教員養成部会 教員免許制度ワーキンググループ(第12回) 配付資料

1.日時

平成18年5月9日(火曜日) 15時~17時

2.場所

東京會舘12階 「チェリールーム・カトレアルーム」

3.議題

  1. 教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入について
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 梶田部会長、野村主査、天笠委員、大橋委員、門川委員、甲田委員、佐々木委員、角田委員、渡久山委員、八尾坂委員、山極委員

文部科学省

 銭谷初等中等教育局長、山中審議官、布村審議官、勝野視学官 他

6.議事

(1)教員免許制度の改革、とりわけ教員免許更新制の導入について

 事務局から配付資料の説明の後、資料5の論点ごとに自由討議が行われた。主な発言は以下のとおり。(○:委員、●:事務局)

委員
 平成14年の中教審答申との関係を考えると、分限制度との関係については、指導力不足教員に対応するための地教行法の改正が行われている。専門性向上との関係についても、10年経験者研修を制度化したので、一定の形は整ってきた。任期制を導入していない公務員制度との関係については、労働関係法との関係や身分の関係、特に、現職教員に更新制を適用した時の、更新されない場合の身分の問題がある。教員採用は都道府県が行うことだが、この場でそれらの見通しを立てて、議論する必要があるので、それらについて、どのようになっているのか聞きたい。また、平成14年の中教審答申の際、なぜ「慎重にならざるを得ない」との結論に至ったのかも教えてもらいたい。

事務局
 平成14年の中教審答申の時には、適格性の確保と専門性の向上のための制度として、更新制の導入が検討された。特に、適格性の確保については、免許状の授与時に教員としての適格性を全体として判断していない以上、更新時に教員としての適格性を判断する仕組みは取り得ないといった制度上の問題や、客観的に適格性を判断する指標をどのように設けるかが難しいといった問題など、適格性の確保に起因する制度設計の難しさから、「なお慎重にならざるを得ない」と結論付けられた。今回は、これまでに指摘された課題をどのような形でクリアし、また、現在、何が求められているかとの観点から議論していただいた結果、刷新のための講習であれば、更新制の導入の必要性も高いのではないかとのことで、中間報告がまとめられたと考えているので、その観点から、平成14年の中教審答申とは、切り分けられるのではないかと考えている。

委員
 平成14年の中教審答申では、更新制の代わりに10年経験者研修を導入した経緯があるので、ある程度ここではっきり述べておかなければいけない。基本的には、10年経験者研修と更新講習は両立できるのではないか。10年も経てば、教員の能力や適性が多様化しているので、10年経験者研修では、それに応じて研修を行っていくが、更新制が導入された場合の10年経験者研修は、更新講習との関連で弾力化する必要はあるものの、廃止の必要はないのではないか。それぞれ相乗効果を上げながら、10年という大事な時期に、より一層ステップアップしてもらうという考え方で良いのではないか。

委員
 答申を出す際、今回の更新制が、平成14年の中教審答申と論理の立て方が違うことを、もう少し打ち出さなければならない。平成14年の中教審答申の際に問われていたのは、教員としての適格性である。適格性については、大学の責任による教職指導や教職実践演習(仮称)の実施のほか、適格性が身に付いていない教員には、平成13年の地教行法改正による対応のほか、懲戒免職処分のみ失効事由になっている現行制度を分限免職処分まで適用拡大していくこと等で対応していく。更新制は、時代が変動する中で、10年に一度アップ・トゥ・デイトの講習を受けてもらうのであり、ここで適格性が問われるわけではない。講習を受けなければ、現職教員でも免許が更新されないが、20~30時間の講習を修了すれば、更新される。適格性については、別に対応していくという論理の立て方について、もう少し丁寧に書かなければいけない。

