都道府県名 富山県
学校名 富山県立志貴野高等学校
学校所在地 富山県高岡市末広町1‐7
研究期間 平成21~22年度
1.概要
1 研究課題
生徒が良好な人間関係を育むための支援活動を積極的に進めるための在り方と発達障害等のある特別な教育的支援を必要としている生徒に対して、集団や個に応じた支援の在り方を如何にすればよいか
2 研究の概要
(1)校内支援体制の効果的な活用・・・現在設置されている「特別支援推進委員会」が、より効果的に機能し、個々に支援が必要な生徒への適切な対応やソーシャルスキル指導等について研究する。
(2)発達障害等のある生徒理解のための研修の充実・・・校内研修会や外部講師による研修会を教職員の意識を高め、より深い理解が得られる内容を検討し、定期的に実施する。
(3)情報収集・・・先進校の視察。全国レベルの研修会への参加。
(4)生徒の実態に応じたキャリア教育等の就労支援・・・学校生活や社会生活を円滑に送るための適応指導を研究する。また、ハローワーク等との連携により、個々に必要な就労支援を研究する。
(5)保護者との連携および保護者支援・・・保護者会等でも、保護者自身がスクールカウンセラーに相談できることを伝えたり電話による相談を受け入れたりすることで積極的に保護者との関わりを強める。また、教職員、保護者向けの研修会を行うことで保護者との連携を深め、子育て支援を進める。
(6)実践の検証・・・教職員だけでなく、生徒、保護者へもアンケート等を実施し、それぞれの実践について検証する。
3 研究成果の概要
- 生徒の状況を把握し、外部専門家も入れたケース会議や授業担当者会議を実施した。その上で個別指導計画を作成し、的確な指導を行い、検証で成果が確認できた。
- 発達障害理解や就労支援についての研修や事例研究に取り組み、具体的な支援を行った。
- 1年次生に対して、昼間部では、良好な人間関係作りのための統一ホームルーム等を、夜間部では、計11回のソーシャルスキルエデュケーションプログラムを実施した。アンケート等からは、生徒の意識変化や自己肯定感の高まりがうかがえた。
- 生徒の困り感や実状を踏まえ、授業担当者と綿密な協議の上で、小・中学校で授業支援経験のある大学生による授業支援を実施し、個別支援の在り方を研究できた。
- 授業手法等について、各教科研修会の実施、互見授業等により授業工夫等について研修し、教科担当者間で課題と方策を共有することができた。
2.詳細報告
1 研究の内容
(1)発達障害のある生徒等に対する指導方針
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)
本校では、毎年学校不適応経験者が半数近く入学してくる。その原因の主なものとして、心身の不調、家庭の事情、学習面の不振、発達障害があるなどがあげられる。
- 生徒の実態や状態を把握したいと考え、富山県立H高校で実施されている「プロフィールカード」による調査を本校でも実施した。
- 入学時に提出する健康管理カードをもとに、養護教諭、スクールカウンセラー(臨床心理士、以下同じ)による面談を実施した。
- 年次部会、特別支援推進委員会で情報交換を行い、生徒の実態把握に努めた。
- その結果、発達障害のある生徒(可能性のある生徒を含む)6名の在籍を把握している。
LD1名(1年次)、広汎性発達障害5名(1年次3、3年次1、4年次1)
イ 指導方針
本校では、学校不適応経験者が半数を占めており、これまで、発達障害にかかわらず、すべての生徒に対して基礎基本の学習を重視した個々に応じた教育を目指してきた。また、発達障害のある生徒も含めて、相互の人格を尊重した良好な人間関係を育み、自己肯定感を覚えるような学校生活を過ごすことも目標の一つとしてきた。これらは、発達障害のある生徒にとっても大切な目標であると考える。
- 基礎的、基本的学習事項の定着と個に応じた適切な支援を探る。
- 自主的、自律的生活態度の育成と良好な人間関係づくりのための手だてを探る。
- 研究の中心として、特別支援推進委員会が効果的に機能するための手だてを探る。
ウ 成果と課題
- 「プロフィールカード」を活用し、生徒の不安傾向、不登校傾向をつかむことができた。
- 気になる生徒の保護者面談を行うことで、入学後の早い時期に担任に情報提供することができた。
- 疾病要管理生徒一覧を作成(保健部)し、教職員に連絡し、共通理解を得ている。この中には発達障害のある生徒(疑いのある)が含まれている。
- 生徒、保護者ともに気づいていない、また理解が得られにくい場合の対応が難しい。
