都道府県名 北海道
学校名 北海道士別東高等学校
学校所在地 北海道士別市上士別町15線南3番地
研究期間 平成20~21年度
一人一人の評価に基づき、全生徒に支援的に関わる学校体制の構築
(1)生徒を支える校内体制の安定化
(2)専門機関との連携を有効に活用した、生徒理解のための研修の継続
(3)生徒の実態把握に基づいた教育課程の編成及び、授業内容の精選・指導法・評価の研究
(4)生徒の自立を見据えた進路指導
(5)保護者・幼・小中学校等・進路先との連携
1年目に引続き、校内では生徒に関する情報交換の場を設け、同時に専門機関との相談の機会を設けてきたが、結果を急ぐ傾向が強まり、生徒理解よりも具体的なかかわり方を知りたいという声が大きくなった。相談員から適切に情報を得て、教員が主体的にチームで生徒にかかわることとならず、教員の関係性に偏りが生じ、孤立・「抱え込み」を招いた。連携および生徒の情報を共有するという点において、長期間の停滞が生じた。
反面、具体的な指導方法の獲得に各教員が意欲的に取り組み、わかりやすい指導方法をめぐって特別支援学校等の視察や校内研修が実施された。更に、評価方法を見直し、評価と観点を生徒に理解しやすく示すことで、学習を主体的に取り組む姿勢の喚起を目指した。
進路指導に関しては、職場開拓が積極的に行われ、インターンシップのあり方について、卒後の具体的な目標につながるような設定が検討された。就労に関しても、即効性を求める意見が多く、医療機関の受診・検査や手帳の取得などに関して、当事者不在の働きかけを検討する傾向が強まったため、福祉機関の担当者や、就労支援団体の代表者による研修会を設け、支援に関する現場の実態を知る機会を得た。
基礎学力の定着を目的としたベーシックスタディーを含む、学習支援への取り組みは、授業の成立、ひいては生徒の学校生活への高い定着となって現れている。しかし、学校生活の意味を「教科科目の知識・技能の理解と獲得」にのみ留まらせる傾向となったことから、「就労の継続にかかわって求められる力」や「本人や保護者の当事者としての想い」について研修した。そのことによって、地域社会における学校の役割を自覚し、学校内に完結することのない視野で生徒とかかわり、育てていくことの重要性を学んだ。
昼間定時制高校の普通科で、全日制高校と同様の日課である。少人数であるが、多様な実態の生徒が在籍している。入学者選抜は面接のみで、定員割れしていることから、受験者全員が入学する。その中で、中学校までに不登校・不適応を経験している生徒の割合が約半数程度を占める。
多くの生徒に、学齢に見合わない学習面での躓きがみられる。その要因としては、何らかの理由によって学習・習熟の機会を得られなかったこと、発達や心身の課題を抱えていること、単に勉強をしてこなかったこと、などが推察される。
本校入学にあたっては市からの助成等もあり、経済的な負担が軽減されている。加えて、アルバイトをしながら定時制通信制の学資金を得ることも出来るため、生徒自身が家庭に負担をかけずに修業できることを主な志望理由に本校を選択していることが推察される。
更に、普通科高校であるが、福祉教科や商業教科が設定されており、関連の資格取得が可能なことから、入学時に志望理由として挙げる生徒も多い。
また、和気藹々とした校風を好み、大きな集団よりは、少人数のなかで、のびのびと高校生活を送りたいという希望の生徒が多くみられる。
本校では「発達障害」(=LD、ADHD、高機能自閉症等、を示す。本報告においては以下同義として用いる)の有無に限定した視点での実態把握を行っていない。そのため、全ての生徒について、実態把握を行っている。
実態把握の方法は、すべて話し合い形式の相談や情報交換・打ち合わせによる。その具体的な方法は次のとおりである。
「発達障害」の有無に関わらず、「すべての生徒に支援的に関わる」という方針を立てている。
「発達障害」だけを特別に取り上げない理由を次のように考えている。
学校は、学習活動を行い社会性を身に付ける場である。高等学校卒業後は、更に教育機関への所属を経過するかどうかの差異はあるが、一般社会に適応することが求められることから、本校では一人一人の生徒が集団の一員として過ごすことを重要視している。
しかし、発達障害に関わる困難は、その理解されにくさから察するに、生徒本人にとって非常に大きなものである。上記のような理由から、在籍生徒を発達障害の有無で区分けした教育活動は行わないものの、その困難の理解と適切な対応を目指し、正しい知識・認識を得るための研修を職員全体で行って来た。また、各種関連機関との連携も、卒業後を見通した望ましい登校の継続のために必要不可欠である。
また、校内体制においては、生徒の実態を反映した教育活動を充実させ、学校ぐるみでの取り組みを目指している。
小規模校でありながら士別東高等学校には多様な実態の生徒が在籍しており、生徒集団の実態に合わせた教育活動を行ってきている。「発達障害」という概念は我々にとって新しいものではあるが、支援されるべき多様な困難のうちの一つと考えている。
むしろ、日頃の生徒への関わりにおいては、学校生活から学校外、家庭に及ぶ生活上の様子を教員集団が共有することで、生徒を深く「知る」ことが最も重要なことであると感じた。日々変容していく生徒を育てていく学校現場においては、生徒を「知る」ことは絶えず教員に求められていることと感じる。生徒を「見る」「知る」ことの継続により、その精度が高まりつつあり、予測的に生徒とかかわることにつながっている。教員の経験年数、教科、性別、人柄など教員それぞれの個性を互いを認め合いながら、協力する姿勢が見られるようになった。
