そうなりますね。

【野原委員】 ありがとうございます。

【社団法人音楽電子事業協会(戸叶)】 申しわけございません。

【大渕主査】 他にいかがでしょうか。それでは、ありがとうございました。

(8) 公的アーカイブス分野
【大渕主査】 引き続きまして、公的アーカイブスの分野から、国立国会図書館の田中久徳様、よろしくお願いいたします。

【国立国会図書館(田中)】 国立国会図書館の田中と申します。今日はお時間を頂いて、ありがとうございます。
 早速ですけれども、お手元の資料を使いながら、説明させて頂きたいと思います。
 国会図書館は法律で出版物の発行者の方に義務を課させて頂きまして、日本の中で出た出版物を網羅的に集めて、国会の立法活動をはじめとする様々な国民の利用に供するということを責任として負っております。国の文化資源ということで、今の利用だけではなく、将来の利用を保障していく。そういうことを一番重要な役割として持っている機関でございます。
 その延長線上ということで、我々は今、デジタルアーカイブ事業ということをやっております。全体は別紙に付けました図をご覧頂きたいのですけれども、この事業は2つの部分に分かれています。1つは今までの古い資料につきましてデジタル化していく部分、それから新しく電子形態で出てくる資料、また、インターネット上の情報、こういったものを収集して保存していく。大きくその2つに分かれるわけですけれども、今日のお話では、古い資料の利用の部分につきまして、私たちの経験に基づき、今、課題と考えられることについて御報告させて頂きたいと思います。
 1つ目としまして、権利者が不明な場合の扱いという問題がございます。文化庁長官の権利者不明の裁定制度という、著作権法の67条に規定された制度がございますが、国会図書館は、ここ数年ではこの制度の最大の制度の利用者ということになっております。
 一番大きいものは、「近代デジタルライブラリー」という、明治時代に刊行されたすべての図書について、デジタル化をするという事業の中で権利の調査を行いました。ざっくりとした数字ですけれども、全体の7割にあたる5万人強の方の権利が不明であったということが結論としてございまして、その方々について決まっているルールに従って様々な調査を行いました。かかった経費は、本にすると1冊当たり数千円、1名の調査についてもやはり数千円のお金がかかっております。全体の件数が多いものですから、総額では2億6,000万円近いお金がかかっております。
 今は運用が整備されてまいりましたので、基準が明確になってきているのですけれども、実際に我々が行いましたのは、まず本を見て権利者の方を探し出して、それを様々な事典や名簿によって調査をして、更に連絡先を判明させるために、地域別の人名事典、全部で数百冊の事典を使って探す。更に出版社とか、学会、研究者の方、所属団体、地方自治体、こういったものを全部調べて、3,000近い機関に照会をして探し出すということをやっております。その上で分からなかった部分については、私どものホームページのほうから公開調査をするということで、多くの方から情報を頂くのですが、4万名ぐらいの方については結局分からないということで、裁定を利用させて頂いたということでございます。
 このように非常に多くの時間と費用をかけなければ、古いものの調査はできない。更に、新聞とか雑誌のようなものになってきますと、1点の出版物の中に多くの権利者の方や著作者の方が含まれておりますので、これを探し出して調査するというのは現実的には困難、事実上できないというような状況に直面しているということでございます。
 私どもが判断することではございませんけれども、古い資料の中で経済的価値がある部分というのはそのうちごく限られたものになります。様々なものがありますので、そういったものを広く国民共有の財産として使って頂く、そうした場合に今の制度では限界があるかなというところを私どもは感じております。
 次に、アーカイブ事業の円滑化方策ということです。これは全体の中では小さい問題かもしれませんけれども、国会図書館は資料を保存するということを目的としておりますので、資料が劣化していくことはどうしても避けられないわけで、劣化した資料は今までフィルムに撮影して、マイクロフィルムという形で保存して、利用するという両立を図っております。
 ところが、最近、フィルムそのものを保存していく上で、重要な劣化の問題がフィルム自体にも生じ、また、デジタルの趨勢になって、だんだんフィルム産業自体も小さくなってきますので、新しい機械がなくなったり、技術革新も進まなくなってしまいますので、そういうことを考えますと、マイクロフィルムだけによって保存していくのがちょっと難しくなってくるのかなという認識を持っております。
 そうしますと、最終的にはすべてをデジタル変換し、デジタル化したものを保存していかなければいけないということに直面します。、著作権法の中で、図書館は保存を目的にする場合には、一定の権利制限をかけられるということは規定して頂いておりますけれども、その枠の中だけでデジタル変換を行おうとしますと、今の法律上では色々な問題がある。資料を保存して、それを私どものほうに来て頂いて、例えば複製したものを見て頂く。それから、印刷物をプリントアウトして提供する。その部分も権利者の許諾を頂かなければできないのかどうかというのは、私どものような機関にとりましては大変重要な問題として、直面しているということでございます。そういったことについても御検討頂ければと思っております。
 最後に保護期間の問題ですけれども、出版物の公正な利用ということを私どもは願っておりますし、また長期的な保存ということに責任を持っているわけですけれども、私どもが保護期間を延ばすべきだとか、短くすべきだとかいうのは、一義的にはそういったことを判断する立場ではございませんので、直接そのことについて何か申し上げるということではありません。ただ保護期間が延長されるとしますと、今直面している問題が更に深刻になることだけは間違いないことでございまして、権利者の調査ということでも更に20年延長されたとしますと、ほとんど分からなくなってしまうという状況が起こってくるということは言えると思います。ですから、そういった制度的な検討をセットでやって頂くということが、どうしても必要かなということは思っております。
 以上でございますが、何かございましたら、御質問頂ければと思います。ありがとうございました。

【大渕主査】 ありがとうございました。では、質疑応答に移りたいと思いますが、今の御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

【三田委員】 保護期間の延長に関してなんですけれども、死後何年ということを考えようとしても、その著作者の方がいつお亡くなりになったか分からないというケースも非常に多いだろうと思うんです。私は、国会図書館のアーカイブ事業というのは大変重要なものだろうと思っております。
 例えば権利者の団体やポータルサイトを作るという考えもありまして、実際、死後何十年か経つても財産権として活用されているものについては、そういうデータベースにちゃんとまだ権利がありますよということを表示するとして、著作者の中には著作権の存続期間がまだあっても、アーカイブに関してはオーケーだというような方もいらっしゃるだろうと思います。そういう意思表示も含めたデータベースを作った上で、そのデータベースに載っていない方について、例えば何らかの権利制限をするとか、現在の裁定制度よりも簡易な裁定制度を新しく作るとか、利用のしやすいシステムを作るということであれば、必ずしも国会図書館の保護期間を70年に延長することが、国会図書館の活動の妨げになるということではないのではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

【国立国会図書館(田中)】 おっしゃられる部分は良く分かります。長い年月にわたって経済的に重要なものというのは、全体から見れば限定されると思います。一定のデータベースが整備されて、そこに載っているものについては権利者がはっきり分かる。それ以外のものについて、私どものような事業も進めやすい形で検討して頂くというのは、大変ありがたいことかなと思っております。

【渋谷委員】 文化庁長官の裁定を受けた件数が4万人台ぐらいということなんですが、裁定を受けるには前提として相当な努力を払わなくてはいけないんですか。

【国立国会図書館(田中)】 はい。

【渋谷委員】 相当な努力を払っていないというようなことを文化庁長官から言われたような例はおありですか。

【国立国会図書館(田中)】 いえ。色々な点でお話をさせて頂きながら進めさせて頂いておりますが、相当な努力をしてないということの御指摘を受けたことはなかったかと思います。それについては調べた実績もお示しして、進めさせて頂いてきております。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。

