平成17年度公立学校校長・教頭の登用状況について



 各学校が自主性・自律性を発揮し、家庭や地域と連携した特色ある学校教育活動を展開するためには、校長を中心としてすべての教職員が一致協力して教育活動を展開することが重要であり、校長は学校運営の責任者として、また教頭は校長を補佐する者として、それぞれリーダーシップを発揮しながら組織的・機動的な学校運営を行うことが求められている。このため、文部科学省では、各都道府県・指定都市教育委員会(以下「各県市」という。)における校長・教頭の選考や人事の在り方等についての検討の参考となるよう、平成10年度から公立学校の校長・教頭の登用状況について調査を行っている。
 平成16年度末定期人事異動における各県市が任命権を有する公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校又は養護学校の校長、教頭(校長・教頭として新たに登用された者を含む。)の登用状況は、以下のとおりである。


1  校長・教頭の登用状況
(1)  校長・教頭数及び登用者数(表1
 主として小中学校の減に伴う公立学校数の減少を受け、校長数は36,789人と前年度比379人減となり、そのうち、14.2パーセントに当たる5,232人(前年度比428人減)が新たに任用された者(以下「登用者」という。)である。一方、教頭は39,900人(前年度比250人減)であり、そのうち14.5パーセントにあたる5,768人(前年度比491人減)が登用者である。
1  各県市別及び各学校種別の状況(表234567
 校長登用率(校長数に対する登用者数の割合をいう。以下同じ。)をみると、全学校種の全国平均登用率は、14.2パーセントであり、学校種別では、小学校14.1パーセント、中学校12.4パーセント、高等学校・中等教育学校18.3パーセントであった。
2  年齢別の状況(表89図12
 校長登用者の最年少者は32歳(1人)、最年長者は59歳(4人)であり、登用者の平均年齢は53.2歳(前年度比0.2歳増)、最多年齢は55歳(前年度比2歳増)となっている。学校種別の平均年齢は、小学校53歳、中学校52.5歳となっており、これに対して、高等学校では54.8歳とやや高くなっている。
 また教頭登用者の最年少者は37歳(1人)、最年長者は58歳(3人)であり、登用者の平均年齢は48.8歳(前年度比0.3歳増)、最多年齢は48歳(前年度同)となっている。全体では、45歳~49歳が50.3パーセント、50歳~54歳が36.8パーセント(それぞれ前年度比2ポイント減、3.4ポイント増)と大部分を占めている。
 各県市においては、校長・教頭としてふさわしい資質と意欲をもった若手教職員を任用するため、年功序列にとらわれない新たな評価方法や選考に取り組むなど、優秀な教職員の積極的な登用を期待したい。
3  女性の校長・教頭数及び登用者数(表1210図3
 女性の校長・教頭数は、全体で校長が4,764人(前年度比33人増)で、教頭が6,186人(前年度比54人減)となっており、校長については総数が減少する中、女性校長は増加している。校長・教頭全体に占める女性の割合は、校長12.9パーセント、教頭15.5パーセントであり、校長については一定の増加傾向にある。また、校長・教頭登用者に占める女性の割合については、校長が15.6パーセント(前年度比0.2ポイント増)、教頭は17.7パーセント(前年度比0.1ポイント増)といずれも増加傾向を示している。
 なお、内閣府に置かれた男女共同参画会議は平成15年4月8日「女性のチャレンジ支援策の推進に向けた意見」の中で、際的な目標数値等を踏まえ、社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30パーセント程度になるよう期待する旨を述べている。平成16年度末人事異動後現在の状況を見ると、管理職全体に女性の占める割合が30パーセントを超えているのは栃木県のみ、25パーセント以上30パーセント未満であるのも富山県、広島県、大分県の3県に留まっており、県市全体でも14.3パーセントと、約半数以上の県市が15パーセント未満に留まっている。
 今後、各県市において、意欲と能力のある女性の校長・教頭への登用が増えていくよう期待したい。

(2)  校長・教頭の同一校勤務年数(表11図4
1  校長の同一校勤務年数
 1校あたりの平均在職年数が3年以上となっているのは、小学校(平均3.1年)では38県市、中学校(平均3.0年)では36県市、高等学校(平均2.7年)では14県市である。特殊教育諸学校(平均3.1年)では27県市が3年以上となっている。
2  教頭の同一校勤務年数
 1校あたりの平均在職年数が3年以上となっているのは、小学校(平均2.9年)では19県市、中学校(平均2.8年)では21県市、高等学校(平均2.5年)では11県市、特殊教育諸学校(平均2.7年)では19県市である。
 校長らが自らの教育理念に基づいて特色ある教育活動を実施できるようにするため、校長・教頭が一定の期間在職できるようにするなどの取組を求めたい。

