制度部会(第19回) 配付資料

1.日時

平成18年6月30日(金曜日) 16時~18時

2.場所

三田共用会議所 第4特別会議室(4階)

3.議題

  1. 認証評価の現状と課題について 【意見発表】生和秀敏氏(財団法人大学基準協会 相互評価委員会委員長)、柳井道夫氏(財団法人大学基準協会 専務理事)、関根秀和氏(財団法人短期大学基準協会 第三者評価委員会委員長)
    【自由討議】
  2. その他

4.配付資料

5.出席者

委員

 安西祐一郎(部会長),相澤益男(分科会長),金子元久,木村孟の各委員
臨時委員
 荻上紘一,黒田壽二,佐々木正峰,佐藤弘毅,田中成明,長田豊臣,中津井泉,森脇道子の各臨時委員
専門委員
 雀部博之,光田好孝,吉田文,米澤彰純,米山宏の各専門委員

文部科学省

 徳永高等教育局担当審議官,金森私学部長,清木高等教育企画課長,中岡大学振興課長,片山私学行政課長,絹笠国立大学法人評価委員会室長,佐藤専門職大学院室長 他

6.議事

 (□:意見発表者,○:委員,●:事務局)

(1)事務局から,「認証評価の現状と課題」について,森脇委員より,平成18年5月15日に開催された「評価機関の認証に関する審査委員会」での主な議論について説明があった後,質疑応答があった。質疑応答の内容は以下のとおりである。

○ 専門職大学院の分野別評価に関しては,法科大学院以外は未着手であるが,一方では既に修了者が出ている。文部科学省として,分野別評価についてどのように考えているのか。評価団体が設立されるのを待っているだけなのか。事前チェックから事後チェックへの移行という流れの中で,このままの状況が続けば,事後チェックが機能しないうちに,従来の設置基準では認められないような大学がますます増えるのではないか。法科大学院は,職能団体が評価団体を設立しているが,その他の分野でも同様の動きはあるのか。また,文部科学省として,そのような動きをどの程度支援していこうと考えているのか。

● 専門職大学院制度が導入されることとなった中央教育審議会の答申の段階では,専門職大学院制度と認証評価団体の存在は表裏一体であるとして答申された。しかしながら,具体的な制度改正に当たっては,認証評価団体がない場合であっても,外国の認証評価団体の評価を受けること,あるいは他大学の職員等による定期的な検証を行い,その結果を公表することで認証評価の代わりができることとした。文部科学省としては,制度の導入を提言した中央教育審議会の答申を踏まえて,認証評価団体を設立し,それによる評価を実施することがもっとも望ましい姿であると考えている。その意味で,職能団体と大学関係者が一体となって,認証評価団体を設立することが望ましいと考えている。分野によっては,評価団体設立の動きがあるようである。また,「法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム」を通じて,認証評価の確立・実施に向けた取り組みに対して,形成支援経費を措置している。

