令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)

6初児生第12号 
令和6年10月31日 

 各都道府県教育委員会指導事務主管部課長
 各指定都市教育委員会指導事務主管部課長
 各都道府県私立学校主管部課長
 附属学校を置く各国立大学法人担当部課長  殿
 附属学校を置く各公立大学法人担当部課長
 小中高等学校を設置する学校設置会社を
 所轄する構造改革特別区域法第12条
 第1項の認定を受けた各地方公共団体の担当部課長

文部科学省初等中等教育局児童生徒課長 
 千々岩良英
(公印省略)

 

令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)


  標記については、毎年度御協力いただいているところですが、この度、暴力行為、いじめ、出席停止、長期欠席(不登校等)、高等学校における中途退学、自殺及び教育相談の各状況に係る令和5年度の調査についての結果を取りまとめ公表しました。調査結果の概要は別添資料のとおりです。
  今回の調査において、令和5年度の国立、公立、私立の小・中学校の不登校児童生徒数が約34万6千人、高等学校の不登校生徒数が約6万9千人、国立、公立、私立の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数が約73万3千件、うち重大事態の発生件数が1,306件とそれぞれ過去最多となる等の結果が明らかになりました。加えて、国立、公立、私立の小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数が397人、国立、公立、私立の小・中・高等学校における暴力行為の発生件数が約10万9千件等の結果も明らかになりました。
  子供たちを取り巻く環境が変化する中で、不安や悩みを相談できていない子供たちがいる可能性や、子供たちの不安や悩みが従来とは異なる形で現れたり、一人で抱え込んだりしている可能性等も考慮し、引き続き、 子供たちの小さなSOSを見逃さず、「チーム学校」で素早く支援するとともに、教育と福祉等が連携しつつ、子供やその保護者が必要な時に支援が行われるよう、御配慮願います
  都道府県・指定都市教育委員会においては、所管の学校及び域内の市区町村教育委員会等に対し、都道府県においては所轄の学校法人を通じて私立学校に対し、附属学校を置く国立大学法人及び公立大学法人においては附属学校に対し、構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた地方公共団体においては認可した学校に対し、本調査結果等について連絡するとともに 児童生徒の問題行動等の未然防止、早期発見・早期対応等に資するため、各地域や学校単位等における現状の分析を行い、下記事項への対応の徹底を含め、生徒指導の一層の充実が図られるよう御対応をお願いします。また、各教育委員会にあっては、当該地方公共団体の長(以下「首長」という。)及び関係部局に対し、本調査結果及び各自治体内の状況を共有するとともに、各自治体内の状況を総合教育会議の議題とし、首長及び関係部局間と認識の共有及び対策の検討を進めるなど、必要な対応を行っていただくよう併せてお願いします。

(参考)
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1302902.htm

 

 

1.不登校児童生徒への支援の充実について
 

(1)不登校児童生徒支援の基本的な考え方について
  今回の調査によると、小・中学校の不登校児童生徒数は11年連続で増加し約34万6千人、うち学校内外の機関等で専門的な相談・指導等を受けていない児童生徒数が約13万4千人、うち90日以上欠席している児童生徒数が約6万7千人といずれも過去最多となった。また、高等学校の不登校の生徒数も約6万9千人と過去最多となった。一方で、不登校児童生徒数の増加率は、小・中学校及び高等学校ともに、前年度より若干減少した(小・中学校:令和4年度 22.1%→令和5年度15.9% 高等学校:令和4年度18.8%→令和5年度13.5%)。 ​ ​ ​
  文部科学省では、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年法律第105号。以下「教育機会確保法」という。)やこれに基づく「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(平成29年3月31日)、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月31日文部科学大臣決定)に基づく取組を推進しており、学校及びその設置者においては、 これらの趣旨や関連の通知等を踏まえた対応に努めること。 その際、 不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないような配慮が必要なことや、支援に当たっては不登校児童生徒やその保護者の意思を十分に尊重しつつ行う必要があること。また、 不登校児童生徒への支援は、「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要があること、 児童生徒によっては、 不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で、学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意し、 学校教育の意義・役割を踏まえ、学校及びその設置者においては、既存の学校教育になじめない児童生徒について、学校としてどのように受け入れていくかを検討し、なじめない要因の解消等に努めるなど、不登校児童生徒が学校において適切な指導や支援が受けられるよう尽力すること。 その上で、 学校に登校できない児童生徒には教育支援センターを活用した学習支援等に取り組む とともに、児童生徒の状況により、 フリースクールなどの民間施設等との連携が必要となった場合にあっても、当該児童生徒の在籍する学校及びその設置者においては、関係機関と連携して在籍児童生徒の心身の健康状況・学習状況等を把握し、必要な支援を行うことが重要であること