委員
 10年経験者研修について、それぞれの対象者の立場や能力に合わせて構成されているところもあれば、画一的になっているところもあると聞く。10年の経験となると、34~35歳の頃であり、学校現場では第一線の力になっている教員である。更新制の導入にあたり、現職教員への適用の課題は残るが、10年経験者研修をすぐに廃止するというのではなく、導入に合わせて漸次廃止としていかないと、現場に負担がかかる。10年経験者研修の趣旨は定着してきて、良くなってきているが、その上に、更新のための時間が費やされるとなれば、現職教員の負担が大きくなるので、更新制の導入に合わせて漸次削っていくことが、10年経験者研修を導入したことと整合性が取れるのではないか。

委員
 10年経験者研修は、公立学校の現職教員を対象としたものであり、国公私立の全ての教員が関わる更新制とは異なる。また、更新制における10年とは、免許状を取得してからの10年という意味であるので、その点も異なる。10年経験者の中には、多様な年齢層の者がおり、実際に40歳以上の教員も参加している。現行の10年経験者研修と更新制をリンクさせて、本人の能力開発に生かす視点で、10年経験者研修を弾力的に捉えても良いのではないか。

委員
 認定講習の委託を受けている大学は、国立の教員養成系大学が中心となっているのか教えてもらいたい。

委員
 長く認定講習に関わり、多人数の者を対象に約1週間の講習を実施したが、約1週間を費やした以上、できれば認定可として欲しいとの要望が教育委員会からあったので、多い者にはレポートを7回も書かせたこともあった。免許を授与するためには、厳しく対応しなければならないが、不可と評価しようとした際に、認定して欲しいとの要望があったりと、認定講習にも色々ある。今回の更新講習は、少人数で行い、リニューアルされたかどうかを判断するものである。平成14年の中教審答申で、更新制の代替措置として10年経験者研修が提言されたことについて、これまでの経験者研修の延長線上にある研修とは異なり、評価が伴うということで、受講者にきちんと研修内容が定着したか評価すべきとの議論がなされたが、そのような評価を行っている県もあれば、行っていない県もある。今回の更新講習は、認定を行うことから考えれば、きちんと講習内容が定着したかを評価しなければならないので、現行の認定講習とは異なるのではないか。

事務局
 認定講習の実施状況は、平成16年度は、52県市、37大学の合計89機関で実施している。開設科目数の合計数は1,179科目となっており、内訳は、教科、教職、特殊教育に関する科目が約3分の1ずつとなっている。受講者数は54,268名となっている。実施大学の内訳は、例えば、関東地区では、宇都宮大学、群馬大学、女子美術大学、上智大学、聖徳大学、東京学芸大学等があり、国立私立ともに開設している。コマ数は、例えば、上智大学、聖徳大学、文教大学等が比較的多くの科目を開設している。

委員
 免許状の有効期限は、10年が常識的ではないか。一方で、最初の5年目も一つの意味を持っているので、有効期限と重ね合わせる必要はないが、教員の研修や育成上の問題として考える必要がある。一人前の教員を生み出すのは、養成、採用、研修を合わせると、養成段階の4年(あるいはプラス2年)、初任の1年、その後の4年というように、9~10年くらいの時間を要するのであり、その意味で5年目の時期は、教員が一人前になる時期と重なるので、その辺りの運用の仕方は、各自治体に任せれば良いのではないか。10年経験者研修は更新制との絡みで制度化された経緯もあるので、これを廃止し、5年経験者研修を充実させ、それを前述の観点と重ね合わせて、色々な仕組みを考えていくのも良いのではないか。

委員
 更新講習の内容は、現行の認定講習とは異なるので、大学等の実施機関ではなく、国が基本的な講習内容や方法、修了目標といったミニマム・リクワイアメント(最低要件)を定めて、その上で、実施機関が創意工夫するのが良い。複数の教員免許状を有する者の取扱いについては、複数免許状の取得促進と、免許状が保証する専門性の保持の両方をどのように担保していくかが大事である。栄養教諭や特殊教育諸学校教諭、養護教諭の免許状については、普通免許状とは別に講習を実施しても良いが、例えば、中・高等学校教諭の免許状については、教科別の講習を入れると膨大になるため、各教科について基本的な講習は実施するとしても、教科の内容や方法は教育センターの研修に任せ、学級経営や生徒指導、進路指導、教育相談等の内容を重視するのが良い。

