特別支援教育について

新潟県 荒川高等学校(公立)

都道府県名 新潟県
学校名 新潟県立荒川高等学校
学校所在地 新潟県村上市坂町2616‐4
研究期間 平成21~22年度

1.概要

1 研究課題

 一人一人の特別な教育的ニーズに応じた支援を行うために、教育相談委員会を中心とした校内支援システムの構築と支援の在り方を探る

2 研究の概要

 特別な教育的ニーズに応じた支援を行うための校内支援システムの整備・充実、支援の在り方を、「発達障害支援モデル事業」による2年間の取組を通じ、その定着と確立を図る。次の5項目について研究を行う。
(1)校内支援体制の整備と関係機関との連携の在り方
(2)生徒理解と個々の生徒のニーズに応じた支援の在り方、進め方
(3)ソーシャルスキルトレーニング実施に向けた取組
(4)進学・就労等への支援の在り方
(5)全校生徒及び保護者への理解、啓発活動の在り方

3 研究成果の概要

(1)生徒支援の充実を図るために、今年度は発達障害理解等の職員研修を重点的に行い、一定の成果を得たと考えられる。しかし、有機的な校内支援体制構築の面ではさらに改善が必要である。効率的な委員会の運営の充実は急務といえる。

(2)生徒理解を進めるために、多角的に情報収集を図っている。特に、中学校との連携は重要である。今年度は、学校説明会を中学校教員を対象に実施した。この会は、本校の教育の概要、特色、本事業の計画等を発信することにより、本校への理解と進路指導への情報提供を目的とした。その理解を促進するために作成したリーフレットは、会で使用するとともに、関係する学校等に配付した。
 今後は相互理解のうえで得られた情報を、いかに教職員で共有し、生徒の支援に生かしていくかが課題である。

(3)ソーシャルスキルトレーニングの職員研修では、その基礎を学び理解を深めた。今後は、生徒自身が自己理解を深め、集団生活への適応や進路選択につながるソーシャルスキルトレーニング実施に向けて研修を進めたいと考えている。

(4)就労支援については、地域若者サポートステーションとの連携や農業体験学習の試行が有効であることが実証された。今後はさらに地域住民を含めた幅広い外部との連携を模索し、体験学習の充実を図ることが重要である。

(5)今年度は、全校生徒に発達障害を含めて、人権教育という観点で指導をすすめているところである。発達障害に焦点化した啓発活動は行っていないが、周囲の生徒がその理解を深めるためには、人にはそれぞれ違いがあるという個性の肯定的な理解を土台に、慎重に指導を進めていかなければならないと考える。

2.詳細報告

1 研究の内容

(1)発達障害のある生徒に対する指導方針
ア 生徒の実態(把握方法も含めて)

(ア)実態把握の方法

 生徒の状況を把握するために、指導要録(抄本)、中学校訪問、健康カード等の保健情報、保護者によるアンケート、生徒・保護者に対する教育相談、教員を対象にした調査等より、実態を把握している。

(イ)生徒の実態

 平成13年度に、単位制による定時制・普通科(午前部)に改組された高校である。入学してくる生徒は、さまざまな問題を抱え、その問題が生徒の学校生活に大きく影響を及ぼしていることも少なくない。
 具体的な生徒の傾向としては、基本的な生活習慣が身に付いておらず、学習意欲が乏しい。自分の進路に対して明確な目標をもっていない。コミュニケーション能力は高くなく、人間関係がうまくむすべない。また、家庭環境など、本人以外のところに問題が存在している場合も見られる。
 指導要録(抄本)によると、中学校時代に不登校、もしくはその傾向を有する生徒は例年多数入学しており、平成21年度入学生では33.0%を超える。また特別支援学級在籍者は、6.8%見られた。
 発達障害と診断された生徒は、1年次生1名、2年次生4名、3年次生3名となっている。他に、四肢の機能障害や特定疾患、精神疾患を有する生徒が在籍している。
 このように、不登校や学習不適応等の問題行動を有する生徒、発達障害を有する生徒などが混在しており、指導や対応に細かい配慮と工夫が必要である。