(資料)
【教育機会確保法関係】
・「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について」(平成28年12月22日付け28文科初第1271号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1380952.htm
・「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(平成29年3月31日文部科学省)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2017/04/17/1384371_1.pdf
・ 教育機会確保法パンフレット
  https://www.mext.go.jp/content/20231017-app_ope02-000028870_2.pdf

【通知等】
・ 「不登校児童生徒への支援の在り方について」(令和元年10月25日付け元文科初第698号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
・ 「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策について」(令和5年3月31日付け4文科初第2817号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/content/000320701.pdf
・ 「不登校児童生徒の支援に係る情報提供等について」(令和5年7月31日事務連絡)
  https://www.mext.go.jp/content/20230801-mxt_jidou02-000028870-10.pdf
・ 「不登校の児童生徒等への支援の充実について」(令和5年11月17日付け5文科初第1505号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00001.htm

(2)誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)の着実な実施について
①不登校児童生徒全ての学びの場の確保について
学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)や校内教育支援センターの設置、教育支援センターの機能強化など、児童生徒一人一人の状況やニーズに応じた多様な学びの場を確保するとともに、学校に来られなくてもオンライン等で授業や支援につながることができるよう環境の整備に努めること。また、教育支援センター等の公的機関やフリースクールなどの民間施設等の学校外の機関、自宅等において懸命に学習を続けている不登校児童生徒に対して、我が国の義務教育制度を前提としつつ、その努力を学校として評価し、支援することは重要であり、これまでも通知等において、不登校児童生徒の学習の成果の成績評価を適切に行い、指導要録に記入したり、評価の結果を通知表等により、当該児童生徒や保護者、学校外の機関等に積極的に伝えることは、当該児童生徒の学習意欲に応え、自立を支援する上で意義が大きいこと等を周知してきたが、本年8月には、不登校児童生徒の努力の成果の適切な評価を促進するため、学校教育法施行規則の改正等により、一定の要件の下で不登校児童生徒の学習の成果を成績評価できることを法令上明確化したところであり、本制度も活用し、誰一人取り残されない学びの充実を一層推進すること。また、高等学校段階においては、高等学校及び中等教育学校の後期課程の全日制・定時制課程に在籍している不登校生徒を対象として、遠隔授業や通信教育による単位認定を一定の範囲内で可能とする省令改正を行い、令和6年度から各学校長の判断により実施可能となっているところ、本制度の活用も検討しながら、生徒の学びを継続できるよう努めること

(資料)
・「不登校児童生徒が欠席中に行った学習の成果に係る成績評価について」(令和6年8月29日付け6文科初第1126号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155_00002.htm
・「高等学校等における多様な学習ニーズに対応した柔軟で質の高い学びの実現について」(令和6年2月13日付け5文科初第2030号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1422988_00003.htm

②心の小さなSOSを見逃さない「チーム学校」での支援について
  不登校傾向のある児童生徒に関する支援ニーズを早期発見するため、1人1台端末等を活用して児童生徒の見えにくい声を可視化して、教師が児童生徒の不安や生活リズムの乱れ等に気付くことができる環境整備や、オンライン相談等のICTの活用も含めたスクールカウンセラー(以下「SC」という。)、スクールソーシャルワーカー(以下「SSW」という。)、関係機関との連携による教育相談支援体制の充実など、個々の不登校児童生徒の状況を適切に把握し、多様な支援の実施を推進すること
  また、不登校児童生徒への早期支援のためには、その保護者への情報提供や相談支援が重要であることを踏まえ、不登校ではない児童生徒も含めた全ての児童生徒の保護者に対して、以下の様式も活用しつつ、児童生徒が不登校となった場合の相談支援に関する情報提供に努めることが求められること

(資料)
・ 1人1台端末を活用した健康観察・教育相談システム一覧
  https://www.mext.go.jp/content/20240712-mxt_jidou02-000037050-004.pdf
・ 健康観察・教育相談アンケート作成マニュアル
 https://www.mext.go.jp/content/20240712-mxt_jidou02-000037050-005.pdf
・ 保護者用情報提供様式
  https://www.mext.go.jp/content/20230801-mxt_jidou02-000028870_5.pptx