反面、生徒の実態を知ることで、本校に在籍する生徒がいかに多くのニーズを持っているかを知ることになった。社会生活を営むために最低限必要と思われる基礎学力・コミュニケーション能力の不充分さのほか、家庭の生活基盤や、将来の生活保障といった面でも、不安な課題を複数抱えながらも、何とか登校が保たれている生徒が多い。生徒の実態を把握し、学校内ができ得る範囲の対応をすることでは、卒後の自立を見通すことが難しく、更に何らかの支援が必要であるとの認識がなされた。
同時に高等学校の教育課程において求められることを負う責任が各教諭にあるため、それら生徒の困難をそれぞれの教科学習によって解決しようとする意識にとらわれた。生徒の実態との間の隔たりに対する姿勢は、次のA、Bに大きく二つに分かれた。
A:生徒の実態を踏まえ、指導方法の工夫等によって、生徒の力を学習指導要領の求める高等学校の水準に引きあげようとする姿勢。
B:生徒の実態を踏まえ、高等学校の水準を充分に満たすことは難しいながらも、高等学校の教材を用いて、評価の観点を多面的なものにしながら、学校への適応を保ち、指導の工夫などによって出来ることを増やす姿勢。
Aの取組みに伴って、補習の機会を設けるなどしても、充分な知識の習得と理解が認められない生徒も見られ、その生徒については、より適切な教育の場があるのではないか、という意見が出るなど、教員間の考え方に大きな差異が生じた。そのことなどから、取組みが各教諭において個別化し、全体的な研修の停滞を招いた。
学校における教育活動のうち、生徒の社会参加に有効な活動は、学校に所属することから始まり、そのすべてが、模擬社会として、実社会の前段階としての様々な活動の場と言えるが、教員の価値観・認識は、やや学習内容の習得にのみ偏っていたように思われる。
行事への取組みの見直しなども行われたが、教育活動における行事の意味づけ・有効性については、「学習支援」の研修等において見出されたほどの確認はなされていない。
今回の取組みで把握された、生徒の状況は、必要に応じて、校内での情報共有の際や、校外の機関との連携の際に、資料としてまとめられ、生徒への対応のために適切な利用が図られてきた。それらは、職員の入れ替わり等による、校内での役割の交代に対応するためにも、引き継がれ、適切な生徒対応に利用されていくべきである。個別の支援計画および指導計画を作成することになっており、具体的な内容を検討する段階に入っている。
「発達障害」の有無という視点で生徒を把握していないため、「発達障害」に限って特別な配慮は実施していない。個別にその事情を勘案し、配慮が必要と認められる場合には学校の対応できる範囲で配慮している。ただし、どの生徒においても校内規定の定める範囲内の対応である。例えば、別室や保健室での出席を認めることや、課題提出によって授業を出席とすることなどは、校内規定で認められていないため、そのような対応はしていない。
平成20年には、各教科間での授業内容の情報交換を基にシラバスを作成し、その検討内容を反映した授業が行われた。
授業は基本的に一斉で行うが、一学級当たりの人数が少ないため、各生徒へ目が行き届き易いことから、教科担任は生徒の状況を個別に確認しながら、ノートの代わりとなるプリントを作成したり、図や絵を用いた説明をするなどの工夫をしている。また、プリントのどの箇所について授業を行っているかを明確にするため、OHPでも同じプリントや教科書を示しながら、授業を進める試みも見られた。
ただし、数学は習熟度別に3展開し、グループ学習を行う。また、学校設定科目「ベーシックスタディ」(漢字の読み書き、数学・算数の基礎学習)では、個々の学力に応じた少人数対応の学習活動によって、個別の支援を行っている。
また、学習成績の振るわない生徒に対しては補習が行われる。補習の対象は、各学期の中間考査の得点が一定の基準に満たない点数だった時、学期末の評価において1がついた時(3学期においては単位取得が認められないこと、1、2学期においてはそのおそれを意味する)、欠課時数が基準の授業時数の2割を超えて3割以下の時であり、個別の学習指導により補習を行う。
日常の授業においても、生徒理解を踏まえ、全体指導の中で、机間指導などで生徒の遅れをカバーできることもある。また、教科担任の裁量により、気になる生徒の補習が行われたり、課題が与えられたりするなど、適宜工夫されている。
生徒の中には、自分から担任や教科担任に申し出て、放課後に勉強をする生徒もみられ、職員は可能な限りそれに応じる姿勢がある。そのような機会が、その生徒の苦手を知る機会となったり、それを克服するための指導の工夫がなされたりする。
日常的に個別学習の必要な生徒は、放課後に行われる学習が複数の教科に渡る場合が多く、教科担任が個別に当該生徒に関わると、特定の教科に偏って学習することになったり、学習する日が重複したりするなどの問題が生じるため、教務部がスケジュールの管理を行う。また、基礎的な学力の保障を目的に設けられた「ベーシックスタディ」の科目の実施においても更に工夫を重ねる必要がある。
基本的に、「発達障害」の有無により到達目標を変える、試験方法を変えるなどの、特別な配慮等は行っていない。ただし、個別にその事情を勘案し、配慮が必要と認められる場合には、答案や問題用紙を大型の版にするなど、校内規定の定める範囲の配慮を行っている。
教科担任の裁量範囲で出来る工夫については、考査ごとに行っている。
以下に挙げる工夫については、生徒の実態等から試みられているものである。
評価については、各教科担任において科目・学級ごとに行っている。評価規準については統一が図られ、座学においては各観点の規準も統一されている。生徒の理解しやすさを重視し、「割合」を用いない算出方法として、1000点満点加算方式を採用した。ただし、発達障害の有無等という観点に限定した形態での特別な配慮等は行っていない。