(ウ)教員対象による調査

 担任および授業担当者に生徒実態調査を実施し、特別支援教育支援員による学習支援対象者の選択資料とした。(平成21年11月実施)

実態調査項目

A:社会性や対人関係で困り感のある生徒
 ・感情をコントロールできない・周囲とコミュニケーションがとれない

B:自分の行動に困り感のある生徒
 ・不注意が多い・じっとしていられない

C:学習面で困り感のある生徒
 ・ノートがとれない・指示をなかなか理解できない・授業に集中できない

AとBの項目は、学級担任、Cの項目は授業担当者に実施した。その結果は次のとおりである。

項目 1年次 2年次 3年次 4年次 全校
A 5.76% 14.43% 6.12% 0.00% 7.87%
B 1.92% 7.21% 4.08% 0.00% 3.93%
C 52.88% 27.83% 25.51% 3.22% 41.81%
AB 0.00% 1.03% 0.00% 0.00% 0.30%
BC 0.96% 3.09% 3.06% 0.00% 2.12%
AC 1.92% 6.18% 1.02% 0.00% 2.72%
ABC 1.92% 2.06% 1.02% 0.00% 1.21%

 この結果から、なんらかの困り感を抱えていると思われる生徒は、全校で半数近く認められた。特に学習面での困り感が際立っていた。

イ 指導方針

 本校の研究の取組では、発達障害の有無にかかわらず、一人ひとりの生徒に応じた支援を行うことを目的としている。
そのためには、生徒についての情報を多角的に収集し、職員で共有するなかで理解を深め、生徒に応じた特別の支援を行っていくことが基本姿勢である。
 支援の対象、内容、方法等については、教育相談委員会が中心となって検討し、学校全体で支援することを指向する。また、関係機関との連携を強化し、多方面からの支援を模索する。

ウ 成果と課題

 生徒支援のための情報収集は、指導要録(抄本)からの情報、中学校訪問に加え、中・高教育連携支援票、保護者カード等を活用することにより、整備されつつある。
そして、得られた情報を生徒理解研修会や事例検討会を通して、職員間で共有し、指導に生かすことが行われている。
 年度当初の教育相談は、「気がかりな生徒」を対象に、つながりをつくり、学校生活をスムーズにスタートさせることをねらいとして行っている。しかし、多様な生徒の入学により、対象となる生徒が増加しているため、相談体制の検討が必要である。
 今後、日々の学校生活で発生する問題行動や予防的な生徒指導に対して、教育相談委員会がいかにリーダーシップを発揮していくかが課題である。

(2)発達障害のある生徒に対する授業やテストにおける評価方法等の工夫
ア 授業の際の配慮事項

(ア)板書計画の工夫

  • 色チョークを使い分け、下線を工夫し、重要事項を目立たせる
  • 板書の文字は大きく書く
  • 配付したプリントと板書のレイアウトを同じようにする
  • イラストや写真、フラッシュカードを必要に応じて貼り、視覚化する
  • 一度に多く板書せず、板書量はなるべく少なくする
  • 難しい漢字には、ルビをふる
  • 生徒のペースに合わせて板書のスピードを調整する

(イ)教材やプリントの工夫

  • 穴埋めプリントの空欄には番号や記号を振り、該当箇所を見つけやすくする
  • 1授業完結型のプリントを作成する
  • プリントにはドリル形式を取り入れ、反復練習による定着を図る
  • 全員ができる課題と発展的な課題を用意し、全生徒に対応できるよう工夫する
  • DVD、パワーポイント等視聴覚教材を利用する
  • 使用するプリントは、記入欄を大きめにし、書きやする
  • 簡単な問いも組み入れ、「できた」という自信につなげる
  • 達成感のある課題を出すようにする
  • 難しい漢字にはルビをふる

