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特別支援教育について

群馬県 前橋清陵高等学校(公立)

都道府県名 群馬県
学校名 群馬県立前橋清陵高等学校
学校所在地 群馬県前橋市文京町2‐20‐3
研究期間 平成20~21年度

1.概要

1 研究課題

 高等学校における発達障害等のある生徒、特別な支援を必要とする生徒への学習指導、生活指導、進路指導等に関する具体的な支援方法の改善についての研究

2 研究の概要

  1. モデル校研究委員会のもとに研究推進委員会をおき、学校全体の調整を図りながら、定時制昼間部・同夜間部、通信制の各部会ごとに研究・支援を行う。
  2. 職員による観察に加え、心理テストの結果なども踏まえ的確に実態を把握する。
  3. 発達障害やその他の支援を必要とする生徒へのカウンセリング、ストレスマネジメント、ソーシャルスキルトレーニング等の技法について実践的に研究する。
  4. 発達障害や不登校経験生徒に基礎的・基本的な学力を身に付けさせる指導の改善について研究する。
  5. 学校生活や社会生活を円滑に送るためにコミュニケーションを重視した適応指導の改善について研究する。
  6. 定時制昼間部・同夜間部、通信制のそれぞれの生徒の実態に応じて教科指導、教科外指導を通してキャリア教育を含む自立に向けた支援を計画的に実施する。
  7. 発達障害等の生徒への指導や就労支援の充実を図るため、関係機関や「中毛・北毛地区高等学校特別支援教育連絡協議会」との連携方法の改善について研究する。

3 研究成果の概要

1.職員の意識・知識の向上
  • 1年目は生徒個々への取組であった特別支援教育が、2年目には生徒全体への支援・指導へと拡がりを見せている。この変化の要因は、校内における特別支援教育の体制整備が進んだ結果、職員全体の特別支援教育に関する知識が増え、日々の教育活動への意識が変わったことであると考えられる。
  • 2年間の研究により、職員が「生徒を受け入れる」「意識をもって生徒の支援にあたる」といった経験を積むことができた。
2.関係機関との連携
  • 特別支援学校、発達障害者支援センター、ぐんま若者サポートステーションなど多くの関係機関との連携を構築でき、2年間の研究実践を通してそのパイプを太くすることがができた。今後もさまざまな形で連携をとっていきたいと思う。

2.詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)

 実態把握については、特別支援教育コーディネーターによる担任・教科担当者・教育相談係・養護教諭・スクールカウンセラー・カウンセラー兼ジョブトレーナー(*)等からの情報収集が主な方法である。これら職員による生徒のサイン(困っている状態、指導上のつまずき、保護者からの相談など)への「気づき」に加え、客観的な実態把握として定時制昼間部・同夜間部の新入生全員に対して心理検査「PST‐3.(日本文化科学社)」を実施した。この検査結果のデータの中で気になる生徒について注意深く観察を続けた。この実態把握に基づく「気になる生徒」は在籍生徒数の2~3割に上る。さらに、定時制夜間部では特別支援教育コーディネーターが収集した情報をもとに資料を作成し、全職員による生徒情報交換会を実施し、情報の共有に努めた。
(※)カウンセラー兼ジョブトレーナーは週1日、本校の相談室に常駐し、生徒のカウンセリングの他、教職員や保護者の相談、進路に対して不安を抱えている生徒の心のケア、相談室内でのジョブトレーニングなどを行った。

イ 指導方針

 特別支援学校(同地区の高等養護学校)や県発達障害者支援センター、スクールカウンセラー、カウンセラー兼ジョブトレーナー等専門家の意見を仰ぎつつ、生徒のニーズに応じた具体的な支援について考え、実践に移すこととした。

ウ 成果と課題

 生徒情報交換会などを通して、職員が注意深く生徒を観察することができ、より深い実態把握をすることができた。また、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターや、本事業の一環として導入したカウンセラー兼ジョブトレーナーからの、豊富な経験と専門的な知見によるアドバイスは、具体的な指導方針を考えていく上で大きな力となった。このような取組により、職員全体の意識が向上し、問題行動を生徒のせいにしないなど生徒を受け入れる体制ができた。今後は生徒や保護者個々の教育的ニーズの把握、更なる支援力のスキルアップが課題である。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫

ア 授業の際の配慮事項等

 授業には出席しなければならないというルールについては徹底した指導を行った。また授業実践に関しては、障害の有無にかかわらず、すべての生徒にわかりやすい授業のための具体的実践として、以下のような取組が見られた。

