特別支援教育について

第3章 地域における一貫した相談・支援のための連携方策

1 「相談支援チーム」の設置

 障害のある子どもやその保護者への相談・支援に当たるために、医療、保健、福祉、教育、労働等の各機関や専門家からなる「相談支援チーム」(相談・支援機関のネットワーク)を組織します。

 市町村は、障害のある子どもやその保護者にとって、最も身近な相談窓口となるものであることから、障害のある子どもやその保護者の多様なニーズに応えられるよう、一貫した相談・支援の推進に努めることが大切です。
 また、相談者が真に必要とする適切な対応をするためには、担当者の個人的な価値観を排除し、課題の本質、性質を分析し、合理的・客観的な観点から最善の支援を検討する必要があります。そのため、心理面(子どもがどのように感じているか、家族関係、集団生活への適応等)、医学面(身体的診断、精神医学的診断等)、社会面(家族の置かれた状況等)、行動面(家庭や学校における行動等)の知見や各機関・専門家の持っている情報・知見を統合し、相談者の全体像をつくることから始まります。
 このため、市町村においては、実際に相談・支援に当たる医療、保健、福祉、教育、労働等の関係機関や専門家からなる「相談支援チーム」(相談・支援機関のネットワーク)を組織することが重要です。
 「相談支援チーム」は、各機関が実施している各種の相談・支援の機能についての相互理解を基礎として、各相談者について総合的な評価が行われるよう情報の共有化を図りながら、障害のある子どもや保護者の相談に応じ、適切な関係機関に引き継ぐことができるよう、必要な連携方策を講じていくことが求められます。また、「相談支援チーム」においては、相談・支援機関のネットワーク全体の相談窓口を開設することもできます。

 障害者自立支援法による地域自立支援協議会(以下「協議会」という。)が市町村又は地域ごとに設置されますので、協議会と相談支援チームが連携することが必要になります。また、例えば、協議会にサブ協議会(子ども部会等)を設置する場合は、構成員が重複しますので、サブ協議会やそのワーキング(実働部隊)が相談支援チームの役割を担うことも考えられます。地域の実情に応じた支援体制の工夫が求められます。
 「相談支援チーム」における連携方策の検討や推進に当たっては、関係機関との連絡調整役を担う機関の担当者を位置付けておくことが重要です。例えば、乳幼児期においては、保健センターの職員などがその役割を担うことが考えられます。
 また、学校在学期間においては、教育委員会の指導主事、教育相談員など、教育関係機関の職員がその役割を担うことがあります。
 さらに、関係機関や専門家等の人材が確保しにくい市町村においては、複数の市町村が連携して「相談支援チーム」を組織したり、支援地域や都道府県が支援する体制を整えたりすることが考えられます。
 「相談支援チーム」で決まった方針は、各機関がその方針を遵守することが大切です。見直しが必要な場合は、「相談支援チーム」により、相談者及び支援状況の再評価とそれに基づく支援の方針の決定を行います。

*相談から支援への流れ(例)

1「相談支援チーム」において各機関における相談・支援にかかわる機能・知見に関する情報の共有化、担当者の相互認知

2医療、保健、福祉、教育、労働等の各機関による相談、各専門分野の評価と概括的な見立て、及びこれらに基づく支援

3(相談を受けた機関が単独では十分な支援が行えないと判断した場合)相談を受けた機関の「相談支援チーム」へ評価と支援方策の検討を要請(保護者の了解のもと)

4「相談支援チーム」におけるケース会議(相談者の総合的な評価とこれに基づく対応方針の決定)を開催

5ケース会議の結果を関係機関で共有

6ケース会議の結果を遵守し、各関係機関から適切に支援

7「相談支援チーム」による相談者及び支援状況の再評価とそれに基づく支援の見直し

*「相談支援チーム」の構成員(例)(順不同)

  • 保健師
  • 医師
  • 家庭児童相談員
  • 市町村等の福祉相談担当の職員
  • 相談支援事業所の相談支援専門員等
  • 福祉サービス事業所の職員
  • 地域子どもセンター職員
  • 教育相談員、心理学の専門家、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
  • 幼稚園教員、保育所の保育士
  • 特別支援学校(盲・聾・養護学校)の教員(特別支援教育コーディネーター)
  • 小・中学校等の教員(特別支援教育コーディネーター)
  • 公共職業安定所の職員

 なお、ほとんどの特別支援学校(盲・聾・養護学校)においては、既に早期からの教育相談の取組が行われており、「相談支援チーム」において重要な役割を担うことが考えられます。

【「専門家チーム」との連携】

 平成16年1月に文部科学省が作成した「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」においては、教育委員会に「専門家チーム」を設置することとされています。この「専門家チーム」は、教育委員会の職員、特別支援学校(盲・聾・養護学校)の教員、心理学の専門家、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医師等で構成され、発達障害か否かの判断や、対応方針についての専門的意見の提示が、その役割とされています。
 「専門家チーム」は、都道府県や指定都市レベルでの設置が進められており、「相談支援チーム」における相談・支援に当たっては、必要に応じて、「専門家チーム」との連携協力を図る場合があることに留意する必要があります。

【「就学指導委員会」等との連携】

 市町村の教育委員会においては、子どもの就学先の決定に当たり、教育学、医学、心理学等の観点から総合的な判断を行うため、調査・審議機関として「就学指導委員会」等が設置されています。
 就学指導に当たっては、「就学指導委員会」における専門家による適切な判断や、保護者からの意見聴取が義務付けられていることから、就学時期だけに関与するのではなく、早期からの相談を実施したり、個別の支援計画、相談・支援のための手帳やファイルなどにより、早期からの支援の状況を把握したりするなど、十分な連携が期待されます。

-- 登録:平成21年以前 --