(ウ)指導方法の工夫

  • 一方的な説明にならないよう、言葉のやり取りをしながら授業を進める
  • ペアやグループでの活動を取り入れ、生徒同士の関わりをもたせることで教え合い、学び合いを促す。その際、教師も活動の一員として参加する
  • 些細なことでも生徒の話に耳を傾け、コミュニケーションの場としての雰囲気作りをする
  • 板書を写す時間を十分に確保する
  • 指示は一つずつにし、繰り返し説明する
  • 質問は適宜受け付け、その都度返答する
  • ティームティーチングを生かし、個別指導を充実させる(英語科,商業科)
  • 話はゆっくりと具体的にする
  • 生徒が板書しているときは話をせず、板書に集中させる
  • 繰り返しの学習の後、小テストを実施し、基礎的な内容の定着をはかる

(エ)その他の工夫

  • 話題にメリハリをつけ、生徒が退屈しない授業を心がける
  • 積極的な参加はその場でほめる
  • 間違いを恐れない雰囲気作りをする
  • 生徒が活動する時間を最大限確保する
  • 問題行動があった場合は、なぜそれがしてはいけないことなのか理由を交えてその都度指摘する
  • 実習のときの班編成は、参加しやすくするため、生徒同士で決めさせ、その中に入れない生徒に声をかけてグループを作るようにする
  • 生徒を注意する際に、「~するな」ではなく「~やろう」と言うなど表現方法を工夫する
イ テストにおける配慮事項等
  • 授業の内容をまとめたテスト対策プリントを作成し、授業の中で取り組ませる
  • 必要生徒には別室受験で対応する
  • 難しい漢字にはルビをふる
  • 選択問題を多めに作る
ウ 評価における配慮事項等
  • 積極的な取組みが見られる場合は、その都度指摘して評価する
  • 文字表現が不得意な生徒のために、書いたものの評価だけでなく、口頭での表現も評価する
  • 平常点を重視し、提出物、授業態度、出席状況等も加味する
  • 授業への取組み状況、課題、出欠席等、いろいろな観点からの評価を検討する
エ 成果と課題

 授業のユニバーサルデザイン化を意識し、様々な観点から生徒への配慮がなされ、全ての生徒にとって「わかる授業」となるように工夫するとともに、学習に取り組みやすい環境づくりを目指している。しかし、少人数授業などを行っているが、個別に支援の必要な生徒は多く、全ての生徒に支援が行き届いていないのも現実である。また、生徒の欠時数が多く連続的な指導が難しいこともある。
 限られた人員と時間の中で、いかにして全生徒により行き届いた支援を行うか継続的に検討していかなければならない。

(3)発達障害のある生徒に対する就労支援
ア 支援の方策と内容

(ア)地域若者サポートステーションの相談員による就労面談

 村上地域サポートステーションの相談員に5月より月1~2回来校していただき、就労が困難と思われる生徒に対し、保護者の了承のもと、学校生活や高校卒業後の進路を中心に面談を行った。保護者も生徒と一緒に面談を受けることもあった。

(イ)農業体験学習の試行

 コミュニケーション能力を高める方法として、体験学習型の個別支援を試みた。耕地内の野菜畑と花壇を利用し、発達障害の有無に関係なく、特に希望する生徒を対象とし、野菜の栽培・収穫・販売と草花の栽培と花壇づくりの実習を、5月~10月の放課後および夏期休業期間を利用して実施した。

イ 成果と課題

 地域若者サポートステーションの相談員による就労面談を受けた生徒たちは、就労への意識を高くもち続けることにより自分の目指す職業や今後の生き方を見つけることができた。中には、就職試験の際の履歴書の書き方や面接練習にも自発的に取り組む生徒も見られた。来春卒業予定の生徒で面談を受けた生徒のうち、就職先・進学先を希望どおりに決定することができた者も少なくない。
 農業体験学習の試行に参加した生徒はわずかに4名であった。栽培管理での職員や他の生徒との共同作業や販売実習で地域の人達と触れ合うことは、コミュニケーショ能力を身に付ける一助となった。また、同様の取組みは農業科目の中でも実施されており、どの生徒も熱心に取り組み、それぞれに達成感を味わっていた。
 また、本校は国体の軟式野球会場となっており、農業体験学習で手がけた花壇が国体開催期間に満開となり、全国各地から来た選手たちを出迎えた。これは花壇作りに携わった生徒にとって自信になったと思われる。
 今年度の実践で、外部機関との連携や体験学習が本校の特別支援においても有効であることを裏付けた。また、外部の人たちとのコミュニケーションの機会が適度に多い支援が好ましいと思われた。加えて、職業への興味の幅を広げ、適職を見出す機会を設ける意味で、様々な種類の体験学習が可能な体制が望ましいと思われる。したがって、地域若者サポートステーションとの連携に加え、村上市を中心に、新潟県内にある機関(ハローワーク、県農林部、専門学校等)で実施している体験学習や、地域若者サポートステーションで月に1~2回行っている体験コーナーなどの活用に向けた各機関との連携が今後の課題と言える。

