都道府県名 愛知県
学校名 愛知県立衣台高等学校
学校所在地 愛知県豊田市太平町平山5
研究期間 平成20~21年度
すべての生徒への積極的なサポート体制構築に向けて、発達障害の可能性のある生徒への支援を念頭に研究する
実践事例についての支援計画、評価方法等の検討を行う事例検討会を月ごとに開催する。
全職員参加の現職研修を年間数回実施するとともに、研究開発校やモデル校を視察する。報告会を実施し、今後の支援に活用する。
生徒個々の特性や学級集団の状態を把握するため、Q‐U調査法を用い、調査から得た資料を効果的に活用する。
シンポジウムを開催し、主として発達障害のある青年期の生徒に対する理解を深める啓発活動を行う。
実践事例についての支援計画、評価方法等の検討を行う事例検討会を月ごとに開催した。その際、外部研究委員である桜花学園大学准教授の指導を受け、次の実践へ結び付けていった。
全職員参加の現職研修を4回実施し、具体的な支援の在り方や今後の指導方法に結び付けた。また、研究開発校やモデル校の視察を本校各分掌ごとに行い、次年度に向けた体制づくりの一助とした。報告会を実施し、今後の支援に活用した。
生徒個々の特性や学級集団の状態を把握するため、6月に第2学年の生徒に対して、Q‐U調査を実施した。K‐13法により学級分析を行い、学年会等で得た資料を教育相談や学級経営に活用した。
10月に「発達障害のある生徒の青年期問題への支援2.」というテーマでシンポジウムを開催した。立命館大学教授による基調講演ののち、シンポジストらによる問題提起、総合討論を実施した。保護者や地域の方々のならず県内の教職員や県外からも多数の参加者を得た。
発達障害のある生徒に対して、個々の教育的ニーズに応じた指導の在り方と支援体制を検討し、研究を行った。
具体的には新1年生の保護者に対して「特別な支援を必要とする生徒の健康調査票」への記入を求め、情報を収集した。また、教員に対して「生徒情報収集カード」への記入を求め、情報を収集し、これらの調査により生徒の実態を把握した。
その結果、様子や行動が気になる生徒や発達障害と疑われる生徒を把握することができた。研究委員会に報告後、これらの生徒について、学級担任や教科担任から聞き取り調査を行い、詳しい情報を収集し、個別の指導計画案を作成した。
すべての生徒への積極的なサポート体制の構築に向けて、発達障害の可能性のある生徒への支援を念頭に研究をすすめた。
「特別な支援を必要とする生徒の健康調査票」、「生徒情報収集カード」を用いたことにより、生徒の実態把握が適切に行われた。その結果、支援を必要とする生徒及び保護者に対して専門家チーム(桜花学園大学准教授及びスクールカウンセラー)による適切な相談活動を行うことができた。一方、相談活動を行う場合の保護者との連携に問題が残った。保護者に相談活動をすすめる場合は、本校職員による保護者への面接に時間をかけるなど、相談活動について事前に十分な説明をする必要がある。
生徒へ配付する学習プリントについて、ふりがなを付けたり、大きく見やすくしたりするなど工夫する教員が増えた。授業の流れをあらかじめ板書し、生徒に「今、授業で何をやっているのか」を示すことにより学習に集中させる手法も有効であった。
また、机間指導やノート点検を丁寧に行うことによって、個別の支援を必要とする生徒への指導の手がかりを見つけることができた。
テスト問題の記述形式を分かりやすくするなどの工夫が必要であると思われる。
観点別評価を取り入れ、さまざまな方法で評価している。指導と評価は一体であるため、一様な形式をとることは難しいが、指導において工夫した点が活かされる評価の在り方を今後も検討していきたい。
発達障害のある(その疑いのある)生徒にとってわかりやすい授業を目指すことは、すべての生徒にとってもわかりやすい授業になることが教員の共通理解となった。一方、学習進度が遅れがちとなるので、あらかじめ綿密な年間指導計画を立てて授業を行う必要がある。
発達障害就業支援セミナーに参加した教員を講師として、教員研修を行った。内容は、発達障害のある生徒が円滑に職場に適応する(作業の能率を上げたり、作業のミスを減らしたりする)ための支援、人間関係や職場でのコミュニケーションを改善するための支援などについてである。
