特別支援教育について

国立大学法人筑波大学成果報告書概要

1.テーマ

学習障害を中心とした発達障害に関する、教員を目指す学生や現職教員の専門性の向上(学習障害に関する学生や教職員育成プログラム開発事業)

 

2.問題意識・提案理由

発達障害の中の自閉症や注意欠陥多動障害などに関しては、十分ではないが徐々に学校教員の中で理解が深まり、対応できる教員が多くなっている。
一方、学習障害については、定義については広く知られているものの、実際の診断評価や対応方法に関してはまだ十分に理解されていないのが現状である。
学習障害の中核的存在である文字の習得が困難な発達性ディスレクシアの出現頻度は読み、書き障害合わせて8%弱と発達障害の中で最も頻度が高く対応が望まれる。

 

3.目的

発達障害の中で最も出現頻度が高い学習障害に関して、最新の研究成果をもとに、教員を志す学生に対して学習障害児への効果的支援ができるように講義、実習を行う。また、現職の教員に対しては講義を行うのみではなく、効果的な支援が実際にできる熟練した専門化的教員を育成し、他の職員に対して指導的立場に立ち、学習障害児への支援について普及してもらうことを目的とする。

 

4.主な実施内容

学習障害の講義は、下記の4種類から構成されている。
すなわち学習障害概論、学習障害検査法、学習障害支援法、及び発達障害概論である。
船橋市においては教育委員会との連携の下、通級指導教室担当教員を対象に、3日間に分けて、学習障害概論、学習障害検査法、学習障害支援法の講義を行った。
この3日間の講義は、事業2年目以降行われる講義の土台として実施された。

また、同市では、幼稚園教員と保育士を対象に、発達障害全般に関して概説した。
つくば市においては、教育委員会との連携の下、広く小学校、中学校および幼稚園の教員を対象に、学習障害概論の講義を行った。
筑波大学においては、教員を目指す学生に対して、必修科目「障害児指導法」の1コマにおいて、学習障害に関して概説した。
また、集中授業「学習障害特講」を開講し、2日間かけて学習障害の概論の講義を行った。
それぞれの講義の前後において、テストおよび質問紙調査を実施し、どのような形式の講義を行うことが学習障害に関する知識の習得や関心・理解の向上に効果的であるかを比較検討した。また、これまでに発達障害児に関わってきた経験や教育に対する心構えなども聴取し、学習障害に関する知識の獲得と普及にどのような影響を与えるかを比較し好ましい普及方法に関して検討した。
来年度以降の普及活動の基礎的調査として、船橋市の小学校において読み書き習得の実態調査を行った。


5.主な成果と課題

全ての講義の前後において実施したテストの点数が有意に上がっていたことから、全ての講義が学習障害および学習障害児への対応方法に関する専門性の向上に効果的であることが示された。
また、発達障害や学習障害への関心や理解の向上にも効果を示した。
一方で、講義の実施時間や対象者によりその変化に違いが見られ、講義時間が十分に確保されている場合により理解度が増すことがわかった。本事業は年度途中から開始されたため、教員養成プログラム、現職教員研修プログラムいずれにおいても、一年を通しての養成、研修プログラムの実施が難しく、講義の多くが、第一段階である学習障害概論までの実施となった。
また、多くの時間をかけた研修が実施できず、受講した教員からも「講義が短すぎた」との指摘がなされた。
そのため、次年度以降は、早い段階で各教育委員会と年間計画を立てて、十分な時間をかけた講義を実施することが必要となる。
また、今年度は、ほぼ同じ講義内容で数回の講義を実施して、誰にどのような講義を実施するのが効果的であったかを比較・検証するにとどまり、細かな講義内容については検証しきれていないことが課題として挙げられた。
そのため、次年度の課題としては、映像を用いた講義や、その映像教材を広く配布することで、学習障害と学習障害児への適切な支援の普及効果を検証することが必要であると思われる。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

-- 登録:平成26年10月 --