- 「プロフィールカード」や職業適性検査では学習面、行動面で困難を示す生徒を把握することが困難であった。把握方法、実施時期等を検討する必要がある。
(2)発達障害のある生徒等に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫
ア 授業の際の配慮事項等
本校では、発達障害のある生徒を取り出しての授業は行っていない。しかし、単位制の特色を生かした授業選択、他部履修、少人数教育、希望者への個別指導等といった中で対応している。
- 学期の最初に、プリントを用いて授業のルールを説明し、重要な点は板書することで学習環境を整えた。
- 作業を取り入れたり、視聴覚教材を用いたりする等、授業内容に変化をもたせるよう配慮した。
- 机間巡視を多くして、個々に応じて指導したり、指示したりした。
- 座席を指定しないことで生徒の特性に応じた居場所を確保し、授業に取り組みやすくした。
- プリント学習では、小さく段階をおう、記述量を多くしない等、内容面も考慮した。
- LD(疑いのある生徒)を含む集団では、プリントの書体、文字の大きさに配慮した。
イ テストにおける配慮事項等
本校では、発達障害のある生徒に限らず特別な配慮はしていないが、配慮が必要な場合は推進委員会で検討し、実施することにしている。
ウ 評価における配慮事項等
本校では、発達障害のある生徒に限らず特別な配慮はしていないが、評価は定期考査を中心に出席率、課題のこなし方、授業態度等、総合的に行っている。
エ 成果と課題
本年度は、互見授業も取り入れ、教科研修会も行うことで各教員が意欲的に授業改善に取り組み、教科内での共有化ができた。次年度は、指導の手だてや工夫、成果を共有し、ユニバーサルデザイン化を図りたい。
(3)発達障害のある生徒等に対する就労支援
ア 支援の方策と内容
- 発達障害のある生徒が就職しようとする時、どのような支援方法があるのか情報収集した。
- 障がい者相談支援センターかたかご、高岡障害者就業・生活支援センター、富山障害者職業センターなどと連絡をとり、就労支援の実際を学んだ。
- 障害者合同就職面接会に参加し、実際の就労活動の現場を体験し、当該生徒の抱える実態を把握した。
イ 成果と課題
- 個に応じた支援を考えて性格検査や職業適性検査などを実施した。支援を必要とする生徒への支援には結びつかなかったが、進路意識の向上に役立った。
- 具体的にどのような支援ができるのかは、ケースバイケースであり、一人ひとりの状況を見極め対応することの必要性を理解した。
- 関係機関とのつながりをもったことは、今後の就労支援を考えると成果である。
(4)一般の生徒に対する理解推進等の指導の在り方
ア 指導の工夫と取組
(ア)自分自身の考え方や行動を振り返りながら、より多くの人と互いに気持ちや考えを通わせることができる方法を学ぶ機会を設定した。また、生徒保健委員会プレゼンテーションを通して、ピアエデュケーションの手法を用いて、具体的に人間関係の問題についてどのように対処していけばよいか提案し、全校生徒に考えさせる機会とした。
- 5月15日昼間部1年次生保健統一ホームルーム「人間関係について考える」
- 10月31日文化祭時のステージ発表生徒保健委員会プレゼンテーション 「人間関係お悩み相談室~人間関係について考えるPART2~」
(イ)夜間制1年次を対象に11回のソーシャルスキルエデュケーションプログラムを行った。「SST」とは何かから始めて、自分の良いところを探したり、会話練習を行ったり、嫌なことに対する対抗スキルを学んだり、相手を大切にするスキルを学んだりした。
(ウ)このほかに下記のような講演会を実施した(計6回)。
- 5月20日、7月10日
「友人づきあいやバイトでつかれないコツ、リラックスのコツ」
講師 本校スクールカウンセラー
- 9月7日、1月12日
「みんな違って、みんないい‐特別なやり方が必要な脳をもった人の話‐」
講師 富山大学人間発達科学部准教授
- 9月15日
「親と子のきずな‐母親・父親予備軍の皆さんに伝えたいこと‐」
講師 高岡市医師会看護専門学校教務課長
- 3月8日
「役に立つ心理学のマメ知識‐ストレスの時代を生きる‐」
講師 富山大学人文学部准教授
イ 成果と課題
- 保健統一ホームルームでは、生徒自身が人間関係について考えるきっかけとなり、相手の気持ちを尊重することの大切さに気づいた。今後も、人間関係づくりの継続的な援助は必要だと考える。
- ソーシャルスキルエデュケーションプログラムでは、回を重ねる毎に、積極的に取り組むようになり、発言も多くなった。また、授業やホームルーム活動に意欲的に取り組む生徒が増えたことから、成果がうかがえた。