(4)一般の生徒に対する理解推進等の指導の在り方
ア 指導の工夫と取組

 人権教育の観点で、全般的な差別や障害についての理解を深めつつあるが、発達障害に焦点化した指導は行っていない。
 教職員の発達障害を有する生徒への関わり方は、周辺の生徒の関わり方のモデルとなることを認識し、適切な発達障害の理解と支援につながる職員研修を実施した。

イ 成果と課題

 一般の生徒への発達障害を理解する指導は不十分であると考えられる。
 今後、個性の肯定的な理解を土台とした、発達障害の理解を深める講演会などの啓発活動を慎重に進める必要がある。また、個々の問題を有する生徒への特別な配慮については、保護者の意向を尊重しながら行わなければならない。

(5)教職員や保護者の研修等
ア 校内職員研修

(ア)研修会開催の回数・時期・研修内容等

第1回 4月28日前期生徒理解研修会
 内容
 生徒についての情報を職員で共有する

第2回 5月25日特別支援教育研修会
 講師
 新潟大学教育学部特別支援教育専修教授長澤正樹さん
 内容
 発達障害の理解と指導
 特別支援教育の在り方

第3回 6月9日就労支援研修会
 講師
 発達障がい者支援センター「RISE」コーディネーター加治麻美子さん
 障がい者就業生活支援センター(アシスト)センター長佐藤将人さん
 下越県域障がい者地域支援センター五十嵐好美さん
 内容
 発達障害のある生徒の就労支援の概要と現状
 発達障害のある生徒の就労支援を本校で行うにあたっての助言

第4回 7月8日教育相談研修会
 講師
 新潟大学医学部保健学科教授後藤雅博さん
 内容
 思春期・青年期の心理と問題行動

第5回 11月27日後期生徒理解研修会
 講師
 有田病院臨床心理士川尻玲子さん
 内容
 教員による生徒の現状と指導・支援の方法についての意見交換
 担任発表の生徒の事例をもとに川尻さんより指導、助言

(イ)外部研修会

第1回 6月22日村上養護学校特別支援教育コーディネーター研修
 内容
 コーディネーターの役割と発達障害について

第2回 7月14日新潟大学附属特別支援学校研修
 内容
 授業参観と支援体制について

第3回 8月25日県立出雲崎高等学校シンポジュウム
 内容
 就労支援

第4回 9月16日特別支援コーディネーター研修
 内容
 生徒の情報の共有方法について

第5回 10月23日新潟大学附属特別支援学校研究会
 内容
 高等部の就労支援について

第6回10月27日長野県立下高井農林高等学校
 内容
 モデル事業報告会

第7回2月5日長野県立望月高等学校
 内容
 モデル事業報告会

(ウ)先進校視察

 モデル事業全般や特別支援教育について、取組状況の説明を受け授業参観等を行った。
 第1回 9月2日 長野県立下高井農林高等学校
 第2回 9月3日 長野県立望月高等学校
 第3回 9月3日 群馬県立前橋清陵高等学校
 第4回 9月14日 東京都立世田谷泉高等学校
 第5回 9月15日 東京都立足立東高等学校
 第6回 9月15日 千葉県立船橋法典高等学校
 第7回 12月8日 山形県立霞城学園高等学校
 第8回 12月9日 茨城県立水戸南高等学校
 第9回 12月10日 富山県立志貴野高等学校