入学の段階で、家庭での学習のほか、授業中の学習が身に付いていない生徒や、じっとしていられないなど、集中が途切れて「心ここにあらず」といった生徒がみられるが、一定の出席と成績をもって単位を認める高校のシステムを経験する中で、1学年終了時頃までには、学習へ向かう姿勢が見られるようになる。
このような生徒の変化は、教員による様々な場面での配慮や促しと、伝えるべき授業内容を明確にしたことなどから、もたらされているものと考えられる。
生徒の中には自分の解らないことや出来なさを、はじめは隠したりする様子が見られるが、「本当は苦手だ。」「わからない。」と言うようになり、自分から進んで、放課後に残って勉強をしたいと教科担任に申し出たりするようになってくる。
様々な指導の配慮や工夫の中には、実施すれば即効果的なものと、成果が見られるまでに時間を要するものがある。教員が一定の期間内にその成果を目にすることが出来ないと、「効果がない」と判断され、方法を変える、あるいはその支援方法をやめてしまうことになる。たとえ在学中に効果が現れなくても取り組んだほうがよいこともあるため、それに対する評価のあり方を含め、取組みの意義を検討していくことも必要である。
新たな評価方法を取り入れたことに関して、5段階評価に置き換える比率にやや調整が必要となった他は、大きな弊害は見られず、生徒にとってもわかりやすいものとなり、学習の励みになっている。
評価にかかわって、校内研修で教員から次のようなことが示された。
学習の習得がゆっくりで、時間をかけてもなかなか積み上がりにくく、他の得意なことで苦手をカバーしにくい生徒や、わかっていても書いて表現することが苦手な生徒を含む士別東高等学校のような集団には、読み書きに偏らない、観点別評価を取り入れることが必要である。
また、出来るまでには時間がかかるという認識を持ち、「待つ」ということと同時に、指導者が用意した答えを生徒に求めるのではなく、たとえ想定したものとは異なったとしても、生徒が提示してきた答えを何らかの形で評価するという、視点の転換も必要である。
「発達障害」の有無という視点ではなく、全ての生徒を対象に個に応じた指導をしている。個別の進路希望の確認から学習に結び付けたり、対人マナーの意識付けが行われるなど、日常の進路を意識したかかわりを行っている。
また、学級ごとの進路学習も行われるが、その他に次のような指導を行う。
この他、多くの企業生徒の理解を求め、就労のマッチングが円滑に行われることを目指した積極的な職場開拓・訪問に努めた。訪問の際には生徒の個人情報に配慮しながら、3年生全般の状況等を事前に就職先に伝えた。生徒の個別の状況によっては、就職試験前に「生徒の出来ることと苦手なこと」、「就職後に不安な点」などを企業に伝えた。もちろん、情報の公開にあたっては生徒本人、保護者の了承を得た。意図としては、採用された後に様々な事象が出現して職場の誤解を招くよりは、採用される前に生徒の実情を十分に理解した上で採用してもらいたいと考えたからである。この方法は2名の生徒に対して実施したが、1人が採用、もう1人が不採用という結果になった。就職試験前に生徒にとって不利な情報を企業に伝えるというのは、短期的な視野に立てば無謀なことかもしれないが、長期的な視野に立てば様々な困難を抱える生徒にとっては有益な取り組みと考える。今後もこのような取組を継続し、生徒の実情を理解してもらった上での就業に繋げて行きたい。
また、3年生のインターンシップにも取り組んだ。意図としては、実際に就業体験をすることで就職試験全般への生徒の不安を解消し、自信を持って就職試験に望ませたいと考えたからである。対象生徒は土曜日の1日のみの体験であったが、実際に体験したことで、仕事そのものに対する理解を深めることができた。
生徒の得意なことを中心に実情を的確に伝え、理解を求めた。企業からの要望と生徒の実情がマッチしない場面も見られたが、多くの情報を生徒に還元することも出来た。今後は必要に応じて、医療機関との連携の基に、福祉的なサービスを得ながらの就労支援を視野に入れて取り組んでいく。
さらなる今後の改善点としては第一に、インターンシップの複数回実施を具体化させて行く。これは本校生徒の実態を鑑みた場合、様々な世代の人と関わりを持たせることでコミュニケーション能力の向上や更なる職業理解に繋げて行きたいと考えたからである。具体的には平成22年度より、第2学年において6月に1回目のインターンシップ(3日間程度)を実施し、10月に2回目のインターンシップ(5日間)を実施する計画となっている。
第二に、未内定生徒への対応である。本校の場合、卒業した後も3月中は就職支援を行っている。ただ、新年度の4月以降になると、担任が引き続き本校に居る場合は良いが、担任が転勤した場合は未内定生徒との連絡を定期的に取れなくなってしまうケースが多々、見られた。未内定の生徒で、なお且つ本人や家庭の力だけでは就業することが困難であると思われる場合、高校卒業時に関係機関へ生徒を「繋ぐ」ことが不可欠と考える。そういったものがシステム化されていると、現場では非常に有難い。
「発達障害」の有無という視点ではなく、生徒一人一人が何かしらの困難を抱えているという視点で、生徒同士が一方的に理解し、されるという関係になり得ないため、特別な取り組みはしていない。
実施していないが、そのことで生徒および学校集団として成り立たなくなることはない。
(ア)随時実施されている事例検討
(イ)特別支援教育校内研修実施状況
第1回 平成20年7月8日
研修テーマ
『共に考える。自分の役割を見つける』
