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著作権分科会 過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会(第1回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成19年3月30日(金曜日)14時〜16時

2. 場所
  如水会館 2階 「スターホール」

3. 出席者
  (委員)
上野、大渕、大村、梶原、金、久保田、佐々木(隆)、里中、椎名、瀬尾、津田、常世田、都倉、中山、野原、生野、松尾、三田の各委員、野村分科会長
(文化庁)
高塩文化庁次長,吉田長官官房審議官,甲野著作権課長,秋葉国際課長ほか関係者

4. 議事次第
 
1   主査の選任等について
2 文化庁次長あいさつ
3 検討課題ついて
4 その他

5. 配付資料
 
 
資料1   文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会委員名簿
資料2 小委員会の設置について(平成19年3月12日文化審議会著作権分科会決定)
資料3 今期の検討課題について
資料4 検討課題の背景等について
資料5 当面の審議日程について(案)
資料6 関係者ヒアリングについて(案)
(参考資料)
 
参考資料1   文化審議会関係法令等
参考資料2−1 文化審議会著作権分科会委員・専門委員名簿
参考資料2−2 文化審議会著作権分科会各小委員会委員名簿

6. 議事内容
 
本年の文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会委員を事務局より紹介した。
本小委員会の主査の選任が行われ、大渕委員が推薦され、主査に決定した。
以上については、「文化審議会著作権分科会の議事の公開について」(平成十八年三月一日文化審議会著作権分科会決定)1.(1)の規定に基づき、議事の内容を非公開とする。

【大渕主査】 それでは、第1回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の開催に当たりまして、まず高塩文化庁次長よりごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【高塩文化庁次長】 失礼いたします。文化庁次長でございます。
 第7期の文化審議会著作権分科会過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の開催に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。
 委員の皆様方におかれましては、ご多用の中、本小委員会の委員をお引き受けいただきましてまことにありがとうございます。
 本小委員会は、平成17年1月の著作権法に関する今後の検討課題や、知的財産推進計画2006、さらに前期の著作権分科会でのご意見を踏まえまして、著作権の保護期間及びこれに関連する課題を集中的にご審議いただくため、今期の著作権分科会で新たに設置されたものでございます。
 本小委員会の検討課題につきましては、先ほど大渕主査からもお話しがございましたけれども、特に著作権等の保護期間の在り方や、過去に作成された著作物の散逸・死蔵を防ぎ、利用を円滑にするための方策など、現在、社会に対して解決が求められている大変重要な課題がございます。
 小委員会にはさまざまなお立場の方々にご参加いただいておりますけれども、先生方にはぜひとも十分なご検討をいただき、方向性をお示しいただければ幸いに存じます。
 委員の皆様方には、大変お忙しい中、恐縮でございますけれども、一層のご協力をお願いいたしまして、簡単でございますけれども、冒頭のあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【大渕主査】 ありがとうございました。
 それでは次に、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務、検討課題及びその背景につきまして事務局からご説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 それではご説明をさせていただきます。お手元に配付しております資料2をお開けいただけますでしょうか。この小委員会の設置について、去る3月12日に著作権分科会におきまして決定された事柄でございます。
 ここでは小委員会全般についての設置が決定されたわけでございますが、法制問題小委員会その他とあわせまして、本年新たに過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会が設置されたわけでございます。
 2番といたしまして、審議事項が書いてありますけれども、過去の著作物に関する保護と利用の在り方に関することが審議事項となっているわけでございます。
 具体的な課題といたしましては、先ほど大渕主査のほうからもご紹介がありましたけれども、資料3をお開けいただきたいと思います。著作権制度上の検討課題例というものが2枚目にございますけれども、これが3月12日の分科会で配られた資料でございまして、昨今の情勢を踏まえて、著作権分科会全体として何が必要かをまとめたものでございます。この中に棒線が引いてありますけれども、これが保護期間、あるいは円滑な利用に関連する事項でございます。また、平成17年1月には著作権分科会におきまして今後の検討課題なども示されているところでございます。それら全般を踏まえますと、この資料3にありますように4本の柱でさまざまな問題をここでは検討していただく必要があると考えております。
 その4本の柱は、ここにありますように過去の著作物の利用の円滑化方策ということでございます。そして2番目が、アーカイブ等への著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策、そして3番目といたしまして保護期間の在り方、4番目といたしまして意思表示システムということでございます。
 これらがどのような課題かにつきましては、資料4をご覧いただきたいと思います。それぞれ検討課題につきまして、これから検討していただくわけでございますので、簡単に問題の所在ですとかその背景を説明したものを作りましたので、これをご紹介したいと思います。
 まず、第1番目が過去の著作物等の利用の円滑化方策でございますけれども、課題といたしまして、過去に作成された著作物は、非常に古ければ古いほど著作者が不明な場合ということがございます。また、著作権者等が非常に多数にわたるものもございます。そのようなことから円滑に利用ができない場合があるわけでございますが、現行の著作権法では文化庁長官の裁定を受けて著作物を利用できる制度が設けられているところでございます。しかしながら、今後、有効に過去の著作物等を利用するような制度の在り方について検討が求められているわけでございます。
 最近の動きといたしましては、平成17年1月の著作権分科会におきまして、今後の検討課題といたしまして、これは裁定制度一般でございますけれども、裁定制度の在り方について検討を行うことが必要であるということが課題としてございました。これに対しましては、平成18年1月でございますが、分科会において報告書を取りまとめていただきました。裁定制度といいましてもさまざまございますが、著作者不明の場合の裁定制度が本件課題に沿うものでございますが、その報告についての抜粋をここに掲げておりますけれども、制度につきましては有効なものであり、存続すべきものであるという評価はございますけれども、制度上、さまざまな問題点があることも指摘をされているわけでございます。そして、アとありますけれども、特定機関による裁定の実施はどうかという提案もございましたけれども、やはりそれにつきましては慎重に検討すべきだという結論を得ました。また、制限規定という形で対応したらどうかというご提案もありましたけれども、これにつきましても条約ですとか制限規定一般の趣旨に照らし問題が多いというような結論でございました。
 しかしながら、新しい時代、インターネット時代における著作物の利用促進という観点から、将来的には制限規定の導入を積極的に考えたほうがよいという意見もあったところでございます。
 そして、現在の裁定制度の手続面の問題としてでございますけれども、今後の利用状況等を踏まえまして改善策が図られたところでございますが、よりよいシステムの確立に努めるべきであるというようににされまして、実務上の問題点が生じた場合には手続の見直しを行い、より利用しやすいシステムの構築を図っていく必要があるとされたところでございます。
 そして、さらにもう1点、ちょうどこのページで言うと3枚目のところでございますけれども、やはり平成17年1月の今後の検討課題のところでは、共有著作権に関する制度の整備につきましても検討すべき課題として指摘をされたところでございます。言うまでもなく、多数の権利者がある場合に、どういうふうにそれらを円滑に権利行使ができるかという観点から、本件課題と関連があるものでございます。これにつきましては、平成19年1月の分科会で検討結果が報告をされているところでございます。
 ここで検討課題1とありますが、これは人格権の侵害に対しまして共有著作物について各権利者が単独で訴えることができるかどうかという論点でございますけれども、これにつきましては、裁判所の合理的な判断に委ねられることとしており、現時点において一律に立法上の措置をする必要は生じていないと言われたところでございます。
 また、権利の行使につきましては、検討課題2から5でございますけれども、あらかじめ契約で現在定められている場合が多く、契約で処理することが望ましいということがございまして、現時点において緊急に著作権法上の措置を行う必要性は生じていないと考えられるということでございます。現在の契約実務に照らしましてどうかという観点で議論をしたところでございまして、多数の権利者があるので、もう既にできたものについてどうしたらいいのかという観点では必ずしも十分に検討したものではございません。
 それから次のページをめくっていただきますと、平成19年3月のコンテンツ専門調査会で配付された資料でございますが、やはり権利者不明の場合におけるコンテンツの流通につきまして、一定の方策について検討するということが言われているわけでございます。
 この裁定制度の概要を(3)で示しておりますけれども、他人の著作物を利用したいという者が文化庁に裁定を申請して、補償金を供託することによりまして著作物を利用できるということでございます。運用改善が数年前図られておりまして、新聞雑誌に掲載を求めていましたけれども、インターネット上に不明な権利者を探すためのホームページが開設されて、そこを活用するなどの緩和策がとられたところでございます。
 下にありますとおり、これまでの実績は裁定件数は31件でございます。1件例が非常に多いものもございましたので、著作物の総数といたしましては8万9,000件ほどがこれまでの利用実態でございます。
 ページをめくっていただきますと、(4)が外国における制度、あるいは動きについてでございます。米国におきましては2006年に議会に法案が提出をされておりますが、これは廃案になっております。ここではどのようなことを目指していたかということでございますけれども、利用する者があらかじめ善意で合理的に誠実な調査を行ったけれども、なお見つからないという場合には、あとから利用することができて、その場合には後から権利者は民事的な救済というものが求めることができるわけですけれども、それを制限しようというものでございます。勝手に使われたという側面がありますので民事的な救済が図られるわけですけれども、このような一定の場合には賠償は不要であるとか、あるいは差止命令というものは排除される、そのような仕組みをとったらどうか、こういうような法案が出されたわけでございます。
 それから、英国におきましても、やはり一定の方向というものが報告書の中で取りまとめられているということがございます。これは、利用しようとする人が最善の努力をしたにもかかわらず見つけ出すことができなかったという場合には、権利が制限されて利用できるようにしようということでございまして、利用料は著作権審判所が定めるという形でのものでございました。
 そして3番目がカナダでございますが、これは実際にカナダの著作権法の77条に現在もある制度でございますが、これは裁定でございます。利用しようとする者が著作権委員会に申請して、その委員会が判断した場合には利用条件を付して著作物の利用許可を与えることができるというものでございまして、1990年から2006年6月までに184件の供託があったというものでございます。
 英文でございますが、次のページにその裁定制度の規定があるのでご覧いただけれはと思います。
 以上が、過去の著作物の利用の円滑化方策についての課題、現状等でございます。
 それから2番目でございますが、アーカイブスへの著作物等の収集・保存と利用の円滑化方策についてでございます。この課題がどういうことかといいますと、文化的な所産として著作物、これは映像、画像、あるいはテキストのもの、さまざまなものがありますけれども、これらを収集して利用に供するアーカイブ事業が多く作られ、発展されることが期待されているわけでございますが、更に具体的に申しますと、図書館ですとか、博物館でありますとか、あるいはNHKなどの放送事業者、そうしたような立場の方々がコンテンツの保存・収集、利用を円滑に進めるためにはどうしたらいいかという課題でございます。
 この最近の動きといたしましては、知的財産推進計画2006におきましても、アーカイブ化を推進し、その活用を図るという形で課題として挙げられておりますけれども、また19年3月にこの知財本部のコンテンツ専門調査会におきましても放送番組アーカイブスの活用、それからもう少し一般的なコンテンツの保存・収集、利用の促進ということで、公共的なデジタルアーカイブにおける収集・保存、絶版等に至った著作物で入手困難なものの提供など、非営利目的、あるいは商業利用と競合しない利用についてのコンテンツの収集・保存、利用、これが課題として上がっているわけでございます。
 なお、放送番組につきましては、ページを1枚めくっていただきたいのですけれども、放送法の一部改正という形で、具体的には日本放送協会におきまして、これを正規の事業として位置づけるという形で立法が進んでいるところでございます。昨年の6月の通信・放送の在り方に関する政府与党合意に基づきまして、ここに放送法の一部改正案というのがありますけれども、こうしたものを実現できるようにという形で、現在、政府部内で最終的な調整が図られて立法の準備が進められているというように承知をしているところでございます。
 なお、このNHKアーカイブスの概要をここに示しておりますけれども、平成15年2月に運用が開始されまして、過去に放送してきたニュース・番組を体系的に保存をするというもとで、ニュース、一般の番組、ここにあるだけの過去の放送番組が保存をされているところでございます。そのうち一部につきましては一般に公開をされているところでございまして、公開されているものはさらに下の表でございますが、テレビ、ラジオ両方合わせまして6,000番組弱が公開の対象になっているところでございます。経費等も、予算に基づきましてこういう事業が行われているところでございます。
 それから3番目でございますけれども、保護期間の在り方についてでございます。これは、現在の著作権法では、保護期間は死後50年までとされておりますけれども、70年までに延長すべきだという議論があるわけでございます。またその一方で、延長については慎重に議論すべきだという意見もあるわけでございまして、こうしたようなさまざまな議論を踏まえつつ、保護期間の在り方について検討することが現在求められているわけでございます。
 また、あわせまして、サンフランシスコ平和条約に規定されております戦時加算特例、これに基づく戦時加算の取扱いについても検討することが必要である。これが課題でございます。
 保護期間の在り方につきましての最近のさまざまな動きでございますが、知的財産推進計画2006におきまして、国内制度を整備するという一環から、この問題について検討すべきだということが指摘されております。また、著作権法に関する今後の検討課題、文化審議会著作権分科会で示された検討課題の中でも、これが取り上げられているところでございます。
 そして、関係方面から政府への要望等も出されているところでございます。平成18年9月22日には著作権問題を考える創作者団体協議会から、この保護期間の延長について検討するということにつきまして要望が出されているところでございます。また、11月8日には著作権保護期間の延長問題を考える国民会議という形で、関係の方々から慎重な議論が必要であるという意見書が政府に対して出されたところでございます。また、12月26日には日本弁護士連合会から、やはり慎重に検討すべきであるという趣旨の意見書が出されておりまして、また今年に入りましてから1月23日には協同組合日本映画監督協会から映画の著作物についてでございますけれども、保護期間の起算点についてのご提案、検討を求める要望書が出されているところでございます。また、日米規制改革および競争政策イニシアティブにおきましては、米国政府からの要望が出されているところでございまして、ここでは現在の世界的な傾向との整合性を保つよう、日本の著作権保護期間の延長を行うことが求められているわけでございます。
 著作権の保護期間につきましての現状の制度でございますが、(3)にありますけれども、我が国における保護期間につきましては、基本は著作者の死後50年、あるいは公表後50年でございます。しかしながら、映画の著作物につきましては公表後70年という形に規定がされているところでございます。
 1枚めくっていただきまして、諸外国の保護期間でございます。非常に多く書かせていただきましたけれども、EUあるいは米国、そうしたような国々におきましては、保護期間が死後70年が原則でございます。中国、韓国、日本は死後50年でございます。また、下には著作隣接権もつけているところでございますが、おおむね固定後50年、あるいは発行後50年という形で規定がされているところが多うございます。
 我が国の保護期間の変遷でございますけれども、著作権法が制定されたタイミングでは死後30年でございますけれども、その後、昭和45年の法改正で死後50年に一般的にはなったところでございます。40年からは全面改正に向けて死後30年のものが33年から死後38年まで暫定延長されたという事情もございます。
 この保護期間につきましての過去の著作権審議会等における検討については、次のページでございますけれども、平成8年9月に著作権審議会第1小委員会、法制問題についての基本を検討していただく小委員会でございますけれども、そこで経過報告というものが行われたところでございました。これは、写真の著作物の保護期間について死後50年に延長するという議論がなされた際に復元されたものでございますけれども、これにつきましては、国際的な動向に留意するとともに関係者の理解の進展を図りつつ、法律改正について引き続き検討を進めていくべきものであるというようにされたところでございます。
 また、著作権分科会の報告書、平成16年1月でございますけれども、これは映画の著作物の保護期間の延長について検討されたときの議論でございます。一般論として欧米並みの死後70年に保護期間を延長すべきとの意見があったわけでございますけれども、これにつきましては慎重な意見もあったというようなことも記載がされていて、保護期間の延長の意義を具体的に分析しつつ引き続き検討する必要がある、このようにされたところでございます。
 また、具体的な検討課題として具体的に挙げられて検討したということではございませんけれども、前期の著作権分科会におきましてもさまざまな意見が委員から出されたところでございます。これをここのところに記しているところでございますが、やはり欧米並みに死後70年に延長すべきであるというようなご意見もございました。しかしながら、70年でない国は多くあるので、保護期間の延長は問題があるというような意見も出されてきたところでございます。
 また、戦時加算につきましても、交渉の道を探るべきである、あるいは平和条約を改正するのは現実的ではないので別に議論すべきである。こうしたような議論も出されたところでございました。
 以上が、保護期間についてでございます。
 そして最後に、4番目の課題といたしまして意思表示システムがございます。この意思表示システムは、著作物の利用を円滑に行うための方策として、あらかじめ著作権者が利用許諾に関する意思を表示しておく仕組みでございまして、米国発のクリエイティブコモンズというようなものも使われておりますし、また自由利用マークというような仕組みも文化庁においても提唱したものでございますけれども、これらの仕組みの利用促進に当たっての法的課題についての検討も求められているところでございます。
 これは、既にでき上がったものというよりも、将来時間が経ったときにそれが円滑に利用されるかどうかという観点での課題ということができるわけでございます。最近の動きといたしましては、知的財産推進計画2006におきまして、この仕組みの利便性を高めるですとか、あるいはマークを付す取り組みを奨励する、こういったことが言われているわけでありまして、また平成19年3月の知財本部のコンテンツ専門調査会におきましても、民間における自由利用促進のための取り組みを奨励・支援することも言われているわけでございます。
 現在多く使われているものといたしまして、次のページ、この資料の最後になりますけれども、2つ紹介をさせていただきました。
 1つがクリエイティブコモンズということでございまして、これはここにありますように4つほどのマークも例として掲げていますけれども、このようなマークを表示することによりまして利用はどうなのかということを示すものでございます。
 また、自由利用マークにつきましても、ここに3つのものがございますけれども、このようなマークをつけたらどうか、といったものでございます。
 以上、検討課題の背景、あるいはこの小委員会において検討すべきことについてのご説明をさせていただきました。よろしくお願いいたします。