(9) 民間アーカイブス分野
【大渕主査】 引き続きまして、民間アーカイブスの分野から、青空文庫呼びかけ人の富田倫生様、よろしくお願いいたします。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 青空文庫の富田倫生です。よろしくお願いいたします。今日何をお話ししようかと思って色々考えてきたんですが、あまりにたくさんのことを考え過ぎておりまして、一からお話しすると5合目あたりで遭難すること必定と思われるので、まず結論から申し上げます。
 著作権の保護期間の延長、現状の死後50年をここから20年延ばすということに関しては、法の目的に沿った合理性、益がないと思います。ですから、これには反対です。
 次に、アーカイブの活動をしておりますと、国立国会図書館の近代デジタルライブラリーでも直面したことですが、著者の没年確認に大変苦労するということがしばしばございます。それで、今、1名当たり数千円で何億かかったと聞くと、私は目もくらむような思いがするんですが、各アーカイブがそれぞれ自分たちの努力でそういうことをやっていたのでは、これは大変な負担が総額でかかってくる。近代デジタルライブラリーで調べたことは国民に公開して欲しい、あのときにやった権利確認の成果は公表して欲しいということをお願いすると共に、誰が保護期間を過ぎているかのデータベース化が急務と考えます。
 こうしたデータベースの整備は、今、現状必要なことです。これはこういうデータベースを作ったら、保護期間を延ばしても大丈夫だと。そういう話ではありません。過去の著作物を現在我々が掘り起こして、活発に活動していくためには、このデータベースが必ず必要です。これは保護期間の延長云々とは、別個の問題として取り組んでいかなければいけない。これをぜひお願いしたい。
 それから、データベースを揃えてもどうしても没年が確認できない。そういったケースを一体どうするんだと。私たちがまじめに法律の規制を守っていくと、これは生年から数えておよそ200年ほどたちましたが、没年確認できませんとか、発表後150年ほど経っておりますが、没年確認できませんので、アーカイブできません。こういう事態が起こります。
 ですから、これはなかなか難しい問題かとは思いますが、例えば生年が分かっているのであれば、そこから人間の寿命の限界を考慮し、更に死後の著作権保護期間をプラスして150年程度で保護を終える。あるいは生年も没年も分からないけれども、この時点で公表されていると。それで、これが別名の著者とか、そういう扱いかどうかも分からない、本名かペンネームかも分からない。そういったケースに私たちはぶち当たることがありますので、例えば150年は必要ないと思いますが、発表から相当の年限を過ぎた段階で保護を終えるという規定が著作権法に盛り込めないか。そのことも強く感じます。それを御検討頂きたいのが3点目です。
 それから、クリエイティブ・コモンズのような意思表示システム、これは今後果たす役割がどんどん大きくなっていくように思います。私は今、青空文庫の世話人ということで来ておりますが、約10年くらい前はコンピューターの歴史を書くライターという立場でございました。当時自分の書いたものは、公表しておりますが、クリエイティブ・コモンズのライセンスを付ければより明確になるだろうという気がいたしますが、法制度との矛盾が本当に起きないか、そこの心配はないのかということが少し気になります。ですから、法が与えると決めている権利のうち、私はこの権利は望まない、こういう保護は望まないということを意思表示できる旨を、法律でも規定して頂くことはできないかと思います。
 以上、4点が私が申し上げたいことですが、この私の考えは青空文庫の体験を経ておりますので、時間の許す限りで青空文庫とは一体何か、その中でなぜ保護期間の延長をしないほうがいいんじゃないかと思うように至ったかを御説明します。
 青空文庫というのはインターネットの図書館と説明しております。約10年前に始めました。保護期間にまだあるもの、例えば私が昔書いた作品、それから保護期間を過ぎた作品、両建てで最初はスタートしてまいりましたが、保護期間を過ぎた作品のアーカイビングにしだいに特化してきました。
 「青空文庫」と検索エンジンに入れて、ぜひ開いてみて頂きたいんですが、6,200ほどの著作権の切れた作品が公開されています。例えば夏目漱石であるとか芥川龍之介、太宰治、それから坂口安吾のような作家の作品も公開されています。それをどなたにも自由に、一切の制限を付けずに利用して頂いています。
 それから、著作権の切れたファイルですので、私たちが電子化したことをもって何らかの権利を主張しないと。このファイルを利用される方は、どうぞ御自由に御利用頂きたい。私たちへの連絡も必要ない。それから、このファイルはこういう形で、この本に基づいて作りました、誰が作りましたという情報を付けていますが、それを削ることもあなた方の自由だろうと。私たちは削らないことを望むけれども、削りたいのであれば、削ってどうぞ御利用下さい、商業利用もどうぞ私たちに断らずにどんどんお進め下さいという形で提供しています。ぜひ読んで下さい。なかなかおもしろい作品がたくさんございます。
 それで、この電子図書館を私たちは1997年の夏、およそ10年前に始めました。電子図書館と一言で言うと、先ほど国立国会図書館の方が御説明なさったように、近代デジタルライブラリーという試みがございます。それから、規模が全然違うんですが、青空文庫という試みがある。これは近代デジタルライブラリーと異なった方式をとっています。近代デジタルライブラリーのほうは、古い本を開いてコピーを取る要領でページの画面を画像化して、公開しています。一方、青空文庫では、キーボードをたたいてテキスト入力した、そのテキストの形で公開しています。二つの方式にはいくつかの点で差があって、面倒くささにおいてはテキスト入力のほうが面倒ではないかと思っております。テキストをまず入れることも大変だし、それを本当に著者が書いた形のまま提供するには、しっかり校正しないといけない。私たちは力が足りないものだから、そこのところでは本当に努力を重ねないといけません。その努力を重ねるところでは随分手間暇がかかります。
 それで、我々は著作権が切れた作品を利用してこういう活動をやっていますが、良くこういう話をすると、ただで勝手に使うとか、ただで勝手な振る舞いに及ぶというニュアンスで語られるのを聞くことがありますが、皆さんお考え下さい。私たちは手間暇のかかるテキスト入力、校正の作業をボランティア体制で、この10年間、670名で進めてまいりました。
 そのボランティアは何のためにこういう作業を続けてきたのかという点です。それは作品を慈しむ心、著者に対する尊敬、文学に対するあこがれ、歴史を良く切り取ってある作品を皆さんに利用しやすい形で届けておきたい。その気持ちのゆえです。幾ら著作権法が50年で保護を終えるといっても、そこで保護が切れたとしても、例えば大みそかの除夜の鐘が鳴り終わると、その時点からそれらの作品が自然と利用可能な状態になるわけではありません。そこで誰かが働かなければ、著作物は本当に自由に利用できる形態になりません。ただし、働く気になれば、我々に我々の文化を慈しむ気持ちがあれば、そして法があるところで期限を定めて、著作物の保護を著者に独占させるのを止めると規定しておいてくれれば、私たちは働けます。そうした形で育ってきたのが青空文庫です。
 青空文庫の作品はインターネットで公開されていますので、日本全国は言うまでもなく、世界各国で利用されています。アクセスログを見てみると、アメリカ、EU、韓国、中国、ロシア。それから、在留邦人の方にも広く読んで頂いています。読む人の場所を限りません。
 それから、インターネットのアーカイブはまた読む人を拒みません。本というのは非常に良い媒体だと私は思います。紙の本ですね。これは良くできているけれども、最低限目が見えないといけない、本を保持できないといけません。電子テキストアーカイブで公開されているテキストは、全盲の方は音声に変換して利用しています。全盲の方よりよほど多い弱視の方は、極端に拡大したフォント、大きな文字で読んでいらっしゃいます。それから、肢体不自由で本を支えられない方、こうした方のブログで青空文庫という名前が出てくると、私は胸を打たれるような気持ちになりますが、こういう方は視線でページをめくって本を読んでいらっしゃる。そういう読む人を選ばないという特長もあります。
 それから、読む以外の用途も電子テキストアーカイブには存在するということを私たちは知ってきました。最初は知りませんでした。青空文庫のトップページには入力ウィンドウが付けてあります。例えばここにある言葉を入れて、これは一体どういうふうに使われたんだ、ら抜き言葉というのは一体どこから文芸作品の中に出てくるだろうと調べてみると、太宰治にら抜きの用例があると分かる。それから、例えば崩れ落ちるという意味の「瓦解」という言葉を入れると、明治維新を裏返しから見た、要するに徳川の社会の崩壊を惜しむ側から見た時代の転換に対するコメントが読めます。岡本綺堂であるとか、長谷川時雨であるとか、それから三遊亭円朝の落語の中にも「瓦解」という言葉がキーワードとして出てきます。そうした形で、青空文庫全体が1つの用例集をなして、コーパスとして使える。そういうことも知ってまいりました。
 こうしたインターネットの電子アーカイブの可能性はどこから来たかというと、それはインターネットから来たものであって、著作権の保護の側から何かを奪ってきて、それによって達成されたものではありません。私たちはインターネットという仕組みを社会の中に一層築いて、その恵みを受けて利用の側の機能を向上させている。それは保護から何かを奪い取って、達成されたものではないということです。
 ライターとしての過去の経験も踏まえて申し上げます。自分が死んで50年後までの保護期間をあと20年延ばしたとして、私の書く気持ちに何か変化が起こるだろうか。私はかつて自分が目撃したパソコンの歴史を書き残しておきたいという気持ちで仕事を進めてまいりました。自分の死後の保護期間を延ばしたとしても、それに何がしか変化が起こるとは到底思えない。それが新たな創作意欲の増進につながるとはとても思えません。
 それから、欧米の水準に合わせることがいいことなんだ、それが望ましいことなんだとおっしゃる。それでしたら、欧米の水準に合わせることは、なぜ日本の文化の振興にとってメリットがあるのか。そこを合理性を持って語って頂きたい。私はそこが合理性を持って語られているとは思いません。
 それで、延長のメリットとして言われることには数多くの疑問がありますが、1つだけ明らかなことがあります。それは今後のアーカイブの活動を制約するということです。アーカイブに収録できる作品は20年古びます。数も制限されるでしょう。そうしたことが今後、インターネットを得た我々の過去の著作物の利用にとって益のある選択だとは思いません。日本にはチャンスがあります。EUは1993年、インターネットの効き目がまだ分からない段階で、各国間の制度のばらつきをならすために延長を行った。それから、アメリカでは、主にヨーロッパの動向をにらんだ娯楽産業の働きかけが功を奏したかと思います。
 日本は2007年、今ここでこうやって論議しています。私はインターネット信者のようにそのメリットを語っています。インターネットの効き目がある程度明らかになってきた時点で我々は判断できます。ここで日本が保護期間をこのまま50年に留める。そのかわり各種のアーカイビング活動を行って、人々が過去の著作物に、経済的な条件だとか、資格だとか、そういうものを問われずにたくさん触れられる、たくさん学べるようにしていく。そうやって文化の基礎を上げていくことは、きっと次の創造の揺りかごを用意します。そういうモデルを日本は提供できる。そうした方向で意見を申し上げました。
 こういう機会を与えて頂いて大変感謝しております。ありがとうございました。