形態
事例検討3例相談員による助言
ねらい
各教員が把握している生徒の情報を共有し、共通理解を図る。生徒を複数の目で見守る教員集団を作る。
助言者
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
学術研究員 川俣智路 氏
発達障害者支援道北地域センターきたのまち
コーディネーター 田中 睦 氏
第2回 平成20年10月17日
研修テーマ
『学習支援~実践への第一歩~』
形態
数例の事例検証に基づく、講師による講義
ねらい
生徒の学習上の困難を知り、すべての教員が閉塞感を抱いている学習指導について、具体的指導法獲得の手がかりを得る。
講師
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
学術研究員 川俣 智路 氏
第3回 平成21年1月23・24日
研修テーマ
『高等学校における学習支援』
形態
講師による講義、事例検討6例
ねらい
学習障害についての理解。具体的な学習支援法の獲得。
講師
鳥取大学地域学部地域教育学科教授 小枝 達也 氏
第4回 平成21年3月17日
研修
テーマ『すべての子どもたちが生き生きと学び育つために』
形態
事例検討3例、講師による助言
ねらい
「すべての生徒を支援する」という視点から、これまでの研修でに取り上げられなかった生徒についての事例検討を行う。
特に生育の過程で充分に護られなかったことが推察される生徒についての理解も深める。
講師
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
教授 田中 康雄 氏
第5回 平成21年9月9日
研修
テーマ『療育・精神福祉・手帳について』
形態
講義、質疑応答
ねらい
障害者手帳、及び発達障害に係る就労などの現状について理解を深める。
講師
上川中南部障害者就労・生活支援センターきたのまち
加藤 浩二 氏
第6回 平成21年11月6日
研修
テーマ『本校の視察から』
形態
講義、質疑応答
ねらい
本校に関心を寄せられた理由と講師が日頃どのような領域で仕事をし、子どもと係っているかを知る。
講師
宮城県精神保健福祉センター所長 小野 善郎 氏
第7回 平成21年12月18日
研修
テーマ『授業研究』
形態
模擬授業
ねらい
生徒にわかりやすい授業方法
授業者
北海道士別東高等学校 教頭 久野一也
第8回 平成22年1月18日
研修
テーマ『特別支援校における個に応じた指導』
形態
講義
ねらい
特別支援校について、その性質と役割を知る。
講師
北海道旭川養護学校 校長 橋場 久美子 氏
第9回 平成22年2月15日
研修
テーマ『気になる生徒の気になる様子について』
形態
事例検討5例、質疑応答
ねらい
学校生活の様々な場面において気になる生徒について、学校生活の様子を見ていただき、具体的な検討を行い、今後の指導につなげていく。
講師
宮城県精神保健福祉センター所長 小野 善郎 氏
第10回 平成22年2月17日
研修
テーマ『高校卒業後の地域生活支援・就職を含めた自立に向け、学校として可能な指導』
形態
講義、質疑応答
ねらい
就労支援、子ども家庭支援、暮らしの支援等に携わってきた経験を伺い、本校での進路指導に反映させていく。
講師
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
子ども支援研究部門 助手 日置 真世 氏
第11回 平成21年2月19日
研修テーマ
『発達障害を持つ方を雇用した企業からの報告』
形態
講義、質疑応答
ねらい
発達障害を持った方を雇った企業としての実体験や労務管理の実際について伺うことで、本校の特別支援教育のあり方を振り返る機会とする。
講師
新日章サービス株式会社 代表取締役 賀集 邦明 氏
第12回 平成22年3月9日
研修テーマ
『会の活動の紹介と保護者の立場から学校に求めること。』
形態
講義、質疑応答
ねらい
保護者としての子育てに対する思いと、会に携わり活動している現状を伺い、本校特別の支援教育のあり方を振り返る機会とする。
講師
旭川LD親の会ぷりずむ 代表 児島 恵 氏
第13回 平成22年3月17日
研修テーマ
『発達障害の理解と支援~保護者・支援者の視点~』
形態
講義、質疑応答
ねらい
保護者としての子育てに対する思いと、会に携わり活動している現状、また学校に勤める立場としての考えを伺うことで、本校の特別支援教育のあり方を振り返る機会とする。
講師
北海道高機能広汎性発達障害児者親の会(ドンマイの会)代表
日本発達障害ネットワーク北海道副代表
旭川市立桜岡中学校 教頭 村田昌俊 氏
第14回 平成22年3月18日
研修テーマ
『高等学校における発達障害支援モデル事業の取り組みのまとめ』
形態
教諭からの発表。講話、
ねらい
取り組みによって得たことを各教諭が確認し、今後の教育活動に反映させていく。
講師
北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター 教授 田中 康雄 氏
(ウ)その他の研修
(エ)視察研修
(オ)講演会への参加
1.明治安田こころの健康財団2008年度地方講座1
開催日:平成20年8月16・17日
主催:明治安田こころの健康財団
共催:北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
テーマ:「虐待と発達障害と犯罪行動~理解と支援の礎をめざして~」
会場:北海道大学学術交流会館(4名参加)
「なぜ虐待と発達障害と犯罪行動か?~原因を追究するだけでなく安定した日常の復活を~」