【大渕主査】 ご説明ありがとうございました。
 それでは、今期の過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会の検討課題、先ほどご説明があったものですが、これについて幅広に自由討議を行いたいと思います。
 具体的に事務局よりご説明のあった資料についてのご質問でも結構ですし、それから全体を通じましてのご意見などもございましたらお願いいたします。ご遠慮なさらずに、どなたからでも結構ですので、どの点からでも、ご質問、ご意見をよろしくお願いいたします。どなたかございませんか。よろしくお願いいたします。

【瀬尾委員】 今回のいろいろなテーマ、4つのテーマをいただいておりますけれども、非常に関連性の強い、または相互補完し合う題のように私には思います。
 これを括弧1個ずつを単独に完全に議論していくと、非常に前後したり難しい部分が出てくるのではないかなということを懸念します。まず全体的な枠組みとかそういうようなものについてのある程度の意見をいただいた上で括弧を見ていかないと、1個だけ取り上げていくとちょっと難しいのかなという気がいたしますので、審議の進め方の中に全体論と括弧論を分けて進めていただくというなことが望ましいように思います。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。
 今の点に関連してでも、その他の点についてでも結構ですが、いかがでしょうか。都倉委員お願いいたします。

【都倉委員】 これは意見というより、今ご説明が非常に早かったので私の頭ではなかなか理解できなかった部分がありまして、質問という形で聞かせていただきます。
 戦時加算についてなんですが、私ももうちょっと勉強しなければいけないと思っているんですけど、かつての枢軸国が課せられた10年間というものを、我が国においてはサンフランシスコ平和条約ですけれども、イタリア、ドイツも実際には課せられていたんだけど免除になったということでしょうか。それとも、最初からこれはドイツ、イタリアに関しては含まれていないものなんでしょうか。

【甲野著作権課長】 日本国に対しましてはサンフランシスコ講和条約で、日本国が義務を負うという形になっておりまして、それに基づいて日本の国内法でも規定といいますか立法上の措置がとられているわけでありますけれども、ドイツにつきましてはそういうような義務はないと承知をしております。それから、イタリアにつきましても、これは相互主義で相手がやってくれる場合には自分のほうも戦時加算をとるような形だというふうに紹介もされているところもありますけれども、そのように私どもとしては理解をしております。

【都倉委員】 これは音楽著作権協会のほうでもかつてリヒャルト・シュトラウス著作権裁判というのがございまして、直接我々も関わった覚えがあります。俄然とマスコミでも戦時加算という問題が、それから非常に議論されるようになってきたわけなんですけれど、我々音楽家としては、戦時加算という日本にとって屈辱的な条約というものは何とか廃止したいという全員の、全員とは言えませんけれども、総意ではないかと思っておりますので、もうちょっと詳しく、私も次回までに勉強しておきたいと思います。詳しい事実関係が皆さんで理解できていないと、なかなかここで議論が進まないのではないかと思って質問させていただきました。

【甲野著作権課長】 これから、この問題につきましても十分検討していただくことになると思いますので、今日は紹介ということであまり詳しくはご説明もさせていただきませんでしたけれども、具体的な検討に当たりましては、もう少し資料も整えてきちんと事実関係もご説明した上で議論していただくような形にしたいと思います。