【大渕主査】 ありがとうございました。では、質疑応答に移りたいと思いますが、ただいまの御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

【里中委員】 私の聞き違いかもしれないんですが、インターネットの効用と保護期間の延長については、私から見るとあまり関連性がないように思えるんですね。確かにインターネット上で文芸作品を発表し、誰もが読めるという、この環境づくりは大変すばらしいことだと思いますが、許諾を得ても載せることはできるわけですよね。さっき50年が70年になろうと、何ら変わりはないとおっしゃいました。何ら変わりはないんだったら、70年に延びてもいいんじゃないかとお尋ねしたいのが1点です。
 それと、インターネットのすばらしい利便性と効用と保護期間の延長とは、そんなに関係があるものなのか。前提として、保護期間の過ぎたものを利用したという目の付けどころとか大変努力なさって、すばらしい事業をなし遂げられたということはすばらしいことだと思いますけれども、それは前提として、保護期間の切れたものがあったから、利用できたという一種の成功談のように聞こえるんです。
 それと、実際にこういうことをやるのに大変な費用がかかると思います。そのあたりの能力があって、成功なさったということだと思いますので、すべての人が保護期間が早く切れたほうがみんなが活性化して、新しい事業を起こせて、なおかつ文化的貢献に浸れるということとイコールではないように思うのですが、その2点をちょっと質問させて頂きたいと思います。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 はっきり答えになっているかちょっと自信がないので、間違っていたらまた直して下さい。
 まず、色々な資金的なものに恵まれて、特殊な事例で自分たちの成功モデルを語っているんじゃないかという御指摘がありましたが、紙のほうには書いておいたんですが、青空文庫というのはもともと電子本オタクのような連中が4人ほど集まって、ちょっとやってみようかという話で始まったので、組織的な基盤、財政的な基盤が全くありませんでした。組織なし、基盤なしというのは今に至るまで続いていて、まずお金はかけない。お金はかけないけれども、かなりの規模のアクセスがあってダウンロードがあるので、高品質の太い回線につながった速いコンピューターを確保しておかないとサービスがすごく遅くなってしまう。それで、そこだけにはたっぷりお金をかけている。年間の予算は大体200万円くらい。データベースを開発したときにお金がかかりましたので、そのときが300万円ぐらい。そうした形で運用しているシステムです。
 インターネットを利用したアーカイブのメリットを幾つか言いましたが、その中で言わなかったのは安価に作れるということです。働く気持ちがあれば、自分の時間を提供する気持ちがあれば、著作物を利用しやすいデジタルの形に整えて提供することを、低予算で実現できる。そういうのがもう1つ、インターネットの大きな強みだと思っております。
 それから、私は50年を70年に延ばしても、それは関係ないと申し上げましたでしょうか。もし言ったとすれば、言い間違えてしまって大変申しわけないのですが、50年と70年は大違いだと思います。今問われているのは、現行50年の保護期間を70年に延ばしたほうがいいと。じゃ、延ばしたほうがいいというんだったら、その20年延ばすことに合理性はありますか。利用と保護のバランスをとって、著作物が広く行き渡って、新しい創造がどんどん行われるような環境を作っていく、そういう法の大目的に照らして、20年延ばすことにメリットがありますかと問われているんだと思います。それで、それに対しては私はメリットはないと考えております。
 アーカイビングの活動が著作権法の保護期間とどうかかわるのかという御質問があったと思いますが、著作権法の構えとしては、我々の文化の環境を押し上げていく際に片方でしっかり保護する。しかし、その際に公正な利用の促進、利用の側のことも頭に置いて、これが損なわれるような一方的に権利を強化したり、または逆に権利をないがしろにして、一方的に利用だけ促進したり、そういうことはしない。両者のバランスをとって、文化の発展に寄与する、いい環境を作っていくんだというのが法の目的だと思います。
 この2つは、飛行機の両翼にエンジンがあるようなものと考えてもいいんじゃないかと思います。保護のエンジン、利用のエンジン、これがインターネットを得たことによって利用の推進力が大きく高まった。ちゃんと意を配っていれば、片方が強まったことで、操縦を誤ってどこかに激突してしまうことはないでしょう。もっとスピードが上がるでしょう。それで、この利用の側の推進力は、保護の側から何かを奪い取って得たものではないということです。インターネットを得たことによって現行の水準に留めたまま。ということは、保護も現状どおり行いながら、強まった利用の推進力を得てアーカイビングを推し進めていける。アーカイビングについて、私は青空文庫のことで言いましたが、もちろん国立国会図書館は近代デジタルライブラリーでやっていて、明治を今やって下さっている。今後、ぜひとも大正期、昭和期と進んでいって欲しい。
 それから、世界各国が書籍に盛り込まれた過去の知識を電子化しようと試みています。御承知の通りグーグル、マイクロソフト、ヤフー、アマゾン、それからヨーロッパはヨーロッパで、EU電子図書館構想を推し進めています。それらの目標設定は紙に書きました。
 そうした形で、インターネットに知識を集約しよう、検索、参照可能な対象にしようということで大きく広がっています。単に青空文庫の体験を誇り、青空文庫が制約されるから延長はやめてくれとで申し上げているつもりではありません。青空文庫は全く財政基盤はないので、そんなにもつかどうか分かりません。ただし、青空文庫が倒れても、ここで電子化したものは全部次のアーカイブに引き継がれるだろうし、我々はそれで構わないと思っているのです。
 プロジェクト・グーテンベルクというアメリカベースで著作物の電子化を進めていらっしゃるサイトから利用のお申し入れがあったので、どんどん勝手に使って下さいと申し上げました。アメリカの某大学の日本語テキストアーカイブにも青空文庫発というのは、書いてあったかな、書いてないかな、ごそっといっていますので、利用されている。
 そうした形で、幅広く進んでいる電子テキストアーカイブの活動を制約してしまうと、保護期間の延長は。事実、長めの保護期間を選択したアメリカ、EUでは、幅広い電子化計画が著作権の長い保護期間の壁にぶち当たって、目標設定した作品数の電子化が進まないということが現実に起きている。そういうことで、保護期間の延長とテキストアーカイブの活動というのは関連してくると申し上げております。