  • 板書しているときは説明しない。(同時に2つのことをやらない)
  • 黒板に「教科書○ページ」「プリントの○番」などを書き、現在扱っている内容を意識させる。
  • 指示や発問は短く、簡潔に行う。
    さらに、授業改善の一環として、わかりやすい教材づくりに取り組む職員も増えた。楽しい教材や見やすいプリントづくりのために、以下のような取組が見られた。
  • プリントにおいて、フォントを太くしたり大きくしたりして、重要箇所の強調をする。(すべて同じ書体だと、注目すべき点が見つからないため。)さらに重要な事項や覚えるべき公式などは枠囲みをして強調する。
  • 発展的な内容を扱った補充プリントや、さらに基礎的な事項に絞ったプリントなど、個々のレベルに応じた課題を用意する。
イ テストにおける配慮事項等

 テストに至るまでの間に、事前にテスト対策課題や補習を行うなどしたが、テスト問題や問題用紙等については特に配慮はしていない。また、テストごとに座席が変わってしまうと不安定になる生徒については座席を固定したり、別室受験させたりするなどの配慮をした。

ウ 評価における配慮事項等

 個々の生徒がそれぞれの学習到達点に達することができるように個別に学習課題を提出させたり、レポートを作成させたりするなどの手だてを講じてきた。

エ 成果と課題

 障害の診断の有無に関わらず指導を行うとともに個々の生徒の理解度などを細かく見て、ていねいな授業を行うことができたことにより、日々の授業改善につながり、障害の有無を問わないユニバーサルデザインの授業の実践を目指す結果につながっている。今後は、個々の職員の取組として行われている授業改善の実践を、全職員で共有できるような場を設けるなどして、学校全体で授業改善に向けて取り組んでいきたい。

(3)発達障害のある生徒に対する就労支援
ア 支援の方策と内容

 本校では、就職試験やアルバイトの面接試験などの失敗から挫折感を味わい、その後の就職活動にうまく乗れない生徒も少なくない。そのような生徒の自己理解と職業意識を高め、卒業後の進路としての就労に向けて、ソーシャルスキル等の向上が求められている。生徒全体への指導としては次のような工夫をした。

  • ぐんま若者サポートステーションの協力を仰ぎつつ、生徒対象の企業見学会(ハローワーク・県内企業)を実施した。
  • 総合的な学習の時間やホームルームなどを利用して、職業人からの講話等をいただき、職業意識の向上を図った。
  • 希望生徒を対象に、ぐんま若者サポートステーションと連携したジョブトレーニング(マナー講習→ボランティア→事後指導)を実施した。
  • 就職希望者に対して、学校行事(文化発表会)での接客を通して、職業の疑似体験学習をさせた。

 また、個別の生徒に対して、特別支援学校の生徒が実習を行っている企業を紹介していただき、企業見学および就業体験(インターンシップ)を実施した。事前指導として、職員がビジネスマナー講習を実施し、見学時には担任が企業まで同行した。

イ 成果と課題

 これらの実践によって、生徒が「働きたい」という気持ちを強くしたことは確かである。しかし、依然として一般就労は難しい現状がある。単位制高校である本校ではクラス単位の授業がなく、ホームルーム等の時間が限られており、総合的な学習の時間やホームルームを利用した計画的・継続的なキャリア教育が難しい現状がある。生徒のキャリア形成を入学後早い段階から支援していく必要性があるため、進路指導部が中心となり具体的な取組を検討している。

(4)一般の生徒に対する理解推進等の指導の在り方
ア 指導の工夫と取組

 小中学校における不登校経験をもつ生徒が多い本校においては、自分自身の生活を安定させることに精一杯で心の余裕をもてない生徒が多い。そこで、発達障害を理解することにこだわらず、人権教育などと関連させることで生徒の「他者を大切にする心」の育成を図ることとした。具体的には、定時制昼間部・同夜間部、通信制それぞれの生徒の実態に応じて、ぐんま若者サポートステーションから講師を招聘するなどし、以下のような講座を実施した。

(ア)定時制昼間部
平成21年7月15日
 「人間関係づくりのコツ」(1学年)
 「良いところ探しから、プロフィールづくり」(2学年)
 「新しい環境での人間関係づくり」(3学年)
平成22年1月13日
 「良いところ探しから、プロフィールづくり」(1学年)
 「人間関係づくりのコツ」(2学年)
 「パブリックマナー」(3学年)

(イ)定時制夜間部
平成21年11月16日
 「エゴグラムで自己理解を深める」(1・2学年)
 「新しい環境で役立つ人間関係作り」(3・4学年)
平成22年1月25日
 「エゴグラムで自己理解Part2」(1・2学年)
 「コミュニケーションマナー応用編」(3・4学年)

