第5節 国際文化交流を通じた日本文化の発信と国際協力への取組

 国際化の進展に伴い,我が国は国際的な文化交流を通じて世界の人々の相互理解を増進し,国際平和と自由な世界の実現に貢献していくことが求められています。また,21世紀の国際社会では,文化芸術の魅力によって世界の国々を引きつけることのできる「文化力」(ソフトパワー)が重要になってきています。特に,海外でも評価の高い我が国のアニメ,マンガ,映画などメディア芸術を中心に海外への情報発信が求められています。
 文化庁では,文化芸術振興基本法や,それに基づき策定した政府としての基本方針を踏まえ,世界に誇ることができる芸術の創造及びその国内外への発信,文化芸術の国際交流の推進,海外の文化遺産保護への協力などを通じて,文化芸術立国の実現に向けて施策の充実に取り組んでいます。

1.日本文化の発信による国際文化交流の推進

(1)文化庁文化交流使事業

 文化庁文化交流使事業は,芸術家,文化人,文化芸術に携わる人々を,一定期間「文化交流使」として指名し,世界の人々の日本文化への理解の深化や,日本と外国の文化人のネットワーク形成・強化につながる活動の展開を図ることを目的とした事業です。「文化交流使」の活動には,(1)日本在住の芸術家,文化人が海外に一定期間滞在し,講習や実演などを行う「海外派遣型」,(2)海外在住の日本文化に深い知見を持つ芸術家や文化人が講演や実演などを行う「現地滞在者型」,(3)公演等で来日する諸外国の著名な芸術家が日本滞在期間を利用して学校などを訪問して実演・講演等を行う「来日芸術家型」の三つの類型があります。
 平成18年度は,「海外派遣型」文化交流使として7名,「現地滞在者型」文化交流使として1名,「来日芸術家型」文化交流使として8組を新たに指名し,能楽・人形浄瑠璃・文楽・日本舞踊・華道といった日本の伝統文化から音楽・演劇・メディア芸術まで様々な分野で活躍中の内外の文化人・芸術家の方々による国際文化交流と日本文化の発信活動を展開しています(図表2-9-16)。
 また,平成18年3月には,17年度に海外で活動した文化交流使や「来日芸術家型」の文化交流使を受け入れた学校の生徒による活動報告会を開催し,活動の紹介や米国で活動した能楽師の河村晴久氏による能の実演などが行われました。

▲文化交流使の活動(ウォルフガング・シュルツ氏)

▲活動報告会の能の実演(河村晴久氏)

図表●2-9-16 平成18年度文化交流使一覧

(2)国際文化フォーラムの開催

 「国際文化フォーラム」は,内外の芸術家,文化人などを招へいし,座談会,対談,講演などの形式により世界の文化芸術の最新の諸相や動向について語り合うことを目的として,平成15年度から開始した事業です。
 平成18年度は10月21日から「文化の多様性」を共通テーマに関西・九州・沖縄各地を中心に講演・討論・座談会を行い,世界に向け文化芸術のメッセージを強く発信しました(図表2-9-17)。

▲平成18年度国際文化フォーラム開会式

図表●2-9-17 平成18年度国際文化フォーラム行事

(3)東京芸術見本市インターナショナル・ショーケース

 舞台芸術のブース設置や実演を行うことにより,国内外の劇場関係者に,我が国の新進の舞台芸術作品などを紹介する国際芸術見本市が,平成17年9月に東京国際フォーラム及び丸の内ビルディング(東京都千代田区)にて開催されました。文化庁は国際舞台芸術交流センターを通して,実演デモンストレーション(ショーケース(注))を制作しました。18年度は,19年3月に開催予定です。

  • (注)ショーケース
     複数の舞台公演のハイライトを網羅的に提示するもの。

(4)海外との共同制作

 マンガ,映画といったメディア芸術の分野などにおいて,中長期的な観点から我が国の芸術家・文化人と諸外国の芸術家・文化人との間の共同制作及びその企画・立案に向けた会合や人材交流事業を行うことで,我が国のコンテンツ発信の推進やコンテンツ関連人材の育成を図っています。

(5)「国際交流年」に対する文化庁の取組

 文化・教育,スポーツなど,幅広い分野で官民を通じた交流事業を開催・実施することによって,諸外国との友好と相互理解を深めることを目的とした「国際交流年」が設定されています。
 平成18年は,「日豪交流年」及び「中東との集中的文化交流事業」に当たり,文化庁として様々な事業を主催・支援しました(図表2-9-18)。

図表●2-9-18 国際交流年に対する文化庁の主な主催・支援事業(平成18年)

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