(2)「認証評価の現状と課題」について,有識者から意見発表があり,その後,質疑応答が行われた。意見発表と質疑応答の内容は以下のとおりである。

【生和秀敏氏(財団法人大学基準協会相互評価委員会委員長)の意見発表】

 大学基準協会の評価の目的は,1.大学の改善・改革を支援すること,2.自己点検・評価の客観性・妥当性を保証すること,3.大学の質を評価し,対社会的にそのことを保証することの3つである。1が当初の設置目的であったが,次第に3の要素が強くなっている。また,当協会の評価は自らが定めた大学基準に基づき行い,典型的なピア・レビューを60年間に渡り実施し,その結果を国際的な質保証ネットワークに対して公表している。認証評価機関になったことに伴い,評価結果を全て公表することが義務づけられたため,対社会的な質保証という側面が強くなった。そのため,定量的評価を中心に評価をせざるを得なくなってきている。さらに,ボランティア機関から公的評価機関への変化に伴い,評価委員に戸惑いが見られる部分もある。しかしながら,認証評価は,大学の評価の部分集合に過ぎないと考えている。
 評価基準は,大学基準をもとに学士課程基準,修士及び博士課程基準,専門領域別基準を設けている。例えば,経済学や農学という領域について,標準的な教育モデルを提示していくことが,今後当協会が力点を置く領域であると考えている。今年の評価体制においては,判定委員会と相互評価委員会に参加している評価委員は約600名という膨大な数になる。これは今後の認証評価制度を考えていくときに,非常に重要な問題だと考えている。評価項目は現在15項目あり,やや多いため,整理することが今後の課題となっている。評価基準は,水準評価と達成度評価が中心である。水準評価とは日本の各大学の悉皆調査を参考にして水準を定めている。今後,国際化への対応が課題となるが,この水準についても,改訂が必要であると考えている。また,現在,全ての認証評価機関が各大学が掲げる目標・目的の達成度を評価するという方法をとっているが,これは非常に困難がある。各々の大学が掲げる目標・目的に対しては統一した基準が決めにくい。一方,認証評価機関として各々の大学が掲げている基準を,別の社会的な質保証の基準に合わせて,調整を図ることは困難である。これも今後の認証評価制度の大きな課題であると考えている。評価基準は3段階となっている。大学として備えなればならないもの(A群),可能な限り強く要求するもの(B群),大学が独自に判断するもの(C群)と分けているが,認証評価機関として社会的な質保証の観点から,A群,B群に重点を置いた評価をせざるを得ないのではないか。評価作業の中では現地視察と意見交換を重要視している。
 評価結果については,各大学の長所をできるだけ挙げるようにしている。これは,大学の自己改革を支援するという観点からである。これは適否という認証評価よりもより踏み込んだ大学の支援という観点で当協会が活動している証でもある。
 今後の課題については,まず,大学を巡る状況の変化に伴う大学基準の見直しが挙げられる。また,現在,評価委員登録制度により約1,200名を各大学から推薦してもらっているが,本年度は約600名で50足らずの大学の評価を行っている。今後,評価を受ける大学が増えていくと,日本の大学教員は,常に評価しているかされているかの状態になり,果たして,この状況が大学教育の活性化に本当につながるのかと危惧している。そして,何よりも評価者の研修が今後の大きな課題であると考えている。そのためにも,他の認証評価機関との連携について考えなければならない。
 認証評価制度自体の課題としては,1.複数の認証評価機関の不揃い,2.認証評価制度が社会的な質保証につながるのか,3.市場の評価に勝る評価は可能か,4.大学の質的向上に資するのか等が挙げられる。1については,評価機関間の違いを前提としているが,可能な限り評価機関同士で共有できる部分を探し,その上で各々の特徴を明確にすべきではないか。2については「社会的な質保証」とは何かという課題がある。「社会的な質保証」をどのレベルに求めるのかによって社会的な質保証の在り方も変わってくるのではないか。3については,既に学生あるいは社会と大学との間で市場の評価による格付けが行われている。市場の評価に勝る質の高い,内容のある評価を行わなければ,認証評価制度を維持することができなくなるのではないか。そして,認証評価制度が大学の質的向上に資するためにも,それを検証する手段・方法を確立していくことが,今後の大きな課題であると考えている。