この研修を通して知識の共有化が図られた。個に応じた対応マニュアルの作成を行うため、ハローワーク等との連携の在り方が今後の課題である。
全校生徒に対して学年単位でDVD「アイムヒア僕はここにいる」を鑑賞させた。また、1年生全員に対して桜花学園大学准教授による発達障害の「自閉症スペクトラム」についての講演会を行った。(2,3年生は昨年度実施済み)
DVDや講演会実施後のアンケート結果によると、ほとんどの生徒が発達障害についての理解を深めることができた。今後も継続して実施することで、より認識が深まるものと考えている。
研修会を全職員に対して計4回(発達障害の子どもたちの臨床の現場について2回、中学校のスクールカウンセラーの現場について1回、発達障害の就労支援について1回)行った。詳細は次のとおりである。
(ア)「発達障害のある生徒への支援」講師:愛知教育大学講師
(イ)「特別支援が必要と思われる生徒の対応」講師:豊田市こども発達センター長
(ウ)「発達障害のこどもたちへの支援日々の学校生活の中で」講師:スクールカウンセラー
(エ)「発達障害の就業について」講師:本校教諭
平成20年度から通算で11回の全体研修を行った。昨年度は、発達障害全般についての知識を高める成果があった。今年度は具体的な支援の方法について理解を深めたことが、アンケート調査の結果から分かる。
適切な支援を行う際に、いかに保護者の理解を得るかが重要なこともわかった。発達障害のある生徒本人や保護者が周囲から理解を得られないことによって他人に対して抱く不信感をどう取り除いていくかが課題であると認識した。
平成20年度に引き続き、地域の小、中、高等学校、保護者等への啓発活動と地域との連携を深めるために「発達障害のある青年期問題への支援2.」というテーマでシンポジウムを開催した。
立命館大学教授、桜花学園大学准教授、愛知県立春日台養護学校教頭をシンポジストとした。まず、立命館大学教授から、「発達障害のある青年期生徒への支援2.‐発達障害のある青年期生徒への支援」をテーマに基調講演があり、続いて、愛知教育大学講師の司会のもと、桜花学園大学准教授から「発達障害のある生徒の青年期問題‐課題と予防」、愛知県立春日台養護学校教頭から養護学校における支援についての問題提起がなされた。その後、3人のシンポジストにより具体的な支援方法や現状とその課題などについて総合討論が行われた。
シンポジウムは、保護者や地域の方々のみならず県内の教職員や県外からも多数の参加者を得た。アンケート結果から参加者のほとんどが満足していたが、本校の実践を聞きたいとの意見も多く出された。そこで、これを踏まえて研究発表会を開催した。
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 愛知県立衣台高等学校・校長 | 委員長 |
2 | 愛知県立衣台高等学校・教頭 | 副委員長 |
3 | 愛知県立衣台高等学校・教頭 | 副委員長 |
4 | 愛知県立衣台高等学校・教務主任 | |
5 | 愛知県立衣台高等学校・生徒指導部長 | |
6 | 愛知県立衣台高等学校・保健主事 | 事務局・渉外 |
7 | 愛知県立衣台高等学校・1年学年主任 | |
8 | 愛知県立衣台高等学校・2年学年主任 | |
9 | 愛知県立衣台高等学校・3年学年主任 | |
10 | 愛知県立衣台高等学校・養護教諭 | 事務局・会計 |
11 | 愛知県立衣台高等学校・2年担任・特別支援教育コーディネーター | 事務局・庶務 |
本年度は9回開催した。その内容は以下のとおりである。
(ア)企画・立案検討
実践研究を行うに当たっての企画、調整、連絡等及び事例検討会を行う研究委員会を校内に設置した。研究委員会では、シンポジウムや講演会、研修会等の企画・立案を行った。
(イ)事例の検討
「特別な支援を必要とする生徒の健康調査票」及び「生徒情報収集カード」による調査結果により生徒の実態を把握し、特別な支援を必要とする生徒の事例を検討した。
