特別支援教育について

参考資料 6 「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」(平成13年1月)(抜粋)

第1章 今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方

2 今後の特殊教育の在り方についての基本的な考え方

(2)教育、福祉、医療、労働等が一体となって乳幼児期から学校卒業後まで障害のある子ども及びその保護者等に対する相談及び支援を行う体制を整備する。

 障害のある子どもに対する特別な支援を適切に行うためには、一人一人の自立を目指し、乳幼児期から学校卒業後にわたって、教育、福祉、医療、労働等が一体となって、障害のある子ども及びその保護者等に対する相談と支援を行うための一貫した体制を整備することが必要である。
 このような相談支援体制を整備するとともに、教育、福祉、医療等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、保護者等からの教育・発達相談にきめ細かく対応することによって、保護者等はもちろん、教育、福祉、医療等の関係者の間で、子どもの障害の状態を正確に把握し、子どものもつ能力や可能性を最大限に伸ばしていくためにはどのように接していくのがいいのか、どのような教育や医療、福祉などの支援が必要であり、また可能かといった特別な支援の内容に関する共通理解が図られることとなる。
 また、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームは、個人情報の適切な取扱いに配慮しつつ、こうした教育・発達相談の記録をファイルするなど継続的に活用し、教育・発達相談を積み重ねていくことによって、保護者や子どもと関係者の間で相互理解と相互信頼が培われ、乳幼児期から学校卒業後にわたるそれぞれの段階で、その子どもに適し、かつ、可能な教育や医療、福祉、労働等の具体的な支援の内容が選択されることとなる。
 さらに、子どもに対する特別な支援が行われた後、各分野の関係機関等がその子どもに対して選択された内容が真に適していたかどうかの評価を適切に行い、その評価の結果に基づいて、保護者や子どもと特別の相談支援チームの間で、更に教育・発達相談が行われ、次の支援の選択に生かしていくこととなる。
 以上のように、障害のある子ども一人一人の特別のニーズを把握し、必要な支援を行うため、教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制を整備し、乳幼児期から学校卒業後にわたって、障害のある子どもやその保護者等に対して相談と支援を行うことが必要である。