委員
 資料9に、「更新講習のモデルカリキュラム(授業方法、修了目標等を含む)の検討・開発と試行」とあるが、更新講習の枠組みは作らなければ、格差が生じると思われるので、各大学からモデルカリキュラムを提示してもらい、ある程度共通したものを作っていく形になるのではないか。

委員
 更新講習については、ある大学のある先生の講習を受けたいということがあっても良い。10年と言うと30代半ばであるが、小学校では女性教員が多く、最近は職務に熱心で、結婚もせず、子どもを産まない者もいるなど、ライフサイクルは多様となっている。また、校務分掌上忙しく、授業第一という面もあるため、更新講習の時期は、原則3年としつつ、場合によっては4~5年かけて講習を受講して、更新していくのも構わないのではないか。10年経験者研修については、任命権者に任せても良い研修である。現在、10年経験者研修を受けている者は、教員採用が少なかった時代に採用された者であるが、現在の10年経験者研修と10年後のそれとは性質が異なってくる。10年の経験のある教員は、学校現場の中核を担うこととなるが、10年後は第一線の担任ばかりになる。これまでの現職研修は、うまく機能していかなかったため、国が枠を作り、全国一律にしなければならなかったが、これからは、地方が主体性を持ちつつ、全国的な水準は担保するという両にらみの中で、10年経験者研修を現場の実践に根ざしたものに改善し、年次の節目で教員に必要な研修がきちんと実施できるよう、地方の裁量を拡大していくことが大事である。

委員
 教員のライフステージの中で、更新は3回あるいは4回行われるが、各更新時にどのような更新講習を行うのかという考え方の枠が必要である。30代と50代の更新講習が同じ内容というわけにはいかない。ペーパーティーチャーは別として、現職教員はベテランになっているので、その時々の更新講習で何が必要かを考える必要がある。また、研修も初任者研修や10年経験者研修など色々あるが、現在の行政研修を中心としたものだけで良いのか。OECDでも研究されているスクールフォーカスト(学校に焦点をあてた)の考え方にあるように、現場を中心にした考え方など、国際的な議論の中で出てきている成果も取り入れながら、研修の抜本的な改革を行っていかなければならない。教員一人一人のライフステージにおける研修や教育活動のシミュレーションを行ってもらい、その時に学校を空ける時間数や、空いた時間の補充方法等の問題も検討しなければならない。研修を強化していくことは大事だが、研修を行う場合に、現場をいつも非常勤講師だけで充てて良いのかという問題もあるので、その点も検討しなければならない。また、財政難で教育予算が削られているので、財政的裏付けが必要だということも併せて提起するのが良いのではないのか。

委員
 更新講習を授業がある時期に行うのか、長期休暇や夜間を利用して行うのかや、受講にあたって、近隣に大学がある地域と、遠隔地にしかない地域がある場合に、後者については、出前講義等の形で長期休暇や夜間を利用して行うのかなど、ある程度シミュレーションを行ってもらい、更新講習の受講による補充を非常勤講師で行う必要があるのかも考えてもらいたい。更新講習の時期に幅を持たせてもらいたいとの意見があったが、特に女性教員が子育ての最中に更新講習を受けなければならない場合には、子育てしながら更新講習が受けられるような柔軟な仕組みもあって良いのではないか。