- よりよい人間関係づくりのコツや人づきあいのコツを学んだのはよかった。また、あわせて、ストレス対処法を学んだのは、心の健康づくりに役だった。
- 発達障害について学ぶことで、生徒は発達障害への理解をもつことができた。また、手助けを必要とする人に、自分にできることをしてあげようとの気持ちをもつことができた。
- 発達障害に関する知識や理解の向上に結びついた。
(5)教職員や保護者の研修等
ア 研修会開催の回数・時期・研修内容等
(ア)教職員向けの講演会を下記のように実施した(計3回)。また、これらの講演会は公開研修として、他校にも案内した。
- 7月21日 「発達障害者支援センター『ありそ』の活動について」
講師 発達障害者支援センター『ありそ』センター長
内容 就労支援を行っている「ありそ」の活動を学び、発達障害のある人の就労支援について理解を深める。
- 7月22日 「発達障害のある生徒への支援について考える」
講師 富山大学人間発達科学部准教授
内容 発達障害の概略を学び、実践的な支援のあり方について理解を深める。
- 2月24日 「これからの特別支援教育‐知的遅れのない発達障害の理解と支援‐」
講師 東京学芸大学名誉教授
内容 特別支援教育の歴史的背景、発達障害は個性、基礎的具体的支援のポイント。
(イ)保護者向けの講演会を次のように実施した。また、(4)ア(イ)で述べた生徒向けの講演会も保護者に案内し、参加を得た。
- 12月17日「叱らなくてすむ子育て」
講師 スクールカウンセラー
内容 叱らずに言うことを聞かせるという心理学的アプローチによる子育ての勧め。(講演会後、個別相談会を実施した。)
(ウ)教職員対象の研修会を次のように実施した。
- 4月15日 「プロフィールカード活用研修会」
講師 スクールカウンセラー
内容 本年度より実施したプロフィールカードの活用ガイド。
- 2月8日 「発達障害のある生徒への支援について考える‐模擬事例を通した研究討議‐」
講師 臨床心理士
内容 発達障害をもつ生徒が入学してきた場合どのような支援ができるか、模擬事例を通して研究する。
(エ)教科研修会を次のように実施した。
- 国語
他校講師を招き、発達障害の事例について紹介してもらった。質疑や意見交換を通して、具体的な授業工夫だけでなく、定時制における支援の在り方についても研修した。
- 数学
生徒の実状の確認を行った。個々の生徒の困り感を踏まえた授業工夫例について意見交換し、「わかる授業」はいかにするべきかについて研修した。
- 英語
専門の大学教授による軽度発達障害ほかについてのレクチャーを受け、他校の教諭も参加しての発達障害を持つ生徒に対するアセスメントと授業支援について研修した。
- 理科
発達障害の具体例と対処について改めて理解を深め、理科授業における特別な支援の在り方について研修した。
- 地歴公民
特別支援学校の先生を招き、実際の個別支援を事例として発達障害のある生徒への指導について研修した。
- 保健体育
「睡眠からみた健康づくり」についての外部講師による研修を実施し、望ましい生活習慣の確立を目指し、生徒個々の理解を深め、生徒の困り感を探る一助とした。
- 芸術
モデル事業指定校報告会参加者より、同校での個別支援例を報告してもらい、組織的な支援だけでなく、該当生徒との具体的対応等について研修した。
- 商業
本校生が多数進学する専門学校の教員を招き、学習支援が必要な生徒の現状とどのような支援が必要かについて研修し、個別支援の重要性について共通理解を図った。
(オ)その他、教員研修会を次のように実施した。
・10月26日の学校訪問時に、特別支援教育に関するテーマを設定し協議した。
教育相談部関係
特別支援推進委員会が効果的に機能するための主体的な活動の在り方、また支援の必要な生徒の実態把握の方法、教職員の意識、対応力、指導力等の向上等について、これまでの取り組みをもとに、県教委の指導、助言を得た。
生徒指導部関係
発達障害と診断された生徒や常識では考えられない行動を取る生徒が増えてきた。どのように指導していけばいいか苦慮している現状について協議した。診断がわからないうちは、おかしいぞと思ったらケース会議を開き対応を考える。診断が下れば組織的に対応しなければならないとの助言をいただいた。
進路指導部関係
当該生徒の就労支援のあり方について協議した。先進校の取り組みを参考に、本校の現状を検討協議し、就労支援を進めるためには、本人・保護者・周囲の生徒・地域企業・ハローワーク・発達障害者支援センター、そして、教員の十分な理解と協力が必要なことを確認し、県教委の指導、助言を得た。