【大渕主査】 よろしいでしょうか。椎名委員どうぞ。

【椎名委員】 ちょっと課題から外れるのかもしれないのでご質問してみたいんですが、過去の著作物利用の円滑化の阻害要因ということで考えますと、権利者不在の場合ということが挙げられているんですが、それ以外に、例えば所在が不明ではなくて権利者が誰であるかが分からない場合があるんです。いろんな著作物が流通していく過程で、例えば放送番組であれば、その権利者は誰であるかということをコンテンツホルダーさんが、放送事業者さんなんかがきちっと保持をされている場合、そういう方々が所在がどこなんだということで所在が不明になる場合があるんです。コンテンツによっては、例えば音楽なんかですと、その中にいかなる権利者が入っているかということについて、コンテンツホルダーさんが持っていらっしゃらないような場合がある。そうすると、著作物の権利者は誰なんだということを特定するところから障害になってしまったりする。こういったことも少し課題なのではないか。
 例えば、著作物を作る、コンテンツホルダーさんがそういった情報を、著作物に関する最低限のメタデータを保持しなければならないということをすると問題が解決すると思うんですが、そういったことも検討課題として上がってくるのでしょうか、という質問です。

【甲野著作権課長】 過去の著作物の利用の円滑化ということで論点が立っているわけでございますので、それを阻害するようなもの、つまり特定も大変難しいというところが問題になりますれば、それにつきましても当然ご議論をしていただくということになるのではないかと思います。それはもちろん過去のものについてどうしたらいいのかということと、これから先、そういうものがないようにするにはどうしたらいいのか、両方あるかと思いますけれども。

【大渕主査】 要するに、過去の著作物の利用等に関する問題点を議論していくということなので、幅広く議論の対象にしていただければと思います。

【椎名委員】 はい。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。梶原委員、どうぞ。

【梶原委員】 2のところで、NHKのアーカイブスの活用ということでご説明がありましたので、ちょっとその辺で、実際アーカイブスで著作物を利用するときの課題ということで、実際どんなことを実務上、今困っているかということをちょっとお話ししたいと思います。
 不明ということも1つございますし、放送番組というのは著作権者だけではなくてさまざまな一般の方等々もいらっしゃって、その辺のプライバシーとか肖像権とか、そういった課題もどこまで権利処理をすればいいのかといったようなことを、日ごろ悩みながら権利処理をやっているという実情がございます。
 それと、やはりたくさんの権利者が関わっているわけですけれども、たった1人が公開ライブラリーとかに拒否をする、公開してほしくないと言われたら公開できないといったような問題もあるというようなことで、特にその放送法が改正されてNHKがネット配信もやりなさいということになると、過去のアーカイブスを活用するに当たってさまざまな課題があり、NHKとしてはこの辺の課題を解決できないとなかなかネットへの流通が進まないという現状がございますので、不明の場合以外も、さまざまな課題があるということで申し上げました。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。佐々木委員、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】 質問と、それから今後の進め方についてでございます。音楽に限らず文芸もそうですが、著作物を利用して事業する立場から私としては発言させていただきたいわけでございます。
 権利者不明の場合の問題も、保護期間の問題、戦時加算の問題、非常に大きな事業の上で問題を抱えておりまして、こういったことに今回本格的な議論がされるということで期待しているわけでございます。この検討課題の議論の順番というんですか、1、2、3、4の順番でいくのか、それとも検討課題の中で比較的問題点の多いものから順番にやっていくのか、その辺の進め方というのはいかがでございましょうか。

【大渕主査】 どうぞ。

【甲野著作権課長】 円滑、効率的に議論していただくという趣旨から順番その他を決めていただくことになるのかと思いますが、ただ、今、瀬尾委員からもご発言がありましたように、関連するから全体をまとめてというようなご議論もありましたけれども、全体の進め方につきましては、ここの場で先生方からも意見をちょうだいしながら、主査とも事務局とも相談して一番いい方法をこれから考えていきたいと思っております。

【大渕主査】 そういう意味で、皆様のほうからもご意見、ご希望等を出していただければ、それも踏まえた上で考えていくということになろうかと思います。
 どうぞ、三田委員。

【三田委員】 著作物の利用と保護ということになりますと、インターネットの時代になりまして、1億総クリエーターということが言われまして、誰でもホームページ、ブログを出すことができるわけです。それから、著作権というのは手紙にもあります。そうすると、我々が普通にメールで送ったものが、あれに著作権があるのかどうかということも考えないといけないと思います。
 昨年でしたか、ホリエモンという人のメールが国会で議論をされておりましたけれども、あれも私信でありますので、ああいうものを勝手に公表していいのかとか、そういうインターネット特有の問題というものもあるだろうと思うんですけれども、一方でインターネットに関わっている人たちの間にある一種の原理主義といいますか、著作権というものをなるべくないようにしてみんなで自由につくって、例えばLinuxのように1つのコンテンツをみんなで作り変えていってより良きものにしていこうという思想をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。ですから、そういうものと全部をひっくるめて議論をしてしまいますと、議論というのが非常に散漫なものになるおそれがあると考えます。
 こういう言い方をすると、例えばプロとアマチュアを分けるなんて言うと、プロの特権意識だというような批判が出ることをあえて承知で言えば、私は幾つかこんなものがあるんだということを皆さん共通の認識として持っている必要があるかなと思います。
 1つは、谷崎潤一郎のように、あと10年で著作権保護期間が切れてしまいますけれども、ちゃんと本として売られているわけです。こういうものがあります。例えばヘミングウェイというものがあります。これも翻訳として現在文庫本として売られております。日本では50年で切れますよということで、欧米では70年になっているものが日本では50年、戦時加算が10年ありますので実質60年でありますけれども、切れてしまいますよということに対して、単にお金を払わないというだけではなくて、完全に著作権フリーになってしまうということは、パロディーを作るのも自由でありますし、改ざんをすることもいいと。もちろん人格権というものはあるんですけれども、複製権とセットになっておりませんと訴えるということも大変難しくなってきます。そういう問題で、著作権の保護をもう少し厳格にやる必要があるかなと。
 例えば、手塚治虫さん、亡くなって20年ほどですから、30年ぐらいすぐ経ちますから。そうすると、手塚治虫の漫画が外国でもフリーになってしまうと。逆に外国のものは日本でフリーになるわけでありますけれども、日本の文化がそういう形で流出していくということに対して、将来的にももう少し保護というものをちゃんとやらなければいけないと私は個人的には考えております。
 しかし一方では、死んでから何十年経ってもちゃんと経済権があって利用者に届くというものは、それほど多くはないんです。例えば現在、国会図書館が明治時代の出版物をデジタルアーカイブしようというようなことをやっておりますけれども、実際はできないんです。なぜかというと、出版物の中には著作者が何年に死んだのか分からない人というのがいっぱいいるんです。現在、高浜虚子という方、著作権がまだ生きております。そのことを考えると、明治時代の人もなかなか死後50年経ったと特定することもできない状況であります。
 そういうことで、これを例えば保護期間を70年にしてくださいと申し上げましたら、こういうアーカイブ事業をやっている方はとんでもないと言われることは明らかであります。しかし、考えてみますと、そういうものの大部分というのは経済的にそれがもう利益を生み出しているかというとそうではないわけです。文化というものを後々の世にまで伝えていくという観点に立つと同時に、また創作者の気持ちを考えても、自分の作品がそういう形でアーカイブされるということは名誉でありますし、喜ばしいことであろうと思います。ただいつ死んだのか分からないとか、ご遺族の方がどこにいるのか分からないという形で作業がストップしてしまうということは、創作者の立場に立っても望ましいことではないと思います。
 現行では、しかし死後50年というものが1つのフリーになると。これだけが著作権の壁に1つの穴をあけているわけです。だから、どう考えても死後50年経っているだろうということでアーカイブをしていくということが実際に行われているんだろうと思うんです。
 こういうものを何とか我々日本の文化を日本国民全体の共有財産として残していくという観点に立って考えてみますと、アーカイブ、それから過去の著作物の円滑な利用というものをもっと大胆に新しくしていく必要があるだろうと思います。
 そのためには、例えば実際に経済的な利益を得ているようなものというのは文芸家協会のようなところに登録されている方に限られると思いますので、そういう各団体がデータベースをつくって、これはまだ生きてお金も入ってきていますよというようなものを示しておけばいいわけで、それ以外のものについてはもっと自由に利用ができるというようなシステムを考える必要があると思います。
 現行の裁定制度というのは、裁定してくださいと届けるだけで、届け用紙に印紙を張る必要があるんです。2万3,000円ですか、印紙を張って、以前は新聞広告を出しなさいということだったんですけれども、現行は著作権情報センターにリンクを張ればいいということなんですけれども、著作権情報センター、料金を取っておりまして、2万1,000円かかるということですから、最低4万円かかるんです。それから供託金を幾らにしようかという議論が始まるということであります。
 こういう裁定制度を、例えば1,000円ぐらい払ってできないかと。こういうことを皆さんで考えていただければ、アーカイブの問題、円滑な利用の問題というものも急速に解決していくのではないかなと思います。
 アメリカで、オーファンワークスと言われる持ち主の分からない作品についてもっと大胆に利用しようという提案がなされて、廃案になってしまいましたけれども、そこで言われているのは、通常、ご遺族がはっきりしていてそれを出版して、これぐらいの印税を払うんだという世の中の常識的な料金というものを設定しておいて、権利者が不明の場合、先に使ってしまって後から勝手に使われたという人に対して所定の金額を払うというような形で対応できないかと。どういう形で反対が出たのかわかりませんけれども、そういうやり方というのも1つの考え方だろうと思うんです。
 これに対して、著作者の側から、やっぱり勝手に使われるのは困るんだというご意見も出てくるだろうと思いますけれども、勝手に使われて困る人は、例えば協会のホームページのデータベースに登録をしておいて、まだ権利を持っていますよということを出しておけばいいのであって、全くそういうことをせずに何十年か前に本を1冊出してそれきり行方不明になった人を、時間とお金をかけて探し出すということも、文化を後の世に残していくということに関しては、ある程度もっと自由に使えるというようなことを考えていく必要があるのではないかと思います。
 ですから、何十年経っても経済的にまだお金が入ってきているという人と、本1冊出して消えてしまって、これがアーカイブされるなら嬉しいという人と、インターネットにホームページなりブログなり出してもう最初から著作権を放棄しているような人と、これらをある程度分けて考えて対策を立てていくということを検討する必要があるのではないかなと思います。
 以上です。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。どうぞ、津田委員。

