ここからサイトの主なメニューです
資料8

過去の著作物の保護と利用に関する検討課題について
‐国立国会図書館のデジタル・アーカイブ事業への取り組みと課題‐

平成19年4月27日

国立国会図書館総務部企画課電子情報企画室長
田中 久徳

0. 国立国会図書館のデジタル・アーカイブ事業に対する取り組み
 国立国会図書館は、国立国会図書館法に基づき、納本制度によって出版物を網羅的に収集し、文化的資産として後世に伝えるとともに、国会、行政・司法各部門及び国民の利用に供することとされている。当館では、収集資料を基に各種の図書館奉仕を行うとともに、とりわけ近年の情報通信環境の変化に対応し、国民共有の情報資源として、電子情報を蓄積・提供するデジタル・アーカイブの構築を進めている。(別紙1)

1. 権利者不明の場合等の著作物の利用について
 当館は、デジタル・アーカイブ事業を進める中で、著作権法第67条の規定に基づく裁定制度を利用しており、同制度の最大の利用者となっている。明治期刊行図書の場合、全著作者の7割に相当する51,712名の著作権の有無が不明であった。所定の調査を経て連絡先が判明しなかった38,794名(全体の53パーセント)について、文化庁長官裁定を受けた。(別紙2)
 最近、インターネットを通じた一般や関係者への協力要請が認められる等、制度の運用が改善されてきてはいるが、著作者調査のための「相当な努力」は、依然として多大の時間と費用を要している。特に、新聞、雑誌や句集・短歌集等の多数の著作者が関与する著作物については、著作者調査が特に困難なため、それらの利用(資料全体としてのデジタル化等)は事実上不可能となっている。
 当館の経験に照らして、現行制度の運用改善のみでは、抜本的解決は難しく、事業の公益性等も勘案の上、英米で提案された新規制度等も視野に入れた検討を要請したい。

2. 図書館におけるアーカイブ事業の円滑化方策について
 著作権法第31条第2号の規定により、図書館では保存を目的とする所蔵資料の複製が認められている。当館では、劣化した資料の保存のため、マイクロフィルムによる複製を実施しているが、保存用フィルムに劣化が生じる等、長期保存面での問題が発生し、また、デジタル技術へのシフトにより、今後の機器や技術の維持が懸念される状況となっている。
 保存のためにデジタル化することについては、利用との関係もあり、著作権法第31条第2号の権利制限の範囲内で行うことができるかどうか議論が分かれるところである。
 国立図書館として、出版物を後世に残す責務を負っている当館としては、資料保存を目的とする権利制限の範囲の中で、従来のマイクロ化と同等に、デジタル化による複製及び図書館施設内での利用が保障されるような措置を要望したい。(別紙3)
 また、当館では、蓄音機用レコードや、文字・映像・音又はプログラムを記録したCD-ROM、DVD等のいわゆるパッケージ系電子出版物も法定納本の対象として収集している。これら機械的、電子的方法等で記録された出版物については、媒体の劣化、再生方式の変更等により、通常の方法では利用のできない状態になる。これらの出版物についても、文化的資産として後世に伝えるという当館の役割を果たすため、マイグレーション等を含む電子的複製及び利用が保障されるような措置を要望したい。また、当館が収集・保存しているインターネット情報についても、フォーマット等の旧式化により同様の問題が生じており、パッケージ系電子出版物と同様に取り扱うことができることを要望したい。(別紙3)

3. 保護期間の在り方について
 当館は、出版物の公正な利用を促進する観点及び長期的保存に責務を負う国の機関としての立場から、保護期間の延長に対しては、十分に慎重な検討が行われることを要請する。また、仮に権利の保護期間が延長された場合、著作者の権利関係の調査が時代を経ることで、一層困難となることが予想される。そのため、保護期間の延長がなされる場合には、円滑な利用を保障する措置と合わせ、過去の著作物の利活用に支障が生じないようにする必要があると考える。

(別添資料)
別紙1   国立国会図書館のデジタル・アーカイブ事業(PDF:119KB)
別紙2 「近代デジタルライブラリー」における著作権許諾作業(PDF:75KB)
別紙3 資料保存を目的とした図書館資料のデジタル化と法的課題(PDF:55KB)


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