③学校の風土の「見える化」を通した、安心して学べる魅力ある学校づくりについて
  不登校対策に当たっては、不登校となった児童生徒への支援のみならず、全ての児童生徒に対して、誰もが安心して学べる魅力ある学校づくりを進めていくことが重要である。文部科学省では、児童生徒の授業への満足感や教職員への信頼感、学校生活への安心感等の 学校の風土や雰囲気を把握するためのツールを整理し示している。 こうしたツールを学校評価の仕組みと関連させながら活用することにより、関係者が共通認識を持って安心して学べる学校づくりに取り組むこと
  文部科学省では、文部科学大臣を本部長とする「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策本部」においてCOCOLOプランの進捗状況を管理しつつ、不登校児童生徒への支援の取組を不断に改善することとしている。本年8月に開催した同本部において、「不登校を生まない、安心して学べる魅力ある学校づくりの推進に向けた方向性」を示した。各学校及びその設置者においては、今回の調査結果や「不登校を生まない、安心して学べる魅力ある学校づくりの推進に向けた方向性」等を踏まえた取組を推進すること
  また、今回の調査によると、不登校児童生徒について把握した事実として、「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」「不安・抑うつの相談があった」「生活リズムの不調に関する相談があった」「学業の不振や頻繁な宿題の未提出が見られた」「いじめ被害を除く友人関係をめぐる問題の情報や相談があった」等が多く挙がった。本年3月に公表した「不登校の要因分析に関する調査研究」においては、不登校のきっかけ要因に係る不登校児童生徒やその保護者の回答と教師の回答では認識の差が確認されたところであるが、今回の調査において調査方法を「不登校の要因」から「不登校児童生徒について把握した事実」に変更したことも踏まえ、各学校及びその設置者においては、不登校児童生徒の状況の把握に努めるとともに不登校のきっかけや学校生活で辛いと感じた要因の低減・解消に向けた取組を推進すること。

(資料)
・ 学校風土の把握ツール
  https://www.mext.go.jp/content/20230801-mxt_jidou02-000028870_8.pdf
・「不登校を生まない、安心して学べる魅力ある学校づくりの推進に向けた方向性」(令和6年8月29日誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策推進本部)
  https://www.mext.go.jp/content/20240829-mxt_jidou02-000037766_06.pdf
・「不登校の要因分析に関する調査研究」報告書(令和6年3月)
  https://www.mext.go.jp/content/20240322-mxt_jidou02-000028870_01.pdf
  https://www.mext.go.jp/content/20240322-mxt_jidou02-000028870_02.pdf

(3)設置者に求められる役割について
  不登校児童生徒への支援に当たり、学校設置者においては、 地域や設置する学校毎の不登校等の状況を分析し、必要な支援の実施や地域連携・学校間連携等を推進するとともに、 学びの多様化学校 については、第4期教育振興基本計画においても、各都道府県・政令指定都市での1校以上の設置を計画期間内において進め、将来的には、学びの多様化学校への通学を希望する児童生徒が居住地によらずアクセスできるよう、分教室型も含め、全国で 300 校の設置を目指していることから、 現状、未設置の自治体におかれては、分教室型を含めた設置に向けた検討が期待されること。 また、 校内教育支援センター については、不登校から学校復帰する段階にある児童生徒や、不登校の兆候がみられる児童生徒が、学校内において、自分に合ったペースで学習・生活できる環境として、学習の遅れやそれに基づく不安の解消、早期に学習や進学に関する意欲を回復しやすい効果が期待されるところ、令和6年7月現在、公立の小・中学校における設置率が全国平均で46.1%であり、 引き続き、こうした機能を有する校内教育支援センターの設置が望まれること。 さらに、 教育支援センター については、家から出ることができず、在籍する学校や教育支援センターに通うことができない児童生徒に対するアウトリーチ支援体制や不登校児童生徒の保護者に対する相談支援体制等を強化することにより、 地域の不登校児童生徒支援の拠点としての整備が望まれること
都道府県教育委員会 においては、域内の教育委員会・教育支援センター職員や福祉関係を含む関係機関、フリースクールや親の会などの民間団体等が、相互に協力・補完しあいながら不登校児童生徒の支援の在り方等について定期的に協議を行い、その結果を踏まえ、域内の市町村からの学びの多様化学校の設置に向けた相談・支援や市町村間の連絡・調整、校内教育支援センターの設置や体制整備に向けた支援・調整、教育支援センターの設置されていない市町村の不登校児童生徒への支援方策の検討や調整等、 広域の地方公共団体として積極的な役割を果たすことが求められること

(資料)
・校内教育支援センター設置状況(令和6年7月現在)
  https://www.mext.go.jp/content/20240829-mxt_jidou02-000037766_04.pdf