(ウ)通信制
平成21年6月7日
 「人権教室(DVD「音符と昆布」鑑賞)」
平成21年10月25日
 「ストレスマネジメント教室」

イ 成果と課題

 定時制昼間部で行った講座を通して、コミュニケーションスキルを身につけることは、社会の中で上手に生きていくためには必要なことである。理論から入るのではなく、実際の立ち居振る舞い方から学習でき、生徒も理解しやすく、その重要性を楽しく感じ取ることができたようであった。また定時制夜間部では、学校生活や今後の社会生活でさまざまな体験をする生徒にとって、ストレスとは何かを知り、自らコントロールする力を身につけることは、人生を豊かにし、またよりよい人間関係を築いてゆくために必要なことである。ストレスマネジメント法、自己理解の手段、具体的な人間関係づくりの方法など、多くのことを学習することができた。通信制においては発達障害への理解を促すため、DVD鑑賞を行った。生徒のレッテル貼りにつながってしまうのではないかと心配もあったが、生徒は思いの外、素直に受け止めていた。また、ストレスマネジメント教室では手軽なリラックス法を学習でき、大変有意義であった。
 今後も継続して指導を行う機会を設ける必要がある。

(5)教職員や保護者の研修等
ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等

 平成20年度に引き続き、校内職員研修ならびに県内各地で実施された「特別支援教育総合推進事業」や関係機関主催の特別支援教育等に関わる研修会に多くの教職員が参加した。

(ア)校内職員研修
 平成21年6月5日 「発達障害(高機能自閉症)の子供を育てて~幼児期から就労まで~」
 講師:群馬県自閉症協会高機能部会代表秋元恵利子氏
 目的:高等学校において、発達障害等を抱える生徒・保護者の教育的ニーズを学び、個々の生徒についての適切な指導および支援の充実を目指す。
 内容:講師の長男(高機能自閉症)の子育てについて。保護者が学校に求める教育的ニーズについて。

平成21年9月10日 第一部「自閉症スペクトラムの特徴をもつ学生の支援の実際」
 講師:群馬県自閉症協会高機能部会代表秋元恵利子氏
 目的:発達障害を抱える生徒の保護者から、家庭で実践している具体的な支援方法について学び、本校における個々の生徒についての適切な指導および支援の充実を目指す。
 内容:講師の三男の進路実現までの道のりから、現在の高校教育に求められている個々の生徒への支援の在り方について。
 第二部「関係機関とのよりよい連携の構築に向けて」
 講師:群馬県発達障害者支援センター発達援助係稲毛潔氏
 目的:発達障害者支援センターの業務内容や利用方法などを知り、支援体制・協力体制の充実を図る。
 内容:発達障害支援センターとの連携構築に向けて学校がすべきことについて。

平成21年12月3日 「『特別支援教育』と高等学校における教育 ‐多様な学習ニーズに応じる後期中等教育‐」
 講師:東京農業大学農学部 教授 滝坂信一氏
 目的:特別支援教育の今後の展望や、高等学校における特別支援教育の在り方について学び、モデル事業が終了したあとも継続して支援体制を整え、日常的に支援していくための手だてを考える。
 内容:高等学校が抱える課題をもとに、「特別支援教育」を越えて、これからの高等学校が果たさなければならない役割等について。

(イ)外部研修会

平成21年7月10日 会場:群馬県立渋川女子高等学校(昼間部コーディネーターが参加)
 「中等教育における特別なニーズのある生徒への支援」
 講師:東京農業大学農学部 教授 滝坂信一 氏

平成21年8月3日 会場:群馬県立太田高等養護学校(夜間部3名が参加)
 「発達障害のある生徒への対応」
 講師:国立のぞみの園 所長 有賀道生 氏

平成21年10月7日 会場:群馬県立玉村高等学校(夜間部2名が参加)
 「高校生の自立・就労支援に向けて、学校と家庭でできること」
 講師:LD親の会「けやき」 副会長 新堀和子 氏

平成21年11月26日 会場:群馬県立高崎高等養護学校(昼間部1名・夜間部5名が参加)
 「発達障害の高校生への支援と個別の教育支援計画」
 講師:新潟大学教育学部 准教授 長澤正樹 氏

平成21年12月1日 会場:群馬県立前橋高等養護学校(昼間部1名・夜間部4名が参加)
 「高等学校における卒業後を見据えた指導・支援」
 講師:植草学園大学発達教育学部 准教授 鳥居深雪 氏