【津田委員】 津田です。よろしくお願いします。
 委員の皆様方、今回、こちらにいらっしゃる方というのは非常にクリエーターの方が多いですし、また権利者団体の方も多く、基本的にはそういった権利者として、クリエーターとしての立場で述べられる方が多いかと思うんです。僕が1点気になっているのは、皆さん権利者でありクリエーターであるという立場でありつつも、同時に著作物の利用者でもあるということが非常に重要だと思っていて、当然、皆さんテレビも見るでしょうし、本もお読みになるでしょうし、音楽を聞かれる方は音楽を聞くと。自分で創作をなされるかたわら著作物の利用者でもあるというのは、誰しもがそういう構造を持っていますし、僕自身もここに呼ばれている立場というのは非常に微妙で、一方では著作者でもありつつ利用者代表みたいなところで来ている面もあるのかなと思っています。
 こういった著作権の議論というのは、みんなが利用者であるということは、こういった著作権の議論を行うときに権利者、クリエーター、利用者、その三角関係の中でおそらく話を進めていくのが適切だと思うんですけれども、絶対数ということで考えると、権利者は当然利用者でもあるということを考えると、三角関係の中で利用者というのが一番絶対的な数が多いと思うんです。それでも、こうした議論で利用者ですとか消費者の立場でどう思うのかという意見がなかなか外から見ていると反映されていないなというのが、僕の不満というか感じている部分で、先ほど三田委員の話にもあったんですけれども、インターネットというのが登場したことによって、今まで一方的に利用者でしかなかった消費者というのも、非常にクリエーターになる、著作者になるというところの機会が増えたということは、利用者とクリエーターというのも、立場というのがあいまいというか境目がなくなってきているのかなという気がしています。
 逆に、そういった状況が変わっている今だからこそ、常に著作物の利用者であるという利用者の視点というのを意識に置いて、議論の課題設定ですとか議論を進めていっていただきたいなというのが、僕のこの委員会に対する要望です。
 あともう1つ、質問というか、資料6が気になっているんですが、関係者ヒアリングというところで、創作者団体・個人、利用者みたいなところになるんですけれども、当然創作者団体・個人というときに、権利者団体の方からクリエーターを選出されるのか、それともそういったところに属さないで純粋にほんとうに個人で独立的にやられているクリエーターの人に意見を聞くのかというので、全く意見とか思っていることは変わってくると思うんです。
 僕はこういった著作権というのは非常に影響の大きい問題だと思うので、関係するいろんな人に意見を聞いた上でそれを集約していく必要があると思っているので、こういったところで本当に多彩なクリエーターの人にぜひ意見を伺ってほしいし、利用者というところでここには挙げられていないですけれども、もっと消費者ですとか著作物の享受者の人にも意見を聞けるような場所というのが必要だろうと思います。最後、事務局に確認したいのが、こういったヒアリング対象者というのを選任するのは誰がするのか、そのプロセスはどうなっているのかというところをちょっとお聞きしたいかなと思っています。

【大渕主査】 実は、ヒアリング対象者については本日のあとの段階で議論するものなので、そのときにご議論いただくことになろうかと思います。

【津田委員】 はい、わかりました。では、結構です。

【大渕主査】 ほかに、今までの点に関連してでも、また全く新しい点でも結構ですが、いかがでしょうか。
 中山委員、どうぞ。

【中山委員】 先ほどの梶原委員の発言に関連してなんですけれども、著作権はさまざまな多くの人が関係してくるという話ですが、それはまさにそのとおりでして、戦略計画でも著作権、肖像権等について研究していかなければならないと書いてありますし、著作権だけ処理しても、あとで人格権とか肖像権とかプライバシーで差し止められては利用が進まないことは事実だと思います。そこで事務局にお伺いしたいんですけれども、ここでは扱うのは著作権だけと考えてよろしいですか。肖像権はここでは扱わないと考えてよろしいですか。

【吉田文化庁長官官房審議官】 今、先生ご指摘の肖像権とか、先ほど梶原さんのお話からプライバシーの権利だとかいう話がありましたけれども、この審議会はあくまでも著作権、著作隣接権までは当然スコープに入ってまいりますけれども、肖像権やプライバシーについては置いておいて、著作権の関係でご意見をいただきたいと思っています。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。ご遠慮なさらずに。久保田委員、お願いいたします。

【久保田委員】 津田さんの指摘のところ、すなわち、利用者、エンドユーザーといった分類に関することなので、また後ほどということかもしれません。一方ヒアリングの対象ですが、ユーザークリエーターという言葉が盛んに世の中で使われ始めているんですけれども、当協会は、ユーザーでありクリエーターという立場があります。そういう意味では利用者、エンドユーザーという分類の中、ユーザークリエーターという非常に微妙な立ち位置ではあります。概念の問題もあると思いますけど、そういった視点はこのヒアリングの対象の中に入ってくるんでしょうか。

【大渕主査】 ヒアリング対象者を決める話であれば、あとでまとめてやっていただいたほうが早いかと思いますが。

【久保田委員】 全体の話としてなんですけれど。

【大渕主査】 今のはどなたがお答えになるのがいいのか分かりませんが。先ほども出ていましたとおり、ユーザーでもありクリエーターでもあるというのが現代の状況だよという話が出ていますので、その辺については、いかがでしょうか。

【久保田委員】 はい。それでは、具体的なところで結構です。

【大渕主査】 瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 最初に全体というお話をさせていただいた上でもう一度申し上げますが、今回のテーマの中には、実質的な利用と利害、そういうようなものが非常に対立する部分もあるかもしれない。実際に、今後社会的にも重要ですし、経済とも非常にかかわりの強い部分も審議しなければいけないと考えています。
 ただ、その中で、権利者と利用者という単純な二分化の中で、そしてそれが単純に多い、少ないとか得、損とか、そういう二元論で今回の点をすっぱり切ってやっていくことに対しては反対です。これは全体の話で、全体のシステムを構築する話を審議する場。そのために、あえてこの題名が過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会という趣旨でここが設置されているとすると、全体のシステムの中で論じられるべきであって、決して利用者、権利者などの二元論で語られるべき内容ではないと私は思っています。
 また、そういう観点から議論をするときに、単一の事象で賛成、反対という二元論でいってしまうと、非常に全体を見えなくするのではないかなという懸念があったので、最初のような発言をさせていただきました。今の久保田委員のおっしゃるユーザーであり利用者であるという部分も非常にありますし、これはさっき津田委員がおっしゃった、はっきり分けるということができなくなってきた時代というのがインターネットの時代ではないかと私は思っています。
 また、容易に変わり得ることでもあり、今回のような1つの著作物については単純に著作物の保護期間を50年にするのか70年にするのか、そういう問題だけではなくて、著作物の保護期間について論議ができるのではないかなと期待しています。
 もう1つ言えることは、今のような議論の中で、ネット特有の、例えばウィキというみんなで作っていく辞書、Linuxのようにみんなで作っていくOS、そういう文化ができつつもあると。そういうものもあるけど、そうではない過去からのものもあると。そういう実情はきちんと踏まえて、全てを全体論化しないこともまた逆のブレーキとして大事かなとは思います。ですので、現状を、新しいものをちゃんと見て、そして全体の中で、先ほど審議官のおっしゃった著作権というものを軸に検討していく、そこら辺をはっきりさせていかないと、この調査会、今後1年間やって、結局結論も何も出ないようでは困ったことになるのかなということを憂慮します。
 以上です。

【大渕主査】 ありがとうございました。
 要するに、久保田委員の発言のご趣旨としては、今、瀬尾委員が言われたとのと同じように、ユーザーかクリエーターかという単純な二分論のような発想はやめたほうがよいというご趣旨でしょうか。

【久保田委員】 そうです。

【大渕主査】 ヒアリングをどのように実施するかという話にもかかってくるかと思いますが、単純にユーザーかクリエーターかを二分するという見解の人もあまりいないのかなという気はするのですが、今の点も含めて、いかがでしょうか。
 三田委員、どうぞ。

【三田委員】 この委員会の名称なんですけど、過去の著作物というのは非常に変なものですよね。著作物というのは、作った途端に過去のものになってしまうわけです。すると、ここで文化庁さんが込めたかった思いというのは、相当年数経った過去の著作物という意味合いではないかなと。テーマの1つに保護期間がありますしアーカイブという問題がありますので、例えば50年とかそれぐらい、あるいは30年でも20年でもいいんですけれども、発表後相当期間経ったものについて、もうちょっと簡易な裁定制度ができないかとか、アーカイブというものを自由にできないかというようなことではないかなと推察するんですが、そうしますと4番目の意思表示システムというのは相当年数経ったものではないんです。今つくったものにこのマークを付けるかどうかということなので、この問題だけがなじまないかなというような気もするんですけれども、いかがなものでしょうか。

【甲野著作権課長】 ご提案といいますか、考えておりますことは、過去の著作物というような言い方をしておりますけれども、今先生がおっしゃられましたように、創作されてから相当歳月が経ってもう古くなってしまったというような著作物をどのように利用を円滑にして、また保護をどうしていいのかということを検討していただいたらいいのではないかという趣旨でございました。
 そういうことでございますので、今これから先利用する場合に、過去にずっと昔に作られたものはどうするかという問題もありますし、また将来そういうような困ったことが起きないようにするにはどうしたらいいかという視点もあろうかと思います。そうしたことから、この4番目の意思表示システムというものも関連するのではないかという趣旨でございました。
 したがいまして、過去の著作物とありますけれども、創作して相当年月が経った著作物のような趣旨で考えていたというのが実情でございます。

【大渕主査】 実は最初のあいさつのときにも、本小委員会で扱うテーマの第4は過去のものに限られないと思いましたが、あまり話が細かくなるのでそれには触れなかったところでありまして、もちろん第4のテーマは「過去」に限らないことになると思います。第4のテーマは、本小委員会で扱う過去の著作物等の保護と利用というものに密接に関連しているということで入っているのであって、第4のテーマの範囲としては「過去」のものではないものも当然入ってくるということであり、まさしく前広にいろいろ関連するものを検討していくということだと思います。
 本小委員会の名称としては、わかりやすさの点などから、「過去の」ということになっているのでしょうが、ただ、今、三田委員がご指摘になった点は重要で、第4のテーマについては「過去」というものに必ずしも限定されない広がりがあるということは間違いがないのではないかと思います。当然、そのようなものについても第4の論点で検討していくという趣旨であると理解しています。
 ほかにいかがでしょうか。野原委員、どうぞ。