2.いじめの問題への対応について 

(1)学校いじめ防止基本方針等について
  文部科学省では、平成29年3月にいじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下、「法」という。)に基づく「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定。以下「基本的方針」という。)を改定するとともに、本年8月に「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(平成29年3月。以下単に「ガイドライン」という。)を円滑かつ適切な重大事態調査の実施及びいじめ対象児童生徒や保護者等に寄り添った対応を促す観点から改訂した。
  学校設置者においては、これらに沿った対応がなされるよう、学校の対応状況を適切に把握するとともに、実効性のあるものとなるよう指導助言を行うこと。その際、各学校において作成している学校いじめ防止基本方針については、学校の実情に即して適切に機能しているかどうかを点検し、必要に応じて見直すこと。さらに、策定した学校いじめ防止基本方針については、保護者や地域住民がその内容を容易に確認できるよう各学校のホームページへ掲載する等の措置を講ずるとともに、学校運営協議会等も活用して保護者や地域住民との連携を図ること
  また、学校におけるいじめの問題に対する日常の取組のうち、校内研修の実施は85.7%にとどまっていることから、各学校がより積極的にいじめ問題への取組を実施するよう、学校設置者は、学校いじめ防止基本方針や年間実施計画に位置付けて実施するよう指導助言すること。併せて、校内研修等を実施している学校においても、その実施状況を把握するとともに、実施内容等の一層の充実が図られるよう、必要な指導助言を行うこと

(資料)
・いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406848.htm
・ 「いじめの防止等のための基本的な方針」(平成25年10月11日文部科学大臣決定(最終改定平成29年3月14日)
  https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/06/26/1400030_007.pdf
・「いじめ対策に係る事例集」(平成30年9月文部科学省)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2018/09/25/1409466_001_1.pdf
・ 「いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの改訂について」(令和6年8月 30日付け6文科初第1137号文部科学省初等中等教育局長、総合教育政策局長 、高等教育局長連名通知)
  https://www.mext.go.jp/content/20240911-mext_jidou01-000037829_1..pdf
・「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(令和6年8月改訂)
  https://www.mext.go.jp/content/20240830-mext_jidou01-1336275_3.pdf

(2)いじめの積極的な認知(早期発見)について
  文部科学省としては、 いじめの認知件数が多い学校について、「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価している。 今回の調査によると、小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は約73万3千件と過去最多となった。一方で、児童生徒1千人当たりのいじめ認知件数の都道府県間における差は、前年度より縮小したものの約6.6倍と依然として大きく、 いじめを漏れなく認知するためには、全ての教職員が改めて法におけるいじめの定義を確認し、積極的な認知を行うとともに、学校を挙げて早期発見・早期対応に向けた取組を行うことが重要である
  また、いじめの防止等の対策は、いじめが行われなくなるようにすることを旨として行われなければならず、法に基づき、認知すべきものは適切に認知し、早期に対応しなければならない。その際、 ICT端末も活用しつつ、児童生徒への定期的あるいは必要に応じたアンケート調査や教育相談等を実施する等により、早期発見・早期対応に努めること
 令和5年度中に いじめを認知していない学校 (5,548校)にあっては、 真にいじめを根絶できている場合も存在するであろうが、解消に向けた対策が何らとられることなく放置されたいじめが多数潜在する場合もあると懸念している。特に、それらの学校においては、 いじめの認知件数が0件であったということを児童生徒や保護者向けに公表し、検証を仰ぐことで、認知漏れがないかを確認すること

(資料)
・「いじめの正確な認知に向けた教職員間での共通理解の形成及び新年度に向けた取組について」(平成28年3月18日付け27初児生第42号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1400170.htm

  インターネット上のいじめについては約2万5千件と昨年より約8百件増加している。SNS等を用いたいじめについては、外部から見えにくい・匿名性が高い等の性質を有するため、学校が認知しきれていない可能性がある。また、GIGAスクール構想が進展する中、1人1台端末等を使ったいじめが発生する可能性があることにも留意が必要であり、端末の活用におけるルールを明確にし、児童生徒との間で共通理解を図り、教師が児童生徒の書き込みを確認できる設定にするなど、安全かつ効果的に端末を活用できるようにすることが重要であること
  いずれの態様のいじめについても、学校として組織的に対処する必要があることは言うまでもなく、日頃から児童生徒の見守りや信頼関係等の構築等に努め、いじめを訴えやすい体制を整えることが必要であること。このほか、学校における情報モラル教育のより一層の充実を図るために、文部科学省で作成している教材や資料等を参照すること

(資料)
・ いじめに対する教職員の研修動画教材について 動画教材「ネットいじめ研修」
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406070_00002.htm
・ 情報モラル教育の充実等
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1369617.htm

