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特別支援教育について

山口県 長門高等学校(私立)

都道府県名 山口県
学校名 長門高等学校
学校所在地 山口県長門市東深川1621
研究期間 平成20~21年度

1.概要

1 研究課題

 発達障害の疑いのある生徒に対応するための全日制課程と通信制課程を連携させた支援の在り方

2 研究の概要

 教職員が障害の特性をしっかりと認識することにより適切な配慮が施せるように、研修を深め、以下の研究を進める。

  1. 校内支援体制の整備…コーディネーターを中心とした校内体制による支援の充実
  2. 校内研修の充実…発達障害の疑いのある生徒の実態把握とその支援方法についての共通理解
  3. 教務内規の改定・運用…支援を必要とする生徒に対する指導方法や評価方法の在り方
  4. 通信制課程の手法を応用した全日制課程でのレポート方式による授業展開…一斉指導や個別指導の中でのレポート添削による学習支援の方法・工夫の在り方
  5. ソーシャルスキルトレーニングの活用
    …学校や社会への適応力を身につけるための手法として活用

3 研究成果の概要

  1. 昨年度構築した体制の下、生徒の実態把握や個別の支援について協議を重ね、きめ細かい支援につなげることができた。
  2. 教員の共通理解を図るため、年間を通じて外部講師による研修を計画的かつ段階的に実施し、発達障害等に関する知識理解を深め、実践に応用できた。
  3. 昨年度改定した教務内規を、発達障害の疑いのある生徒や不登校傾向にある生徒に本年度から適用した結果、一人ひとりの教育的ニーズに即した配慮ができた。
  4. 配慮が必要な生徒に対しては、昼休みや放課後を利用して個別にレポート指導を実施し、基礎力の向上に効果があった一方、障害の特性によってはレポート方式による指導が困難な生徒もいた。
  5. 書籍や研修などから、教員はソーシャルスキルについて学ぶことができ、生徒は臨床心理士による授業を通して、対人関係づくりのヒントを得ることができた。

2.詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)

 昨年度に引き続き、個別の教育支援計画を提出していた生徒(5人程度)、担任が気になる生徒(20人程度)及び諸検査等で支援が必要とされた生徒(6人程度)について、「心配であること・困っていること」など生徒の特性をまとめ、学級内の生徒一人一人の状態や学級集団の状態についても把握した。
 その上で、生徒の不安や戸惑いの有無に関わらず、家庭訪問を中心に保護者とのコミュニケーションを深め、さらに詳しい実態把握を行ったほか、関係機関から支援策などについての情報を収集した。

イ 指導方針

 本校は、生徒を中途退学させることなく、卒業まできめ細かく支援をし、将来の自立を見越した指導をすることを目指している。
 発達障害の疑いのある生徒は、対人関係を築くことが苦手であったり、特定の科目の学習が困難であったりするが、大切なことは、周囲の生徒や教員がその生徒の特性を理解し、適切に支援していくことである。
 もちろん、生徒本人が困難に対処するためのスキルを身につけることが課題となるが、無理に身につけさせるのではなく、教員の支援により、本人自らが目標を掲げ、できた時には次への励みになる経験をすること、うまくできない時には、どのような工夫や周りからの支援があるとできるか考えるようになることが大切である。

ウ 成果と課題

 発達障害の疑いのある生徒に限らず、一人一人の生徒にきめ細かい指導をしていくためには、教員と生徒の信頼関係が不可欠であることから、日頃から教員が生徒に声をかけてコミュニケーションを図り、生徒理解を深めるよう心がけたほか、定期的な個別面談を実施するなど、生徒が戸惑いや悩みを気軽に相談できる環境づくりを進めることができた。
 また、教員集団が連携してよりよい支援を継続していくために、校内研修において、チームとして支援することや生徒を多面的に把握することの重要性を再確認できた。
 さらに、一般生徒の中にもコミュニケーション能力の不足から友人との人間関係に悩む生徒もいるため、コミュニケーションの重要性について臨床心理士の参画を得た授業を実施し、生徒たちは人間関係づくりのヒントを得ることができた。
 教科指導においては、教員が支援の必要な生徒のことを念頭に教材研究をした授業を展開することで、それがすべての生徒にとって「わかる授業」となった。
 今後も、学校の教育活動全体を通して、こうしたユニバーサルデザインを土台としたインクルーシブ教育を継続して展開していきたい。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫
ア 授業の際の配慮事項等