・職員会議の際に以下の先進校(主な取り組み)視察などの報告会を行った。
- 京都府立朱雀高等学校(総合学習の時間を利用した学力回復の取り組み他)
- 京都市立白河総合支援学校(職業自立を推進するための実践研究他)
- 新潟県立出雲崎高等学校(授業等におけるユニバーサルデザイン化への工夫他)
- 障がい者就業・生活支援センターこしじ、(出雲崎高等学校との連携他)
- 静岡県立浜松大平台高等学校(支援員の活用他)
- 愛知県立衣台高等学校(事例収集及び、クレペリン検査等の実施他)
- 群馬県立前橋清陵高等学校(「いいところ・できること探し」から支援へ他)
- 東京都立世田谷泉高等学校(特別支援内容のデータベース化他)
- 東京都立秋留台高等学校(学び直しの実現他)
- 千葉県立姉崎高等学校(徹底した生徒指導ときめ細かな学習指導他)
また、平成21年度発達障害教育指導者研究協議会参加報告も行った。
イ 成果と課題
- 発達障害のある人の就労支援について現状を知るよい機会となった。理解を深めることができたが、困難さもわかった。連携を取りながら研究を進めることにしている。
- 障害者就労支援の関係機関との連携が取りやすくなったのは成果である。
- 発達障害に関する知識や理解の深まりは、教職員の意識向上につながった。
- 保護者への子育て支援というアプローチは効果的だった。内容、時期など検討すべき事柄は多いが、継続していきたい。
- 発達障害者支援センター相談員を巻き込んでの個別相談会は、センターとしても学校としても継続して行うこととしている。また、保護者にも、今後も相談できるということで安心感を与えた。
- 模擬事例検討会ではこれまでの研修の成果から、さまざまな支援のアイデアが発表された。ただ、支援については、ケースバイケースの面もあるので、今後も事例検討を続けていきたい。
- 教科内で個々の生徒に対する適切な対応について共通理解を図ったり、お互いの手法を研修したりしたことは、有意義であった。これをきっかけとして、正しい知識理解のもと問題意識を共有し、授業のユニバーサルデザイン化等、生徒の視点を踏まえた「わかる授業」を目指した研修を深めていきたい。
(6)その他の支援に関する工夫
ア 支援員の活用
- スクールカウンセラーに、教職員への支援員を依頼した。特に、これまで不十分だった担任や年次主任との打ち合わせや指導の確認が行えた。
- 教員支援員を情報科と図書部においた。生徒への個別対応や学習支援で有効であった。
- 学習支援員については、主として夜間部生徒の英語、国語、数学の授業時に活用した。基礎学力面で大きな差があるため、個別指導時に支援員がつくことで、個々に対応した丁寧な学習サポートが行えた。
2 研究の方法
(1)研究委員会の設置
ア 構成
特別支援推進委員会を研究の中心に据えた。構成員は、担当教頭、年次主任、夜間部主任、保健主事、教育相談部員(特別支援コーディネーターを含む4名)である。
イ 委員会開催回数・検討内容
- 第1回特別支援推進委員会(4月21日)
内容
「平成21年度高等学校における発達障害支援モデル事業」について。
プロフィールカードについて。
気になる生徒の情報収集について。
- 第2回特別支援推進委員会(5月27日)
内容
気になる生徒の情報交換(次回から記述は省略する)。
在校生分プロフィールカードについて。
- 第3回縮小特別支援推進委員会(6月19日)
内容
年次主任と特別支援コーディネーター、教頭とで縮小特別支援推進委員会を開く。発達障害のある生徒にこだわらずに、支援が必要であったり、指導に困ったりする生徒の実態や現状把握のための「生徒の状況把握シート」の活用について協議。
- 第4回特別支援推進委員会(6月23日)
内容
授業に参加しない生徒への対応について。
支援活動について。
先進校視察、校内研修会について。
- 第5回拡大特別支援推進委員会(6月29日)
内容
進路指導主事を交えて就労支援について委員会を開く。
- 第6回縮小特別支援推進委員会ケース会議(8月17日)
内容
年次主任、担任、生徒指導主事、特別支援コーディネーター、養護教諭、スクールカウンセラー、担当医、富山県発達障害者支援センター「ありそ」発達支援担当員、高岡養護学校特別支援コーディネーターとで、発達障害のある生徒の指導、支援についてケース会議を開く。
- 第7回縮小特別支援推進委員会(9月15日)
内容