講師:田中康雄(北海道大学大学院教授)
「発達障害の視点から」
講師:田中康雄(北海道大学大学院教授)
「エビデンスから見た発達と非行~少年の立ち直りを目指して~」
講師:松浦直巳
(東京福祉大学大学院教授兼奈良教育大学教授)
「虐待と非行」講師:橋本和明(花園大学教授)
「司法心理学の視点から」
講師:仲真紀子(北海道大学大学院教授)
「子どもたちの立ち直り~児童自立支援施設での育ちの視点から」
講師:富田拓(国立武蔵野学院医務課長)
2.十勝ADHD&LD懇話会夏季スペシャル講演会
開催日:平成20年8月3・4日
主催:十勝ADHD&LD懇話会
会場:めむろ駅前プラザ(2名参加)
「見えるということ、見ることでつまづくということ」
講師:奥村智人(大阪LDセンターオプトメトリスト)
「生活の中で『かず』の概念がどう育つのか」
講師:二宮信一(北海道教育大学釧路校准教授)
「手塩にかける,レジリエンスをそだてるということ」
講師:向井義(瀬戸少年院法務教官)
3.平成20年度発達障害者就労支援者育成事業(厚生労働省)
平成20年度障害者就労支援ネットワーク構築事業(北海道)
発達障害者就労支援関係者講習会
開催日:平成20年11月3日
主催:発達障害者支援センター道北地域センターきたのまち
会場:旭川建設労働者センターサン・アザレア(1名参加)
発達障害者就労支援者講習会
「発達障害の理解と就労支援について」
講師:田中康雄(北海道大学大学院教授)
発達障害者当事者と支援者の経験交流会
コーディネーター:萩原拓(北海道教育大学旭川校准教授)
4.第4回北海道の特別支援教員における情報教育研修会
開催日:平成22年1月4日
主催:北海道特別支援教育ICT活用PJ
共催:
特定非営利活動法人インターネット・ラーニングアカデミー
特定非営利活動法人NEXTDAY
後援:北海道教育委員会札幌市教育委員会北海道特別支援教育学会
会場:道民活動センタービル(かでる2・7)1040会議室(1名参加)
5.YMCA英語・スポーツ専門学校ライフスキルラーニングコース10周年記念シンポジウム~発達障害の課題のある青年たちの就労支援について考える
開催日:平成21年6月7日
<記念講演>
「本当の幸せは~障がい者雇用と経営から学んだこと~」
西川一仁(日本理化学工業株式会社美唄工場工場長)
<パネルディスカッション>
「発達に課題のある青年たちの就労支援について考える」
コーディネーター二宮信一(北海道教育大学釧路校准教授)
パネラー
中野育子 (札幌こころのセンター相談指導担当課長)
高坂一人 (社会福祉法人明日佳就労移行支援事業
ワークトピアあすか2.サービス管理責任者) 永瀬次郎 (北海道学習障害児・者親の会「クローバー」会長)
6.北海道立特別支援教育センター 公開研修講座夏季研修講座
開催日:平成21年8月6・8・9日
会場:北海道特別支援教育センター(1名参加)
8月6日
「特別支援教育概論」
「研究成果報告(高等学校)」
「シンポジウム高等学校における特別支援教育の実際」
8月8日
「特別支援教育を充実させる学級経営の在り方」
「保護者の視点から特別支援教育を考える」
読み書きに障害のある児童生徒への指導の実際
8月9日
通常の学級における個別の指導計画の実際
7.明治安田こころの健康財団2009年度地方講座1
開催日:平成21年8月1・2日
主催:明治安田こころの健康財団
共催:北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
テーマ:「『虐待』について考え続け・『支援』し続ける」
会場:
北海道厚生年金会館(2名参加)
「趣旨説明」
講師:田中康雄(北海道大学大学院教授)
「児童虐待(1)子ども虐待と向き合い続けて」
「児童虐待(2)小児科医から見た子ども虐待」
「児童虐待(3)子どもへの性的虐待」
講師:奥山真紀子(国立成育医療センターこころの診療部長)
「討議」講師陣
「児童虐待(4)子ども家庭福祉の課題」
「児童虐待(5)トラウマとアタッチメントへの心理的アプローチ」
講師:西澤哲(山梨県立大学人間福祉学部教授)
「総括」講師と会場参加者
8.若者を支える地域づくり~「静岡方式」の就労支援から学ぶ
開催日:平成21年10月25日
主催:北海道大学大学院教育学研究院附属子ども発達臨床研究センター
会場:北海道大学文系共同講義棟(2名参加)
講師:津富宏(静岡県立大学国際関係学部国際関係学科准教授)
9.北海道立特別支援教育センター公開研修講座冬季研修講座
開催日:平成21年1月10日
会場:
北海道特別支援教育センター(2名参加)
「高等学校における特別支援教育の実践」
「高等学校における特別支援教育の最新動向」
「事例検討〈高等学校における特別支援教育講座〉」
(カ)取り組みの発信
1.北海道特別支援教育学会第3会研究会
開催日:平成20年7月12日
会場:北海道教育大学札幌校
学会企画シンポジウム2「特別支援教育の現状と課題解決への提案」」
※学校の取り組みをパネリストとして発表(1名)
2.支援を必要とする子どもの地域生活の充実に向けて福祉と教育の連携を考える
勉強会(大雪合宿)2008
開催日:平成20年12月6日
テーマ:「見える連携を目指して~これまでもこれからも」
主催:福祉と教育の連携を考える勉強会実行委員会
会場:旭川市大雪クリスタルホール
※担任としての取り組みを発表(1名)
3.北海道特別支援教育学会道北支部・たいせつネット・道北ねっと
平成20年度合同冬季研修会
開催日:平成21年1月16日
主催:北海道特別支援学会道北支部
会場:旭川市大雪クリスタルホール
※学校の取り組みを発表(1名)
4.地域の連携を目指した講演会の企画参加