昨年度有効であった以下の事項については本年度も取り組んだ。

  • 進行状況を黒板の所定の位置に記入
  • 板書の工夫(文字の大きさ、チョークの色、分量、ポイントの明記)
  • ノート整理の時間確保
  • ファイルの配布による整理整頓の支援
  • 生徒による授業評価の実施

その他、今年度は以下の事項にも意識的に取り組んだ。

  • 授業に集中しやすい環境づくり(掲示物の撤去等)
  • 具体的な指示や発問内容の工夫
  • スモールステップを意識した授業展開
  • 発表前にグループ等で話し合う時間の確保
  • 原稿用紙への配慮やその記入の支援
  • ノートやレポートの指導の徹底
  • 予定変更についての事前伝達の徹底
  • 生徒を注意する際の声の大きさへの配慮
イ テストにおける配慮事項等

 試験前の事前指導や支援の必要な生徒へのきめ細かい支援は、今年度も継続して行った。また、昨年度同様、通信制の特徴を活かしたレポートの内容をテストに反映させることで、レポートが生徒の学習の指針となった。

 テストの作成においては、引き続き文字の拡大や問題文の行間や解答欄を広く取ることに配慮したほか、以下の事項にも留意した。

  • 回答に当たって注意すべき点の拡大や強調
  • 読みやすい字体の選択
  • 問題用紙の流れに沿った解答欄の配置
  • 基礎問題と応用問題のバランスを考え出題した。
ウ 評価における配慮事項等

 昨年度同様に定期考査の得点だけでなく、授業中の関心・意欲・態度や提出物などの状況について総合的な評価を行った。また、引き続きレポートに関しても評価の対象とし、評価に至るまでに事前指導を重ねた上で、できなかった目標をできないと評価するのではなく、達成できた面を中心に評価するようにした。

エ 成果と課題

 教員が支援の必要な生徒に配慮した授業を展開することで、それが一般の生徒にとっても「わかりやすい授業」となった。
 生徒の実態を把握した上で学習を支援するために、レポート方式による指導は有効な手段ではあると確認できた。
 ただ、生徒の特性や教科の学習内容によっては、レポートの活用が困難な場合もあった。このため、今後も他の個別支援の在り方について研究に取り組み、教員のスキルを向上させていくことが必要である。

(3)発達障害のある生徒に対する就労支援
ア 支援の方策と内容

 昨年度さまざまな機関への訪問を実施したが、今年度は実際にそうした機関と連携して就労支援を実施するまでには至らなかった。
 具体的な支援としては、生徒に適職を考えさせることを目的とした「サクセスタイム」を実施した。
 その他、履歴書の書き方や面接の仕方についても繰り返し指導し、何度も反復して練習させるなど、基本的な支援を充実させた。

イ 成果と課題

 「サクセスタイム」は、仕事というものはどのようなものがあり、そのような仕事に就くためには何が必要となるかということについて、生徒が考えるだけ機会となっただけでなく、教員自身がよく理解しておく必要性に改めて気づく機会となった。
 生徒自身が自分の個性や適性について理解を深め、それに応じた職業を見つけるよう支援することが重要な課題である。また、生徒が在学中に職業に関する幅広い知識を身につけるよう指導していくことも必須課題である。
 学校は卒業後の生徒を就職させるだけではなく、就職してから離職させないように、生徒の個性や特性をきちんと踏まえた進路指導はもとより、望ましい職業観の育成など幅広い視野で支援をしていかなければならない。
 発達障害の疑いのある生徒は、ジョブマッチングがうまくいかないこと、職場が発達障害を理解していないために発生した問題などにより離職をすることが多いことから、卒業後も継続して支援協力が得られる関係機関との連携が必要である。

(4)一般の生徒に対する理解推進等の指導の在り方
ア 指導の工夫と取組
  • 図書室や保健室において発達障害に関する図書を充実させ、理解の推進を図った。
  • 臨床心理士の参画を得た授業で、心理的な面からの指導をしてもらうことができ、すべての生徒にコミュニケーションの重要性について考えさせることができた。
イ 成果と課題

 臨床心理士による授業では、生徒自身が自己分析をすることで自分を振り返り、よりよいコミュニケーションの図るための目標を持つことができた。
 また、発達障害の疑いのある生徒も含め、学級内で、他己紹介をすることを通して、その生徒を見つめ直し、自分との関係を振り返ることができ、その後の人間関係づくりに役に立てることができた。
 さらに、それまでに他生徒のことを学級内で発表する体験が少なかったため、他者を理解し他者を意識することは、よりよい学級づくりを行う上でよい機会となった。教師は、よりよい学級経営に向けてコミュニケーションづくりの手法を学ぶことができた