(3)  校長・教頭登用者の職歴(表12
 校長・教頭登用者の登用前の職歴の状況については、以下のとおりである。
1  登用直前の職
 校長登用者の登用直前の職については、教頭が76.9パーセント(前年度末比0.7ポイント減)と多く、続いて教育委員会・首長部局職員の19.3パーセント(前年度比0.6ポイント増)となっている。
 教頭登用者の登用直前の職については、教諭が71パーセント(前年度比3.5ポイント減)と多い。また、教育委員会・首長部局職員は23.3パーセント(前年度比1.8ポイント増)となっている。
2  教職員以外の職歴(登用直前の職を含む)
 校長・教頭登用者の直前の職を含めた登用以前の職歴について、教職員以外の職歴は、教育委員会・首長部局職員(校長登用者の38.6パーセント、教頭登用者の28.8パーセント)が最も多く、続いて教育委員会所管施設職員(校長登用者の9パーセント、教頭登用者の6.6パーセント)となっている。
3  教員出身でない者の校長への登用状況(表13
 平成17年4月1日現在、教員出身でない者の公立学校の校長への任用者の数は41都道府県市(前年比4県市増)で、103名(昨年比18名増)となっており、そのうち92名(前年比16名増)が民間人等(原則として、教員免許を持たず、「教育に関する職」に就いた経験がない者)である。
 なお、民間人等校長については、本年10月号も参照されたい。

2  管理職選考試験の実施状況
 教育公務員特例法第11条において、校長・教頭の登用の方法は任命権者である教育委員会の教育長の選考によることと規定されている。このため、多くの県市において、管理職登用選考の一環として管理職選考試験を実施している。
(1)  管理職選考試験の実施状況(表14
 平成16年度において、小・中学校では校長については55県市が、教頭については56県市が、選考試験を実施しており、そのうち校長については29県市が、教頭については33県市が「選考試験の合格者は一定期間名簿に登載し、その間に選考により適任者のみを登用する」こととしている。
 高等学校は、校長については40県市が、教頭については49県市が選考試験を実施している。そのうち校長については18県市が、教頭については26県市が「選考試験の合格者は一定期間名簿に登載し、その間に選考により適任者のみを登用する」こととしている。

(2)  管理職選考試験の受験資格(表15
 管理職選考試験の受験資格について、職種、年齢制限、経験年数制限、勤務校数等の勤務実績、推薦の5項目を調査したところ、主な概要は以下のとおり。
1 「職種」について、小・中学校では「教頭・教諭以外の職を含む」が31県市(校長)・42県市(教頭)となっており、特に教頭については、幅広く受験資格を認める傾向が見られる。教頭・教諭以外の職としては、学校事務職員や養護教諭、教育委員会職員等が挙げられる。
 高等学校では17県市(校長)・30県市(教頭)で「教頭・教諭以外の職を含む」となっている。
2 「年齢制限」について、小・中学校では43県市(校長)・51県市(教頭)が、高等学校では28県市(校長)・43県市(教頭)が、年齢制限を設けている。制限の設定方法は、上限・下限のいずれかのみを定めているケースが多い。(例:45歳以上、57歳以下等)
3 推薦について、小・中学校は31県市(校長)・30県市(教頭)が、高等学校では23県市(校長)・29県市(教頭)が「必要」としており、推薦者としては、市町村教育長や学校長が挙げられている。

(3)  管理職選考試験の実施方法と合否の判定(表16
 すべての学校種において、筆記試験と面接試験の両方を実施している県市が大半であるが、筆記試験を実施していない県市もある。
 また、試験の合否の判定に際して、大部分の県市が勤務実績(勤務評定を含む。)を合否の判定にあたり併用している。

3  管理職の資質能力の向上のため方策等(表17
 管理職の資質能力の向上のための各県市における、管理職登用候補者に期待する職歴、社会体験研修の実施、管理職としての事務処理能力の向上のための取組、学校運営における人事管理能力の向上のための取組の4項目について調査したところ、主な概要は以下のとおり。
1  校長・教頭登用候補者に期待する職歴について、小・中学校では50県市(校長)・52県市(教頭)が、高等学校は49県市(校長)・50県市(教頭)が「一定の教職経験年数」を挙げている。
2  社会体験研修について、小・中学校では7県市(校長)・16県市(教頭)が、高等学校では6県市(校長)・18県市(教頭)で機会を設けている。
3  管理職としての事務処理能力の向上のための取組について、小・中学校では、法規に関する研修を45県市(校長)・51県市(教頭)で、行政実務に関する研修を33県市(校長)・34県市(教頭)で機会を設けている。高等学校では法規に関する研修を、42県市(校長)・46県市(教頭)が、行政実務に関する研修を35県市(校長)・36県市(教頭)の機会を設けている。
4  学校運営における人事管理能力の向上のため、小中学校では、学校組織マネジメントに関する研修を50県市(校長・教頭)で、教員評価に係る評価者研修を41県市(校長)・33県市(教頭)で機会を設けている。
 高等学校では、49県市(校長)・48県市(教頭)が学校組織マネジメントに関する研修を、42県市(校長)・37県市(教頭)が教員評価に係る評価者研修の機会を設けている。
5  管理職に適格者を確保するための取組の一つとして、平成17年4月1日現在で、校長・教頭等を対象とした希望降任制度が44県市で機会を設けている。
 なお、希望降任制度については本年10月号も参照されたい。

 中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」(平成17年10月26日)においては、教員評価の充実や、学校の意思決定が、校長のリーダーシップの下に、高い透明性を確保し、公平・公正に行われることの重要性についても指摘されているところである。今後ますます、単に年齢にとらわれることなく、優秀な管理職を登用することが期待されるところであり、各県市においては、本調査における他県市の動向も参考にし、管理職登用に当たっての評価方法や任用方法の在り方等について改善を図るとともに、登用前の人材育成や、登用後の研修の充実についても積極的に取り組まれることを期待したい。

(初等中等教育局初等中等教育企画課)

 

-- 登録:平成21年以前 --