【里中委員】 すみません。ちょっと質問の仕方が悪くて、うまく伝わらなかったようです。インターネットの効用とか、電子化することによって、みんなが文化的恩恵を受けやすくなることについては重々承知しておりますし、もちろんその通りだと思っております。
 ここでお伺いしたかったのは、50年が70年になったとしても、すばらしい人類の文化遺産としての文芸作品は、70年を過ぎたものの中にもまだまだたくさんあるのではないかと。シンプルに申し上げれば、そういうことなんですね。保護期間が70年になったとしても、著作者の所在が明らかで、ちゃんと手続きさえ取れれば幾らでもアーカイブ化はできるわけです。
 要するにおっしゃることは、50年が70年に20年分延びれば、交渉のための費用とか手間とか、そういうことがかかってしまうので、青空文庫に限定して言うわけじゃありませんけれども、なかなか仕事としてやりにくくなる面が増えるので、保護期間の延長には反対だと。そういうお立場なんでしょうか。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 それの直接の答えになるかどうか分かりませんが、現行、作者の死後50年を過ぎたものは、一括して著作権の保護を終えるという規定になっています。それでどんないいことがあるか。私たちは電子化しているファイルを、皆さんどうぞ自由に勝手に使って下さいということで提供しています。それから、視覚障害者のために音声ファイルに変換している人もいる。それから、青空文庫のファイルを巨大なフォントで表示する弱視者の利用を考慮したビューアーを書いている人もいる。それから、青空文庫のファイルを使っては1冊100円の、評判が良かったり悪かったりするんですが、日本文学全集を作っている人がいる。それから、おふろで読む本を作っている人がいる。ゲーム機で読むソフトがこれからどんどんというか、2社あたりから発売されると思います。そうした形で、例えば青空文庫を一本の木と考える。ここで育てた果実、過去の作品のデジタルファイルはみんなが利用できる、断らずに利用できる、商業利用もできる。そういう形で利用できているわけです。これを保障しているのは、一々おふろで読む本に関しては権利許諾させて頂けますか、視覚障害者はオーケーですか、100円だったらいいですか、1,000円はだめですかと。そういったことを問わないで、あるところで著作物の保護を終えようという法の仕立て、現行の法の設定です。それを生かしてやっている。私はこの法の設定というのは、一々例外規定を設けたり、色んなことを積み重ねて保障するよりは、過去の著作物を利用するに当たって非常に使いやすい、我々にとっていい規定ではないかと考えております。

【里中委員】 すみません。時間がないのに、色々質問して申しわけありませんでした。私の受けとめ方としましては、要するに保護期間が短いほうが活性化するというお立場だということで受けとめてよろしいわけでしょうか。経済の活性化、仕事のチャンスの増大ということをおっしゃりたかったということで受けとめてよろしいですね。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 現行の法制度があって、70年に延ばすことは根拠がないということを、私は繰り返し申し上げております。現行のままに留めてアーカイビングを活性化していったら、私たちの文化環境はもっと良くなるだろうと。そう申し上げております。

【都倉委員】 お話を伺っていると、50年はそもそも30年だったわけですよ。これだったら30年にしたほうがいいというのが、例えば真意ということでいらっしゃいますね。今おっしゃったことだと、30年より50年のほうが色々な意味で理想的だと聞こえるんですけど。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 もし、例えば私たちがここでお話しするのではなくて、それからベルヌ条約という基本的な国際的な合意の枠組みを外して、一から話そうと、例えば国連でそういう場が設けられて。

【都倉委員】 そうしたら30年だというふうに。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 私がヒアリングに呼ばれたら、それは私の個人的な意見ですが、著作権の保護期間に関して色んなことを言うでしょう。保護期間の設定に関しても言うと思います。ただし、現実の選択の問題として今起こっているのは、我々はベルヌ条約の上にいる。現行の著作権法の保護期間を、50年から70年に延ばすか否かを論議している。そこでお答え申し上げました。

【都倉委員】 分かりました。
 1つだけ僕が質問したかったのは、インターネットというもちろん国際的なツールを持っていらっしゃるわけですから、色んなところからアクセスされていますが、相互主義というのはどうお考えですか。著作権の国際的な相互主義についてということです。片方が70年で片方が50年で、ここでバランスが今ちょっと取れてない部分が色んなところで、特にインターネット上では行われているわけです。これに関してはいかがですか。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 相互主義は各国のバランスが取れてない状態を、保障するための制度ですよね。例えばここで70年、ここは50年、ここは80年で設定している。その違いをならして、公平にするための手だてが相互主義と理解しておりますが。