(5)教職員や保護者の研修等
ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等

・5月から11月まで研修会を実施

○臨床心理士A氏による研修会

  • 臨床心理と教育の整合性について(5月25日教職員)
  • 人格障害について(6月22日教職員)
  • IQ、EQ、SQについて(7月6日教職員)
  • 事例検討(9月11日教職員)
  • ディスレクシアの生徒について(11月30日教職員)

○臨床心理士B氏による研修会

  • PTSDについて(6月24日教職員)
  • ボーダーラインについて(6月30日教職員)
  • トラウマについて(8月7日教職員)
  • LD、情緒障害について(8月26日教職員)
  • 検査を拒否する保護者について(11月18日教職員)
  • 教職員の全体研修会
     特別支援講座「支援が必要な子の支援体制の流れ」(6月30日教職員)

【資料】

資料 高校生の発達障害でよくある問題点と支援方法

学習障害(LD)の高校生でよくある問題点

■行動面

  • 自分が困っても、支援を求めることをしない。
  • 人に挨拶しなければならないことは分かっていても、突然の訪問者等、マニュアル通りでない場合は対応できないことが多い。
  • 調理などでは、切ること、煮ること等、手順よくかつ段取りよく進めることができない。

■コミュニケーション

  • 漢字を覚えたり、書いたりすることが苦手である。
  • 相手の話を聞いて、内容を理解することが難しく、断片的な理解をしてしまう。
  • 得意な教科はとても集中して取り組めるが、苦手な教科になるとほとんど手がつかない。

■よく見られる生活場面

  • 自分の書いたものや作ったものに対して、他のものと比較してコンプレックスを感じる。
  • 野菜の新鮮さが、そうでない同じ野菜で比較しなければ分からない。
  • 不安・いじめ等により、不眠・痛み・疲れなどの身体的な訴えをすることがある。

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の高校生でよくある問題点

■不注意

  • 会話に意識を向けることが困難で、参加することができない。
  • 一つのことをどうにか最後までやり遂げるが、何かを忘れたり、やり残してしまう。

■多動性

  • じっと座っている活動が苦手で、いつも何かしていないと落ち着かない。

■衝動性

  • 母親の些細な言葉に反発しやすく、興奮して自室の壁を叩き、穴を開けるほどの行動を伴うことがある。
  • 欲しいものがあると、衝動買いをしてしまう。
  • 気が短く、ストレスや欲求不満に耐えられない。

■よく見られる生活場面

  • 豊かな創造性、鋭い直感、高い知性を示すことがある。
  • きちんとできていても、本人は実力を発揮できず、目標を達成できないという感覚をもつ。
  • 慢性的な自尊心の低さを感じている。
  • 物事を先延ばしにし、物事への取りかかりに時間を要する。
  • 決められたやり方、適切な手順を守ることが困難である。
  • 片付けをすることが苦手で、片付けるよりも先にどんどん物がたまっていく。
  • 行動障害、不安障害、気分障害といった情緒障害の併存が多い。
  • 頻繁に強い刺激を求め、退屈な状態に我慢ができない。
  • 周囲の状況に注意が払えず、けがや交通事故を起こしやすい。
  • 自分から心配の種をあれこれ探す傾向が見られる。
  • 後のことを考えず、人に頼まれると何でも引き受けてしまう。

アスペルガー症候群・高機能自閉症の高校生でよくある問題点

■人との関わり

  • 友達との対応で、いきなり「絶交」と言ってみたり、これまでの会話の内容とは無関係な話をしたりすることがある。

■コミュニケーション

  • 苦手な状況や場面になっても援助の依頼ができない。
  • 相手とコミュニケーションがうまく図れないことを強く意識し、自分から話すことを極端に避けてしまうこともある。

■よく見られる生活場面

  • 不得意なことを安請合いしてしまう。
  • うまくできていると思いこみ、周囲の配慮や助言を受け入れない。
  • 人とかかわりたいと思っているが、そのやり方が不器用で結果的にトラブルとなる。