委員
 更新制が、その時々で必要な資質能力が保持されるように、刷新を図る制度であると規定しているが、必要な刷新がなされなければ、免許が更新されず、結果として教員としての身分を失うことになるので、適格性に欠ける教員は、結果として排除することが可能になっている。また、必要な刷新を行うことによって、教員としての専門性の向上が図られるので、専門性の向上と無関係とは言えないというのが、一般国民の受け取り方だろう。答申を取りまとめるにあたり、誰を念頭に置くかを考えた場合、答申内容が法律になっていくので、当然、一般国民が読んでわかるものにしなければならない。資格制度としての更新制と位置付けても、どこかで適格性や専門性の向上と結び付くということを念頭に置いて表現する必要があるのではないか。そのため、資格制度としての更新制が、結果として適格性を持たない教員を排除し得る機能を持つものだが、適格性そのものは本来分限制度であるので、これとは無関係だと明確にするとともに、その時々で必要な資質能力が担保されるリニューアルとしての更新制によって確保することで、専門性の向上が図られるとの観点に立って、10年経験者研修は廃止するという方向を打ち出した方が、わかりやすいのではないか。免許状を更新することによって、全国共通の免許状として通用するということは、免許状授与と同じ機能を持っていることになるので、更新講習については、免許状授与時に相当するような基準が必要ではないか。更新制の果たす免許状の効力における機能を考えた場合、更新講習をルーズにするべきではない。

委員
 更新時期は、10年が適当ではないか。更新制は、教員の質を高めることも大きな目的なので、講習の質が大事になってくる。全国的にある程度、同じ質が担保されることが、教育の信頼を回復する一つの手立てである。更新講習を受けたのに、効果が上がっていないという批判が一番怖いので、その意味で、講習の質をどのように担保するかという課題がある。10年で全ての教員が更新していくという考え方もあるが、職種によって内容が変わってくる場合もあるのではないか。例えば、教諭や教頭、校長、教育委員会関係者など、全員が同じ内容で良いのかという問題がある。また、民間出身の校長や教頭との整合性をどのように図っていくのかという課題もある。

委員
 更新講習のモデルカリキュラムの開発や研修プログラムの開発、教職課程の改善・見直しが全て連動していかなければならない。更新講習の内容やプログラムは、最新の動きという意味で、その時の教職課程のプログラムに関わってくる可能性がある。その場合、モデルカリキュラムの開発体制をどのように組み立てていくのかということと、都道府県の研修プログラムが全て絡みながら連動してくるのではないか。このように、カリキュラムの開発体制の整備が連動していくことで、更新講習の内容を一定レベルに担保したり、新しいものを取り入れていく場合に重要になってくる。モデルカリキュラムの開発とは切り離される形で、どこかの機関が別途取り組むというより、全体のシステムの中で進めていくことが大事である。

委員
 10年目が念頭にあるが、いずれ20年目や30年目もあり、教職大学院を修了したスクールリーダーや、シニアレベルのスクールリーダーも更新することとなるので、職能に応じた内容が入ってくるのではないか。大学や自治体の主体性は尊重しつつ、基本的なことは、国レベルでガイドラインをつくる必要があるのではないか。認定講習は、各講師の自主性の名の下に行われてきた部分があるので、これからは、各講師が特定の科目を担当する場合のキー・コンセプトが必要になってくるのではないか。その意味で、ガイドラインの中に各科目ではどのようなことが最低限必要なのかというキー・コンセプトを入れる必要がある。3~5年目の初期層の教員の力量の実態も整理して、5年目相当までの研修の比率をそれぞれ考えていく方向で良いのではないか。

委員
 先ほどの10年経験者研修の廃止という意見は、制度としての廃止を言ったものであり、各自治体の判断で行うことを否定したわけではない。各自治体の判断に任せ、それぞれの教員事情にふさわしい研修を実施していけば良いのではないかとの趣旨である。