(3)いじめの未然防止のための取組について
  いじめの早期発見や対処と併せて、 いじめの未然防止に積極的に取り組むことが重要 である。いじめの未然防止に係る留意事項については基本的方針や生徒指導提要を参照するとともに、 法におけるいじめの定義やいじめの構造を理解したり、実際の事例や動画などを教材にした検討やいじめの場面のロールプレイを行ったりするなどの体験的な学びの機会を得られるよう努めること。 加えて、いじめ問題への対応の充実等を図る観点から、「特別の教科 道徳」を要として学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育の充実を図るとともに児童生徒の人権意識の醸成や市民性を育む生徒指導にも配意すること

(資料)
・ いじめに対する理解を促す動画教材
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1406070_00001.htm
・ 道徳教育アーカイブ
  https://doutoku.mext.go.jp/

(4)いじめへの適切な対応について
  年度末時点でのいじめの解消状況は567,710件でいじめの認知件数全体の約77.5%に留まっている。これは安易にいじめを解消したとせず、丁寧な対応を行っているとも考えられるが、事案が複雑化し、長期化している可能性も考えられる。対応に当たっては、関係機関と積極的に連携し、いじめられた側のみならずいじめた側に対するSC等による専門的継続的な指導支援体制を構築すること等を通して、いじめの解消率を上げていくこと
 また、 重大ないじめ事案や犯罪行為に相当するいじめなど学校だけでは対応しきれないいじめについては、警察と緊密に連携して対応することが求められている。 今回新たに調査を行った学校におけるいじめの問題に対する日常の取組として学校・警察連絡員の指定を行った学校は51.2%にとどまったことを踏まえ、警察との日常的な情報共有・相談体制を構築するため、例えば、副校長・教頭、生徒指導主事など、学校における警察との連絡窓口となる担当職員の指定を徹底すること。そのほか、学校と警察署等との協定の締結による円滑な情報共有の推進、学校警察連絡協議会等の活用、スクールサポーターの積極的な受入れの推進などにより、学校と警察との日常的な情報共有体制の構築による連携を強化すること

(資料)
・いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について」(令和5年2月7日付け4文科初第2121号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/content/20230207-mxt_jidou02-00001302904-001.pdf

(5)いじめの重大事態の対応について
  今回の調査によると、いじめの重大事態(以下単に「重大事態」という。)の件数は1,306件と昨年度より387件増加し、第1号及び第2号の重大事態ともに増加した。
  近年、重大事態の発生件数は増加傾向であり、依然として法、基本的方針、ガイドライン等に沿った対応ができていなかったために児童生徒に深刻な被害を与える事態が発生している状況を踏まえ、重大事態の対処に当たっては、法の定義に基づくいじめの認知と組織的対応やガイドラインに沿った円滑かつ適切な重大事態調査の実施及びいじめ対象児童生徒や保護者等に寄り添った適切な対応を行うこと。併せて、重大事態に対する平時からの備えや重大事態調査の実施等に当たり、基本的な項目についてチェックリスト形式にまとめた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン チェックリスト」を活用すること
  また、重大事態は、いじめの問題に適切に対応することで、限りなく件数を0に近づけるべきである一方、取り上げるべきものは適切に取り上げなければならない。基本的方針やガイドラインに基づき、児童生徒や保護者から申立てがあったときは、申立てに係るいじめが起こり得ない状況であることが明確であるなど、法の要件に照らして重大事態に当たらないことが明らかである場合を除き、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たること
  今回の調査によると、重大な被害を把握する以前にいじめとして認知していたものは、1,306件のうち816件にとどまっており、改めて、いじめの未然防止、積極的な認知、早期発見・早期対応、継続的な見守り等の基本的な取組を着実に実施すること
  加えて、重大事態の調査は、事案の対処や再発防止に資するために行うものであることから、個人情報等に配慮しながら可能な限り当該学校を越えて広く調査結果を共有し、いじめの認知や組織的対応の改善、いじめ防止基本方針の改善、平時からの未然防止等に積極的に活用することが強く求められること
  さらに、重大事態調査における委員の人選に関する助言や、中立・公平性のある調査方法等について相談が必要な場合には、こども家庭庁の「いじめ調査アドバイザー」を積極的に活用いただきたいこと


(資料)
・ 「いじめ重大事態に関する国への報告について(依頼)」(令和5年3月10日事務連絡)
  https://www.mext.go.jp/content/20230313-mxt_jifou02-000028183_001-1.pdf
・ 「いじめ重大事態調査の基本的な対応チェックリスト」の配布について(令和5年7月7日事務連絡)
 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1400142_00005.htm
・ こども家庭庁HP「いじめ調査アドバイザーについて」
  https://www.cfa.go.jp/policies/ijime-boushi/ijime-chousa/