学習障害(LD)の支援

◆自分が困った時に、何を、どのように支援してほしいのかを、周囲の人に具体的に伝えられるように、日頃から繰り返し練習しておくことも一つの方法である。
◆製作活動においては、速さや段取りのよさだけを追求させるのではなく、確実性も評価の対象とする。
◆社会生活を視野に入れ、書くことへのプレッシャーを継続させないようにするためにも、パソコンを活用させて、文字に対する苦手意識を軽減する。
◆人間関係、自信の喪失等で大きなストレスを抱えてしまうケースもあるので、定期的な教育相談による状況の把握が大切である。

注意欠陥/多動性障害(ADHD)の支援

◆スケジュール表を手元に置き、自分自身で日々の行動を確認できるようにする。
◆周囲の人に、苦手なことは伝えておき、サポーターを増やすことが大切だが、いつも援助を受けるばかりでは自尊心が低下するので、可能と思われる内容には取り組ませてみるといった配慮が必要である。
◆欠点ばかりが目につくときは、本人のことをよく理解してくれている人に長所を聴く。
◆思いついたらすぐ連絡できる携帯電話やスケジュール表を活用する。
◆タイマー、電子辞書、食器洗機等をうまく利用し、日常生活での支障を軽減する。
◆青年期に入ると、以前のような多動は減少することもあるが、反面、知らず知らずのうちにストレスがたまっていることもあるので、本人の話をよく聞くようにする。

アスペルガー症候群・高機能自閉症の支援

◆いけないことは禁止するとともに、許される条件を明確に示す。また、うまくいかない場合の代替の方法を提案する。
◆できるだけ成功体験を味わわさせ、できなかった場合も一方的に責めない。
◆必要なルールやマナーは事前に伝えておき、守れたときには、その場で評価する。
◆会話の途中に、話の内容が頻繁に変わるようであれば、一度間をおいてから、まず一つのことを話させるようにする。

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○教職員の感想

  • 発達障害に限らず様々な不適応を起こしている生徒が多くいる中、その子が抱えている問題にどう関わり、支援していけばよいか、具体的な例を提示されたことで方向性がみえた。
  • 本校は、チームとしての支援体制ができているか不安であり、担任の負担は大きく、生徒に対し常に完璧を求め、早期の結果を求めてしまうが、長い目でみていくなどの教員側のバランスが大切だと感じた。
  • アセスメントを行う上で、多くの情報が重要であり、各教員が生徒のできない面だけでなく、できる面や可能性をしっかり観察することが重要であることが理解できた。
  • 研修不足であることに気づかされ、チーム援助の重要さを改めて感じた。
  • 問題や悩みがあり学校生活が送れない生徒の多くは、家庭で問題がある生徒が多く、担任一人の支援は無理が生じる為、教員のチームワーク・連携が重要であると感じた。
  • 生徒の甘えと障害の判断が難しいと感じているが、チームで支援したい。
  • 教員が、生徒一人ひとりを多方面から観察することで、アセスメントの重要性に気づき、面談を頻繁に行うことができた。
  • 毎年、生徒が変化している中、指導方法に限界を感じている教員が多く、定期的な研修の必要性を感じることができたのは大きな成果であった。
  • 学校関係者ではない、臨床心理士のアドバイスをいただけたことは、大きな成果であり、教師側に大きな自信となった。
イ 成果と課題

 教員の共通理解、情報交換が重要であることが改めてわかり、日々多忙な校務を行う中で、効果的な支援を行うという視点から、支援体制の見直しを図っていく必要がある。
 ただ、本校の教員の中には、チーム支援の重要性は理解できても、実際にチームとしての支援体制が機能するか不安を持つ者が少なくない。
 特別支援教育に関わる指導力を高めたいと教員研修を企画したが、研修を実践に役立てきれていない教員も多いので、教員の意識のさらなる向上に繋げていけるように、参加型の研修を継続して企画することが今後の課題である。

(6)その他の支援に関する工夫

 特記事項なし。

2 研究の方法

(1)研究委員会の設置
ア 構成
NO 所属・職名 備考
1 校長・教頭
2 1年担当コーディネーター 学年団所属教諭
3 2年担当コーディネーター 学年団所属教諭
4 3年担当コーディネーター 学年団所属教諭
5 養護教諭・特別支援教育コーディネーター
イ 委員会開催回数・検討内容

月一回程度開催

  • 友人とのトラブルにより、授業に参加することが難しくなった生徒について
  • 長期欠席の生徒について
  • 授業中の態度が悪い生徒について
  • 紛失により提出物が出せない生徒について
  • ストレスが原因で教室に入れない生徒について