【野原委員】 質問なんですけれども、その前に1点。
 先ほどからの議論で、この委員会では、さっき話の出たプロとアマを分けてという話ですとか、インターネットの普及により出てきたブログやメール等の著作権についてですとか、Q&Aサイトやコミュニティーサイトで語られたコメントを元に出版物が出されるときの著作権のことですとか、Linuxやウィキなどのオープンソースでつくられたものの著作権をどうするかといったことは、今回は扱わないという理解でいいですか?ということが1点。
 あともう1つは、今回、資料のあちこちでいろんな事例を、実際にこういう施策があるとかNHKのアーカイブスがあるとかいろんな例を挙げていただいているんですけれども、それがどれくらい実効的に効果があるのかがもう少し分かる形で説明していただけるといいと思います。
 例えばどういうことかというと、先ほどご説明いただいた資料4の8ページにはNHKアーカイブスの概要が書かれていますが、番組総数は、ニュースを外しても57万番組あって、そのうち著作権処理がなされてフリーで使えるものは5,380ということで、100分の1にも満たないわけです。これでいいということなのか、まだまだ少ないと考えているのかということがわからないし、また、どんな番組なのか内容評価することもできません。これは単なる一例ですけれども、今後のヒアリングも含めて、施策を検討するうえで意味ある、内容を評価できる形で見せていただきたいという2点です。

【大渕主査】 はい、お願いいたします。

【甲野著作権課長】 ブログを集めて、例えばそれを出版物にまとめたときの著作権をどうするかですとか、あるいはオープンソースについてどうするかということは重要な課題ではありますけれども、今回、それに特化して、それをどのように取り扱っていこうかという視点で検討するのではなくて、やはり古くなったものについてどうやって利用を円滑にしたらいいのか、古いものについての保護をどうしたらいいかという観点でご検討いただければと思っております。また、そういう課題は非常に重要ですので別途検討するところもあるのではないかと思います。
 それから、資料につきましては、今回紹介するという意味であまりきちんと深く説明するような資料にはなっておりませんけれども、具体的な検討に当たりましては、もう少し整えた形できちんと資料も整えてご説明もしたいと思います。
 意味合いについてですけれども、いろいろなところでの報告ですとか計画とかありますけれども、知財本部についてのさまざまな検討につきましては、政府全体として取り組もうという形でほとんど閣議決定に準ずる形で決められていますので、それに向かって施策を進めなければならないというものがあるわけでございます。もちろん検討していつまでにというのができなければしようがないので、また一生懸命やってその次の計画ではもう1年先ということもありますけれども、そのような性格でございます。専門調査会は、それに至る前の段階の専門家が集まって行った会議でございますけれども、それが将来には知財計画に反映されることもあり得るという形で私どもは認識をしております。
 それから、この著作権分科会におきまして今後の検討課題としてまとめられたものにつきましては、課題全体、著作権問題についての整理ということをかつては行いまして、平成17年1月に、こういうものがたくさんあるだろうという形で取りまとめたものであるわけでございますけれども、ここ2年、3年にわたりまして、それに従って検討を進めてきたものでございます。
 そうしたようなことで、言ってみれば著作権分科会全体としてやらなければならないこととして認識されたものでありますので、理解をしていただければと思います。
 それから、NHKのアーカイブスについてもご説明がありましたけれども、これは非常に多く番組がある中で5,300、あるいは580幾つかという形で利用されているものがあるかと思いますけれども、やはり世間的には全体として、例えば川口のアーカイブに55万あるけれども6千弱というのは少ないのではないかというようなご議論も非常にあろうかと思います。そこのところについては、いろいろな方がいろいろな形でお考えですので、今直ちに事務局としてこうだと評価はできませんけれども、またそれが議論になりましたときにもう少し資料を収集しましてご説明をしたいと思います。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】 私は非常に素人であまりこの分野は詳しくないんですが、おそらく私の立場から、障害者なりの立場からの意見を集約していくということになると思うんですが。1つだけお聞きしておきたいことは、大体今までこの問題については、障害者等の要望については課題は残っていないという感じで理解していていいのか、ここに検討課題が出ておりますので、こういうことがこれからおそらく議論がされるであろうということで、過去の積み残しと申しますか、いろいろな課題でまだまだいろいろあるよという世界なのかどうか、ちょっとその辺りを教えていただければと思うんですが。

【大渕主査】 お願いいたします。

【甲野著作権課長】 著作権法に関する障害者の要望ということにつきましては、これまでも議論をしているところでございまして、障害者の方々がよりいろんな形にアクセスをすることが便利になるようにということで、権利者の持っている権利を一部制限をして利用しやすくするというようなことが何かないのだろうかということは、これまでも検討してまいりました。2年前にもそういうような検討をしているところでございます。また現在も関係の方々から具体的な提案があれば、それはどんどん取り入れていこうという形でいるところでございますので、もしそういうような提案がありましたら、この委員会というよりも法制問題小委員会なのかもしれませんが、議論していくべきものと思っております。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。金委員、どうぞ。

【金委員】 慶應大学の金です。議論の材料を提供するという意味で、ひとつ問題提起をさせていただきます。1つは、冒頭で大渕先生がおっしゃったような、この委員会は著作権制度の根本的な問題に関わることを議論するものであるという意味で、私自身の著作権制度を見ている基本的なスタンスについてお話をして、次に保護延長問題について触れたいと思います。
 1つは、著作権制度の一番上位にある政策目標は文化の発展に寄与することであるとされております。その文化の発展は、知の創造と利用の産物として実現すると思います。したがって、著作権制度が目指すべきなのは、創造性というものをいかに最大化して、そうした創造性の産物を社会に広く流通、利用させることであり、それを促進するための手段として、適正な保護水準、保護範囲、又は保護期間があることをまずは認識する必要があると思います。
 つまり、保護期間自体が目的になることは避ける必要があるということが私の基本スタンスであります。
 次に、保護延長の問題で、先ほどの言及があったんですが、国際標準に合わせるために保護期間を延長すべきだというような議論があります。まず、もともと著作権制度の保護期間というものは国際的に死後50年というのが実質的な標準であったと思います。そうした国際的な調和、国際的な標準を乱してきたのは、どちらかといえば欧州諸国やアメリカであって、決して日本ではないということをまず1つ確認する必要があるということと、それ以前の問題として国際標準がどうであれ、諸外国が延長したからといって日本が国民的な主体的議論なしで欧米の延長に追随するということは説得力に欠けると思います。
 隣の国、韓国ではつい最近、保護期間延長が決まったそうです。それは政府の中での政策議論ではなく、アメリカとの自由貿易協定、FTA交渉において一方的に決められたといわれております。それに対し、日本の場合、本日のような政府内で委員会が設けられ、主体的に未来の方向性や在り方について議論できるということは非常に幸いなことだと思います。諸外国の事例は参考にしつつも、本委員会では日本として、国民のための主体的な議論を積み重ねた上での結論を導き出すことを強く望みます。
 最後に、保護期間延長問題というのは、未来の著作物に対してのみ適用されるわけではなく、過去の著作物にも適用されるという点です。そこで、過去の著作物に対する保護期間延長問題と未来の著作物に対する保護期間延長問題は明確に分けて議論していかなければならないと思います。特に、創造のインセンティブとして保護期間を延長すべきだという議論がありますが、それは過去の著作物については説得力に欠ける議論であります。また、創造というのは先人による文化的遺産を土台にして生まれるものであります。そこで過去の著作物に対し保護期間を延長することは、ある意味、著作物の円滑な利用における取引費用を著しく増大させるリスクがあり、さらにそれは著作物の利用のみならず、未来の創造活動も阻害する結果をもたらすリスクがあります。
 ちなみに、先ほどから話がありました裁定制度などのいわゆる過去の著作物の円滑な流通のためのさまざまな施策なんですが、この問題は、厳密にいえば保護期間延長問題とは独立した問題であり、保護期間を延長してもしなくても推進すべき課題ではないかと思います。
 以上です。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。三田委員、どうぞ。

【三田委員】 過去の著作物を自由に利用することによって将来のクリエイティブな著作物の推進につながるという議論はよく聞かれるんですけれども、しかし著作権法ではアイデアは保護しないということになっております。ですから、そっくり同じものをそのまま利用するということでなければ、過去の著作物を自由に利用するということは現在でも可能になっております。
 そうしますと、著作権の保護期間を延ばすことが、どういう形で未来のクリエイティブな営みの障害になるのだろうかということが私には具体的によく見えないということがあります。
 例えばシェークスピアの「ロミオとジュリエット」をニューヨークの「ウエストサイド」に移しかえるということは自由にやっていいんです。シェークスピアの保護期間が切れているとかそういう問題ではなくて、現に保護期間があったとしても、そういうアイデアまでは保護しないということであります。
 ただ、写真の場合、写真をモンタージュして新たな創造物とするという場合には、その写真をそのまま使ってしまわないといけないので著作権というものが関わってくることは事実でありますけれども、それは別の問題でありまして、一般の普通の文芸、美術、それから音楽、そういうものについてそっくり昔のものを使うということはあり得ないわけであります。そういう意味では、保護期間を延長することによって文化の創造が妨げられるということはないと私は考えております。
 それからもう1つ、裁定制度の問題というのは、もちろん保護期間の延長とは違う問題ではあるんですけれども、実際問題として保護期間をもし50年を70年に延長したとしたら、現在50年で切れてフリーになっているというようなものが使えなくなるということなので、利用者の立場からすれば裁定制度の拡充というのは不可欠な問題であろうと思います。
 私自身小説家ではありますけれども、まだ生きておりますので、死後50年、70年というのは全く想像力の及ばない状況であります。むしろ私が考えているのは、利用者の立場として谷崎潤一郎の文庫本を読むといったときに、文庫本を買うときに著作物使用料を払うということが利用者の立場としてあり得るだろうと。例えば、これが著作権が切れてしまって100円ショップで売られるようになったときに、普通の本屋に行って文庫本がなくなってしまうということのほうが、利用者にとってまずい状況ではないかなと考えております。そういう意味で、裁定制度というものはぜひとも早急に検討していただきたいなと思います。
 今、いろんな議論が出まして、誰もがクリエーターであると同時に利用者であると言われましたけれども、まさにそのとおりでありまして、ここには大学の先生方もいらっしゃいますけれども、大学の図書館の古い書物をインターネットに公開をしようということは世界中の大学がやっております。ところが、著作権の保護期間を50年を70年にしますと、そういう事業が全くストップしてしまうということは事実であります。これを解決するために裁定制度を拡充すると。これがうまくいきましたら、50年以上のものだけじゃなくて30年のもの、20年のものでも相当期間経ったものについて積極的にこの文化を公開していくということになって、非常によい流れができるのではないかなと考えております。
 ですから、この委員会というのは、これからの著作権というものを考えていく上で非常に重要な委員会であると考えております。