(6)設置者に求められる役割について
  法第12条においては、地方いじめ防止基本方針を定めるよう努めるものとされており、都道府県における策定状況は100%となった一方で、市町村における策定状況は98.3%となった。 同方針の策定は、努力義務ではあるものの、学校がいじめ防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するためには、全ての自治体において、地方いじめ防止基本方針が策定されることが望ましく、複数の市町村による共同策定も視野に入れながら、未策定の市町村は、各自治体の実態に応じて、策定を速やかに検討すること。また、都道府県教育委員会においては、地方いじめ防止基本方針の策定を検討している区域内の市町村を支援すること
都道府県教育委員会にあっては、教育事務所所管の地域間、市町村間及び設置する学校間、市町村にあっては、設置する学校間における認知件数の格差や同じ学校での経年比較についても適切に分析するとともに、必要に応じ、指導助言を行うこと。 重大事態の調査主体となり得る組織として、条例に基づき法第14条第3項に定める教育委員会の附属機関を設置している都道府県は83.0%、市町村では77.8%にとどまっているが、重大事態が発生した場合に、速やかに第三者委員会方式による調査を開始することを可能にするためには、第三者委員会となり得る教育委員会の附属機関をあらかじめ条例により設置しておくことが望ましいこと。加えて、都道府県教育委員会にあっては、域内の市区町村教育委員会における、重大事態の調査主体となり得る附属機関の設置に向けた支援を行うとともに、自ら未設置の場合は、速やかに設置を検討すること
地方公共団体の長が行う再調査のための組織についても、未設置の場合は設置に向けた検討を行うこと

3.自殺対策について 

(1)児童生徒の自殺対策の状況と基本的な考え方について
  今回の調査結果によると、児童生徒の自殺者数は397名と高止まりしており、極めて憂慮すべき状況にある。 自殺した児童生徒が置かれていた状況は不明(46.9%)が最多であったが、学校に係る問題のうち進路問題(9.6%)・友人関係の悩み(7.8%)・学業等不振(5.0%)に係るものが多くなっていることを踏まえ、進路指導の充実や悩みを抱えた児童生徒の早期把握・早期支援に努めることが重要であること。また、学校別の自殺者数は高等学校が最も多く、次いで中学校が多くなっているが、小学校においても特に高学年で自殺者が見られる状況にあるため、自殺予防教育の実施や教育相談・各種相談窓口の周知等の取組については、小学校から継続して取り組む必要があること。加えて、 18歳以下の自殺は、学校の長期休業明けにかけて増加する傾向があるため、各学校においては、特にこうした時期にかけて、児童生徒の自殺予防について組織体制を整え取組を強化する必要があること

(資料)
・「児童生徒の自殺予防に係る取組について」(令和6年7月12日付け6初児生第9号文部科学省初等中等教育局児童生徒課長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1414737_00008.htm

  国においては、こうした状況を踏まえ、令和4年10月に自殺対策の政府の指針である「自殺総合対策大綱」を決定し、重点施策として、「子ども・若者の自殺対策のさらなる推進・強化」を位置付けている。また、昨年6月には「こどもの自殺対策緊急強化プラン」を策定するとともに、「第4期教育振興基本計画」において児童生徒の自殺対策の推進を盛り込んでいる。各学校及びその設置者においては、これらの国の方針を踏まえ児童生徒の自殺予防の取組を積極的に推進すること

(資料)
・ 「自殺総合対策大綱~誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して~」
(令和4年10月14日閣議決定)
  https://www.mhlw.go.jp/stf/taikou_r041014.html
・ 「こどもの自殺対策緊急強化プラン」(令和5年6月2日こどもの自殺対策に関する関係省庁連絡会議) 
 https://www.cfa.go.jp/policies/kodomonojisatsutaisaku/
・ 「第4期教育振興基本計画」(令和5年6月16日閣議決定)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/index.htm

(2)自殺予防に向けた取組について
  文部科学省では、自殺対策基本法や自殺対策大綱に基づき、SOSの出し方に関する教育を含む自殺予防教育や1人1台端末の活用等による自殺リスクの把握の推進、SC・SSWの配置等による相談体制の充実等を推進している。特に SOSの出し方に関する教育や、1人1台端末の活用等による自殺リスクの把握については、以下の手引きや通知等も参照しつつ、積極的な推進を図ること。 また、 自殺予防については、インターネット上も含む学校内外における見守りが重要であるため、保護者や地域の関係機関との積極的な連携に努めること