委員
 更新講習は免許の更新に関わるものなので、現職か否かや、教頭や主任の職にあるか等は関係ない。制度的に異なる講習を行うとすれば、特別免許状や臨時免許状の者をどのように扱うかや、二種、一種、専修といった免許状の種類により内容を変えるかである。免許状は法に基づき授与されるものなので、更新講習について、必ず入れるべき科目等の要件は決めておかなければいけない。例えば、小・中学校を持つ学校法人がどのように研修を行うかについては、別に考えなければならない。各市町村が設置者であるにもかかわらず、あるいは、都道府県が研修の権限を持っていながら、個別に研修を行うことができなかったため、国が枠組みをつくってきた経緯があるが、これからは、国が研修の望ましいガイドラインを示しても良いが、具体的な実施時期や内容、方法等については、設置者の責任で決められるべきではないか。現在、研修権限が中核市まで下りているが、この枠内で考えていくべきなので、丁寧に書き分けなければならない。

委員
 現行法で免許状を取得した者への適用の問題は、現行法制との関係や他の公務員制度との関係のほか、更新制を導入している国が米国だけに限られていることの分析や実態の把握など、丁寧な検討をお願いしたい。年齢によらず、死ぬまで免許があるのが終身免許であり、多くの免許はそうなっているが、例えば、60歳以上の者がこれから教職に就くことはほぼ不可能であり、これらの者を対象にした講習もないが、その免許状についてはどうするのか。資料6に「現職教員に何もしないということが、社会的に理解が得られるのか」という部会での意見があるが、現行法で免許状を取得した者に対して、新法をそのまま適用することが全くできないとは思わない。適用するにしても、何らかの経過措置は必要になってくるが、この辺りの検討は十分に行われていない。経過措置が設けられるという前提がなければ、それは乱暴な意見ではないか。「保護者の不信につながる」との意見もあるが、果たしてそうか。指導力不足教員がいて、子どもが不幸になっているケースも実際にあり得るが、多くの教員は保護者から一定の信頼を得ている。不信感に対応しなければ、世論の不信感が増大するとは思えない。現職教員の立場に立って、どのようにすべきかという面から更新制の問題の検討をお願いしたい。現在、色々な教育改革が進められているが、現場の教員の意見が反映しにくい。今、教員に何が必要で、どのような改革をしたいのかについて、現場の教員が意見を述べたり、主体的に改革に参加できる機会が少ない。そのような意見も十分に吸い上げて、検討してもらいたい。

委員
 更新制の現職教員への適用は行うべきだが、色々な配慮は当然必要である。今回の更新制は、免許状の取得後も、常に向上を目指して、資質能力を刷新していくという連続性の中に教員が置かれている限りは、現職教員であっても更新制を適用し、更新できない場合には免許状は失効するという立場をとらないと、現職は教員として残り、これから採用される教員は失効するということでは、理解されない。

委員
 多くの教員が研修を受け資質を向上させているが、資質の向上を図れていない教員がいることが、世間の不評を買っている部分としてある。研修を受け、資質を向上させている教員について、その質を公証できるかどうかが問題であり、今まで、研修の必要性については認識を共有できているが、その質を公に担保できるようにするにはどのようなことを行えば良いかを検討しなければならない。更新講習でその質を担保するかどうかは別問題である。

委員
 免許の更新を図る観点であれば、免許を受けた教科で更新が図られるべきである。中学校や高等学校であれば、教科ごとに免許を取得しているので、取得した免許の刷新だけで良い。そこに付加価値を付けようとすれば、その機会は更新講習でなくても、他にある。