平成22年1月5日 会場:群馬県総合教育センター(夜間部コーディネーターが参加)
 ・教育改革・群馬プロジェクト 特別支援教育の推進
 「成人期を見通して~特別支援教育と地域連携~」
 講師:立正大学 教授 玉井邦夫 氏

(ウ)他校視察・先進校視察
平成21年5月29日
「モデル事業報告会」
 大阪府立枚方なぎさ高等学校
 大阪府立佐野工科高等学校
 大阪府立桃谷高等学校
平成21年7月28日 福岡県立東鷹高等学校
平成21年7月28日 神奈川県立田奈高等学校
平成21年7月29日 西日本短期大学附属高等学校
平成21年7月29日 新潟県立出雲崎高等学校
平成21年7月29日 星槎高等学校
平成21年10月27日 「モデル事業研究発表会」長野県下高井農林高等学校
平成21年10月27日 滋賀県立日野高等学校
平成21年10月28日 三重県立朝明高等学校
平成22年1月9日 「モデル事業報告会」高知県立高知北高等学校

イ 成果と課題

 2年間で計7回の校内職員研修を実施した。さらに外部の研修等を通して教職員の発達障害や特別支援教育への理解はたいへん深まった。特別支援教育に対する知識とともに意識も向上したため、日々の教育活動にのぞむ姿勢も変わったという教員が非常に増えた。はじめは生徒個々への取組であった特別支援教育が、生徒全体への支援、指導へと拡がりを見せている。この職員の知識の向上や意識の変化により、学校全体の活力も上がっているように感じる。実際にここ数年で生徒の出席率が上がり、退学率が減り、問題行動件数も減ってきている。全体的に学習に向かう姿勢が変わってきていると感じている職員も多い。さらに、中学生の志願率が上がってきているというのも大きな変化である。これらの変化は一概にモデル事業だけの成果とは言えないだろうが、モデル事業によって職員の意識が変わり「生徒を受け入れる」「意識的に生徒の支援にあたる」といった経験を通して、学校全体が変化してきていることは明らかである。
 今後も、職員研修を継続して実施・充実させるとともに、事例研究などを通した生徒理解に力を入れていきたい。

(6)その他の支援に関する工夫
ア 生活面での支援

 障害の有無にかかわらず、生徒個々の実態に即して、学校生活への適応を目指す支援を行った。個別の支援として実践した工夫には以下のような取組がある。

  • 「授業中の約束事」というイラスト入りのプリントを作成し、常備させることで、授業に臨む姿勢と態度を意識させた。

 この「授業中の約束事」プリントは、障害を抱える生徒だけでなく、その他の生徒にも効果があった。そこでプリントの項目等を検討し、年度当初には新入生全員に配布して生徒指導部から説明を加えた。さらにすべての教室に掲示し、定時制昼間部・同夜間部、通信制における全授業において、授業に臨む姿勢を意識できるようにした。
 その他、生徒全体への指導として、以下のような工夫を行った。

  • 学年通信に予定表を掲載して配付した。ホームルーム時にいなかった生徒も、この予定表を目当てに職員室の担任を訪ねてくることもあり、担任とのコミュニケーションの機会にもなっている。
  • 生徒に小さなノートを持たせ、生活日記を記録させた。文章を書くことのトレーニングにもつながり、随時、困りごとがある生徒は相談のきっかけともなり、一定の成果を得ることができた。

2 研究の方法

(1)研究委員会の設置
ア 構成
NO 所属・職名 備考
1 群馬大学教育学部・教授 外部委員
2 NPO法人リンケージ・理事長 外部委員
臨床心理士
カウンセラー兼ジョブトレーナー
3 群馬県立前橋高等養護学校・特別支援教育コーディネーター 外部委員
4 校長 委員長
5 定時制昼間部・教頭 副委員長
6 定時制夜間部・教頭 副委員長
7 通信制・教頭 副委員長
8 定時制昼間部・教務主任  
9 定時制夜間部・教務主任  
10 通信制・教務部長  
11 定時制昼間部・生徒指導主事  
12 定時制夜間部・生徒指導主事  
13 通信制・生徒指導部長  
14 定時制昼間部・進路指導主事  
15 定時制夜間部・進路指導主事  
16 通信制・学習進路部長  
17 定時制昼間部・特別支援教育コーディネーター  
18 定時制夜間部・特別支援教育コーディネーター  
19 通信制・特別支援教育コーディネーター  
20 定時制昼間部・養護教諭  
21 定時制夜間部・養護教諭  
イ 委員会開催回数・検討内容