【大渕主査】 ほかに。中山委員、どうぞ。

【中山委員】 今の三田委員のご意見ですけれども、同じものを使わなければいいという単純なことではないわけです。著作権法には翻案権がありまして、かなり幅広い禁止権、つまり第三者の行為を禁止している、抑えているという効果を持っております。
 「ロミオとジュリエット」と「ウエストサイド・ストーリー」が翻案かどうかというのは議論のあるところですけれども、モーツァルトの曲なんかはいろんなジャンルの曲として編曲されて使われていますけれども、おそらくモーツァルトの権利があればできなくなります。
 これは日本だけでなくて世界中でも常識的に言われているんですけれども、著作権の期間が延長されれば、その分だけ文化の創造に対する障害になるということは間違いなく事実だろうと思います。障害になっても、なおかつ延ばすことによって得られる利益のほうがプラスならば延ばしてもいいということになりますけれども、延ばすことによって他者の創造の妨げにならないというのは事実誤認だろうと思います。

【大渕主査】 ほかにいかがでしょうか。生野委員、どうぞ。

【生野委員】 具体的な議論はこの後いろいろ進めていっていただくとして、先ほど金委員のご発言の中で、この場においては保護期間自体が目的にならないようにとありました。全くそのとおりで、保護期間を延長するかどうかはあくまで手段の問題であって、決して目的ではない。それは分かるんですが、その後のご発言の中で、国際標準は死後50年だというお話がありました。私はそうは思わないんです。国際的な立場の中で日本がどういう位置を占めているのかということを考えると、既に欧米で70年になっていると。国際標準は日本が考える場合はやっぱり70年だと思うんです。
 資料4の12ページに、過去の著作権審議会等における検討で、第1小委員会経過報告、平成8年ですか、ここでも2行目の「また」以降で、「先進諸国の大半が延長を行ってから後発的に取り組むと言うことではなく、国際社会における我が国の積極的な取り組み姿勢を示していくことに留意する必要がある」と。11年前にこういったレポートがされているのに対して現状がまだ50年という状況だと。そういったところを考えなければいけないのではないかと思います。
 以上です。

【大渕主査】 中山委員、どうぞ。

【中山委員】 実質論に入るので、実は次回以降に発言しようと思ったのですけど、今発言がありましたので私も発言したいと思います。
 何が国際標準かというのを議論してもあまり意味がないと思いますが、確かに欧米は70年になっています。しかし、70年にしたにはしただけの理由があるわけです。そこには思想的なこともあるでしょうし、あるいは政治的な問題、特にこれは政治的な問題が大きいわけですけれども、そういう問題があって70年にした。したがって、我が国は、アメリカが一番大事ですけれども、アメリカが改正したときの状況と同じような状況にあるのかどうか。あるいは、アメリカが改正したことによって果たしてアメリカの文化の発展にプラスになったのかマイナスになったのか、あるいは関係ないのか。そこら辺を十分検討して、初めて延長論が出てくると思います。これは法改正の常識ですけれども、改正するほうがプラスはここであるということを立証しなければいけないわけです。
 どうもさっきからいろいろ聞いていますと、欧米と同じでないと恥ずかしいとか、欧米と同じがいいということを前提に議論をしているように見える。終戦後60年経ったのに、まだ敗戦国のコンプレックスを引きずっているような気がしてならない。我が国は、条約を守っているわけですから何の後ろめたいこともないわけでして、我が国の国情に合わせて、あるいは国益に合わせて十分議論をして、70年にすべきかすべきでないかということを考えれば足りるのではないかと考えております。
 確かにアメリカから要求はあるようですが、私も知的財産を何十年も研究しておりまして感じるんですけれども、著作権も特許もアメリカは法外な要求をしてきています。要するに、この要求が通ればアメリカは日本から金を持っていけるというだけの話なんです。したがって、アメリカは国益に合致するから要求するのは当たり前、特許にもそのような例はいくつもあります。煮え湯を飲まされたこともあるわけです。
 普通は、日本からアメリカに金が流れれば物が入ってくるとか、技術が入ってくるとか、サービスが入ってくるとか見返りがあるのですけれども、この法改正には全然見返りがない。法律を改正すればそれだけで日本からアメリカに金が流れる。だからアメリカは要求する。当たり前のことです。ですから、アメリカからの要求と関係なく、我が国固有の問題として、果たしてそれが国益に合致するかどうか、文化の発展に寄与するのか、という議論が大事なんです。それを十分やって、検討して結論を導くべきであると思います。
 ヨーロッパはヨーロッパの理由があって70年にしたわけですけど、ヨーロッパが70年ということは参考資料になるのであって、決定的理由にはならないと私は思います。

【大渕主査】 都倉委員、どうぞ。

【都倉委員】 保護期間の実質的な討議に入ってしまったようなので、私も次回、もしこれがテーマになるのであれば発言しようと思っていましたけど。
 今、中山先生のお話も僕はわかるんでございますけれども、実質的な保護期間に関して、全般コピーライトという意味で国連加盟百何十カ国とか、そういう議論はあまり意味がないと私は思います。著作権法が完備してあり、しかもそれが実行されている諸国、実際にそれが商業的にも技術的にもちゃんと保護され、それが実行されている国を対象として議論しない限り、ちょっと意味がないような気がいたします。
 そして、先ほどからインターネット時代、インターネット時代という、これは音楽に関しましてはまさにボーダーレスになっておりまして、30年が保護期間が適正なのか、50年になって、アメリカの95年という映画の保護は、俗にミッキーマウス法とも言われて、ある大きなエンターテインメント企業の政治的な、さっき言いましたようなものがあるというお話もよく聞きますけれども、実質的に実行する段階で、若者が音楽を利用する場合に、著作権保護を実行している国々の間のコンセンサスがない限り、日本だけがただで20年間余計に物を作りダウンロードもできるというようなことになると、やはり世界としての文化の流れというものに大きく逆流するのではないかというのが私の考えです。

【大渕主査】 では、上野委員、どうぞ。

【上野委員】 上野でございます。
 2点あります。まず1点目は、先ほど翻案権について中山先生がご指摘になったことは全くそのとおりだと思います。確かに、もし著作権の存続期間が延長されますと、著作権には翻案権、あるいは二次的著作物を利用する権利である28条の権利が含まれておりますので、延長された分だけ将来における創作行為というのが制約されてしまうことになるんだろうと思います。
 ただ、もしそのことが問題だというのでありましたら、例えば、仮に著作権の存続期間を延長するとしましても、27条と28条の権利だけは消滅するというような立法だって、検討される選択肢の1つとしてあってもいいのではないかと思います。こうすれば、自分なりにアレンジを加えれば著作物を利用できるということになりますので、著作権の存続期間を延長したとしても、その限りでは将来における他者の創作行為や表現の自由の妨げにならないというわけであります。
 もちろん、27条の権利と28条の権利だけ消滅するといたしますと、それ以外の著作権は残ることになりますので、アレンジを加えずにそのまま著作物をネットに載せるとか、アーカイブするということはできなくなるということになります。したがって、それでいいかどうかが問題となります。もしそれが問題であるというのであれば、制限規定を必要に応じて変えるといった必要が生じるのかもしれません。
 もちろん、こうした改正案は1つの選択肢に過ぎませんが、今後の議論においては、国際条約に反しない限り、さしあたり我が国独自の立法論を自由に展開していいのではないかと考えます。
 また、将来の創作行為や表現の自由を妨げてはならないということが問題とされるのであれば、本来その問題は著作権の存続期間を延長するかどうかにかかわらず存在するはずであります。つまり、既に、著作者の死後50年まで著作権が存続しており、この間は翻案権等も存在しているわけですから、この時期においても他者の創作活動や表現の自由との調整は必要なのであります。その意味におきましては、著作権を延長するかどうかにかかわらず、パロディですとか、引用ですとか、そういった制限規定の見直しというのも、この委員会での検討対象になり得るのかどうかわかりませんけれども、検討する必要はあるのではないかと思います。これが1点目です。
 それから2点目は、これも先ほど中山先生から非常に興味深いご指摘がございました国益論についてであります。
 確かに、あくまで我が国の立法を行うわけでありますので、我が国の国益にかなうかどうかという観点で決めればいいのではないかということはできようかと思います。その意味では、海外の立法状況がこうであるからといってそれを直輸入すべきだという主張があるとすれば、それは直ちに正当化理由になるものではないと思われます。
 ただ、アメリカで行われた保護期間延長は「ミッキーマウス保護法」だとかいって批判されているわけでありますけれども、もしアメリカが、アメリカの国益にかなうと判断してこのような立法を行ったというのであれば、アメリカは自国の国益にかなう立法を行ったのだから仕方がない、というように、国益論からすればアメリカの保護期間延長を批判できなくなるのではないかと思われます。過去におきましても、我が国が化学物質に対して1975年まで特許を認めなかったのは国内産業保護のためであるということが言われるわけでありますけれども、確かにそういう立法は国益論からすれば国益にかなったのかもしれませんけれども、それは立法として正当化されるべきものなのかどうか、という点も問題になるのではないかと思われます。その意味におきましては、国益にかなうかどうかという観点のみならず、短期的にみると国益にかなわないとしてもあるべき立法をすべきだという観点もあり得るのではないかと考えております。以上です。

【大渕主査】 それでは、大村委員、お願いします。

【大村委員】 大村でございます。私は、ここにいらっしゃる大多数の方と違いまして、著作権については全くの素人でございます。私の専門は民法という法律でございまして、先ほどちょっと話題になりましたけれども、この審議会との関係で申しますとプライバシーの権利ですとか肖像権といったようなことを扱う、そういう領域で仕事をしております。
 今、ここで発言をさせていただきたいのは、中山委員がおっしゃった立法の常識というんでしょうか、立法の仕方についてでございます。
 私は、他のさまざまな民事立法に多少とも関与しておりますが、その際に、外国法の趨勢、世界的な趨勢との調和というのは必ず話題になることの一つでございます。今回も、先ほどの資料で申しますと資料4の11ページですが、直前に話題になっておりました保護期間に関する主要な国の一覧というのが出ております。このような資料を整えていただくということは非常に重要なことであると思います。事務局に要望ということになろうかと思いますけれども、先ほど中山委員がおっしゃったように、どうして70年という延長措置が必要であったのか。それには、アメリカにはアメリカの事情がある、ヨーロッパにはヨーロッパの事情があると思います。ですから、現在がこうであるということをお示しいただくのはまず第一歩として必要でありますけれども、諸外国につきましても、いつの時点でどのような事情によって変化が生じたのかということについて、詳細な調査は非常に難しいと思いますが、おおよそのところをぜひお教えいただきたいと思います。我が国については保護期間の変遷について説明が出ておりますが、このような説明をしていただくとよいと思います。
 あわせて、期間を延長するということになりますと、どこの国でもそれについて反対する議論は必ず起きてまいります。延長に当たっては、具体的にはわかりませんけれども、それとのバランスをとるための措置というのを諸外国でそれぞれに講じているのではないかと思います。今回審議をしていく中でも、保護期間を延長するとすれば、それに対する代償措置として何をするのかということが非常に重要な問題として浮上してくると思われます。そうだとすると、これもそれぞれの国でどのような代替措置、代償措置というのを講じた立法を行ったのかということも、可能な範囲でお調べいただければと思います。
 以上、ご要望でございます。