委員
 現在の教育改革の議論を見ていると、教職の専門性に対する一つの危機であり、教員免許のない者もますます教壇に立てる議論になってきている。深い専門性を必要とする職だが、専門性自体に対する不信感がある。信頼性とそれを高めていくための条件整備の議論の中で、注目を浴びているのが更新制である。現職教員の取扱いについては、一定の配慮は必要だが、現職であることを既得権として、更新制の対象から外すことによって不信感が生じるのは回避しなければならない。10年間に1回、2~3年の間に20~30時間程度の講習を受けることが、教員に過重な負担をかけるものではない。問題は、教員がモチベーションを高めて、自ら進んで講習を受けていく方策や条件整備をきちんと行っていくと同時に、それにより、教職とは専門性が高く、多くの教員はそれだけ努力をしているということを対外的に発信していかなくてはならない。そのためには、どのような形であれば、現職にも適用できるのかの議論を深めた方が良いのではないか。また、教科の専門性も大事だが、例えば、カウンセリング能力を身に付けさせるものや、特別支援教育についての理解がなければ、教科の指導もできないということも含めて、講習を設定することが必要である。10年や20年で講習の要素は変わってくるのではないか。

委員
 現行法で終身有効の免許状が授与されているものを、その後の法改正で更新制を導入できるのかという主張はあり得る。それに対して、例えば、自動車免許は終身有効ではないが、更新方法は当初から変わってきているのではないか。そのような変更が可能であるという理屈を準備しておかなければいけない。ニューヨーク州では、数年前に現職教員も対象に、更新制を導入したので、この辺りの論理の立て方も参考にして、その後の改正により不利益を与えることに対する理屈も準備しておかなければならない。更新制を導入するとすれば、現職教員も含めて10年に1回の講習を義務付けることに異論はないと思われるが、それが免許更新につながるかどうかの論理は準備しておかなければいけない。

委員
 免許状の保有者には色々な立場の者がいるので、更新講習を画一的に行うことはできないのではないか。ペーパーティーチャーに学級経営論やカウンセリングの講習を受けてもらっても、どのような効果があるのか。仮に、現職にも適用するとなれば、現職として必要な講習内容もある。そうなると、一つのプログラムでは収まりきらないので、免許状の保有者の状況とリンクした多様な講習内容にならなければならない。教科だけの講習があっても良いし、現職教員には教員としての付加価値のある内容でも良いのではないか。

委員
 これから急速に教員の世代交代が行われるが、若い者だけを採用するわけにはいかない。若い者だけを採用すると数十年後に同じ問題が起きるので、年齢制限を緩和し、例えば、子育てが一段落した40代の者がもう一度あるいは初めて就職することも、これから出てこざるを得ないし、奨励すべきである。このように考えると、ペーパーティーチャーについても、現職教員に引けをとらない最新のカウンセリング論や学級経営論の講習が必要ではないか。これからは、ペーパーティーチャーと現職教員は峻別できず、既に私学ではそのようなことが起こっている。若い者では足りない部分があるので、40代や50代で初めて教壇に立ってもらうこともある。また、定年退職した者に、もう一度私学の教壇に立ってもらうこともある。ペーパーティーチャーか現職かということを抜きに、モデルカリキュラムは開発していかなければならない。また、任命権者は、各地域の教員のニーズや職種、職能に応じた研修の仕組みを、別途つくっていかなければいけない。

委員
 教員の場合、教職生活を通じて教育活動を行い、研修を受けることによって、次第に資質能力が向上するという考え方をとっている。その考え方からすれば、終身有効とされた免許状について、新たに更新制を導入することは、少し疑問が残る部分もあるが、これが法制的に可能かどうかは、十分な議論が必要であり、事務局で精査してもらいたい。今回の更新制は、あくまでもその時々に全ての教員に共通に求められる必要な資質能力の刷新を謳っており、更新されることによって、いつでもどこでも教員として活動できるということになっているから、その前提としての刷新については、講習内容や方法をどうするのか等について、国として一定の基準を示す必要がある。また、現に教職に就いている者がその基準に合致しているかどうかを判断する機会が、全ての教員にあっても良いのではないか。その意味では、現職教員に更新制を適用することも可能なのではないか。法制的な可能性や妥当性については、事務局でこれまでの検討状況を明らかにしてもらった方が良いのではないか。

