第1節 文化芸術振興の意義と文化芸術振興施策の総合的な進展

3.文化芸術振興基本法成立後の文化芸術振興施策の展開

(1)文化芸術に関する法令の整備

 文化芸術振興基本法の成立後,文化芸術に関する法令の整備が一層進んできています。特に,文化芸術施策の基盤としての重要性がますます増大している知的財産分野においては,平成14年に「知的財産基本法」が制定され,これに基づく「知的財産推進計画」を毎年策定しています。また,16年には,「コンテンツの創造,保護及び活用の促進に関する法律」が制定され,コンテンツの創造,保護,活用の促進に関する基本理念が定められました。
 著作権法については,実演家への人格権の付与,映画の著作物の保護期間の延長,音楽レコードの環流防止措置,放送の同時再送信の円滑化や罰則の強化など,14年以降,4度にわたって改正されています。
 また,平成17年には,文字・活字文化の振興に関して基本理念を定める「文字・活字文化振興法」が制定されました。
 文化財の保護に関しては,平成16年に,「文化的景観」や「民俗技術」を新たに保護の対象にすることなどを内容とする文化財保護法の改正が行われ,17年4月に施行されました。
 さらに,平成18年6月には,「海外の文化遺産の保護に関する国際的な協力の推進に関する法律」が制定・施行されています。

〈法令の整備一覧表〉

  • 著作権法の一部を改正する法律の施行(平成15年1月,16年1月,17年1月,19年1月)
  • 知的財産基本法の施行(平成15年3月)
  • コンテンツの創造,保護及び活用の促進に関する法律の施行(平成16年1月)
  • 文化財保護法の一部を改正する法律の施行(平成17年4月)
  • 文字・活字文化振興法の施行(平成17年7月)
  • 海外の文化遺産の保護に関する国際的な協力の推進に関する法律の施行(平成18年6月)

(2)文化審議会における審議

 平成13年1月の中央省庁等改革により,文化振興に向けた政策立案機能を強化するため,文化庁に文化審議会が設けられました(参照:https://www.bunka.go.jp/1singikai/(※文化庁ホームページへリンク))。文化審議会では,文化行政における政策の企画立案機能の充実を図るため,文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項について,幅広い観点から調査審議を行います。
 本審議会では,これまでに,七つの答申や提言・報告を行い,文化庁では,これらを受けて各種施策に取り組んでいます。

〈これまでの主な答申等〉

  • 1「文化を大切にする社会の構築について〜一人一人が心豊かに生きる社会を目指して(答申)」(平成14年4月)
  • 2「文化芸術の振興に関する基本的な方針について(答申)」(平成14年12月)
  • 3「これからの時代に求められる国語力について(答申)」(平成16年2月)
  • 4「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について(提言)」(平成16年2月)
  • 5「地域文化で日本を元気にしよう!(報告)」(平成17年2月)
  • 6「文化芸術の振興に関する基本的な方針の見直しについて(答申)」(平成19年2月)
  • 7「敬語の指針(答申)」(平成19年2月)

 文化審議会には,国語分科会,著作権分科会,文化財分科会,文化功労者選考分科会の4分科会のほかに,文化政策部会などが置かれ審議が行われています(図表1-2-3)。

図表●1-2-3 文化審議会組織図

(3)各種施策の充実

 文化芸術振興基本法の成立後,次のような施策の充実に取り組んでいます。

1こどもの文化芸術体験活動の推進

 「本物の舞台芸術体験事業」,「学校への芸術家等派遣事業」,「伝統文化こども教室事業」などの事業を通じて,数多くの公演等が学校や文化施設などにおいて実施され,子どもたちが多様な文化芸術活動に触れることができました。

2地域における文化芸術の振興

 「関西元気文化圏」・「丸の内元気文化プロジェクト」・「九州・沖縄から文化力プロジェクト」といった「文化力」で地域を元気にする取組や,文化ボランティアの推進など,地域における文化芸術の振興に関する施策を充実しました(参照:本節コラム4)。

3メディア芸術の振興

 文化庁メディア芸術祭が来場者,応募作品ともに増加傾向にあり,「映画振興に関する懇談会」による提言「これからの日本映画の振興について−日本映画の再生のために−」(平成15年4月)を受けて,16年度から,「『日本映画・映像』振興プラン」を総合的に推進しています(参照:第2部第9章第1節1(1)2第2部第9章第1節2(1))。

4国際文化交流の推進

 文化庁長官の私的懇談会である「国際文化交流懇談会」の報告書(平成15年3月)(参照:https://www.bunka.go.jp/1kokusai/kokusaikondankaihoukoku.html(※文化庁ホームページへリンク))や内閣総理大臣の私的懇談会である「文化外交の推進に関する懇談会」の報告書(17年7月)(参照:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bunka/(※首相官邸ホームページへリンク))を受けて,各種施策を着実に実施しています。例えば,15年から国際文化フォーラムを開催しているほか,芸術家,文化人など,文化芸術に携わる方を,一定期間「文化庁文化交流使」として海外に派遣するなど活発に活動を展開しています(参照:第2部第9章第5節1(1))。また,いわゆる「韓流ブーム」を受けて,日韓文化交流は,2005年(平成17年)の日韓友情年で一層の盛り上がりを見せました。

5国立の文化施設の充実

 平成16年に,国の重要無形文化財「組踊」(注)をはじめとする沖縄伝統芸能の保存振興と,伝統文化を通じたアジア・太平洋地域の交流の拠点となる「国立劇場おきなわ」が開館しました。同年,「国立国際美術館」も大阪中之島に移転オープンしています。17年には,「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」という新しい視点を持ち,アジア諸国との相互理解を深めることを目的とした「九州国立博物館」が開館しました。さらに,19年1月には,国内最大級の展示スペース(14,000平方メートル)を生かし,全国的な規模の公募展覧会への施設の提供や,多彩な企画展覧会の開催,美術に関する情報の収集・提供を目的とした「国立新美術館」も開館し,我が国の文化発信のための文化芸術拠点が着実に整備されています(参照:第2部第9章Topics 1)。

  • (注)組踊
     組踊は,沖縄独自の音楽舞踊劇で,抒情的な琉歌を三線で歌いあげて登場人物の心理・心象を描出し,舞踊家(役者)は,科白(しぐさ・せりふ)をもって物語の筋を展開させる。

前のページへ

次のページへ