 昨年度に引き続き、上記委員によるモデル校研究委員会を年3回実施した。
平成21年6月24日 第1回モデル校研究委員会(委員、県教委)

  • 外部委員の委嘱
  • モデル事業の概要説明(昨年度の取組、今年度の計画)
  • 定時制昼間部・同夜間部・通信制より経過報告
  • 外部委員および県教委からの指導・助言

平成21年10月8日 第2回モデル校研究委員会(委員)

  • 研究の進捗状況等の報告
  • 他県学校視察報告
  • 校内職員研修報告
  • 定時制昼間部・同夜間部・通信制より取組状況報告
  • 外部委員からの指導・助言

平成21年12月8日 第3回モデル校研究委員会(委員、県教委)

  • 校内職員研修報告
  • モデル事業研究発表会について
  • 研究報告書(紀要)について
  • 定時制昼間部・同夜間部・通信制より取組状況報告
  • 外部委員および県教委からの指導・助言

 研究委員会のほか、定時制昼間部・同夜間部・通信制の各教頭・特別支援教育コーディネーター・教育相談係、定時制昼間部・同夜間部の各養護教諭、事務長、事務会計担当者による研究推進委員会を設け、相互の情報交換や研究推進の具体的方策について年7回の検討を行った。

ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の作成等具体的な方策

 平成19年度から、定時制昼間部・同夜間部・通信制のそれぞれに特別支援教育コーディネーター(教諭)を配置し、校長を委員長とする特別支援教育校内委員会(上記研究委員会を兼ねる)を設置している。さらに定時制昼間部・同夜間部・通信制のそれぞれに特別支援教育コーディネーターを中心とした係組織を置き、必要に応じて係会議を開催するなどして、生徒の情報交換などを行った。
 また昨年度末より、個別の指導計画・教育支援計画を記入しやすい様式にして「個別の支援ファイル」を作成し、その有用性を検証してきた。記載が容易で随時更新できるものとして、生徒に関する情報を職員で共有したり、次年度の担任へ引き継いだりする際に有用である。

エ 成果と課題

 研究委員会においては、委員の人数も多く、個々の生徒のケースを取り上げて話し合う場が持てなかった。そこで特別支援教育コーディネーターが中心となり、定時制昼間部・同夜間部・通信制のそれぞれの生徒の実態に即した支援を相談することができるような係組織を置いて、具体的な支援方法やその見直し等を行ってきた。こうした実働的な下部組織を置いたことは、非常に有効であった。
 また、「個別の支援ファイル」については、これを見ただけでは生徒のより深い実態を把握することができない。今後は、支援ファイルを作成する際に行ったケース会議や支援会議などの資料を支援ファイルに綴じ込むことで、生徒の実態をより深く把握できるものとしていきたい。併せて、支援ファイルの様式も検討していく必要がある。

(2)専門家チームの活用
ア 構成

※本校における「専門家チーム」は設置していないので、ここでは群馬県教育委員会で設置した専門家チームの構成員をあげる。

NO 所属・職名 備考
1 小児科・医師
2 精神科・医師
3 精神科・医師
4 群馬県立女子大学・教授
5 群馬大学教育学部・准教授
6 臨床心理士
7 臨床心理士
8 有限会社 SNOW DREAM
9 NPO法人リンケージ
10 群馬県発達障害者支援センター・所長
11 西部児童相談所・虐待対策専門官
12 障害政策課地域生活支援係・係長
13 子育て支援課家庭福祉係・係長
14 前橋市福祉部こども課
15 幼児教育アドバイザー
16 群馬県教育委員会特別支援教育室・幼保小中担当
17 群馬県教育委員会特別支援教育室・高等学校担当
18 群馬県総合教育センター・特別支援研究係
19 群馬県総合教育センター・特別支援研究係
イ 専門家チームの活用状況

 上記「専門家チーム」としての活用はしていないが、この中にはモデル校研究委員会外部委員・本校カウンセラー兼ジョブトレーナーを兼ねている構成員がおり、本研究および本校の生徒支援に多大なご尽力をいただいた。また、上記構成員の県教育委員会特別支援教育室高等学校担当指導主事には、2年間の研究にあたり多方面からのご指導をいただいた。

ウ 成果と課題

 「専門家チーム」としての活用はないが、上記関係機関の協力を仰ぎつつ、生徒のニーズに応じた具体的な支援について考え、実践することができた。今後は県の専門家チームを活用し、指導・助言をいただきながら、教職員のさらなる実践的スキルアップと組織的な対応力の強化に努めていく。