 上記の生徒等については、問題の背景に発達障害があると考えられ、その二次障害としてさまざまな問題が現れてきていた。そのため、校内の教員間の共通理解を図るだけでなく、支援策についても協議し、確認した。

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策

 管理職により、特別支援教育コーディネーター、各学年担当コーディネーターが指名された。
 発達障害の疑いのある生徒には様々なつまずきがあり、その生徒のできること・できないことや配慮事項等を個別の教育支援計画や指導計画にまとめておくことは、日常生活や人間関係、授業において非常に役立つ指針となる。
 このため、入学後に保護者から提出された「個別の教育支援計画」をもとに、中学校や保護者と連携をとりながら、生徒本人との面談を通じて個別の指導計画の作成に取り組んだ。なお、支援の目標を設定するに当たっては、各教科担任や担任がその生徒のできること・できないことに留意した。

エ 成果と課題

 個別の教育支援計画や個別の指導計画をもとに、保護者や中学校とも連携して、指導や支援を計画的かつ組織的に進めることができた。
 学年末に、次年度担任は教育支援計画を参考にして支援方法を考えるが、徐々に教育支援計画に目を通さなくなる傾向がある。何か不適応を引き起こした時だけ計画を活用するのではなく、日頃の支援を振り返り、生徒にとってよりよい支援方法を考え実践していくためには、定期的に計画を確認・評価することが必要である。

(2)専門家チームの活用
ア 構成
NO 所属・職名 備考
1 医療法人 臨床心理士
2 臨床心理士 SC
イ 専門家チームの活用状況
  • 毎月の教員研修と事例検討に講師として招聘
  • ソーシャルスキルトレーニングの指導者として招聘
ウ 成果と課題

 事例検討会では生徒や保護者への対応についても相談でき、専門家との連携を円滑に図ることができた。また、講師の適切な助言により、生徒に対して抱いている固定観念にとらわれるのではなく、多面的に生徒を見ることができるようになった。
 ソーシャルスキルトレーニングの実践的な研修においては、臨床心理士から技術や手法に関する知識を学び、生徒を正しく理解するヒントを得ることができた。
 予防的対応に関する話からも大きな成果を得ることができ、今後も継続して専門家からの助言が重要であり、専門家との連携が必要である。

(3)関係機関との連携
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携
  • 8月25日近隣中学校の教員研修で、本研究について発表を行った。
  • 特別支援研修会で、県教委が作成した資料「支援をつなぐ」の活用について学んだ。
  • 特別支援教育研修会及び特別支援教育担当者等連絡協議会にて、事例発表と情報提供を内容とする研修を受けた後、他校と情報交換をし、萩総合支援学校の地域コーディネーターよりアドバイスを得た。
  • 近郊地区における研修会で、各学校での取組についての情報を交換をした。
イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携

 今年度実際に活用することはなかったが、次年度以降も継続して連携していきたい。
 県により障害者手帳の交付基準に違いがあり、企業側の理解を得ることも難しいため、生徒にとって何が本当によいのかを考えていく必要がある。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

 NPO法人の相談員を活用し、相談室を充実させた。生徒を対象とした相談だけでなく、保護者を対象とした相談も実施することができた。

エ 成果と課題

 NPO法人の相談員は、小・中学校を通して生徒や保護者との関わりがある方ということで、家庭との連携が円滑に行えた。このような社会資源の活用は、高校の枠だけでなく社会への出口まで一貫した支援を考える上で大切である。
 学校組織の中で相談員と連携していくためには、日々、生徒に関する詳細な情報を共有することが重要であるが、相談員の都合もあり来校日の日程調整が困難なことがあった。また、相談員と教員との間には、「情報の軽重」について考え方の違いが認められた。
 このため、相談員と一層コミュニケーションをとり、日頃から綿密な情報交換を行っていくことが課題である。

3.今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

 我が国の教育においては、特別支援教育の理念を一層浸透させていくことが必要ではないかと思われる。多数の国をモデルにしているためか、漠然としている面が曖昧さを増し、校種や地域で特別支援教育のあり方に違いが見られる。また、「特別支援」と言葉を改めたにもかかわらず、教員一人ひとりの意識の変容が進んでいないことに不安を感じる。
 このため、国においては、我が国独自の理念を明確に提示していただきたい。国全体が特別支援教育のビジョンを共有し、推進していくことが必要である。

4.その他特記事項(エピソードを含む)