【大渕主査】 今の点で何かありましたら。

【甲野著作権課長】 そのあたりは一生懸命事務局としても調べまして、できる限り資料を整えたいと思います。

【大渕主査】 では、瀬尾委員、どうぞ。

【瀬尾委員】 大分話が中身に入ってしまって、どのように私も発言していいか非常に分かりにくいんですけど、今回は全体論で進め方とか全体論のクロストークというような部分でしていると理解しています。
 先ほど中山先生からいろいろなご指摘をいただいた部分、例えば保護期間を延長した場合、創造を阻害するということに対して、私は異論がございます。また、いろんなことについても、当然個々については山ほど皆さん言いたいことがあると思うんです。ただ、今日は初めなので、一応前振りだけということでフライングっぽいスタートになってしまっている雰囲気ということで、私は今までの皆様の論に対して1つずつ申し上げたいことも多々ございますので、言ったことでみんなが聞いていて黙っていたから納得してしまったということではないということを、議事録にきっちり書いていただきたいということです。
 また、今のように基本的な考え方、例えば今の文化の創造という面についてすら考え方が違うわけです。国際標準といったときに、みんながやっているからただやればいいというだけの標準なのか、例えばそれこそビデオや何かであったときに、うちのメーカーの基準が最高なんだからといってしまうことでばらばらになってしまっていいのかという論もあれば、いや、そんなことを言ったってみんなそれぞれがいい規格を出したほうがいいよ、当然独自性があるんだから、という論もあるでしょう。ただ、それはもうちょっときちんとした資料ときちんとしたテーマ設定で議論を尽くしましょう。
 今回のクロストークの中で、私としては方針について、先ほど金先生がおっしゃったような部分についても、全体の方針についてクロストークをしたという部分でとどめておくという認識にしたいと思いますが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

【大渕主査】 それは今申し上げようかと思った点なのですが、本日は時間も限られておりますし、先ほどもありましたとおり資料も、本日はむしろあまり詳細な資料を出すと混乱するということで非常に絞った形で資料を出しておられるかと思いますので、そのような意味では本日は全体についての今後の取り進め方の参考にするという意味でいろいろなご議論をいただいたということでありまして、個別の各論点の本格的な議論は次回以降に行うということです。ここで個別の各論点について全部議論していただくと夜中になっても終わらなくなってしまうものですから、そういうことで、特にほかになければ、時間の関係もございますので、本日の自由討議はこれぐらいにさせていただいて、事務局のほうから今後の予定についてご説明をお願いいたします。

【甲野著作権課長】 今後の予定につきましては、資料5と資料6をご覧いただきたいと思います。これから先、具体的にどのような形になっているのか、まだ明確でないところもございますので、当面の審議日程ということで資料5で何回かの今後の審議内容を案として示しております。
 本日3月30日第1回目、今期の検討課題についてということでご議論いただいたわけでございますが、第2回、第3回として、やはり関係の方々が現時点においてどういうような感じでいらっしゃるのか、それはこの小委員会としても踏まえる必要があるのではないかということでヒアリングを行ってはどうかという形で案をお作りしているところでございます。そして、それをその次に踏まえた上で、もう少しいろいろな方がいろいろな課題を出されるかと思いますので、整理をして、そしてその後、各課題につきまして、一緒の形でやるのか単独でやったらいいのか、その課題をもう一度見た上で少し整理をして議論をしていくという形で当面進めたらいいのではないかというのが、この資料5での提案といいますか中身でございます。
 そして、この関係者ヒアリングについてということでございますけれども、資料6をご覧いただきたいと思います。これはあくまでもたたき台というか提案といいますか、そういうものではございますけれども、やはりヒアリングを行うということであればいろんな立場の方々からお聞きしなければいけませんので、ここで示したものといたしましては、実際に作っている方、個人、あるいは団体、そこのところは団体にしたらいいのか個人にしたらいいのか、それぞれの分野によってもいろいろかと思いますけれども、いずれにしましてもそうしたような方々から議論を聞かなければいけないと思います。
 分野は、著作権全体についての保護期間をどうするのか、利用をどうするのかということでございますので、できるだけ広いいろいろな分野の方に来ていただく必要があるかと思います。ここでは文芸、美術、音楽、写真、そして実演家、レコード製作者、ソフトウェアと書かせていただきましたけれども、さらに必要があれば、分野も増やさなければいけないのではないかと思います。文芸と書きましたけれども、ここは非常に広く捉えているところでございまして、小説を書く方々、あるいは児童文学を書く方々、あるいは脚本を書く方々、さまざまあろうかと思いますし、美術と書いてありますけれども、それは絵画を描かれる方々、あるいはコミックスを描かれる方々、さまざまあろうかと思いますけれども、何らかの形で意見がいろんな方々から出るということが必要ではないかと思っております。
 それから、利用者として書いたものも、他とありますとおり、ここに絶対限られるという趣旨ではありませんけれども、実際に演奏したり、あるいはそれを事業として行う方々、それは音楽の場合、あるいは劇の上演等もあるかと思います。そうしたような方々でありますとか、あるいは著作物を利用して出版をされる方々、あるいは教育を行われる方々、あるいは障害者の立場で利用されたり、図書館、放送事業者という形で利用されている方々もあろうかと思います。
 それから、若干重複しますけれども、アーカイブということでも検討課題に入っておりますので、その関係の方々も必要ということで、図書館、博物館等の方々も必要かと思います。
 それから、こうしたような直接に利害が関係するような方々だけではなくて、これまでいろいろな形で、これも審議会で具体的に議論に入る前にいろいろな方々がいろいろなご発言をあらゆるところでされておりますので、そうしたような方々にも来ていただいて意見をいただくということも必要ではないかと思います。
 ここで書かせていただいたのは、法律の実務家でありますとか研究者、この研究というのはもちろん法律に限らず経済の分野、さまざまな分野があろうかと思いますけれども、そうしたような方々に来ていただくのが必要ではないかと思います。
 アーカイブに関しましては、図書館、博物館という形で公共的な施設ということを念頭に置いてあるようにも見えますけれども、民間レベルで自発的にいろいろやっている方々ですとか、いろいろな立場の方々、関心を持っている方々に幅広く来ていただかなければいけないのではないかと思っております。
 ヒアリングの方法ですけれども、ここで例えばという形で書いておりますけれども、あまり時間をとりますと非常に時間もとってしまいますので、1分野あたり大体15分程度で、半分時間程度を説明、残りを質疑に当てるということを目安にしてはどうかということでございます。
 音楽といいましても、さまざまな立場の方がいらっしゃるのであれば複数の方に出てきてもらってもいいですし、そこらあたりは対象となる方々が自由に選択できるという形にしてはいいのではないかと思います。
 また、非常に多くの発言が想定されるという場合には、時間は延ばしてもいいかとも思いますし、現時点では、まだこれから先いろいろな議論がありますので、暫定的な意見でも差し支えないということで意見を聴取してはどうかと思った次第でございますが、ここで委員の先生方のご意見なども踏まえて、これをやるべきかと思っております。

【大渕主査】 ただいま事務局からご説明がありましたが、次回以降の会合で、本小委員会ではヒアリングを行ってはどうかと思っております。もちろん、冒頭あいさつにありましたとおり、ここには各界の代表的な方々に委員としてお集まりいただいて、その方々のご意見を伺う機会はあるわけですが、それ以外にもヒアリング対象者ということで前広に幅広くご意見をお伺いして、それを踏まえた上で議論をしていったほうが良いかと思います。私としては、なるべく広く多くの方のご意見を伺う機会を持ちたいと思っております。もちろん時間的制約がありますけれども、その中でできる限り幅広く多くの方から多くの視点からのご意見を頂戴できればと思っております。
 そこで、資料6についてですが、先ほど権利者、利用者という二分論は良くないという話もありましたが、そのようなご意見も含めて、むしろ各論的にご意見を頂戴したほうがいいかと思います。具体的にはどのような人をヒアリング対象者として呼ぶかということです。抽象論をやるよりは、個別論で、こういう分野等の人を呼びたいといった話をしたほうが現実的かと思ったのでここまで議論を延ばさせていただいたのですが、そのような観点から、現段階でこれをご覧になってお気づきの点がありましたらお願いします。久保田委員、どうぞ。

【久保田委員】 津田さんと感じていることが一緒なのかなと思います。津田さんはここで、著作物の利用者という意味で、ユーザーでありクリエーターでありという側面が、一般のエンドユーザーの人たちをすごく意識されているような気がするのです。
 その中で、期間の延長の問題もあるのですが、著作権の刑罰も5年の懲役から10年に上がりました。10年の懲役を持っている犯罪で親告罪というのはありません。
 そういう議論の中で、エンドユーザーという一般の人たちの著作権法に対するイメージと、我々権利者団体なりが著作権思想の普及啓発を教育を通じ、また現場で事例を通じてお話をしている経験から、私個人としてはすごく乖離がある気がしています。
 例えば、刑事罰が5年から10年に改正されましたが、我々は現場では著作権侵害が相当悪質だろうと思っていても、3年の実刑が出たりすることはありません。3年の法定刑を使い切らないうちに5年が10年になって。確かにインターネットを考えれば、重大な被害があったり違法性、有責性も高い事例が出てきて、10年でも十分という理屈も立つのですが、一方、我々がブログでやりとりをしたり顔を合わせて議論をしている一般のユーザーの人たちや社会全体の認識から言うと、、ちょっとコピーして10年かみたいな世界がある。今回の保護期間の延長も、これでさらに70年、さらに著作権が強化されて、音楽や文芸をいろいろな形態で楽しんでいる一般ユーザーとしては、すごい首が絞まったような感じで嫌だというような意味で、津田さんもユーザーなり利用者という分類をお考えなのかなということです。
 我々の団体は、たくさんのクラシカルオーサーの人たちの著作物を使って、ゲームソフトだとか教育ソフトなどという形で世に送っている、そういうものの権利保護をやっている団体です。つまり、後ろにたくさんの権利者の方たちがおり、それを利用させてもらうという立場で非常に微妙だということです。このように2つに分けてしまうととてもしゃべりづらい人もいる。この点からも権利者であり、利用者である立場も多いことから、二者択一ではないということを言いたかったわけです。
 津田さんから、先ほどのユーザーという側面、利用者といったときのイメージについて、お話をいただきたい。