【柳井道夫氏(財団法人大学基準協会専務理事)の意見発表】

 全般的な問題として,自己点検・評価の意義が不徹底であり,自己点検・評価の自主性・自律性が低下をしていると感じる。また,自己点検・評価に対する準備不足も否めず,継続的な改善・改革・向上につながりにくくなっている。また,マスメディアの対応の特徴として,評価結果のネガティブな面のみを取り上げている。そのため,評価書の記述が消極的になってしまい,これで本当に大学の質的向上につながっていくのか疑問を感じる。
 技術的問題としては,年度ごとに異なる評価申請大学数が挙げられる。今年度になって急速に申請数が増えている。まだ評価を受けていない大学数を勘案すると,さらに今後申請数が増えると予想される。これは評価機関にとって大変な負担になる。本年度は約600名の評価委員で評価を行っているが,今後,評価委員の確保も大きな問題となってくる。また,評価委員の人数が多くなればなるほど,評価の一貫性や均一性を保つことが難しくなってくる。そのためにも,評価者の研修の充実を図る必要があるが,現状では何日にもわたる長時間の研修の実施は困難である。
 大学基準協会の評価は,自己点検・評価を重視し,自主性・自律性を尊重する観点から,自己点検・評価報告書の字数制限をしていないが,これが評価者の負担になっている。また,専門分野別評価と全学的事項評価の総合的な評価を行っているが,分野別評価に踏み込まずに教育評価を行うことがどこまで可能なのかについては課題である。また,完成年度に達していない学部がある場合には,完成年度に達した際に「完成報告書」の提出を依頼しているが,昨今,大学の改組が頻繁に行われているため,評価が困難になっている。また,大学に継続的な改善を求める評価も当協会の考え方の一つであり,自己点検・評価報告書の中に将来の改善・改革・向上計画等の記述を要請している。しかし,当協会の会員にならず,1回限りの評価を申請してくる大学には,それがうまく機能せず,3年後に「改善報告書」を提出してもらうことも困難である。水準評価については,大学の規模が多様であり,分野も多様であるため,社会の様々な分野で納得してもらえるような評価結果の提示の仕方にしていけるのかが今後の課題である。
 今後の方向性については,認証評価制度の目指しているものは何かという問題がある。機関評価で最低基準の確保を目指すのか,その上で世界レベルの競争を目指して教育研究の質を問うところまで行うのか,当協会としても検討しなければならない。また,教育評価については,学生が到達した絶対値としての成績ではなく,どれだけ伸びたかということを考えざるを得ないと考えており,この点でも,更なる工夫が必要であると考えている。さらに,「評価疲れ」ということが言われるようになっている。また,様々な場面で同じ者が(いくつもの評価機関で同じ評価者が,また,いくつもの競争的資源配分のための評価者が)評価するという実態がある。より多くの評価者の協力がますます必要になると言える。日本には,大学を評価するという文化が定着していないが,時間が経てば解決する問題ではないと考える。今後,評価に関する様々な課題を解決することが重要と考える。

【関根秀和氏(財団法人短期大学基準協会第三者評価委員会委員長)の意見発表】

 マーチン・トロウ氏の『高度情報社会の大学』によると,評価の発生源が内部か外部か,評価の機能が支援型か価値決定型かにより,大学の評価は4つに類型できるとされている。これを今日の状況に当てはめると,内部発生・支援型評価が,内部の自発的な意思に基づいて,自らの大学の教育改善をどこまで進めるのかという問題意識による「自己再組織性」,内部発生・価値決定型評価が,当該の法人あるいは大学の中での「内部のプライオリティ」に対する順序づけである。現在,我々が遭遇している評価は,外部に発生源があるもので,その中でも支援型評価が,いわゆるアクレディテーションに一番近いものであり,価値決定型評価が公的質保証と言えるのではないか。また,同書の中で同氏が高等教育システムの組織化に対する立場についても取り上げている。大学を業績主義により一元論的に捉えているのが,いわゆる「エリート型の大学」である。また,多元論的に捉えているのが,昨年の中央教育審議会答申でも言われている大学の「機能別分化」ではないか。一方,平等主義により多元論的に捉えているのが,「高等教育全体の多層化」であり,一元論的に捉えているのが,「民衆への回帰」である。短期大学の発祥理念はまさにここにあり,我々は,短期大学の評価をするに当たり,この視点を失わないような評価を行っていきたいと考えている。また,横軸に評価の方法をとり,縦軸に公的なものかどうかの指標をとって考えてみると,第三者評価はそれについて議論していた当初から変化し,現在では,評価基準に基づいた,公的質保証を重視する方向にあり,各評価機関もその流れに追従しているようである。国際的に大学の水準を維持してためにも認証評価は重要であるが,短期大学の発祥の理念をもとに,達成度評価により自己改革を支援する部分を残しながら,評価を進めたいと考えている。
 機関別評価とは何かについて,我々は議論を重ねてきた。当協会では,短期大学の機関別評価のための評価領域として10領域を定めているが,全体としては,プロセス評価の方に傾かざるを得ない。しかし,高等教育あるいは大学がその中心に置くべきものはSLO(Student LearningOutcomes)ではないかと考えている。よって,これとの関係で全て項目の様態が問われるような評価を行いたいと考えている。当協会では,10の評価領域を設定し,その評価領域の下に42の評価項目を設定し,さらにその下に179の評価観点を設定している。また,評価のシステムの構築に向けて13ものプロセスを経てきた。
 自己点検・評価を実質化するため,当協会ではその責任者としてALO(Accreditation LiaisonOfficer:第三者評価連絡調整責任者)を設定し,各短期大学の中に置き,自己点検・評価を実質化させるとともに,ALOと当協会との間で連携を図っている。評価の実施に当たっては,5人1組で評価チームを作り,書面調査と実地調査を行っている。その際,評価委員を4つのカテゴリーに分け,チームを編成している。30校の評価を行うために,当協会も150名の評価委員を必要とし,評価を行う上での訓練にかなりの時間を要した。
 評価文化の形成に向けて取り組んでいることは,まず,評価委員に対して領域別評価に先立ち,個々の項目評価を検討していく過程で明らかになった当該評価校が抱えている課題は遠慮なく指摘することである。また,指摘が糾弾ではなく,あくまでも当該評価校の将来の質的向上・充実に資するものだということを強調している。そして,評価校にとって意味のある評価にするためにも,評価者に対して,評価に臨む使命感,目的・方針を理解させ,具体的に自己点検・評価報告書の書面調査と実地調査にあたる姿勢の共有化が必要である。さらに,ピア・レビューにおける評価は,評価を受ける側と行う側の出会いの場であり,評価結果は評価を受ける側にとって,成果の象徴と考えるべきである。
 今後に向けた課題としては,各大学の自己点検・評価の実質化が必要である。そして,個々の評価結果を明確なものとするためにも,評価過程の整備が必要である。さらに,領域別評価結果を分析の観点から,評価委員が個々の大学人としての視点ではなく,それを越えた評価員としての視点を熟成させていく必要がある。