 発達障害の疑いがあると思われる生徒Aは、入学時から気になる生徒の一人であった。学年相応の学習が困難で、特に、一度にたくさんのことを指示されると何もできなくなるが、皆勤という目標を掲げており、1学期はクラスの友人との関係もうまくいっていた。2学期に入り、クラスにおいて生徒間での暴言が多くみられるようになり、友人とのトラブルに巻き込まれたことがきっかけで、授業に参加することが難しくなった。皆勤という目標もなくなったことで、苦手な教科への参加が困難になり、欠席が続き、登校したときは身体の不調を訴え、保健室の来室が多くなった。
 担任を交えて問題整理をし、まずクラス全体には正しい言葉の啓発をし、本人に対しては進級を長期目標として、毎朝の心身の状態を本人の言葉でまとめさせるとともに、1日のタイムスケジュールを記入させ、また、参加できる教科と参加の困難な教科を用紙に記入させることにした。
 安心できる居場所を保健室とし、本人の情緒の安定を図った。他の生徒と対応を変えることなく、短期目標を設定させ、心身の状態を把握しつつ、それを乗り越える支援を行うことを意識した。
 「今日はがんばったよ」の言葉が多くなり、徐々に教室で授業に参加することが増え、長期目標を達成できたことで、本人の自信にも繋がった。
 今後の課題として、新担任への引き継ぎを行い、生徒の心身の状態を観察し早期の対応ができるよう教員との連携を深めていきたい。

5.総括

 全日制課程と通信制課程を連携させた支援として、全日制の各教科の一斉授業において、通信制の手法を応用したレポート方式による個に応じた指導を展開した。その結果、授業内容についての生徒の理解が深まり、継続することにより基礎学力が向上するなど予想された効果を確認することができた一方、生徒の特性によってはレポートの作成が困難である場合もあり、レポート方式以外の支援方法についても研究していくことが課題となった。
 発達障害の疑いのある生徒の実態把握においては、早い段階から新入生一人一人の出身中学校訪問や家庭訪問を実施し、校種間のつながりや家庭生活と学校生活とのつながりを踏まえたきめ細かい支援につなげることができた。今後、これまでの支援を生徒の自立や社会参加に向けた支援へとどのようにつなげていくのか、常に生徒の目線、保護者の思いを頭に置きながら考えていくことで、教員と生徒、保護者との関係が深まり、相互の支援や協力により、生徒の成長が促されると思われる。
 校内研修については、外部講師による計画的かつ段階的な研修を実施したことにより、生徒の立ち止まっている姿に、「どうにかしなくては」と考える教員が確実に増えてきた。こうした教員をキーパーソンとして、チームとして支援する校内体制の一層の充実を図っていきたい。
 教務内規の改定・運用については、発達障害の疑いのある生徒や中学校時から不登校傾向のあった生徒の登校への動機付けとなり、保護者にも安心感を与えることができたが、継続的な指導と評価の改善・充実、就労へつなげることついて努力していく必要がある。
 本事業への取組を契機に、全教職員の特別支援教育に対する認識が深まり、「特別支援教育」とは、何か特別なことをするのではなく、教員が一人ひとりの生徒を大切にすること、確かな目で生徒の特徴や特性を見極めること、工夫を凝らした「わかる授業」を行うことであり、要するに、発達障害の疑いのある生徒はもとより、すべての生徒が安心して充実した学校生活を送ることができるよう教員としてすべきことを丁寧に行うことであると改めて気付くことができた。
 そうした教育の原点に返って、ユニバーサルデザインを意識した指導をすることは、まさに本校の指導方針である「生徒を中途退学させることなく、卒業まできめ細かく支援をし、将来の自立を見越した指導をすること」そのものであり、今後も特別支援教育の推進を通して、すべての生徒について理解を深め、個に応じた一層きめ細かい指導体制を構築する努力を積み重ねていきたい。

6.モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成21年5月現在)

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 合計
学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数
全日制 普通科 3 66 1 15 1 26     5 107
商業科 3 77 3 82 3 77     9 236
6 143 4 97 4 103     14 343
通信制 普通科 1 26 1 17 1 10     3 53
1 26 1 17 1 10     3 53
合 計 7 169 5 114 5 113     17 396

2 教職員数(平成21年5月現在)

校長 教頭 教諭 養護教諭 非常勤講師 実習助手 ALT 事務職員 司書 その他
1 2 22 1 3 0 1 4 0 1 35

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成22年07月 --