平成20年度教育シンポジウム・講演会
「すべての子どもが生き生きと学び育つために」
開催日:平成21年3月17日
主催:北海道士別東高等学校
会場:士別市文化センター(11名参加)
※シンポジウムでのパネリストとして、学校および担任としての取り組みの発表(2名)
5.学校見学への対応
来校者:北海道特別支援学級教育研究連盟中上川地区委員会
時期:平成21年10月28日
内容:
高校における特別支援教育授業参観
高校における特別支援教育について
6.上士別地区小中高校流会
開催日:平成20年12月2日
参加校:士別市上士別小学校士別市上士別中学校北海道士別東高等学校
内容:「特別支援教育に関わる取り組みについて」
※参加校に対しする、学校の取り組みの発表
7.平成21年度発達障害等・特別支援教育総合推進事業・上川管内高等学校特別支援教育セミナー
開催日:平成21年8月27日
主催者:北海道上川教育局
会場:上川合同庁舎
※学校の取り組みを発表(1名)
8.北海道旭川商業高等学校校内研修
開催日:平成21年10月1日
※学校の取り組みを発表(1名)
9.北海道愛別高等学校校内研修
開催日:平成21年12月1日
※学校の取り組みを発表(1名)
10.北海道立特別支援教育センター公開研修講座冬季研修講座
開催日:平成22年1月10日
会場:
北海道特別支援教育センター
「高等学校における特別支援教育の実践」講師(1名)
取り組み以前にも、生徒に対応するための情報交換を意図的に設けていた。生徒の背景にあるもののうち、特に「発達障害」に関しては、各教員がそれぞれに書物等の知識を得たり、研修等を受けるという方法しか知識や認識を得る機会がなく、対応者の見立てに差異が生じ、その生徒がどの障害名にあてはまるのかを議論することになるばかりで、目の前に生徒を理解し、対応することには結びついていなかった。
以前は教員が生徒の言動に振り回されることが多く、生徒の言動に対する評価も、「怠けている」「ずるい」「とにかくできない」などの否定的なものが多くみられた。
学習の指示においても「自分で考えてやりなさい」というような大まかなものが多く指示に応じ切れず再び否定的な評価を受けるという悪循環が見られた。多くの研修等、生徒理解が学校ぐるみで進むに従い、各教員に生徒の困難を仮説として打ち立てて対応する姿勢が見られるようになった。
生徒の現状をどう見るかという点については、職員それぞれの持つ見方を多角的に提示しあうことの他、専門機関から来校する相談員から、生徒主体の見方を数多く提示されることによって、職員全体で生徒像を捉え直し、更に本人の気持ちを推し量ることにつながった。また、背景の中の一つの要素として、「発達障害」の概念を得たことは、その困難に気づき、新たな対応を考える上での大きな手がかりとなった。
このような流れから、平成20年度は学習支援を軸に生徒の具体的な生徒の課題を挙げながら、困難を確認し、克服する手立てを検討した。
平成21年度では、取り組みが長期にわたる中で、生徒の学力等の伸長が手ごたえとなって感じられないことや、少しずつ出来るようになっているとは言え、それが卒後の社会生活を想定した際に、充分なものとは言えないことへの不安が大きくなった。生徒を理解し、かかわり方を自分たちで検討していくという方法では、卒業までに実社会に通用する学力・生活力を身につけることが出来ないとし、具体的な学習指導のノウハウを求めることで解決を目指す傾向が強まった。
職員共通の取り組みの課題を見出せなく、相談員との連携、生徒の情報共有という点において、取り組みの停滞が長期化した。
卒業後、就労の機会を得て、それを継続させるためにも、学齢におよそ見合う学力が必要であるという考え方から、学校生活の意義を学習内容の獲得と理解に特化する傾向が見られ、特別支援学校への視察研修や生徒にとってわかりやすい教授法の研究が積極的に行われた。
実際の生徒対応においては、これまでに学校ぐるみで研修を行った「学習支援」という観点だけでは充分にフォローすることの出来ない課題を抱えている生徒の指導に苦慮した。
しかし、成育環境等から発生すると思われる学校生活上の困難を理解しよう、というところへの、職員の意識の移行が非常に難しかった。困難を抱える生徒には、その困難に見合う適切な学習の場があり、強く説得してでも、進路変更を勧めることや、緊急に療育手帳等の取得などを勧めることが、当事者不在の中で検討されるようになった。これらの検討は、全職員による本校生徒の実態把握が停滞した中、断片的な実態把握のもとに、それぞれの教員が個別に得た知識に基づいて行われたものであったため、まずは発達障害がある、あるいはあると思われる当事者を取り巻く、学校外の社会環境が現段階でどのようになっているのかを知る必要が生じた。職員から様々な要望があり、当事者、特別支援学校、児童相談所医師、福祉機関就労支援担当者、就労支援団体代表者、企業雇用主、それぞれの立場からの現状をうかがうことが出来た。
学校は、多様な生徒が日常生活を送る場所である。困難に対応し、必要に応じて医療や福祉等の支援に結びついたとしても、関係各所と連携を図りながらその後も日常を支える場であることには変わりがない。
学校ぐるみでの取り組みを行うことが重要だと感じる。
その理由としては、高等学校は各教科の単位の取得に当たって、教科担任がその指導や評価において権限を持つため、進級、卒業の認定における影響は非常に大きい。すべての教員は授業を通じて生徒と関わるため、生徒の背景にある困難を把握する視点を持ち、多様な困難の中でも発達障害に関する知識を得ながら、生徒理解を深め、支援・指導を行っていくことが大切である。