平成20年度から特別支援教育コーディネーターを指名し、愛知県教育委員会が主催する特別支援教育コーディネーター養成講座を受講させた。また、事例の検討にあがった生徒の個別の教育支援計画を立て、本年度の課題と次年度に向けての方向性を検討した。
昨年度の反省を踏まえて、月1回は定期的に開催することができた。次年度は今年度の成果を踏まえて研究委員会を改編して継続し、本校の特別支援教育を推進する際の中心的組織としたい。また、職員会議での報告会も引き続き行うとともに、支援が必要な生徒に対する具体的な対応策を提示できるようにしていきたい。
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 桜花学園大学・准教授 | 専門行動療法士 |
2 | スクールカウンセラー | 臨床心理士 |
全体研修会等での講師として、教職員や生徒などが発達障害についての理解を深めるために大きく寄与した。また、要望のあった保護者に対する面談を依頼した。
桜花学園大学准教授からは、事業計画の企画・立案や発達障害と疑われる生徒の個別の指導計画案の策定などについての助言を得た。
個別の支援を必要とする生徒やその保護者への具体的な指導の場面で専門家を活用することができた。今後は、他の相談機関との連携について工夫していきたい。
近隣の愛知県立三好養護学校支援部に在職する職員を研究委員会のオブザーバーとして計画をすすめた。また、関係機関の専門家を紹介してもらうなど連携を図った。
本年度は、特に連携を図ることはなかったが、次年度以降は連携をしながら研究を推進していきたい。
地域の文化施設である豊田市民文化会館を会場として、地域への啓発活動や地域との連携を深めることを目的としたシンポジウムを開催した。また、地域の人材等の活用では、隣接する桜花学園大学の准教授と地元在住のスクールカウンセラーに外部研究委員を委嘱し、事業計画の企画・立案や全体研修会の講師として活用することができた。
関係機関との連携に関しては、近隣の愛知県立三好養護学校と連携を図り、シンポジウム講師の選出などで助言を受けた。今後は個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成においても助言を求めていきたい。
発達障害者支援センターやハローワーク等の機関とは直接連絡を取ることもなく終わったが、次年度以降は、該当生徒の進路指導計画の作成などについて助言を得たい。
地域の教育施設や人材活用等については十分活用でき有効であった。今後も継続的に取り組んでいきたい。
先進校の研究実践を学ぶため、「高等学校における発達障害支援モデル事業」の現在又は過去の指定校である京都府立朱雀高等学校、兵庫県立姫路別所高等学校、群馬県立前橋清陵高等学校、静岡県立浜松大平台高等学校を視察した。
一方、帝京科学大学教授や岡山県立玉島高等学校、岡山県立倉敷鷲羽高等学校、岡山県立備前緑葉高等学校、富山県立志貴野高等学校が来校し、今後の研究方針等意見を交換した。
我が国においては発達障害のある生徒への支援については、どのように支援していくかという方法論が重視される傾向がある。方法論も重要ではあるが、国全体の立場で考えると我が国の生活基盤の一環として社会全体ですべての人に対してお互いがいたわりあえる優しい社会作りが求められていくべきであろう。このモデル事業がその一助となるよう、支援の在り方の研究を続けながら、実践活動を続けていきたい。
シンポジウムの開催にあたり、地方紙の新聞社や全国紙の新聞社の支局を訪れて、広報活動を行った。その際、一般の方々の来場を求めるのであれば、土曜日の午後や休日に開催する方が良いとの意見をいただいた。日程の調整はさまざまな観点から行う必要があることを実感した。
平成20年度文部科学省「高等学校における発達障害支援モデル事業」は、「発達障害者支援法」の規定および特別支援教育の理念に基づき、発達障害のある生徒への具体的な支援の在り方について実践的な研究を進め、今後の検討に資することを目的としている。
