特別支援教育について

発達障害早期支援研究事業

1.趣旨

学習面又は行動面で何らかの困難を示すと教員が捉えている児童生徒に対しては、社会生活上の基本的な知識や技能を身に付けるための学習や、それらの児童生徒を含めて全ての児童生徒が理解しやすいよう配慮した授業改善を行うなど、指導方法の工夫や改善、学校全体における早期発見・早期支援の在り方について研究事業を行う。

2.事業の内容及び実施方法

委託を受けた団体等は、小学校、中学校、中等教育学校、高等学校の中から研究事業を行う学校(以下「指定校」という。)を指定する。なお、単一の学校を指定することも、複数の学校を指定することも可能である。

(1)事業の内容

指定を受けた学校においては、対象となる児童生徒の学習面又は行動面における困難を明確にした上で、以下○1~○3の研究を選択して行う(複数選択することも可能)。また、委託を受けた団体は、指定校において○1~○3を行う際に必要となる指導助言等を行う。

○1 学習面(「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」)で困難を示す児童生徒に対する指導方法の改善・工夫
【取組例】

  • 学習内容を分かりやすく整理し提示する等の授業の構造化の工夫
  • 授業(一斉指導)の中で、補充的な学習や発展的な学習等の難易度が違う課題を用意し、児童生徒一人一人が課題を選択できる学習活動を取り入れた指導の工夫やティーム・ティチングなどの指導体制の工夫
  • 授業以外の時間(朝学習、放課後、長期休業等)を活用し、個々の認知の特性に配慮した各教科・科目の補充指導
  • 学習面において困難のある能力を補うための学習方法(ICレコーダー、デジタルカメラ、パソコン等の使用、口頭試問による評価等)の工夫
  • 学習面における困難のうち、読字障害、書字障害(ディスレクシアを含む)に相当する「読む」「書く」での困難や算数障害に相当する「計算する」での困難等の特定の困難を示す児童生徒に対する指導方法の工夫

○2 行動面(「不注意」「多動性-衝動性」)で困難を示す児童生徒に対する指導方法の改善・工夫
【取組例】

  • 集中しやすい教室環境(掲示物の精選や配置等)の整備や、授業の目当てや学習内容の流れの視覚的な明確化などの学習環境の整備
  • ICT等の活用による視覚的に整理された情報提示の工夫
  • 座席配置の工夫やついたての設置等による視覚的・聴覚的な刺激の軽減や調整
  • 児童生徒のセルフコントロール力を伸ばすための指導・支援の工夫(例:一回の課題に取り組む時間を短くして、繰り返し課題を行わせる等)
  • 児童生徒が努力し、個に応じた目標を達成した際の本人の特性や生活年齢に応じた評価等の工夫

○3 行動面(「対人関係やこだわり等」)で困難を示す児童生徒に対する指導・支援方法の改善・工夫
【取組例】

  • 一斉指導と小集団による指導、習熟度別指導等の学習形態の工夫による多様な学びの取組
  • 校内生活のルール、適切な人間関係を維持するための社会的ルールを分かりやすく指導するなど、対人関係スキル、社会生活上の基本的な知識、技能を身に付けるための学習を積極的に取り入れた指導の工夫
  • 障害等から生じる困難さ(例えば、こだわりなど)を、「強み」として捉え、生かすことのできる指導・支援を工夫し、学習課題等の設定や指導計画の作成、特別な指導の場の検討
  • 感覚的な過敏(光や音、身体接触等)に配慮した支援や過去の失敗経験や不快な体験を思い出してパニックを起こしやすいこと等の特性に応じた支援方法の工夫

(2)実施方法

○1 「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」の設置
委託を受けた団体等は、本事業を実施するに当たって、具体的な計画の策定や運営、連絡調整等を行う指定校学校関係者及び運営についての指導・助言、研究結果の分析等を行う有識者等から構成される「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」を設置する。

【取組例】以下の方針等を決定する

  • 本事業における実施が充実するための全体計画の検討、変更調整、作成
  • 観点、項目を定めた上での授業評価アンケートを複数回行う等により、児童生徒に対する学習活動における指導方法・支援内容の客観的評価の実施
  • 複数の段階的なアセスメント(学級全体へのアセスメント、特定の児童生徒へのアセスメント等)を活用し、発達障害の可能性のある児童生徒の不適応等をその発達段階において可能な限り早期に把握し、指導支援するための工夫
  • 教育相談、生徒指導等において、上記アセスメント結果等を活用した指導支援と校内支援体制の充実
  • 保護者との協働を目指した、発達障害の可能性のある児童生徒に対する支援内容の説明等の充実

○2 発達障害支援アドバイザー(指導員)の配置
委託を受けた団体は、指定校における教職員と日常的に連携、協力をしながら発達障害の可能性のある児童生徒に対する指導を専門的な観点から行うための発達障害支援アドバイザー(指導員)を指定校等に一人または複数人配置することができる。なお、退職した特別支援教育に対して専門性の高い元特別支援学級教員、元通級指導教室担当教員を発達障害アドバイザー(指導員)とすることが教育資源の有効活用という視点からも望ましい。
【取組例】

  • 発達障害の可能性のある児童生徒の特性に配慮した一斉指導における指導方法の改善に係る指導助言
  • 一斉授業の中で児童生徒一人一人が補充的な学習や発展的な学習等の習熟度に応じた課題に取り組む際の指導の補助(ティーム・ティーチングの実施等)
  • 教員の指示の下で行う個別指導、グループ別指導、習熟度別指導、教育課程の時間外を活用した補充指導等
  • 専門的な観点からのアセスメントの実施及びその結果を生かした指導方法改善のための指導助言

○3 指定校における校内体制の整備
指定校は、学校経営方針に特別支援教育に関する項目を盛り込み、校長のリーダーシップの下、特別支援教育の推進に取り組むこと。また特別支援教育コーディネーターを中心とした校内委員会等の機能を充実させ、発達障害支援アドバイザー(指導員)との十分な連携を図るための校内体制を整備する。

○4 通級による指導をより充実させるための指導方法の開発
【取組例】

  • 児童生徒が、発達の段階や生活年齢等に合わせたよりよいコミュニケーションスキルを身に付けることで、自己肯定感を高めるための指導方法の改善や開発
  • 「書く」ことや「読む」こと等に対して、安心感や自信をもてるようにするための指導方法の改善や開発
  • 在籍学級での学びの充実と友人関係に配慮した指導(通級による指導により、在籍級の授業中に教室にいない時間がある場合、学習進度や、周囲の視線等の不安に対して配慮した指導の工夫)
  • 他校通級や巡回通級の場合、在籍校との密接な連携体制の構築の工夫(校内委員会の運営の仕方,個別の指導計画の共有など)
  • 通級指導教室の担当者の専門性を高めるための研修等の取組

○5 関係機関との連携
指定校は、特別支援学校等の教育機関や近隣の幼稚園・保育所、児童発達支援センター等の福祉関係部局・機関等、厚生労働省の実施する発達障害関連事業等と連携を図る。特に、委託を受けた教育委員会以外の団体においては、本事業の実施に当たっては、「発達障害の可能性のある児童生徒に対する早期支援研究事業運営協議会」構成員に近隣の教育委員会事務局職員を入れるなど、十分な連携を図る。

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成28年12月 --