【都倉委員】 いや、その保護期間に関してだけで答えて下さい。

【青空文庫呼びかけ人(富田)】 保護期間に関してお答えしたんですが。まず、ベルヌ条約がございますよね。この枠組みで50年以下にするという設定はないので、日本はそこに参画していますから、50年以下の設定はないです。それで、その上で50年にするか、80年にするか、100年にするか、そういう選択は許されている。
 各国でそうしたばらつきが生じた際、もともとベルヌ条約というのは相互主義をとっていませんので、そのままで運用してしまうと、片方では自分のところのものは向こうに行くと短い間しか保護されない、私のところに来た日本の著作物は80年も保護しないといけない。こういう不均衡が生じてはならないために、相互主義を採ることによって保障している。両者に違いがある場合、短い方が50年だったら下のほうに揃えましょう。相互主義をとっておけば、日本が50年ならアメリカも50年で、これでイーブンとなる。

【大渕主査】 ちょっと時間が非常におしていますので。

【都倉委員】 私は結構でございます。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。先ほどは予定どおりだったのですが、少し時間がおしてまいりましたので、恐縮です。

(10) 意思表示システムに関する分野
 それでは、引き続きまして、意思表示システムの取組みの分野から、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの野口祐子様、よろしくお願いいたします。

【クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(野口)】 野口です。本日はこのような機会を与えて頂きましてありがとうございます。クリエイティブ・コモンズからは多少長めのペーパーをお出ししておりますけれども、委員の中に名前を聞いたことはあるが、一体何物か分からないという方が万が一いらっしゃると困りますので、内容を説明させて頂いた紙を多少付けさせて頂いております。
 こちらは後でゆっくりお読み頂ければ大変幸いに存じますが、簡単に一言だけ御説明をさせて頂くとしますと、参考資料1のところに1枚ものの説明書を添付しております。ちょっと印刷が悪く、多少読みづらい面もあるのでご容赦いただきたいのですが、クリエイティブ・コモンズは、一部誤解をされている方もいらっしゃるように聞いているんですけれども、決して著作権を放棄しろとかいうことを申し上げているわけではございません。著作権制度の中で、権利者の中にも、こういう範囲であれば自由に利用してもらって構わないよという方が、実はたくさんいらっしゃるのではないかと。けれども、今は何も意思表示をしないとすべて利用してはいけないというのがデォルトになっておりますので、利用してもいいよと思っていらっしゃる権利者の方が万が一いらっしゃれば、それを簡単に表示できるライセンスとそのツールを提供する。そういうような運動をしているところであります。
 それで、色々なライセンスのマーク等がございますけれども、時間の関係がございますので、後でお読み頂ければと思います。
 このように私どもの団体は、もともとは米国で始まりましたが、現在では世界で40カ国くらいに広がっており、今どんどん活動を拡大しておりまして、世界で1億4,000万とか、2億とかいうような数のライセンスが発行されていると言われております。私のペーパーでは3ページからですけれども、その中で我々の立場から御質問を頂いた事項について、御意見を述べさせて頂いております。
 まず、過去の流通の意思表示システムについて、特に意見を表明してくれということで、御意見の機会を頂いておりますので、その点を御説明させて頂きます。前半に、このような意思表示システムが存在する良い点を書いているんですけれども、基本的には良いことは、今、青空文庫の富田さんが著作権が切れた場合に限定をして、著作権が低いコストでみんなに広く利用できるようになるとどんないいことがあるかということを御説明を頂いたところでありまして、それを著作権の保護期間が切れる前からライセンスをすることによって実現させていこうということでございます。いいことは色々あるということが簡単にお分かり頂けるかと思います。逆にこのような意思表示システムを進めていく上で困難と思っていることが幾つかございまして、4ページ目のところからご説明をさせて頂いております。
 1点は、これはむしろ法制度の問題というよりは運動の内部の問題でございまして、これからこういうようなことをしようと考えて下さる権利者の方がいらっしゃれば、ぜひ御留意頂きたいと思うのは、ライセンスの種類の問題、そして相互互換性の問題であります。
 簡単に申し上げますと、私のものを例えば非営利であれば使っていいよと思って下さる権利者の方が2人いらっしゃって、その2人の方が違う種類のライセンスを付けて世の中に出したといたしますと、例えば学園祭でこの2つの作品を混ぜて面白いことをして、みんなで楽しんでみようというようなことをお2人ともいいと思っているにもかかわらず、お二人の使っているライセンスの条件が違うことで、これとこれをまぜたら、こっちでは一部こういうことをして欲しいという条件を付けていて、こっちではこう言っていると。それが種類がどんどん増えていって、色んな方が色んなことを言い出すと、それを一つ一つチェックしてやるということ自体が非常にコストがかかって、せっかく権利者の方が許諾をしたいと思っていても、最後のところを確認するコストがまた非常に高くなってしまって、結局、目的を達しないというところがございます。したがって、できるだけライセンスは、相互に異なるライセンスを超えて流用させてもいいとするか、もしくはできるだけライセンスの数を少なくして、標準化されたものを使うということが、この自由利用の範囲では非常に重要になっております。
 あと、5ページ目に書かせて頂いておりますけれども、ここは次のトピックにも影響いたしますが、先ほどからたくさんの方、民放連の方、NHKの方、NMRCの方や国会図書館の方、皆さんおっしゃっていますけれども、権利処理にかかるコストというのは非常に高いわけです。そして、現在、一人の人が1から100まで全部1人で作っているという著作物の数はどんどん減っておりまして、例えばホームビデオを作っても、ホームビデオに音楽があるのとないのとでは全く違うわけでありまして、多少バックグラウンドミュージックを入れたいとか、色んな要望があります。それが良いかどうかはともかくとして、そういうことをしたい人の数がどんどん増えている。実際に許諾をしないでやり始めようとしている方もたくさんいらっしゃるというのが現状でありまして、この流れを変えることはできないわけであります。
 従いまして、先ほどから権利処理をいかに簡単にするかということが重要であるということを、繰り返し色んな方が言って頂いているわけですけれども、この自由利用のライセンスも全く同じ問題がございまして、一部でも他の人の著作物が混じっていると、例えば80パーセント自分が作ったものについて許諾がしたくても、残りの20パーセントが処理できなければ、そもそもライセンスを付けられないという問題がございまして、このライセンスがあるから、権利処理の問題は考えなくていいということを言って頂く方が一部いらっしゃるんですけれども、必ずしもそうではなくて、このライセンスをそもそも利用する入り口に入る段階で、権利処理の問題に直面する場合も多いのです。権利者といっても、私どもがふだんお付き合いをしている方の中には資源のない個人のアーティストの方も非常にたくさんいらっしゃいますし、プロで活動しているわけではなくて、個人でやっている方で、非常に情熱を持っていらっしゃる方も沢山いらっしゃるわけですけれども、そういう資源のない人が、自分が創作した以外の部分について権利処理ができないために、そもそもその作品全体に自由利用の意思表示もできないというような問題があるということをぜひ認識して頂きたいと思います。
 3つ目の問題は、これに関連をするんですけれども、クリエイティブ・コモンズのように、別に私に特に許諾を取らなくてもいいから、私の作品を積極的に使って下さいというアーティストの中には、自分の作品をまず知ってもらいたい、広く見てもらいたいという方がたくさんいらっしゃるわけです。その方たちは、自分の価値がだんだん人の目にとまって、例えば一部自分たちの番組に入れてみようかとか、インターネットで自由に掲載したビデオクリップなんかが非常におもしろいということでテレビで放映されるというようなことは出てきているわけです。
 しかし、そこで商業利用をするときには、別途許諾をとって、お金が欲しいですよと考えているクリエーターの方もたくさんいらっしゃるわけです。そうしますと、せっかく人の目に止まったにもかかわらず、商業利用をするということになったときには別途権利処理が必要となる。そこでコストが高いと、せっかく目に留まったものが利用されなくなってしまい、自由利用による露出の効果が損なわれてしまう。商業利用の権利処理をするというところで、既存の権利処理の団体の方たちがせっかくお持ちの情報とか、色々なところとうまく連携が取れないと、最終的な権利処理まで辿り着かないという問題が一部指摘されておりますので、今後は私どものような活動と、商業利用のセクターの方たちの活動がうまくリエゾンが取れるような努力をしていくことが必要であると考えております。
 4つ目の法的拘束力の問題としてここに説明しておりますが、ライセンスを付けたけれども、本当にそれが有効なのかどうかということが問題であるということが何度か指摘されておりますけれども、ここは法律的にはあまり大きい問題ではないと考えております。
 次に、クリエイティブ・コモンズの観点から、4番のところで過去の著作物の利用の意見を述べさせて頂いておりますけれども、6ページのところで、まずは現状の裁定制度は範囲が狭いとか、なかなか使いづらいのではないか、コストが非常に高いのではないか、という点を指摘させていただいております。先ほどの国会図書館さんがアクティブに利用されておりまして、私も弁護士でございますので、私のクライアントでもまじめな方はこの裁定制度を利用したいという声は高いのですけれども、そこまで資源のないクライアントもたくさんおりまして、ほとんどは裁定制度を申請をする前に断念しているという現状がございます。
 もう1つここに書かせていただいておりますけれども、現状では、1つの著作物について1人が相当の努力をして裁定を得ても、2人目が同じことをもう一度全部やらなければ、そしてもう一度申請をしなければ利用ができないという形になっておりまして、これは社会的に非常に不経済でございますので、1人の人が相当の努力をして、権利者が不在であるということが分かれば、後から同じものを利用する方はお金さえ積めば使えるというふうに、運用なり、制度なりを変えるということも検討して頂ければと思います。
 あとは、先ほどから権利処理のポータルのお話ですとか、権利処理のための情報を集約しようということで、それができれば権利処理、例えば保護期間を延長したとしても、問題がないんじゃないかというような御意見が出ておりまして、一部はその通りだと思います。けれども、ポータルというものは、先ほどどなたかも御指摘をされていらっしゃいましたが、自分からそれを積極的に協力する権利者の方が沢山いらっしゃらなければ、根本的な解決にはならないわけでありまして、法律というのはそのような市場では解決できない部分について、いかにフォローアップするかという位置づけではないかと理解をしております。したがって、そのように権利処理を進めて頂くのは大いに私どもとしてもありがたいことでございますし、ぜひ進めて頂きたいと思いますけれども、それでもなお努力をしない権利者の方、あるいは事情があって、そういうことに協力できない権利者の方の作品をどうするのかということについては、別途検討して頂きたいと思います。
 あと、この紙には書かなかったのですけれども、保護期間の延長については、御案内の通り米国では一度訴訟になりましたし、イギリスでもつい最近、隣接権の文脈ですけれども、検討がされて、見送られたという世界的な状況もございまして、そこでたくさんの経済学者、米国ではノーベル賞の経済学賞をとった方の意見書も出ておりますし、英国ではオックスフォード大学がそれについて経済的な分析をした上で、いずれも今十分に期間が長いのに、それ以上延ばすということについては、経済的には何ら効用を見出すことができないという経済学的な観点からの意見を述べておりますので、そのあたりも十分に御考慮頂ければと思います。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、ただいまの御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