年次主任、担任、生徒指導主事、特別支援コーディネーターとで発達障害のある生徒の指導、支援について委員会を開く。
- 第8回特別支援推進委員会(11月12日)
内容
学校保健委員会時の保護者個人面談について
教科研修会について。
学習、教員支援員について。
- 第9回特別支援教育推進委員会(12月9日)
内容
生徒支援に絞って、県外学校訪問報告。
- 第10回特別支援教育推進委員会(2月17日)
内容
今年度のまとめと反省。
ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の作成等具体的な方策
- 特別支援教育コーディネーターは教育相談部長とした。
- 個別の教育支援計画に取り組むために、小、中学校との連携について検討中である。
エ 成果と課題
- 委員会を軸として、生徒の困り感や、抱えた問題点をいち早く理解し、どんな支援が必要かを協議し、必要に応じてケース会議を開催したり、個別の教育支援計画の作成を行うことで、支援の仕組みが構築できたことは、成果といえる。
- 発達障害に対する基本的な知識理解が進む中で、個別事例の協議を重ねての具体的な支援を通して、委員会メンバーだけでなく、教職員全体の問題意識も徐々に高まっていった。
- ケース会議での協議をもとに個別の指導計画を作成した。広い視野と情報の多さが指導計画をつくりやすくすると思われる。
- より具体的な生徒の実態、現状把握の方法を研究する必要性がある。
- 昼間部、夜間部それぞれに特別支援教育コーディネーターが必要である。また、教務部、進路指導部、生徒指導部、養護教諭が特別支援推進委員会のメンバーに入ることが必要である。
- 保健部との連携を強めることが重要である。
- より広い視野や見識から、常に特別支援推進委員会に指導・助言する人が必要である。
- 学校設定科目または総合的な学習の時間で基礎学力充実講座のための授業を設定し、学習支援することを検討したい。
- 特別講座にSSTを開設し、生徒と一般の人を支援する。同時に生徒と一般の人との交流機会ともなる。保護者も参加し、生涯学習、保護者支援ともしたい。
- 保護者、本人の理解を得ることが難しい場合の対処を研究する必要がある。。
- 保護者支援プログラムも合わせて研究したい。
- 中学校からの情報提供がないと、個別の教育支援計画は立てにくい。情報の共有化が必要である。
- 就労支援については、富山障害者職業センター、ハローワークの専門援助員、地域の障害者就業・生活支援センター等の関係機関との連携強化が課題である。また、関係機関同士の横のつながりをつくる必要性がある。
- 就労支援は難しく、取り組んだ結果の課題を明らかにしたい。
(2)専門家チームの活用
富山県総合教育センターの教育相談部特別支援教育担当者である専門家や富山県教育委員会県立学校課特別支援教育係の担当指導主事等から指導助言を得ている。
スクールカウンセラーには、個々の生徒のカウンセリングだけでなく、保護者支援、外部機関とのパイプ役に加えて、教職員研修に至るまで、幅広い支援のための役割を担っていただいた。
(3)関係機関との連携
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携
(ア)地域の特別支援学校との連携。
- ケース会議にまねき、助言を仰いだ。
- 公開研修会に参加してもらい、交流を深めた。
- 教科研修会の講師として招聘し、助言・指導を仰いだ。
(イ)他の定時制通信制の高等学校との連携
- 富山県立H高校から「プロフィールカード」の使用許可を得ている。データの比較、活用法の研究等連携をとりながら継続して行いたい。
- 他の定時制通信制の高等学校でも、心身の不調、家庭の事情、学習面の不振、発達障害があるなどの理由から多くの不適応経験者が入学していると思われる。連携を取りながら、研究を進めていきたい。
(ウ)他の高等学校との連携
公開研修会には、県内の全日制高校や定時制高校、私立高校からの参加があり、特別支援教育への関心の高さを感じている。
イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携
発達障害者支援センター「ありそ」に、ケース会議や個別相談会の講師を依頼している。また、本校から就労支援研究会に参加するなど連携を強めている。
ウ 地域の教育施設や人材等の活用
- ケース会議に市内の医師を招き、助言してもらった。
- 富山大学人間発達科学部准教授に、特別支援教育に関する講演会と授業についての助言をもらう。さらに、同大学准教授、発達障害者支援センター「ありそ」などのメンバーで開いている「障害者就労支援研究会」に本校からも参加し、支援のあり方について研究している。