また、いずれにしろ、何らかの困難を持ちながら学校生活を維持しようとしている生徒の対応は、対応する側にも大きな負担が生じるものである。生徒に関わる情報量を多く持ち、生徒のニーズを知りながら、ともすると「抱え込み」に陥りやすい担任の困難を軽減することが、生徒の支援につながる。本校では「校務分掌は担任を助ける」と掲げたことで、学校が組織的に動くことつながり、生徒の声を聞くことの出来る、「支援体制」の構築に結びついている。
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 北海道士別東高等学校・教諭(教務主任) | 教諭 |
2 | 北海道士別東高等学校・教諭(生徒指導主事) | 教諭 |
3 | 北海道士別東高等学校・教諭(進路指導主事) | 教諭 |
4 | 北海道士別東高等学校・教諭(特別支援教育コーディネーター) | 教諭 |
5 | 北海道士別東高等学校・教諭(担任代表) | 教諭 |
6 | 北海道士別東高等学校・教頭 | 教頭 |
定期開催ではなく、必要とされる際に随時実施した。月1~2回程度。
検討内容は次のとおり。
コーディネーターの指名については、校長が職員の中から生徒の実態を把握をよくし、専門分野の知識等取得に関心意欲の高い者を指名した。
特別支援教育が学校運営と一体化し、円滑に実施・定着されていくことが求められるため、研究委員会(名称:校内推進委員会)の構成は学校の現状に合ったものである。取り組みの活発化と共に、その役割が明確になりつつある。
NO | 所属・職名 | 備考 |
---|---|---|
1 | 北海道大学大学院教育学研究院 附属子ども発達臨床研究センター 学術研究院 |
学術研究員 |
2 | 発達障害者支援道北センターきたのまち コーディネーター |
臨床発達心理士 |
3 | 北海道大学大学院教授 | 児童精神科医 臨床心理士 |
モデル事業における相談員として、月に1~2回、2名の来校を依頼し、教員が個別に生徒の対応等について相談をした。また、小規模な事例検討会などを行い、その際には職員が複数で生徒の困難を理解し、対応につながることの出来る、新たな視点を得ることにつながった。また、研修会の講師として講義を受けたり、校内推進委員会の要望に応じて、研修会の講師を推薦していただいたり、研修の組み立てを検討したりした。更に、外部で企画される研修などの紹介を受けた。
更に、来校はその都度遠隔地からの来校であり、来校の間隔も長い時間があくことから、テレビ会議のシステムを借用することになり、来校が難しい時や急ぎの場合にも、生徒に関する相談を依頼した。
専門機関との連携に当たっては、一貫した姿勢で「学校がどのような希望を持っているのか」を常に求められたことで、学校が連携機関に指示を仰ぐのではなく、主体的であるべきことを強く意識させられた。同時に、「一教員の要望」ではなく、「教員の総意による要望」であること、つまり学校組織がどのように望んでいるのか、という問いを求められていることを意識させられ、研修の企画や相談等の依頼においては教員全体や部会・委員会で話し合って要望を出すことにつながっていった。
来校の際の小規模な事例検討会や相談の校内の調整の積み重ねによって、教員を役割で束ねていくことになり、2年間で14回にわたる校内研修会もそのような組織立った動きから運営することが出来た。
連携する以前は、教員の特別支援教育に対する考えも教員それぞれにまちまちであり、推進に関わる提案も教員間で公にしづらいことが少なくなかった。教員同士が学校運営や事業推進のために話し合うことの他、教員が個別で行った相談や、十数回にわたる研修が、様々な考え方をある程度ならし、まとまりを生じさせることになった。
それでも、教員それぞれの異なった考え方があり、個性があることから、教員の組織的な働きの中に、それぞれが教員としての自分らしさを打ち出していけるような教員集団でありたい。
さりげない支援ではあるが、教員集団として何物にも代え難い力を付けていただいた。
特別支援教育学会で本校の取り組みを発表した。
年度末にモデル事業中間報告として、シンポジウムと講演会を実施した。会のテーマは「すべての子どもたちが生き生きと学び育つために」として、本校における取り組みを発表し、講師による講演会を実施した。
ハローワークに度重なる訪問を実施したり、インターネットの利用により情報の収集努めるほか、研修会等に参加することで情報収集に努めた。
士別市に「ボランティアセンター」という組織があり、ボランティア活動を通じて地域の青少年の育成に寄与している。本校生も組織主催の「土曜ボランティア学習塾」に参加し、年間10回の体験学習に参加し、地域の実社会において社会性と自尊感情を育む機会を得ている。
その他、生徒の実態により、必要に応じて、複数の関係機関が集まり、生徒の対応についてそれぞれの立場でどう支援していくかについてケース会議を実施した。
地域における幼稚園・保育園・小学校・中学校との連携は重要視すべきものであると考え、講演会の企画に際しては「士別市特別支援教育連携協議会」を通して呼びかけを行うことが出来た。
また、子どもにとって学校という所属の場があることは非常に重要なことである。義務教育卒業後は、高等学校が大きな役割を占めるが、義務教育ではないことから退学等で所属の場を失うケースも少なくない。紆余曲折を経ても就労等で新たな所属を得られればよいが、社会情勢等も深刻なことから必ずしも満足な状況とは言えない。