(資料)
・「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」(平成21年3月)
  https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/gaiyou/1259186.htm
・「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引き)」(平成26年7月)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408017.htm
・ 「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態、強い心理的負担を受けた場合などにおける対処の仕方を身に付ける等のための教育の推進について」(平成30年1月23日付け29初児生第38号、社援総発0123第1号 文部科学省初等中等教育局児童生徒課長・厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)連名通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408025.htm
・ 「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態、強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の教材例について」(平成30年8月31日付け事務連絡)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1410401.htm
・1人1台端末を活用した健康観察・教育相談システム一覧
  https://www.mext.go.jp/content/20240712-mxt_jidou02-000037050-004.pdf
・ 健康観察・教育相談アンケート作成マニュアル
  https://www.mext.go.jp/content/20240712-mxt_jidou02-000037050-005.pdf

(3)自殺の実態の把握について
  今回の調査結果によると、児童生徒の自殺者数は397人であったが、厚生労働省及び警察庁の調査結果によれば、令和5年度の自殺者数は525人(※令和6年1月~3月までの数値は暫定値)と128人の差が生じており、令和4年度よりもその差が拡大している。これは、警察が遺書の有無や現場の状況、検視等により自殺と判断した事案を集計しているのに対し、学校が御遺族からの報告等により自殺と確認できた事案を集計していることによるものと認識しているが、 児童生徒の自殺の実態を可能な限り正確に把握することは重要であることから、引き続き、警察等の関係機関と連携し、正確な実態を把握するよう努めること
  また、今回の調査結果によると、自殺した児童生徒が置かれていた状況について、「教職員による体罰・不適切指導」の項目において1人が計上されている。 体罰は、学校教育法第11条において禁止されている違法行為であり、決して許されない行為である。体罰を行ったと判断した教員に対しては、客観的な事実に基づき、厳正な懲戒処分等を行うこと。 また、体罰のみならず、教員による児童生徒に対する暴言等の不適切な発言やいたずらに注意や𠮟責を繰り返すなど児童生徒を精神的に追い詰めるような指導は、懲戒権の範囲を逸脱した行為としてあってはならないことであり、このような 不適切な言動や指導に対して、引き続き、厳正な対応をとる必要があること不適切な指導等について、体罰と同様に懲戒処分基準に規定している教育委員会もあり、未整備の教育委員会においてはこうした規定を参考にして懲戒処分基準に定めることが望ましいこと
  また、今回の調査よると、児童生徒の自殺に係る調査を実施したものの詳細について調査を行った結果、全件で基本調査を実施しており、詳細調査(いじめ重大事態調査で代替したものを含む)については32件で実施されていることが確認された。一方、基本調査後の遺族への説明において詳細調査の制度や調査希望の有無を遺族に説明した件数は238件にとどまることも確認された。 「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂)」(平成26年7月。以下単に「背景調査の指針」という。)では、基本調査の遺族への説明の際、詳細調査への移行について学校及びその設置者の考えを遺族に伝えて、遺族の意向を確認することが必要である旨示しており、遺族がかねてから基本調査よりも精微な調査を希望していないなど特段の事情がない限り、背景調査の指針に基づいた遺族への説明を徹底すること。なお、詳細調査が終了した際には、その調査結果を文部科学省に提出すること

(資料)
・「子どもの自殺が起きたときの緊急対応の手引き」(平成22年3月)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408018.htm
・ 「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針(改訂)」(平成26年7月)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1408019.htm

4.暴力行為への対応について

  今回の調査結果によると、小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約10万9千件で過去最多となり、全ての校種において前年度よりも発生件数が増加した。  
  暴力行為の発生件数が高い水準にあることについては、いじめの積極的な認知に伴うものや児童生徒に対する見取りの精緻化によって把握が増えたことなどの要因が考えられ、犯罪にならない初期段階のものでも暴力行為と捉え、指導している結果という点では肯定的に評価している。一方、児童生徒1千人当たりの暴力行為発生件数の都道府県間における差は最大で約40倍と大きく、暴力行為の定義の当てはめの判断に差異が生じていることもその要因の一つと考えられるため、再度、 本調査における暴力行為の定義や形態ごとの例をよく確認する必要があること
  また、各学校及びその設置者にあっては以下の通知や報告書を参照しつつ、 教職員が一体となって、暴力行為の未然防止と早期発見・早期対応の取組や家庭・地域社会等の理解を得て地域ぐるみでの取組を推進するほか、SC・SSW、関係機関との連携による教育相談体制を充実すること
  なお、暴力行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対しては、出席停止制度の措置をとることをためらわずに検討し、 犯罪行為の可能性がある場合には、学校だけで抱え込むことなく、直ちに警察に通報するなど、毅然とした対応をとること。 また、学校設置者は、 学校が適切に対応できるようサポートする体制を整備すること