【3氏の意見に対する質疑応答及び認証評価の現状と課題に関する意見交換】

○ 認証評価結果の公表について,水準評定と達成度評定については,社会的には公表せず,大学に対するフィードバックのみであると理解として良いか。なぜ,水準評定と達成度評定を認証評価の作業の中に組み込みながら公表しないのか。

□ 認証評価では,適否の最終的な報告と各評価項目についての詳細な概要や意見を公表している。その際,水準評定及び達成度評定の各項目の結果は,各大学のみに公表している。その理由は,現段階において,各評定が各大学にとっては意味があるが,一般社会にとって必ずしも意味があるとは考えていないからだ。公表に伴い,評価のネガティブな部分のみが取り上げられており,評価の実体や内容については各大学にしか分からない部分がある。そこで,大学の長所を積極的に示すようにしている。しかし,将来に向けて,どのように扱うかについては,課題であり,公表することも必要かとも考えている。

□ 短期大学基準協会の評価において,項目別評価やその観点の評価についてまで公表するとなると,当該大学が抱えている問題を共有化していくという作業がやりにくくなることが考えられる。公表により,評価書に率直な評価が表しにくくなる。一方,当協会でも,公開については,今後検討すべき課題であると考えている。

○ ALOはどのような方に依頼しているのか。
 また,専門分野別評価と機関別評価の関係について,どのように考え,実際にどのように実施しているのか。

□ ALOは副学長あるいはそれに準ずる職位の者で,一定期間,短期大学全体の教育あるいは管理運営に携わっている者に依頼している。

□ 専門分野別評価と機関別評価の関係については,専門評価分科会と全学評価分科会とに分け,全学評価分科会では機関別評価を行っている。また,専門評価分科会では,学部等を単位として,教育研究活動の内容について評価を行っている。両者の評価結果を相互評価委員会・判定委員会が取りまとめ,最終的な評価を行っている。

