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資料1‐1

過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会 意見資料

2007年4月27日
社団法人 日本文藝家協会

日本文藝家協会は、「著作権問題を考える創作者団体協議会」に参加している他の16団体とともに、著作権法による著作権の保護期間を「著作者の死後70年」に改正していただくよう強く要望する。
著作権の保護期間が欧米主要国でほとんど70年になっている一覧表を見る時、実に眩いばかりである。グローバルな規模での文芸活動の姿が浮かび、作家の国際交流も盛んな今日、交流の場で「どうして日本だけ保護期間が50年なのか」と問われて、返答に困る。「日本も歴史的に延長を図ってきたが、いまもその途上にある」とでも答えるのだろうか。これまで輸入文学作品ばかりが目立っていたが、村上春樹、よしもとばなな氏らの作品が次々と海外で翻訳出版され、ベストセラーとなっていると聞いている。東洋思想で好まれた過去の日本文学とは違って、若手作家の作品は「世界共通語的な内容」で書かれており、普遍的に読まれる作品で、これからもますます世界に広がっていくだろうことは予想に難くない。その時、もしまだ保護期間が50年であったとしたら、知的財産立国としての未来はどうなるのであろうか。暗澹たる思いがする。これは他のコンテンツでも状況は全く同様。
2007年、詩人・高村光太郎の保護期間が切れた。このままでは2010年には永井荷風が、2011年には火野葦平が、2012年には小川未明、宇野浩二が、2013年には室生犀星、吉川英治が、2015年には三好達治、佐藤春夫、三木露風が、そして2016年には江戸川乱歩、谷崎潤一郎が相次いで保護期間が切れてパブリック・ドメインになる。これはまさに国家的な財産の喪失である。
協会は、個々の著作者から個々の作品へ入れる「著作権者データベース」を間もなく構築・運用に入る。これが完成して、出版社などに活用されるようになれば、作家や遺族が分からないから許諾手続きができないということは、協会の著作権管理委託者3,200余名に限り、これからはなくなるだろう。しかしこれは、文芸関係の著作者全てを網羅できているわけではない。協会は、今後も委託者増大の努力を続けるし、「著作権問題を考える創作者団体協議会」に参加している17団体で、ジャンルを超えた著作者データベース構築を構想しており、これで許諾問題は大きく前進するであろう。しかし、これも全ての著作者をカバーできるわけではない。70年延長で最も問題となっている「許諾が難しくなる」という点については、国レベルで「著作物管理機構」を構築し、全著作権者を網羅するデータベース管理で取り組むならば問題は解消できると考える。


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