第2章 就学指導の在り方の改善について

1 乳幼児期から学校卒業後まで一貫した相談支援体制の整備について

  1. 市町村教育委員会は、住民に最も身近な地方公共団体として、教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備すること。また、教育委員会や学校、医療機関、児童相談所、保健所等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、教育・発達相談の機会の充実を図ること。
  2. 国は、各地域において教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制が整備されるようその体制の下で組織される特別な相談支援チームの機能や構成員等について検討すること。
  3. 都道府県教育委員会においては、県段階での福祉、医療等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において福祉、医療等と一体となった相談支援体制を整備し、その成果を域内の各市町村に普及させるよう努めること。
  4. 盲・聾(ろう)・養護学校においては、その専門性や施設・設備を生かして地域の特殊教育の相談センターとして、市町村教育委員会、特殊教育センターや福祉、医療関係機関等と連携しながら教育相談を実施したり、特別の相談支援チームに参加するなどその役割を果たすこと。
  • (1) 障害のある乳幼児に対する早期からの相談に関し、米国では、2~4歳児に対して検査を実施し、障害のある乳幼児に対しては、保護者、医師、保健婦、保健所等のスタッフにより、早期発見プログラムに基づく必要な支援を行うとともに、特殊教育、心理学、ソーシャルワーカー等の多領域の専門家によって個別教育計画が作成されている地域もある。また、英国では、地方保健局が5歳未満児に対して検査を行い、特別な支援が必要であると判断した場合は、保護者の同意を得て地方教育局に連絡し、地方教育局と地方保健局が共同して対応することとされている。
     このように、欧米では、教育、福祉、医療機関等が一体となって早期からの対応を行っているが、我が国では、3歳児健診など医療、福祉機関等を中心に行われており、最近では、聾(ろう)学校等の幼稚部において教育相談を行う取組が活発になってはいるが、教育、福祉、医療等が一体となった早期からの相談体制は必ずしも十分とはいえない。
     また、近年の子どもの障害の重度・重複化や多様化に伴い、保護者等の不安や悩みが増大し、教育、福祉、医療、労働などにまたがる様々な問題について相談を求める要望が強いが、関係機関の連携が十分でないため保護者等がどこに相談すればいいかわからないなど保護者等の要望に十分対応できていない場合がある。
     このため、国、都道府県及び市町村において教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対する相談と支援を推進するための連携組織をつくるなど一貫した体制を整備するとともに、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、保護者等からの教育・発達相談にきめ細かく対応することにより、保護者等はもちろん教育、福祉、医療、労働などの関係者の間で、子どもの障害の状態を正確に把握するとともに、子どもの持つ能力や可能性を最大限に伸ばしていくためにはどのように接していくのがいいのか、どのような教育や医療、福祉、労働などの支援が必要であり、また可能かといったことについて共通理解が図られることとなる。
     また、教育、福祉、医療等の関係者で構成する特別の相談支援チームは、個人情報の適切な取扱いに配慮しつつ、こうした教育・発達相談の記録をファイルするなど継続的に活用し、教育・発達相談を積み重ねていくことによって、保護者等や子どもと関係者の間で相互理解と相互信頼が培われ、乳幼児期から学校卒業後にわたるそれぞれの段階で、その子どもに適し、かつ、可能な教育や福祉、医療、労働等の具体的な支援の内容が選択されることとなる。
     さらに、子どもに対する特別な支援が行われた後、各分野の関係機関等がその子どもに対して選択された内容が真に適していたかどうかの評価を適切に行い、その評価の結果に基づいて、保護者等や子どもと特別の相談支援チームの間で、教育・発達相談が行われ、次の支援の選択に生かしていくこととなる。
  • (2) 市町村教育委員会においては、地域の実態等に応じて福祉、医療、労働等の関係部局と連携しながら、教育、福祉、医療、労働等が一体となって障害のある子ども及びその保護者等に対して相談や支援を行う体制を整備するとともに、教育委員会や学校、医療機関、児童相談所、保健所等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作り、健康診断や育児相談等の場において、教育相談を同時に開催するなどにより、教育・発達相談の機会の充実を図ることが必要である。
     また、教育相談体制の充実を図るため、特殊教育について豊かな経験と知識を有する退職教職員等を教育相談担当者として活用したり、教育相談担当者の研修を充実するとともに、心理学、医学等関係分野の専門家の助言や支援を受けるなどの取組に努めることが望ましい。さらに、障害のある幼児が就園している幼稚園や保育所に、教育相談担当者を定期的に派遣する巡回教育相談を行ったり、幼稚園や保育所の職員と合同の職員研修会を開催するなど関係する機関の職員間の交流を行うことが重要である。
  • (3) 国は、各都道府県内の各地域において教育、福祉、医療、労働等が一体となった相談支援体制が整備されるよう、その体制の下で組織される特別の相談支援チームの具体的な機能や構成員、教育・発達相談の記録の継続的な活用方策、具体的な支援の内容を選択するための手続き、相談支援体制や特別の相談支援チームと就学指導委員会等の機関との役割分担等について検討することが必要である。
  • (4) 都道府県教育委員会においては、こうした国の検討状況を参考にしつつ、県段階での福祉、医療、労働等の関係部局との連携を図り、域内の市町村において福祉、医療、労働等と一体となった相談支援体制を整備し、その体制の下で、教育、福祉、医療、労働等の関係者で構成する特別の相談支援チームのような組織を作るとともに、教育・発達相談を行う等の取組を実施し、その成果を域内の各市町村に普及させるよう努めることが望ましい。
     また、都道府県等の特殊教育センターや教育事務所等の特殊教育担当の指導主事等が、市町村の教育相談担当者に対して定期的に巡回相談を行ったり、都道府県内の教育相談に関する指導者に対する研修を行うなど早期からの教育相談体制の充実のため、市町村教育委員会への支援に努める必要がある。
  • (5) 盲・聾(ろう)・養護学校は、平成11年3月に改訂された盲・聾(ろう)・養護学校学習指導要領等において、地域の特殊教育の相談センターとしての役割が明確に規定されたところである。これまでも、例えば、聾(ろう)学校において早期から聴覚を活用するなどの教育的対応を行うことにより、コミュニケーションの向上が図られるなど早期からの対応を行うことにより、障害のある幼児の能力を効果的に伸ばすことができた事例がある。今後は、盲・聾(ろう)・養護学校は、こうした経験を参考にしつつ、その専門性や施設・設備を生かして、地域の特殊教育の相談センターとして、市町村教育委員会、特殊教育センターや福祉、医療関係機関等と連携しながら巡回相談を含め教育相談を実施したり、学校の教職員が特別の相談支援チームに参加するなどその役割を果たすことが重要である。
     また、盲・聾(ろう)・養護学校や小・中学校では、体験入学や教育相談を実施したり、積極的に学校開放を行うことにより、障害のある子どもの保護者等や一般の人々の特殊教育に対する理解の促進を図ることが望ましい。
     さらに、近年の障害の重度・重複化や医学等の進歩に伴い、早期からの教育の必要性が高まっていることから、地域の実態等に応じ盲・聾(ろう)・養護学校の幼稚部教育の充実を図ることが望まれる。
  • (6) 市町村教育委員会や都道府県教育委員会等においては、保護者等に特殊教育に関する情報を提供するため、教育相談のための常設の窓口を設置したり、電話相談やインターネットによる相談事業を実施するとともに、障害のある子どもをもつ保護者等が情報を交換したり、不安や悩みを解消するため、例えば、子育てサークルの開催やインターネットのホームページの開設、レクリエーションを実施するなど保護者等を支援するための取組に努めることが望ましい。
     また、障害のある子どもや保護者等の特殊教育に対する理解を深めるとともに、周りの人々が障害に対する理解を深め、ボランティア活動への積極的な参加を促していくことも重要である。このため、就学指導の手引き等のガイドブックや盲・聾(ろう)・養護学校等における取組の事例集、ビデオ等を作成して、教員や保護者、一般の人々に配付したり、インターネットで公開するなど様々な方法を用いて特殊教育の情報を幅広く普及することが望ましい。

-- 登録:平成21年以前 --