○ 相互評価委員会・判定委員会は,全ての評価基準に関わるのか。それとも一部なのか。

□ 基本的には全てに関わっている。特定の学部等に関する事項は,専門評価分科会の答申を得て,相互評価委員会・判定委員会にて取りまとめている。

○ 我々の大学はこれまで複数の認証評価機関の評価を受けているが,評価を受ける側として一番問題だと感じるのが評価者の資質である。評価委員をどのように訓練していくのかが最大の課題であり,評価委員には集中的な訓練が必要であると考える。このままでは,7年以内に全ての大学を評価するのは非常に困難であり,1つの評価機関で600名の評価委員を動員して評価を行っていたのでは,大学の教員全てが評価委員になるような状況であり,今後,この問題をどのように解決していくかが課題である。
 評価項目については,各機関によって様々な観点から評価を行っており,それ自体は問題ではないが,評価に当たり,各評価機関は自らの評価の方向性を明示し,評価委員はそれを理解した上で評価を行うことが重要である。また,評価委員の養成が最も重要であると考えるが,この問題については,文部科学省としてどのように考えているか。

● 評価委員については,各認証評価機関が自ら評価委員を確保し,その質の向上を図ることが基本であると考えている。一方,研究委託事業費として1億5,000万円を計上し,各認証評価機関に対する財政的支援を行っている。各認証評価機関がこれを利用し,評価委員の質の向上に取り組んでいる。

□ 評価委員の質の向上については,短期間の訓練ではなく長期間にわたる訓練が必要である。しかし,600名もの評価委員に対して長期間の訓練を行うことは事実上困難である。その背景には,日本にはまだ大学を評価するという文化が定着していないということが言えるのではないか。また,評価委員にも能力に限界があり,質の確保と問題と人数の確保の問題で板挟みになっている。

□ 短期大学基準協会の場合,平成17年度に評価を担当した委員は,平成18年度の評価委員には採用しないとの方針を採っている。できるだけ多くの者に評価作業を経験させるためにこのような方法を採っている。これにより,平成19年度からは経験者と未経験者が半分くらいの組み合わせになると考えている。
 異なる価値観を持つ評価委員が一定の価値観をを共有するためには,相当努力が必要であり,当協会では,本年度の評価委員の研修会は去年の倍の時間を確保している。

○ 認証評価機関が個々に特色を出しながら評価を行うことは結構だが,一方で労力の重複が発生しているのではないか。評価委員の訓練や情報交換等を目的とし,認証評価機関同士が緩やかに連携していくことが必要ではないか。また,国として,そのような動きを支援していくつもりはあるのか。

● 個人的には,アメリカのアクレディテーションの仕組みも試行錯誤を経て現在の姿になっており,日本も今後徐々に仕組みを作る必要があると考えている。その中で,各評価項目について詳細な評価を実施しようとするため,多数の評価委員が必要になるのではないか。その意味では,大学分科会等において,質保証のために最低限どのような基準が必要かについて,議論する必要があるのではないか。また,引き続き,各認証評価団体の質の向上のために,必要な予算を確保し財政的支援を行ってまいりたい。

○ 現在の認証評価制度は達成度を主観的にボランティアベースで評価するものである。そのため,さらに評価を簡素化してしまうと,評価として,社会からの信頼が得られなくなるのではないか。そのためにも,ある程度細かく評価せざるを得ないのではないか。現在の評価システム自体が労力を使うような方向に向いており,この流れを止めるには,まずシステムの大元に立ち返って考えてなければならないのではないか。

□ 果たして認証評価制度がこのまま続いていくのかについては疑問がある。例えば,学生定員や財務状況については,データを見れば判断できるものであるにもかかわらず,それが実際の評価の中で大きな役割を果たしている。本当にこの制度が大学の質を保証しているのか疑問がある。中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」でも言われているように,大学をいくつかの機能に分け,それに合わせて基準や評価の標準を決めていく必要があるのではないか。現状のままでは,社会も評価に対して関心を示さなくなる。国の政策として,どのように認証評価制度を維持し,発展させるのかについて議論する必要があるのではないか。