イ 成果と課題

 生徒についての情報を、全職員で共有し、共通理解のもと支援・指導をしている。また、専門家からの指導により教員の専門性が向上し、多角的に支援の方法を考えられるようになってきている。
 発達障害理解、支援方法、生徒指導全般等に関連する書籍を職員の希望をもとに多数購入し、職員研修に役立てることができた。
 今後も、生徒理解とともに教員の専門性の継承・発展のため研修を充実させ、さらに有効な支援・指導方法を考えていかなければならない。

(6)その他の支援に関する工夫

 何らかの心身の理由から、教室で授業を受けることが困難だと認められた生徒には、登校機会の確保と授業参加のきっかけをつくるため、職員監督の下に自学自習を行う場として自習室を設置している。
 また、特別な支援を必要とする生徒の増加や生徒の問題の多様化等の状況において、教員のみでは十分な支援を行うことが困難な場合があるため、平成21年9月より特別支援教育支援員(以下「支援員」)を新潟大学の学生から採用し、支援員室において、休息時間や放課後等に相談活動と学習支援を行っている。さらに、平成22年1月より授業のなかでの学習支援を開始した。支援員の活用については現在試行段階であり、今後の検討が必要である。

2 研究の方法

(1)研究委員会の設置

 既存の教育相談委員会に、特別支援教育の機能を包括し研究を進めることとした。

ア 構成
NO 所属・職名 備考
1 教頭  
2 教務 1年次担任特別支援教育コーディネーター  
3 進路 1年次担任特別支援教育コーディネーター  
4 進路指導主事 4年次担任  
5 生徒指導主事  
6 生活 1年次担任  
7 教務 3年次担任  
8 教務 2年次担任  
9 保健主事 養護教諭  
10 養護助教諭  
イ 委員会開催回数・検討内容

 教育相談委員会を13回実施した。(1月末現在)

  • 「高等学校による発達障害モデル事業」計画
  • 各種研修会計画
  • 教育相談の実施計画、自習室対象生徒
  • 特別支援教育支援員による学習支援について
  • 教員実態調査
ウ 特別支援教育コーディネーターの指名や個別の教育支援計画の策定等具体的な方策

(ア)コーディネーターを、教育相談委員会のメンバーから2名指名した。そのうちの1名は、進路指導、1年次担任、1名は、教務、1年次担任という校務分掌である。

(イ)個別の教育支援計画は、全校体制で支援が必要な生徒に対象を絞り、計画を策定し支援している。

エ 成果と課題

(ア)今年度は、職員の発達障害理解と支援のスキルアップを中心目標にすえ各種研修会を実施し、一定の成果を得た。しかし、生徒支援の中核組織としての委員会の在り方は、委員会の開催等を含め、組織体制の改善を図る必要がある。

(イ)コーディネーター研修を、新潟大学附属特別支援学校や県立村上養護学校の協力を得て行うことにより、研修がさらに深まった。またコーディネーターが2名いることにより、業務の分担が行われ、特別支援教育を推進する基礎となった。

(ウ)個別の教育支援計画作成
 今年度は、モデル的な作成にとどまったので、個別の教育支援計画作成の範囲を拡充していかなければならない。

(2)専門家チームの活用
ア 構成

 今年度はチームを編成せず、スーパーバイザーを新潟大学教育学部長澤正樹教授に委嘱し、モデル事業全般に指導助言をいただいた。

イ 専門家チームの活用状況

4月モデル事業計画について打合せ
5月特別支援教育について職員研修を実施
8月支援員について打合せ
2月モデル事業2年目計画についての打合せ

この他にも適宜指導と助言を受けている。

ウ 成果と課題

 長澤教授の指導と助言はモデル事業の大きな指針となった。また、職員研修により特別支援教育についての職員の啓発につながった。
 来年度は、今年度研修等で指導を受けた関係機関との連携をさらに深め支援につなげるために、専門家チームを編成し、より多くの助言のもとモデル事業を推進していきたいと考える。

(3)関係機関との連携
ア 他の高等学校や特別支援学校との連携

(ア)新潟大学教育学部附属特別支援学校との連携

 7月14日の特別支援教育コーディネーター研修、10月23日の特別支援教育研究会に参加して、特別支援学校ならではの、現場実習を中心とした授業の進め方などについて学ぶことができた。また、11月5日には、本事業の進め方に助言をいただいた。