卒業や退学等で、学校を離れた後も本人の自覚の有無に関わらず、支援のニーズがある生徒が多い。所属の場がある間に、そのようなことが予想される生徒には学校以外に社会との仲介役をする機関等との連携が重要である。ただし、職員には、高等学校の登校の維持等は生徒本人の自己責任である、という考え方もあるため、不登校に陥り、長期化する生徒への積極的な働きかけを疑問視する見方もあり、地域支援等への理解を常に得られるとは限らなかった。そのことも、困難を抱える当事者を取り巻く地域社会の様子が研修によって理解が進んだことで、生徒への対応の理解も得られるようになってきている。
また、利用できる地域の資源は、その地域ごとに異なるため、利用できる機関について、どのような担当者が、どんな対応をしており、どのような活動を展開しているかを知る必要がある。福祉や行政、医療等のサービスが充実している都会だから支援が出来て、一見してそういうものが不足していると見られる地方の市町村では支援が不可能ということではなく、地域の資源を知り、開拓し、時には創造しながら、その地域に育つ児童・生徒たちに合う人のつながりを結んでいく必要がある。
旭川にある特別支援学校を中心に結成された地域連携組織「たいせつネット」での事例発表などの取り組みをとおして関連する組織と連携を図ってきた。今後、発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業などとどのように連携していけるのかを探っていきたいと考えている。
教育の目的のひとつに、国を支える社会の構成員を育てることがあり、今回の取組みを通して学校が負う役割の最も大きい所を自覚することとなった。
発達障害のある生徒を適切に支援し、自立に結び付けていくためには、毎日を生徒と過ごす学校現場の教員がどのような認識を得て、生徒とかかわっているかが非常に重要であると感じた。本事業にかかわって、我々が得た認識を広めていく役割を担ったことを認識しながらも、同時に、対応する教員一人ひとりが担うべき課題や負担が非常に大きく、組織の疲弊を招いたことから、生徒にかかわる学校現場を適切に支える仕組が必要であると感じた。課題と感じた要点を次に挙げる。
特になし
2年間の取組みは、生徒理解に立って、様々な観点から正しい知識や認識を得るための研修を行いながら、学校が組織としてどのように生徒を支援できるかを探ることであった。
以前も、生徒の理解に努めてきたことに変わりはないが、この取組みを通して得た、視野の広がりは、目の前に居たそれぞれの生徒が、いかに多くのニーズを持っていたかを教員集団として改めて確認する機会となった。
ニーズを知り、生徒にとって必要なことの多さに驚きを感じた。これまで、高等学校の教員が仕事の範囲として一般的に認識していることを、広げて対応していかなければならないことに気づかされた。このことは、生徒観の転換や拡張によってもたらされたこともあるが、同時に、高等学校の実質義務教育化、進んでいる少子化や、社会の経済状態の低迷等により、高等学校に学ぶ生徒の支援的ニーズが増しているとも言える。
研修を重ね、当事者を取り巻く社会的な支援の状況は、その理解などの面においても、取組みが始まったばかりで、途上の段階であることを認識させられた。その中において高等学校は、ややもすると閉鎖的な場として孤立しているとも言える。
生徒のニーズの多さからみれば、学校だけで取り組む問題ではないことは明白であるが、他機関との連携を図るためにSOSの手を挙げられる学校になるまでに超えなければならない課題が山積している。
この二年余りで研修し得たことは、対応のために少なくとも知らなければならなかったことことで、この取組みを終えて、ようやくスタートラインに立つことができたと感じる。
地域的な実情にもよると思われるが、受け入れる生徒を選ばない士別東高校のような学校に学ぶ生徒は、多くの場合様々な困難を抱えており、それまでの育ちの中で所属の場への適応にも困難を抱えている。
仮に高等学校を中退した場合、本校の過去の例からも再び高等学校の門を叩く例は非常に稀である。中退後は所属の場を失い、現実に社会からのドロップアウトを招いている例も少なくない。反面、本人の努力と周囲の理解が得られれば、望ましい自立が可能な例も多く見られることから、福祉的なサービス等を受けにくい、制度の狭間にいる生徒たちに、教育の果たす役割の大きいことを実感する。
高等学校の授業料免除することが現実化し、新学習指導要領には義務教育段階の基礎的な学習内容のリカバリーが明文化された。義務教育ではない高等学校の実質「義務教育化」を当の高校教諭が認識・受容しなければならないことを始めとし、現場の教員の負うところ、「特別支援教育」と銘打って国が求めていることの大きさを実感している。
課程 | 学科 | 第1学年 | 第2学年 | 第3学年 | 第4学年 | 合計 | |||||
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学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | 学級数 | 生徒数 | ||
定時制 | 普通科 | 1 | 7 | 1 | 18 | 1 | 12 | 1 | 1 | 4 | 38 |
計 | 1 | 7 | 1 | 18 | 1 | 12 | 1 | 1 | 4 | 38 |
校長 | 教頭 | 教諭 | 養護教諭 | 非常勤講師 | 実習助手 | ALT | 事務職員 | 司書 | 業務技師 | 計 |
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1 | 1 | 9 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 14 |
初等中等教育局特別支援教育課
-- 登録:平成22年07月 --