【渋谷委員】 この保護期間のことなんですが、将来、創作される作品に限定して保護期間を延長するなら、延長すればよろしいというんですけれども、現実にどんどん外国で我が国の著作物の保護期間が現在進行形で切れていくわけです。そうすると、過去の作品についても延長しておかないと、困ることになるんじゃないかと思うんです。その点はどうお考えですか。

【クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(野口)】 ここにお書きをしたのは、保護の理由と、それによって範囲が違うのではないかという趣旨でございます。いつかは著作権の期間というのは切れるわけでありまして、永遠に切れない著作権がいいとおっしゃる方はいらっしゃらないのではないかと思います。そこで、著作権期間がどれだけが適切であるかということの保護期間を延長することの目的は、おそらく大きく2つございまして、1つはそれによって創作意欲が高まる。よって、作品が更に増えて、文化に貢献するということが1つと、それから保護期間が、むしろ経済的な側面で権利がなくなると収入が得られないということのその2つかと思うんですけれども、ここで書いたのは、文化の発展に寄与すると、作品の種類が増えるから延ばすのだというような御意見でもしあるのであれば、それはこれからの作品にのみ適用するということでなければおかしいのではないでしょうかということを申し上げたわけでございます。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。

(11) エンドユーザー
【大渕主査】 最後になりましたが、エンドユーザーのお立場から、津田大介様、よろしくお願いいたします。

【津田委員】 よろしくお願いします。エンドユーザーの立場からというのもなかなか語りづらいというか、エンドユーザーというのは基本的に著作物というのを考えたときに、著作物の受け手であることがほとんどで、そういう意味でいうと、受け手の立場からすると、著作物の流通というのは円滑であればあるほどいいわけであって、今回、僕のこの書いたペーパーも具体的な方策の提案というよりは、どちらかというとエンドユーザーの心理みたいな、どういったものを著作物を楽しむときに感じるのか、どういったものを望んでいるのかというのを中心に書きました。
 具体的に全部読み上げていく時間もないので、ポイントとなるところをちょっとピックアップしていこうと思うんですけれども、最初に述べたエンドユーザーが著作物を楽しむ際に最も重要となる要素というのは、おそらく著作物の入手性、カタログにどれだけアクセスできるのか、価格がどれだけの価格で提供されているのか、あとは自分で手に入れた著作物がどれだけハンドリングしやすいか、利便性がどれだけあるのかという、この3点に僕は集約されていると思います。
 エンドユーザーとして、今、著作物の流通というところで非常に困るというか、被害を被るのは、書籍であれば絶版、CDであれば廃盤といった商業的に価値が認められなかったのか、流通の問題なのか分からないですけれども、とにかく欲しいと思った商品が店頭で買えなくなってくるという問題というのは非常に大きくて、これがわりと数年前のレベルで買えなくなってしまう商品が非常に多い。
 発売を1〜2年ぐらい経過すると、店頭で買えるケースは非常に少なくなってしまうし、5年前、10年前の作品でこういった新しい作品を知って、この作者の作品をもっと購入したいと思ったときに、じゃ、本屋へ行きました、CD屋さんへ行きましたといっても入手できないケースが非常に多くて、そういう場合はどうするかというと、中古を一生懸命コストをかけて自分で探さなければいけないか、もしくは持っている友人から、それは違法コピーという形になっても欲しいということになってしまうという現状があって、これは当然、著作物の出版社にしても、レコード会社さんにしても結局ビジネスで行っている以上、採算が採れないものが絶版・廃盤になっていくというのは仕方ない部分はあるとは思うんですけれども、消費者、エンドユーザーの立場から見ると、著作物というのは後追いで知って、そこを深く知っていきたい、楽しんでいきたいという面も非常にあるわけですから、何らかのフォローアップみたいな仕組みが作れないのか、それを望みたいというのがあると思います。
 ここにも書いてありますけれども、入手性の低くなってしまった商品を手に入れようと思ったときに、見られればいいやという感覚を持っている人は、当然、正規の商品じゃなくても、オークションですとか、違法コピーみたいなものに手を出す人もいるでしょうし、友人のつてをたどってコピーさせてもらう人は多く存在する。ただ、その人たちは無料だから、そういうものを手に入れるのかというよりは、見たいという欲求があるので、そういった行動に出るわけですから、であれば、そういったことで違法な流通をやってしまうのであれば、むしろ権利処理ですとか、色んな採算性をクリアするような形で、過去の著作物を提供するような仕組みがあれば、おそらく結果的にはそういった著作物の違法コピーなど、そういったものが減っていくのではないのかなと個人としては思います。
 あと、もう1つの問題としては、価格というところで著作物をたくさん購入する、音楽にしても、本にしても、ヘビーユーザーほど価格に対して非常にシビアになっているという側面があります。新刊が出たら必ず買うという作家もいれば、自分の中で、じゃ、でもこの作家は文庫でいいや、安くなってから買おう。あとは、一応興味があって聞きたいけれども、3,000円だとこのアーティストは買わないかな、新人に3,000円は出せないな、1,000円だったら買いたいのにみたいなものを、エンドユーザーは買うときに非常にシビアな判断をして買っている。逆に、最初は安い価格で知って、その後アーティストとか著作者に対して、自分の中で必ず買おうと決めたアーティストには、別にそれが3,000円でも5,000円でも払うというような、そういった心理というのがあるわけで、そういう意味で価格というのも著作物の流通においてかなり重要な要素を持っていると僕は思います。
 何が言いたいのかというと、損益分岐点を超える見込みが低くて、価格が高めになったり、商品化が困難で絶版になりやすいものというのは、最近であればインターネットですとか、低コストで商品化というのが非常に可能になってきているデジタル配信というものがあるわけですから、そういったものを推し進める、またはデジタル配信みたいなものに権利処理がスムーズにいくような仕組みがあれば、そういったところできちんと著作物の流通も促進されるでしょうし、それに対して適正な価格で提供されれば、購入するユーザーも増えるのではないのかなという気がします。
 もう1つのハンドリングのしやすさというところなんですけれども、著作物というのは自分で所有しているだけでなくて、常に手元に置いて、音楽であればどこでも聞きたい、本であれば持ち歩きたいし、テレビ番組であればいつでもどこでも時間を変えて見たいものだし、最近であれば動画を外に持ち出して、時間があるときに見たいというニーズがあると。そういうときにコピーができるかできないか、どれだけハンドリングしやすいのかというのも非常に重要な要素だと思います。