(3)関係機関との連携
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携

 特別支援教育のセンター的機能を担っていただいている県立前橋高等養護学校の特別支援教育コーディネーターから具体的な支援に関する指導・助言をいただいたり、ときには直接生徒や保護者との面談に関わっていただいたりした。また必要に応じて関係機関との連絡調整を行っていただき、生徒の支援会議を設定した。
 また、県立前橋高等養護学校と中毛・北毛地区(群馬県中央部および北部)の高等学校とにより組織された「中毛・北毛地区高等学校特別支援教育連絡協議会」において、各校の実践例など情報交換を通して、発達障害等の生徒への指導の充実を図ってきた。また、研究内容の報告を定期的に行うなどして成果等の検証を行った。

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携

 一般就労が困難であると思われる生徒については、進路指導部が中心となって働きかけを行い、ハローワークに同行し、担当者と相談を行うなどした。また、今年度は毎週水曜日午後から夜間にかけてカウンセラー兼ジョブトレーナーを配置し、生徒のカウンセリングに加え、本人の特性に応じた進路先を検討するため、本人・保護者や職員が相談に利用している。
 高校卒業後の移行支援に向け、家庭と発達障害者支援センターなどの関係機関をつなげるための支援会議を、県立前橋高等養護学校の特別支援教育コーディネーターの協力を得て実施した。さらに、障害の診断や認識のない生徒について、卒業後も地域で支援してもらうため保健師を交えた支援会議や、就労に向けて訓練を積む場としてのぐんま若者サポートステーションの担当者を交えた支援会議を実施した。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

 特に活用には至らなかった。

エ 成果と課題

 生徒の卒業後の具体的支援に関して、県立前橋高等養護学校や発達障害者支援センター、地域の障害者相談支援センター、保健所、ぐんま若者サポートステーションなどを交えた支援会議を実施することができた。これにより、生徒が在学しているうちに、卒業後を見据えた生活支援や就労支援について検討することができた。
 今後は、地域の中学校とも連携しながら、入学後早期からの支援の充実にあたる必要がある。

(4)関連事業等との連携
ア 「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」との連携

 本事業のサポートにより、県内の高等学校・特別支援学校で研修会等が開催され、本校の職員も多く参加した。県立前橋高等養護学校における中毛・北毛地区高等学校特別支援教育連絡協議会もこの事業のサポートで開催されている。

イ 「特別支援教育総合サポート事業(県単独事業)」との連携

 本事業のサポートにより、県内の特別支援学校のセンター的機能の充実が図られ、県立前橋高等養護学校の特別支援教育コーディネーターの巡回相談を利用することができた。

3.今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

1 高等学校における「特別支援教育」の在り方について

 発達障害の有無にかかわらず、ニーズのある生徒への支援が必要である。発達障害の診断がなくても支援を必要とする生徒は多く存在し、発達障害の診断があっても従来の指導で対応できる生徒もいる。生徒個々の実態を細かく見て、一人ひとりに適した指導・支援をしていくことが必要である。
 また、高校入試を経て入学する高等学校では、生徒の実態も学校により大きく異なる。課程や学科もさまざまでり、それぞれの学校で特色ある実践に取り組んでいる。このような現状の中、各学校の特性に応じて、校内委員会等を中心とした組織的な校内支援体制を構築して、より機能的な一人一人に応じた支援体制を組んでいく必要がある。また、本人、保護者、教師がより特別支援教育に対する正確な理解をもち、より気軽に相談を受けられるような啓発が必要である。そのためには、高等学校における特別支援教育について、より多くの人が当たり前の様に受けられるようにしていくことが必要である。
 さらに、本校の特別支援教育の推進においてはカウンセラーの存在が非常に大きかったことから、今後、高等学校における多様な生徒に対応するためにも、専門性の高い教職員の配置・増員や発達障害等の支援や就労支援ができるカウンセラーや専門家の養成が必要である。
 以上のことから、障害の有無にかかわらず生徒一人ひとりを大切にする支援体制を、それぞれの学校の実態・特徴に合わせて整備することが、今後の高校教育改革に必要なことなのではないかと考える。

2 中学校との連携

 発達障害の診断のある生徒等が高校に入学したあと、不適応を起こすまで本人が抱える困難に気づかないこともある。これらの生徒が、高校入学後に充実した生活を送るためには、入学前から中高が連携し綿密に情報交換を行う必要がある。しかし、中学校側からは高等学校の敷居は高く感じ、積極的に働きかけができないようである。高校側から働きかけたとしても、発達障害であることの公表が入試に影響することを懸念し、細かな情報交換がしづらいということもありうる。そこで、センター的機能の特別支援学校に、中高連携の橋渡し役をお願いしたい。特別支援学校が中心となり、地域の中学校と高等学校を集めて地域連絡協議会を開催することで、お互いに特別支援教育への取組状況などを情報交換する場となることが期待される。
 今後、中学校と高等学校が連携し、発達障害を抱える生徒等にとって過ごしやすい学校環境を整えるためには、特別支援学校のセンター的機能のように、高等学校をサポートする体制の充実が望まれる。