本校では、研究テーマを「すべての生徒への積極的なサポート体制の構築に向けて―発達障害の可能性のある生徒への支援を念頭に―」とし、平成20年度は、校内支援体制の整備や関係機関との連携体制の確立を通じて、発達障害の可能性のある生徒への支援体制づくりを目指した。また、全職員参加の現職研修を重ね、発達障害のある生徒に対する理解を深めた。さらに地域社会への発信として、広く保護者や地域の方々に「発達障害のある生徒の支援」について情報発信することを目的としたシンポジウム「発達障害のある生徒の青年期問題への支援」を開催した。
平成21年度は、昨年度の成果と課題を踏まえ、さらなる現職研修の充実と情報の収集を行った。全職員参加の現職研修を年間4回実施するとともに、研究開発校やモデル校の視察を教職員で分担し、視察をした。視察後は報告会を実施し、今後の本校の支援に活用した。
また、個別支援計画や学級支援計画の立案、評価方法等の研究を行った。実践事例についての支援計画、評価方法等の検討を行う事例検討会を月ごとに開催した。地域社会への発信として、広く保護者や地域の方々に「発達障害のある生徒の支援」について情報発信することを目的としたシンポジウム「発達障害のある生徒の青年期問題への支援2.」を開催した。青年期の生徒の自立と社会参加に向け、学校・家庭・地域が手を携えて、特別支援教育を一層推進していくことが求められている。
2か年にわたり本モデル事業の全体計画の作成と、研修等に向けた連絡調整を主に行った。平成20年度には、県教育委員会が主催する特別支援教育コーディネーター養成講座に参加した。2年目はシンポジウムの開催に際し、教育機関のみならず地元新聞社や全国紙の豊田支局に対して広報活動を行い、広く一般の方々の参加を求めた。
また、発達障害のある生徒の担任との連携をすすめ、進路説明会に来校した発達障害のある生徒の保護者に対して、担任が話す場面とコーディネーターが話す場面を用意したことにより、今後の就労支援に向けたアドバイスを的確に行うことができた。
課題としては、特別支援学校や中学校との連携が十分にできなかったことがあげられる。
この2年間の研究で、発達障害に関する本校職員の知識と理解は飛躍的に高まった。今後も校内外の研修を深めていきたい。この事業は、保健環境部を中心で行ってきたが、来年度からは他の校内分掌とも連携して特別支援教育をすすめていきたい。
発達障害のある生徒への就労支援については、サポートセンターやハローワークをはじめとする専門機関やこの事業を通してかかわってきた大学とも今後も連携を図っていきたい。
新入学生の保護者を対象とした調査を本年度から始めたが、そこで得た情報を生かして個別の指導計画を立てるうえでも、中学校との情報交換は欠かせない。
また、発達障害のある(その疑いのある)生徒にとって、小さな目標を達成することは、新たな目標を達成するための一歩であることを学んだ。ユニバーサルデザインの観点からも、わかりやすく表示することは、こうした生徒を支援するうえで大切なことである。今後もクラス担任や教科担任のほんの少しの工夫でできる支援を教職員で共有し、学校全体の取組としていきたい。
本事業を通じて、特別な支援を必要とする生徒に対する教育は、すべての生徒にとって有用な教育であることを実感した。今後も、「すべての生徒への積極的なサポート体制の構築に向けて」を念頭に、特別支援教育を推進していきたい。
課程 | 学科 | 第1学年 | 第2学年 | 第3学年 | 合計 | ||||
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学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | ||
全日制 | 普通科 | 6 | 239 | 6 | 208 | 6 | 175 | 18 | 622 |
計 | 6 | 239 | 6 | 208 | 6 | 175 | 18 | 622 |
校長 | 教頭 | 教諭 | 養護教諭 | 非常勤講 | 実習助手 | ALT | 事務職員 | 司書 | その他 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 42 | 1 | 13 | 1 | 0 | 4 | 0 | 6 | 70 |
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成22年07月 --