 その上で良い著作物、自分が感銘を受けた著作物があったら、それを機に友人とコミュニケーションを取りたいということがあると思うんです。これはこの著作物良かったよ、このCD良かったよ、この本良かったよ、聞いてみなというので貸し借りをして、借りたほうはこれいいなと思ったら、自分でコピーして手元に置いて、でもコピーして手元に置いた中で、これは本当に良かったから、次からこの作家の作品は買おうとか、やっぱり本物が欲しいから、自分で買い直すという行動も非常に良く見られる話であって、そういう意味で自分が良かったものを他人にお勧めしたいという、貸すというところに色んなDRMですとか、コピー制限ですとか、あるいは私的複製の議論なんかもありますけれども、そういったものに過度に制限をかけていくようなことがあると、エンドユーザーとしては、著作物とか著作者そのものへ興味を失ってしまう可能性が僕は高いと思っていて、それはおそらく著作権ビジネス全体にとって不幸なことなんじゃないのかなと思います。
 保護期間のあり方についてなんですけれども、これも多分、色んな御意見があると思うんですが、単純に保護期間が50年から70年に延びるという、その20年の議論だけでいえば、本当に単純にそこに対するコストは増えるわけで、許諾ポータルができる、できないという議論を抜きにして、おそらく流通の促進を阻害させる可能性は高いであろうということで考えれば、多くのエンドユーザーは反対に感じる人が多いのではないのかなという気がしています。
 実際に幾つかURLを示しましたけれども、幾つかエンドユーザー向けにこの延長問題に対するアンケートみたいなものがありますけれども、そこでもほとんどの調査が反対の意見のほうが多かったという結果がありますので、エンドユーザーから見た本音で言うと、今の死後50年でも十分に長いと感じでいる人がおそらくほとんどだと思うんです。そうなったときに死後70年になることは反対だという意見が多いというのは、おそらく普通の感覚なのかなという気がしています。
 そこの保護期間の最後のところに書いたんですけれども、作り手、送り手側にとっては、作った著作物が唯一無二のものであるかもしれませんけれども、受け手側にとってみたら、多くの著作物のone of themというか、色んな著作物がある中での1つでしかないという感覚で著作物に接するわけで、そこの温度差というのがこういった議論をしているときに、エンドユーザーと権利者ですごく感じる部分です。
 ただ、そうは言っても、著作権ビジネスというのは作り手がいて、それの送り手がいて、かつ、でもそれを買ってくれるエンドユーザーがいなければ、そもそも著作権ビジネスというのは成立しないわけですから、そういう意味で文化という観点もそうですけれども、先ほど野口さんのほうからもありましたけれども、きちんと経済学的な側面とか、産業という観点からクールに、かつビジネスとして、保護期間延長がどのような問題をもたらされるのかということを討議する必要があるのかなという気がします。
 最後になりますけれども、要するにどういうことなのかなというと、エンドユーザーが多様なコンテンツにアクセスできる環境があるということ、それこそが本当に文化的な豊かな状況なんだと思います。アクセスしやすい環境というのは、カタログが豊富にアクセスできることであったり、価格が安いなと思って買えることであるし、あとはコピーに変な制限がかかってなくて、ある程度自由に友達同士でお勧めできるような利便性があるということで、エンドユーザーが多様なコンテンツを利用しやすい環境があるということが、僕は文化的に豊かな状況をもたらすと思っていますし、それこそがコンテンツ立国、知財振興というのであれば、そういった買う人というのをまず前提に考えて、そういったアクセスしやすい環境を整えなければいけないのかなという気がしています。
 だから、わりと消費者ってシビアに価格を見ていて、例えば今、青空文庫さんが出しているような作品が100円ショップで売られていた。でも、それを買う人もいる。映画の著作物がDVDで500円で安く売られている。買っている人もいる。でも、それというのは価格が安いから、買っているという面もありますけれども、結構商品の商品性の問題というのも大きいのではないのかなと思っていて、消費者も価格だけで買うわけじゃなくて、例えば映画のDVDに色んな特典がついていて、リマスターされていて、付加価値がたくさんあるというのであれば、500円じゃなくて、2,000円ででもこういう付加価値があったら、こっちを選ぶという人もいるでしょうし、100円ショップで知った作家で、この作家の作品がおもしろいのであれば、小学館から出ている文学全集を買おうかというので買う人もいるでしょうし、その辺をシビアに判断して、商品性を見て買っているという気がしています。
 安くても流通するということは、むしろ名作に触れる機会がエンドユーザーとしては増えているわけですから、僕はそれは文化的に豊かな状況をもたらすと思いますし、どういう形で売られようが、作品の価値というのは変わらないのてはないのかなという感じが僕はします。
 最後なんですけれども、ちょっと自分勝手な消費者の立場の意見と思われるのもちょっと問題なので、僕自身も著作者になるので、著作者の立場で最後述べさせて頂くと、自分が書いているのは大体ニュースの原稿とか評論とかで、そういうのだとWebとかにアップされると、ブログとかにコピーされまくっていますけれども、それでも読んでくれればいいのかなというのは基本的に思います。あとは自分で本を書いたときに、その本を読んでくれたという人に例えばあいさつされて、津田さんの本、読みましたよ、図書館で借りてみましたみたいなことを言われると、でも図書館で借りて読むんだったら、せめて買って読んでくれという気持ちがないわけでもないんですけれども、それでも読んでくれたことには変わらないし、それで何かを伝えられたことには意味があるのかなという気がします。
 もちろん著作者の人の全員とは言わないんですけれども、おそらく作品を作った著作者の人というのは、多くの人に作ったものを聞いて欲しい、読んで欲しいという気持ちがあると思いますし、逆にエンドユーザーの立場からすると、多くのエンドユーザーというのは多様な著作物にアクセスしたいという、おそらくそこのニーズというのは絶対に均衡しているというか、そこではおそらくいい関係が築けるはずなんですけれども、僕はその意味でいうと、とにかく著作物というのは流れることが重要だと思うんですが、そうは言っても何でもかんでも流さないほうがいいという立場の人もいて、何でもかんでも流さないほうがいいと言われる方というのはどういう人かというと、どちらかというと著作者と著作物の楽しむエンドユーザーの仲立ちをしている方が多いんです。そのことというのも、そこに何があるのかというのをきちんと考えたほうがいいのではないのかなと思います。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思いますが、今の御発表につきまして御質問等ございますでしょうか。お願いいたします。