3 高校卒業後のステージ

 特別支援教育の充実によって、困難を抱える生徒はスモールステップを積み重ね、徐々に適応しながら居心地のよい学校生活を送ることができる。しかし、高等学校卒業と一般就労の間には大きな段差があり、これまでのようなスモールステップではたどり着けない生徒も多い。経済的な理由により上級学校に進学できない生徒もいる。そこで、高校卒業後にこれらの生徒が就労に向けてトレーニングするために、スモールステップで到達できる場(ステージ)が必要なのではないかと考える。現在、NPO法人などによって運営されている組織もあるが、公的な就労訓練機関の設立を期待したい。

4.その他特記事項(エピソードを含む)

1 定時制昼・夜間部、通信制における実践

(1)定時制昼間部

 昼間部職員が誰でもいつでも動ける体制を整えておきつつも、前面からの指導ではなく、側面からの支援というスタンスを取った。スクールカウンセラーやカウンセラー兼ジョブトレーナーとの情報交換を密に行うなどして、日頃の指導に丁寧にあたった。進路指導面での課題が見えてきたため、今後の具体的な取組について検討を始めた。

(2)定時制夜間部

 特別支援教育係7名及び教育相談係長、養護教諭による係会議を実施し、生徒情報の共有や経過報告・情報交換などを行った。また、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターや発達障害者支援センター職員などを招聘して、関係職員を交えたケース会議や支援会議を随時実施してきた。これらの会議の内容については、担任や授業担当者、各分掌への情報提供として報告を行い、それぞれの立場での支援方法を検討してもらってきた。

(3)通信制

 日常的に生徒を観察することができないので、生徒から提出される書類やレポート、スクーリング時の様子などで実態把握を行っている。また、スクールカウンセラーやカウンセラー兼ジョブトレーナーとの情報交換、職員間の相談、生徒に関する情報交換などを密に行った。

2 実践に関するエピソード等

 本校における特別支援教育の取組が診断の有無にかかわらず、生徒全体への支援・指導へ拡がり、教員の意識が高まった結果、日々の教育活動の中で以下のような教育のきめ細かな対応と生徒の変容が自然な形で見られるようになった。

  • 書字が乱れ、自分で書いた文字も読めないことがある生徒について、国語科の教員が様子をよく観察していたところ、鉛筆の持ち方に問題があることに気がついた。授業中に机間指導を行いながら鉛筆の持ち方指導を行った。本人は「書きやすくなりました」と反応し、書字も少しずつ整ってきた。それとともに表情も明るくなり、前向きに授業に取り組む様子が見られるようになった。
  • コミュニケーション能力や判断力に課題がある生徒について、学校で生活指導(特別指導)を行うことがあった。その指導の中で、登下校時に必ず職員室に立ち寄り、生徒指導主事と話をすることとした。ここでの話は形式張らず、学校での行動や家庭での様子、趣味などについて雑談を行った。一定期間の指導の後「明日からは普通に登下校し、職員室に立ち寄らなくてもよい」と伝えたところ、本人は「明日からも来たいです」と申し出てきた。指導が自分のためになっていると実感しているようであり、その後も本人の希望どおり指導を継続している。
  • 就職希望だが、職業意識や社会性・コミュニケーション能力に課題があり、一般就労が困難な状況であった生徒。周囲が進路に向けて準備を進めている姿を目にして、不安な様子を見せることがあった。なんとか職業意識を向上させ、就職に向けて動くことで不安を減らしたいと考え、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターに相談し、特別支援学校の生徒が実習を行っている企業を紹介していただき、企業見学を実施することにした。カウンセラー兼ジョブトレーナーの助言を仰ぎつつ資料を作り、事前に係によるビジネスマナー講習を実施した。その指導を活かして、生徒はスーツで訪問したため先方への印象もよかった。その後、企業や特別支援学校と相談しながら、実習形式での就業体験をさせた。

3 「高等学校における発達障害支援モデル事業」研究発表会の実施概要

(1)実施年月日:
 平成22年2月2日 13時~16時30分

(2)会場:
 群馬県生涯学習センター

(3)実施内容等:

  1. 開会行事
  2. 前橋清陵高等学校モデル事業研究発表
  3. 事例報告(県内2校から特別支援教育への取組事例の報告)
  4. 講演「高等学校における特別な教育的ニーズのある生徒への指導・支援の在り方」
    講師:弘前大学教育学部教授佐藤紘昭氏
  5. 閉会

(4)参加者:135名
 (県外教育委員会6名、県外高校・特別支援学校29名、県内関係機関・教育委員会16名、県内小・中学校24名、県内高校・特別支援学校60名)
 および本校職員約40名

(5)総括:
 県内外から多数の参加をいただき、本校の取組を報告した。評価の在り方や就業体験実習のカリキュラムへの組み込み方など、今後も検討していかなければならない具体的な課題について質問や意見が出された。本発表会でいただいた意見をもとに、本校の特別支援教育をさらに充実させていかねばならない。

5.総括

1 成果と課題

(1)成果
ア 職員の意識・知識の向上

 本校の職員アンケートの結果から、モデル事業の指定を受けたことが生徒のためになっていると感じる職員が、平成20年度71%から平成21年度90%に増加している。これは、はじめは生徒個々への取組であった特別支援教育が、生徒全体への支援・指導へと拡がりをみせていると考えられる。この変化の要因としては、職員全体の特別支援教育に関する知識が増え、日々の教育活動への意識が変わったことなどがアンケートの記述から分かる。

イ 関係機関との連携

 この2年間で多くの関係機関と連携をもつことができた。特に、特別支援教育のセンター的機能を有する地域の特別支援学校には、モデル事業指定以前からさまざまな形で指導・助言をいただいてきた。普通高校だけではできない部分について、適切な機関を紹介するパイプ役だけでなく、的確なアドバイスまでいただいた。また、2年間カウンセラー兼ジョブトレーナーをお願いしたNPO法人リンケージ理事長とのご縁もあり、ぐんま若者サポートステーションを紹介いただき、生徒向け講演会やジョブトレーニング、企業見学会など多くの場面で協力いただけた。これらの関係機関とのパイプは2年間で非常に太くなった。今後もさまざまな形で連携をとりたい。
 以上の成果については、モデル事業から得られたものであるが、今後も本校の財産として残るものである。

(2)課題
ア 計画的なキャリア教育

 単位制という学校のシステムから、日常的・計画的・継続的なキャリア教育が難しいという状況がありながら、生徒のキャリア形成を入学後早い段階から支援していかなければならないという必要性もある。進路指導部が中心となり、具体的な取組を検討している。

イ きめ細かい実態把握について

 本校に入学してくる生徒は毎年様子が違う。さまざまな特性を持って入学してくる生徒の変容を追跡調査することは難しいが、生徒の学力の変化や、学校生活・進路に対する意識の変容を具体的に把握することは、今後の本校に求められている教育的ニーズを把握する上で必要なことかもしれない。そのニーズの上に、どのような教育活動(支援活動)を行っていくかを具体化していくことも必要である。

ウ 保護者への対応

 発達障害への理解・認識の有無によって、保護者への対応も慎重に行う必要があった。本人・保護者に寄り添いながら、効果的な対応を検討していかなければならない。

エ 生徒の居場所としての学校づくり

 生徒が落ち着いて学校生活を送るためには、学校が居心地のよい場所でなければならない。校内美化に努めるとともに、生徒の休憩場所に植物を置くなどして、生徒も職員も居心地のよい空間を増やしていく必要もある。

2 おわりに

 2年間の本事業を行う中で、特別支援教育に取り組むことで救われた生徒が多くいる一方、まだまださまざまな困難を抱え、日々苦しんでいる生徒もいる。それでも今の本校には、この2年間の成果・財産をもとに「やっていこう」という職員の思いと熱意がある。

6.モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成21年5月現在)

課程 学科 第1学年 第2学年 第3学年 第4学年 合計
学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数 学級数 生徒数
定時制 昼間部 普通科 2 78 2 74 2 62 2 23 8 237
2 78 2 74 2 62 2 23 8 237
定時制 夜間部 普通科 2 77 2 66 2 52 2 28 8 223
2 77 2 66 2 52 2 28 8 223
通信制 普通科 3 251 2 107 2 125 3 155 10 638
衛生看護 科 1 9 1 4 1 2 3 15
4 260 3 111 3 127 3 155 13 653
8 415 7 251 7 241 7 206 29 1113

2 教職員数 (平成21年5月現在)

校長 教頭 教諭 養護教諭 非常勤講師 実習助手 ALT 事務職員 司書 その他
1 3 48 2 32 0 0 5 1 2 94

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成22年07月 --