○ アメリカのアクレディテーションも基本的な面で変質しつつある。アメリカのアクレディテーションは,達成度を自主的評価することで,大学全体の質を向上さるという仕掛けであった。しかし,1970年代頃からのCOPA(The Council on Postsecondary Accreditation)による奨学金制度との結びつきや,1980年代頃からの大学のユニバーサル化により,学生が流動化・多様化する中で,学生のモチベーションが落ちた。それに対応して,大学が社会に対して有益であることを示さなくければならなくなった。その答えがアクレディテーションの仕組みの中から見いだせるかについては,かなり継続的に議論され,現在では具体的な提言が出ている。例えば,インプットに関して,かなり明確にデータベースを作ることについては,1990年頃から連邦政府がデータベースをつくり,現在では巨大なものとなっている。また,社会への説明責任を果たすには,アウトプットが必要であるとの認識のもと,アウトプットの検索が可能となった。最近では,アウトプットの能力ではなく,学生がどれくらい勉強しているのか,カリキュラムについてどう思っているのかといった,学生が大学をどう見ているのかについて,大規模な調査が行われている。また,計測できるものは計測するという動きもあり,何百名もの評価委員に詳細に訓練を行うよりは簡単なのではないかとも言われている。現在の枠組みで,ボランタリーベースにこだわってしまうことが,評価を硬直的なものにし,多大な労力を使う結果になっているのではないか。

○ 認証評価システムをよりよいものとするためにも,当部会でも議論する必要がある。また,評価機関に対する財政的な支援が必要である。特に評価委員に対する研修は,よりよい評価を行うためにも重要である。

○ 認証評価の根本になっている各大学の自己点検・評価の方法が,実施当初から比べて改善されてきたのかについては疑問がある。自己点検・評価の方法の改善が認証評価の改善にもつながっていくのではないか。例えば,各大学の自己点検・評価の実施が評価委員の研修にも役に立つのではないか。各大学の自己点検・評価の実施状況について整理する必要があるのではないか。

○ 自己点検・評価については,回数を重ねる度に合理的に評価できるようになるのではないか。その際,PCDAサイクルをどうするかが重要である。それには,スタッフが十分な訓練を積む必要があるが,回数を重ねることで機能してくるのではないか。
 現在行われている機関別評価は,事前規制から事後チェックへという流れで行われているが,国際的な質保証を考慮すると,機関別評価だけでは不十分ではないか。機関別評価と分野別評価やプログラム評価との分担をどうするかについて検討しなければならない。また,認証評価機関が正確な評価を行わないと,認証評価機関の社会的地位が下がる恐れもある。評価機関に対する評価を行わなければ,民間が実施する評価でもいいのではないかとかいう社会的評価が生じる恐れがある。これについては,今後検討していかなければならないのではないか。

○ 今の国際的な質保証については,専門職大学院,特にビジネス系の専門職大学院の評価の問題と関係がある。分野別評価については,評価機関の自主的な発生を待つということであったが,ビジネスの領域はグローバル化が進んでおり,日本の評価機関で評価を受けなくても,外国の評価機関の評価を受ければ良いという議論が出てくるのではないか。事実,日本でもアメリカの評価団体(AACSB)からの評価を受けることで,ビジネス系大学院の社会的地位を上げようとしている例もある。一方,国内の評価機関が自国内の大学院の評価ができないという状況が出てくることも考えられる。専門職大学院の分野別評価の問題は今後も検討しなければならない問題ではないか。

○ 国際的な質保証とは,高いものを目指すという観点がある一方で,最低限,日本の最低基準を保証するという点も重要であり,むしろ後者が国際的な質保証では重要視される。最低限の質保証とは簡単に思えるが,実際に評価に携わると,これが如何に大変かということを感じる。
 また,評価文化の醸成に関しては日本は現在その最中である。評価が信頼を得るために,より精緻なものが必要ではないかとの意見もあるが,評価機関内部では,むしろ如何に簡素化するかを議論している。なるべくたくさんの方々に評価を理解してもらうためにも,むしろ簡素化しなければならないと考えている。

○ 評価を巡る動きの全体を俯瞰しながら,よりよい評価の在り方を検討していくことが当部会の役割ではないか。

(3)事務局から,「再チャレンジ推進会議『再チャレンジ可能な仕組みの構築(中間まとめ)』」,「総合科学技術会議『平成19年度の科学技術に関する予算等の資源配分方針』」,「経済財政諮問会議『経済成長戦略大綱』」,「平成18年度上半期構造改革特区評価(高等教育関係)」について,報告があった。

7.次回の日程

 次回は,平成18年7月12日(水曜日)10時30分~12時30分に開催することとなった。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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