【瀬尾委員】 時間がないので短めにいきます。3ページ目の中段以降、「ややもすると」という部分、著作権者へのリスペクトが欲しいとかから始まる4〜5行というのは、私も非常にうなずくことが実は多いんです。
 ただ、これはあくまで利用者側からの文章になっています。利用者にとっては意味がないんですけれども、著作者にとっては結局上の利用者にとって意味のないことが意味があって、そういう精神的なものが比較的創作の源泉になっていたりするわけですよね。
 今回の議論で一番かみ合わないのは利用者と経済論、要するに商品がたくさん並んでいるほうがいいねという利用者と経済論の中、何が売れるかを含めて。それと、作る側というのは、比較的作っている最中はどうやって売ろうかとか、これ売れるかなんて考えて作ってないわけです。要するに感情とか思想とか、そういうものを表現するために作っているわけです。
 そうすると、利用者がそういうことに対して全く無関心であって、リスペクトもなく、精神的なものというのを考えない消費物としているところに問題があると私は思っているんですけれども、その点の基本的な立ち位置の矛盾についてどう津田さんはお考えでしょうか。

【津田委員】 お答えになるかどうか分からないですけれども、仕事柄ミュージシャンとか、当然ライター仲間とかもたくさんいて、そういう著作者等から話を聞くことが多いんですけれども、その著作者によって立ち位置が違うというのは、アウトプットする作品の向いている方向だと思うんです。
 どういうことかというと、要するに作ることに対して自分の内向き内向きにいくという著作者の人もいれば、逆に伝えたいものと伝えたい人を明確にイメージして、そこに向けてエンドユーザーに対して作品を作っていく、そこは著作者とエンドユーザーのある種のコミュニケーション性があると思うんです。そういうコミュニケーション性をすごく強く意識して作る著作者の人と、もっと内なる自分との闘いみたいな形で作品を作る人との2種類がすごく大別されていると思って、それはどっちが多いとかいうんじゃなくて、著作者によってケース・バイ・ケースだと僕は思っています。
 そういう意味でいうと、瀬尾さんがおっしゃられたようなことというのは、おそらく内向きの人にとってみればすごく重要な問題なんだけれども、逆に外向きに開かれているような著作者からしてみれば、エントユーザーのそういう考え方は当然だよねという感覚の人も当然いますし、コピーしても幾らでも自分の音楽とか作った文章を読んでくれるんだったら、全然構わないよという人もいるので、だからこそこれは難しい問題になっていると思うんです。
 僕らどちらかというと後者のほうに自分としても近いし、エンドユーザーとしてもそう思ってくれる著作者のほうにシンパシーを覚えるという立場です。

【瀬尾委員】 続けてごめんなさい。分かりました。非常にそういうことだと思います。ただ、内向きに向いていくという、今日は松本零士先生がヒアリングをして頂きましたけれども、漫画もそうだし、文芸も、例えば写真なんかにしても、写真は比較的ドキュメンタリーと言われている分野と、あるいは純写真みたいに色々違ったりするし、あと絵も自分との闘いみたいなところ、要するに私が昔から考えている結構コアな著作者像みたいな中で、少なくとも私の知っている人間とその分野においては、圧倒的に制作の段階では中を向いている人間が多いんです。
 ミュージシャンの方というのはステージがあって、コンサートなりがあって伝えるんだけれども、そうじゃなくて、みんな自分の中で完結させるんです。そのときって精神論なんですよね。そのときに浮かんで、こうやって書いたらウケるからとか、幾ら儲かるかなって書いている人はいないと思うし、写真もこの1枚100万になったなって撮っているやつはいないんですよね。だから、そういう部分と経済効果の部分の話のずれと私は理解しているんだけれども、そういうことについてもそういう感じでしょうか。

【津田委員】 いや。そういうもので、ある種、最初から折り合いが悪いものじゃないですか、そういう意味でいうと。でも、そういう折り合いを付けるためにこういう委員会があると思うので、だからこういう発表をさせて頂きましたということです。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。それでは、どうもありがとうございました。

【大渕主査】 以上で、本日予定しておりましたヒアリングはすべて終了いたしました。この非常に限られた時間でこれだけ多くの方々にお伺いして、かつ質問もして頂くということで、もう少し話したい、あるいはもう少し尋ねたいということもあったかとは思いますが、私自身もお伺いしたいと思いつつも、立場上やむを得ずタイムキーピングをやっておりますので、そこの点は御容赦頂ければと思っております。
 次回も引き続き、同様のヒアリングを行う予定としておりますが、何か特に御意見がございましたらお伺いいたしますが、いかがでしょうか。
 それでは、特段ないようでしたら、本日はこのくらいにいたしまして、あと事務局のほうから連絡事項等ございましたらよろしくお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 次回の日程でございますけれども、次回の小委員会は5月16日(水曜日)午前9時から12時半でございます。本日より30分早い時間からの開始をお願いしたいと思っております。場所は如水会館、部屋は違いますけれども、同じ建物の3階でございます。以上でございます。

【大渕主査】 それでは、次回の小委員会は、本日に引き続きまして、残りの関係者の方々からのヒアリングとなって、かつまた、更に時間も長いようでありますが、よろしくお願いいたします。
 それでは、これで第2回の本小委員会を終わらせて頂きますが、本日のヒアリングに御多忙の中御協力頂きました皆様方には、委員を代表いたしまして、改めて御礼申し上げます。本日はどうもありがとうございました。
 それでは、これで閉会といたしたいと思います。皆様お疲れさまでした。

─了─

(文化庁著作権課)


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