委員
 更新制は米国のみで導入しているという指摘があるが、例えば、ドイツは州ごとに制度の違いはあるが、3年半経った時に国家試験でチェックを行い、合格者は1年半給与を受けながら試補として教壇に立つが、再び国家試験を行い、1/3くらいの者を落とすほど厳しくチェックしている。

委員
 更新講習は10年ごとに行うので、当然内容は変わってくるが、基本的には教員に意欲と希望を持ってもらいたいので、更新講習に高度な内容等も入れ、それに挑戦し修了した教員には、給与に反映するなど処遇に連動させなければ、更新制に対するイメージが暗くなっていく。それらを積極的に評価して、処遇に反映させる前向きな部分も出してもらいたい。

委員
 教育の困難な状況をどのように解決していくのかという流れの中で、教育改革国民会議において、教員に焦点を当てたものの一つが更新制である。無免許の民間人を校長や教頭として登用する流れがあるが、確かに学校現場の改革のしにくさや、外部の者が入ることで変わることがあることはわかる。その面を見ると、教員政策そのものの問題を考えていくことが必要である。また、この際、フィンランドのように、修士課程の修了等を基礎資格にすることも必要ではないのか。日本企業の雇用体系を見ると、学歴や経験年数により初任給が決まるので、学歴を上げ、それなりの処遇をしていくことになれば、教育現場に明るさを与えるのではないか。日本の学校は、教員が多忙過ぎるので、少人数学級にしていかなければならない。今の日本の子どもは、塾に通うことで学力が備わっているが、公立学校に通うだけで学力が備わるような、夢があり実のある公立学校をつくって欲しい。そういう面では、条件整備をきちんと行っていかなければ、実現は難しい。研修についても、例えば、2年間の身分保障により、教職大学院で単位や資格を取るなど、アップ・トゥ・デイトの研修を約1割の教員が常に受け、必ず学校現場に戻れるというような形の総合的な教員政策を議論してもらいたい。

委員
 現職教員に更新制が適用されるとなれば、修士課程で修学する現職教員の数は大幅に減ると思われる。これは、現在の修士課程の在り方にも関わってくる可能性が高い。修士課程と更新制をどのように棲み分けるのか、慎重に検討する必要があるのではないか。処遇の改善は大事なことであり、できる限りの努力をすべきだが、更新制は、教育活動を継続できる条件としてあるのだから、その意味では、更新されることが処遇改善に結びつくというのは理論的に難しいので、この辺りについては、もう少し議論が必要である。条件整備について、きちんと検討していかなければ、更新制の実現は難しいので、行政当局に期待されるところが大きい。

委員
 米国のほとんどの州でも行われているように、リニューアルのための更新制が、ある程度内容的に深まったものであれば、上進制とリンクするというのも一つの考え方になる。管理職も含めた指導者層について、いずれは、管理職の資格制度のような、きちんとした準備教育も必要になってくるのではないか。

委員
 社会的に信用されていない教職に社会人を入れて、うまくいけば、教員の専門性とは一体何なのかという問題になる。どのような意図で社会人が入り、どのような成果が上がり、どの程度、どのような社会人を入れれば活性化するのかまで詰め、専門性の問題と社会人の登用の関係を整理する必要があるので、事務局で検討してもらいたい。評価の高い修士課程を大学側に要求し、例えば10年後に、その大学院に進学した場合には更新講習を免除するなど、大学院と更新制の関係についても整理していく必要があるのではないか。多くの教員が大学院修士レベルの力を持つことを謳った教養審第二次答申もあるので、上進制とそれとの整理も必要である。

事務局
 現職教員への更新制の適用については、法制的にどのような形で整理することが可能なのか。現職教員の場合は、終身有効の免許が授与されているので、事後的に更新制を適用させることが、法制的に整理するとどのような考え方になるのか資料として提示できればと考えている。

7.閉会

お問合せ先

総合教育政策局教育人材政策課

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(総合教育政策局教育人材政策課)