(イ)県立村上養護学校との連携

 6月3日に本校における特別支援教育の進め方について助言を受けたほか、6月22日と9月16日に特別支援コーディネーター研修として訪問し、個別の教育支援計画と職員間の情報の共有方法について学んだ。

イ 発達障害者支援センターやハローワーク等関係機関との連携

(ア)ハローワークとの連携

 就職を希望する生徒を対象として就職の情報提供や助言を受けてはいるが、特別支援の観点からの連携は実施しなかった。

(イ)地域若者サポートステーションとの連携

 村上地域サポートステーションの相談員に、個別支援を必要とする生徒を対象として月1~2回の就労面談をしていただいたほか、特に希望する生徒がサポートステーションを訪問し、パソコン操作などの体験学習に参加した。

(ウ)下越圏域障害者地域生活支援センターとの連携・はまぐみ小児療育センターとの連携

 発達障害のある生徒の就労支援の一連の流れについて現状の説明を受けるとともに、本校で就労支援を行ううえでの助言をいただいた。

ウ 地域の教育施設や人材等の活用

 新潟大学教育学部との連携を図った。長澤教授には、本事業のスーパーバイザーとして指導助言をいただいた。また、特別支援教育支援として、同大学学部生および大学院生を採用し、ピアカウンセリングの立場にたった相談活動や学習支活動を試行している。

エ 成果と課題

 研修協力や現状の把握、支援方法の助言を受けることが中心であり、生徒への支援に直接的に結び付いたのは地域サポートステーションの相談員との連携と学習支援員の導入のみであったので、さらに幅広い連携をすることで、生徒に直接的に、より効果的な支援ができるものと考えられる。一般的に、子どもの健全な育成には地域のもつ力の活用が望ましいとされているが、地域に在住する専門家の発掘や産業現場の活用により、本校の特別支援教育も大きな進歩を遂げられると考えられる。前述の機関に加え、地域住民との連携も視野に入れた取り組みが必要と思わる。一方で、地域への参画に耐え得る社会性を本校生徒に身に付けさせることが急務と考える。

(4)関連事業等との連携

 特記事項なし

3.今後の我が国における発達障害のある生徒の支援の在り方についての提案等

 発達障害の有無に関わらず、すべての生徒に有効な指導、支援に加え、個別の特別な配慮が行われるシステムを確立させることが重要であると考える。
 特に就労支援においては、基本的な生活習慣を身に付けさせるとともに、学校という集団の場で、社会性・協調性・コミュニケーション能力を学び、更に地域の一員として、実践によりそれぞれの能力を定着させるというような、発達段階に応じて順序立てた支援が必要である。
 特別支援教育は、一人ひとりの教育的ニーズを尊重した「合理的な支援を行う教育」である限り、日々の教育実践の中で、効果的に支援できる方法を検討し、継続されるべきものである。そのためには、すべての学校において、発達障害の知識は言うに及ばず、豊富な支援経験を有する人材が、校内外から確保される体制作りが高等学校でも急務である。これは、インクルーシブ教育を具現する原動力となるものである。

4.その他特記事項(エピソードを含む)

 農業基礎の授業や放課後活動を通して、野菜の栽培や販売に興味をもった生徒がいた。その後さらに学びを深めたいと、農業普及指導センターが紹介する農業体験にも参加し、農業系の上級学校への進学を決めた。
 このように、就労に対する具体的なイメージをもちやすい体験型の学習形態は有効で、一層の工夫と推進が図られなければならないと考えられる。

5.モデル校の概要

1 学級数と生徒数(平成21年5月現在)

課程 学科 1学年 2学年 3学年 4学年 合計
学級 生徒 学級 生徒 学級 生徒 学級 生徒 学級 生徒
定時制 普通科 3 104 3 96 3 98 2 31 11 329

2 教職員数(平成21年5月現在)

校長 教頭 教諭 養護教諭 実習助手 養護助教諭 常勤講師 非常勤講師 事務職員 学校技術員 その他
1 1 25 1 1 1 6 5 3 2 4 51

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)

-- 登録:平成22年07月 --