- 富山大学人文学部准教授、本校のスクールカウンセラーが中心となり、本校でのソーシャルスキルエデュケーションプログラムについて検討、研究している。
- ジョブサポートティーチャーを活用している。
エ 成果と課題
進路意識の醸成や対人関係能力の育成が特に求められる本校の生徒の実態に鑑み、全校生徒の指導に携わるジョブサポートティチャー(JST)が配置されている。JSTが毎年行う全員面接に際し、より、ゆっくり丁寧な面談を心がけ、発達障害支援のあり方を模索した。
(4)関連事業等との連携
なし
3.今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等
1 発達障害に対する理解と研修
定時制だけでなく、全日制でも発達障害のある生徒が、2%程度在籍している現状があるにもかかわらず、発達障害に対する理解は、未だに一部担当教員に限定され、その特性を踏まえた支援の必要性について研修し、支援が実践できている学校は少ない。今後、理解啓発を推進するような広報や研修等が必要である。
2 授業における個別支援の在り方
支援員による授業支援を実施して、個別支援をより効果的に幅広く行え、授業研究にも有効であるという感触を持った。大学生や教員経験者等を活用し、支援員を配置することを検討する必要がある。
4.その他特記事項(エピソードを含む)
1 保健統一ホームルームの取り組みのねらいは、1.自己を見つめ直す、2.人間関係の陥りやすい盲点に気づく、3.ライフスキルを学び上手く活用することで問題に対処できることを知ることである。生徒の感想には、「改めて自分自身を振り返ることができてよかった」「人間関係について考えるきっかけになった」「相手の気持ちを尊重することが大切」といった言葉が多くあげられていた。このことは、目標に一歩近づくきっかけとなった取り組みと評価できる。
今日、いじめ・不登校などが問題となっているが、普段から人間関係をつくる教育を行い、問題発生を予防することが大切で、学校不適応経験者が半数近くを占める本校において、継続的な人間関係づくりにおける援助は必要不可欠と考える。また、これを実施したことで「人間関係面でのトラブルが一年間なかった、思いやりの心が育っていたと思う」との担任からのコメントがあった。
2 ソーシャルスキルエデュケーションプログラムを実施したところ、始めは下を向いていた生徒が多かったが、回を重ねる毎に、積極的に取り組むようになり、発言も多くなった。
また、授業やホームルーム活動に意欲的に取り組む生徒が増えた。途中でソーシャルスキルエデュケーションプログラムへの参加をやめた生徒に対人関係のトラブルがあったことからも効果がうかがわれた。
3 受験相談時、保護者から突然「LDって知ってますか?」と聞かれ、「はい」と答えると、「安心して受験できます」との応答があった。本校職員のほとんどが発達障害に関する知識を持っていることが保護者の安心につながることを実感した。
5.モデル校の概要
1 学級数と生徒数(平成21年5月現在)
課程 |
学科 |
第1学年 |
第2学年 |
第3学年 |
第4学年 |
合計 |
学級数 |
生徒数 |
学級数 |
生徒数 |
学級数 |
生徒数 |
学級数 |
生徒数 |
学級数 |
生徒数 |
定時制 |
昼 1部 |
普通科 |
2 |
39 |
2 |
37 |
2 |
29 |
1 |
13 |
7 |
118 |
情報ビジネス科 |
2 |
29 |
2 |
25 |
2 |
20 |
1 |
6 |
7 |
80 |
昼 2部 |
情報ビジネス科 |
1 |
11 |
1 |
19 |
1 |
14 |
0 |
0 |
3 |
44 |
生活文化科 |
2 |
28 |
2 |
21 |
1 |
16 |
1 |
4 |
6 |
69 |
夜間 |
普通科 |
1 |
8 |
1 |
5 |
1 |
8 |
1 |
2 |
4 |
23 |
国際教養科 |
1 |
1 |
0 |
0 |
1 |
1 |
1 |
1 |
3 |
3 |
|
計 |
9 |
116 |
8 |
107 |
8 |
88 |
5 |
26 |
30 |
337 |
2 教職員数 (平成21年5月現在)
校長 |
教頭 |
教諭 |
養護教諭 |
非常勤講師 |
実習教諭 |
ALT |
事務職員 |
司書 |
その他 |
計 |
1 |
4 |
43 |
2 |
16 |
2 |
1 |
4 |
0 |
12 |
85 |