【大渕主査】 はい、どうぞ、津田委員。

【津田委員】 まさに本当に久保田さんがおっしゃるとおりで、分けられなくなっているというのと、この会全体が、先ほど何度もいろんな方がおっしゃられたように、文化の発展というのはどうあるべきかというのを考える。これは皆さん共通した認識だと思うんです。
 ところが、インターネットになって、著作権というのは非常に権利者と利用者の対立構造を生み出す機械になってきてしまっているいるなという気がして、それは僕はあまり良くないことだなと思っていて、本来、どちらに対しても、当然享受してくれるユーザーがいなければコンテンツビジネスというのは成り立たないし、逆にまたしかりで、コンテンツを作る人がいなければ僕らは文化的に豊かな生活を楽しめないし、そこが対立してしまうのは非常に文化的に不幸な事態を招くだろうなというのが根本的な問題意識としてまずあって、一方の一部の権利者の、保護することは大事なんですけど、保護の規制を非常に進めることによって、利用者が、まさに久保田さんがおっしゃったみたいに窮屈に感じるという。窮屈に感じる事態が進んでいくと、コンテンツ自体への興味がユーザーが薄れていってしまうおそれをすごく感じているんです。そこで変な対立軸が起こらないところでどういうバランスを探っていくのかというのが、こうした委員会が設けられた目的でもあると思うので、いたずらに強化するのではなく、利用者の視点というのを常に持っていていただきたいなというのは、そういう意図もありますし、こういったヒアリングするときにもその両面をちゃんと分かっている人に聞いていただきたいなというのが僕の要望です。

【大渕主査】 今のお話は、今言われたようなエンドユーザー的な人もヒアリングの対象にすべきだと、抽象論は別として、具体化するとそういうことになるのでしょうか。ここには放送事業者などが挙がっていますけど、むしろそういうエンドユーザーの方へのヒアリングが必要であるということでしょうか。

【津田委員】 実験的にそういうことができるのであれば、それでもいいかなと思います。

【大渕主査】 はい、どうぞ。

【佐々木(隆)委員】 この委員会での議論が、ほとんどなされない段階でいきなりヒアリングとなって、そこから議論が始まるのか、ある程度議論して論点とか問題点を整理した上でヒアリングに関係者をお招きしてお話を聞くのがいいのか、その辺の順序というか、方法論というのはどうなんでしょう。
 これを見ると、最初にまずいろんな関係者のお話を聞いて、それをお聞きした後議論をしましょうみたいな、のように受け取れますけど。

【大渕主査】 これは、むしろヒアリングによって関係の方々がどのようにお考えかということを議論の前提となる資料として得て、これを踏まえた上で本小委員会で議論したほうが、よりいい議論ができるのではないかという考えであると理解していますが、何か事務局のほうでありましたら、どうぞ。

【吉田文化庁長官官房審議官】 4つの項目がテーマとして挙がっているわけでございますけれども、例えば過去の著作物の利用の円滑化方策、権利者不明の場合などについて、実態としてはどうなのか。先ほど裁定の件数も挙げておりますけれども、件数はそんなに多くないんですけれども、著作物の数になりますと何万ということがあります。これは、例えば国会図書館などが明治、大正期のいろんな雑誌などをアーカイブするために行うというような場合なんですけれども、まずそういったあたり、どこでどういう不都合が今起こっていて、それを制度としてどう受けとめていくべきなのかということについて、それは関係者の方からきちんと実態なりご意見なりをお伺いした上で議論を進めていったほうがいいのではなかろうかと思いまして、こういった形で作らせていただきました。それはアーカイブについても同じでございます。
 また、保護期間につきましても、今日も少し議論がございましたけれども、さまざまな角度からの分析といったものも議論を進めていく上で非常に有益だろうと思います。例えば経済学的な分析ですとか、国際収支の上でどうなっているかとか、あるいは社会学的な見地も必要になるかもしれませんけれども。そういった保護期間について延長是か非かということになりますと、そこで議論が実は終わってしまう可能性もあるわけでございまして、できるだけこの項目に関連するさまざまな実態ですとか意見ですとか、そういったものを踏まえていただいた上でご議論を進めていただくほうが円滑にいくのではなかろうかなと。
 また、何度か出ておりますけれども、特に保護期間の問題などについては幅広く国民の意見を聞くということが、この委員会に課せられている大きなミッションであろうかと思いますので、そういったことも含めましてこういう提案をさせていただいています。

【大渕主査】 野原委員、どうぞ。

【野原委員】 具体的なヒアリング対象者についてですが、ユーザーにはいろんな立場があるので、動画や音楽、電子書籍といったデジタルコンテンツのダウンロードサイトを運営する事業者を、ぜひ加えていただきたいと思います。携帯であれば、着メロや着うたサイトの運営者、そういうネットビジネスでまさに著作物を扱う事業者にヒアリングすることが必要なのではないかと思います。
 それに関連して言えば、着メロという市場があれだけ大きく成長したのは、JASRAC(ジャスラック)で著作権の利用の方法を整備したからで、そういう事例ということでも重要だと思います。
 もう1つ。エンドユーザー、一般のユーザーの意識や考え方を把握するのもとても重要だと思います。言うまでもないですけれども、直接エンドユーザーにヒアリングするわけにはいかないわけですから、意識調査をやるとか。それも、何を確認したいのかをきちんと整理した上でユーザー調査をやって、ここでみんなでそれを共有することが必要かと思います。
 以上です。

【大渕主査】 中山委員、どうぞ。

【中山委員】 これは、各委員の意見を聞いて最終的には主査と事務局にお任せするしかないと思います。過去のヒアリングを何回かやりましたけれども、1分野15分、2、3人呼びますと1人5分ぐらい、質疑応答を入れると1人3分ぐらいのスピーチです。ですから、ヒアリングも大事ですけれども、漏れた人にもペーパーを出してもらうということをきちんとやれば、あとは主査と事務局にお任せをしてもよろしいのではないかと思います。

【大渕主査】 三田委員、どうぞ。

【三田委員】 できるだけ幅広い意見を聞くということも重要なんですけれども、それをやっていますと1人の時間が短くなるということもありますし、それを長くすると永遠に小委員会は終わらないということになってしまいます。
 ざっと見たところ、創作者団体・個人で文芸、美術、音楽、写真とか、美術の人はいないけれども、大体ここにいるんです。それから図書館の人もいますし、障害者の方もいらっしゃいます。そういうことを考えると、これ以上そこに重複して別の文芸の人を招くとか、そういうことをする必要はないのではないかと思います。むしろ、実際に利用業者といいますか、著作物を利用して事業を行っている方、事業を行っている方がエンドユーザーに届けるわけですから、エンドユーザーの立場も事業をやってらっしゃる方はご存じだろうと思います。
 そういう人に保護期間20年延長されたら困るんだと。具体的にどのように困るのかということをお話ししていただければ、それに対して何か別の方法はないのかということで、著作権の在り方というのも深めていくことはできるのではないかなと思うんです。具体的にこんなふうに困るんだよというような話をできる限りたくさん聞いて、みんなでそれを検討するということが大切であって、単に賛成とか反対とか、そういう意見だけをたくさん集めてもしようがないのではないかと思います。

【大渕主査】 津田委員、どうぞ。

【津田委員】 今の三田委員のお話で、文芸とか美術に関しては皆さんここに出席されているからいいというご意見があったんですけど、僕は異論があって、日本文芸家協会に所属している作家の方でも、おそら50年70年問題というミクロの問題をとってしまえば、当然反対の立場も賛成の立場もあるし、おそらくクリエーター個人個人のレベルまで落ちていったときに非常に多用な意見をお持ちであるというところがあったときに、ここに出席しているからその人をヒアリングする必要はないのではないかというのは危険、危険とは言わないですけど、少し一方的な話になってしまうのではないのかなと思っているので、1人1人の時間が短くてもいろんな意見を集約して聞いておくことは議論の幅を広げる、豊かにするという意味では重要なプロセスではないかと思います。

【大渕主査】 できれば口頭発言の時間も長いほうがいいのですが、口頭で発言する時間は短くても、ペーパーを出していただいてその中の要点だけを口頭発表することによって、つまり、口頭による発表だけではなくて、それにプラスしてペーパーということにしていけば、口頭発表自体は短くても詳細な内容を伺うことはできるのではないかと思います。その辺は実施上の工夫ということになってくるのかなと思っています。
 ほかに何かありませんでしょうか。最終的には何らかの形で現実的に決めざるを得ないのですが、それに当たりまして何かお伺いしておいたほうが良い点がほかにございましたら。松尾委員、どうぞ。

【松尾委員】 先ほどの質問に関連するんですけど、障害者の意見を聞いていただいたらいいと思うんですが、聞くときに、この課題に対して的確にヒアリングに回答が出てくるかどうかというのが心配してさっき聞いたんですけど、おそらく聞きますよというといろんな話に飛んでいって、的確に答えが出てくることにならないのではないかというのが非常に心配をしましたので、ほかにいろいろ課題はないんですかと聞いたんです。もしヒアリングされるのであれば、この課題についてこういうことできちんと聞きたいということを的確におっしゃって、そのことについて回答をもらいたいと。それ以外のことは、また別の機会、別の場面なら別にするということを的確にしておかないと、おそらく障害者の意見を聞くとなるといろんな話が飛んできて非常に広がるのではないかという感じがしますので、そこをお聞きになる場合に、ひとつご工夫をしていただければと思います。

【大渕主査】 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、本日いただいたご意見を踏まえましてヒアリング対象者を調整したいと思います。もちろん先方のご都合等もございますので、どなたにお願いするのがよいのかについては、恐縮ですが主査のほうにご一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【大渕主査】 ありがとうございました。
 それでは、特にほかにないようでしたら、本日予定時間も超過しておりますので、本日はこれぐらいにいたしまして、次回以降はお手元の資料5の審議予定に沿って審議を進めてまいりたいと思います。
 それでは、事務局のほうから何か連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【黒沼著作権調査官】 失礼いたします。次回以降の日程についてでございますけれども、資料5にございますとおり第2回は4月下旬、第3回は5月中旬ぐらいを予定しておりまして、大まかな候補といたしましては4月27日、あるいは5月16日あたりで調整しようかと思っているんですが、ヒアリングの対象団体との関係もございますので、ここを調整させていただきましてまたご連絡させていただきたいと思います。

【大渕主査】 今出ておりました4月27日と5月16日に第2回、第3回会合が入る可能性が高いようなので、とりあえずスケジュールを空けておいていただければと思います。先方のご都合等の関係でかなり大変な調整になってくるかと思いますので、どの日になるかというのは今の段階では確定しがたいところがありますが、とりあえず可能性は高いということでご理解いただければと思います。
 それでは、本日はこれで文化審議会著作権分科会の第1回過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

─了─

(文化庁長官官房著作権課)


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