(資料)
・ 「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け18文科初第1019号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/07020609.htm
・「暴力行為のない学校づくりについて(報告書)」(平成23年7月暴力行為のない学校づくり研究会)
  https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/079/houkou/1310369.htm

5.出席停止制度の運用について

  今回の調査結果によると、小・中学校における出席停止の件数は12件であり、いじめの加害児童生徒への特別な対応として、別室で授業等を行った件数は6,628件となった。 いじめの被害児童生徒については、安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、必要に応じて加害児童生徒を別室において指導することとしたり、状況に応じて出席停止制度を活用したりして、被害児童生徒が落ち着いて教育を受けられる環境の確保を図る とともに、 加害児童生徒については、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導・対応を行い、自らの行為を反省させることが必要であること
出席停止は、懲戒行為ではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の教育を受ける権利を保障するために採られる措置であり、学校及びその設置者は、制度の趣旨を十分理解し、日頃から規範意識を育む指導やきめ細かな教育相談等を行うことが必要であること。学校がこのような指導を継続してもなお改善が見られず、いじめや暴力行為など問題行動を繰り返す児童生徒に対し、正常な教育環境を回復するため、 必要と認められる場合には、出席停止制度の措置を積極的に検討すべきであり、いじめ防止対策推進法第26条においても、いじめを受けた児童生徒その他の児童生徒が安心して教育を受けられるようにするため、出席停止を命ずる等の必要な措置を速やかに講ずることが規定されていること
  小・中学校の設置者においては、以下の通知等を踏まえ、 出席停止の手続に関し必要な事項を教育委員会規則で定め、運用に当たっては適正な手続を踏むこと。
  また、都道府県教育委員会は、制度が適切に活用されるよう課題を分析するとともに指導主事やSCの派遣等の人的支援や警察や児童相談所等の関係機関との連携を促進することなど、 市町村教育委員会及び学校に対し、必要な支援を行うこと

(資料)
・ 「出席停止制度の運用の在り方について」(平成13年11月6日付け13文科初第725号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/013.htm
・ 「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」(平成19年2月5日付け18文科初第1019号文部科学省初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/07020609.htm

6.高等学校における中途退学への対応の充実について

  今回の調査結果によると、高等学校における中途退学者数は46,238人であり、前年度の43,401人から増加した。中途退学の主な理由としては、進路変更によるものが最も多く約4割であった。高等学校やその設置者においては、高等学校における中途退学への対応に当たり、以下の通知等に基づき、 学校教育を一層充実するとともに、学校における指導体制を充実すること

(資料)
・「学校、地域若者サポートステーション、ハローワーク等の関係機関間の連携強化による進路未決定卒業予定者への切れ目ない支援の実施について」(令和2年12月28日付け2文科初第1427号、開若発1228第1号 文部科学省総合教育政策局生涯学習推進課長・初等中等教育局児童生徒課長・高等教育局学生・留学生課長・厚生労働省参事官(若年者・キャリア形成支援担当)連名通知)
  https://www.mext.go.jp/content/20210305-mxt_gakushi01-000012898_01.pdf
・「高等学校等における中途退学への対応の充実に係る協力について」(平成29年1月16日付け28文科生第707号文部科学省生涯学習政策局長・文部科学省初等中等教育局長・文部科学省高等教育局長連名通知)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/20241025-ope_dev03-1.pdf

7.教育相談体制の充実について

(1)教育相談の状況と基本的な考え方について
  今回の調査結果によると、SCについては、約3.1%の小学校、約1.2%の中学校、約4.8%の高等学校で配置実績が無く、SSWについては、約14.4%の中学校区で配置実績が無かった。教育委員会等にあっては、学校教育法施行規則が平成29年3月に改正され、SC・SSWの名称及び職務等が明らかにされたことなども踏まえ、児童生徒の課題の早期発見や支援のため、引き続き、SC・SSWの配置拡充に努めるとともに、以下の通知も踏まえ、 未然防止、早期発見及び支援・対応等への体制構築、学校内の関係者がチームとして取り組み、関係機関と連携した体制づくり、教育相談体制の点検・評価、活動方針等に関する指針の策定、積極活用に向けた教職員の研修の実施など、限られた人員の中でもより効果的な活用の工夫を行い、学校における教育相談体制の充実に努めること
  また、都道府県・指定都市の教育委員会が行った教育相談の件数は277,412件、市町村教育委員会が行った教育相談の件数は927,453件であり、いずれも前年度から増加するなど教育相談の重要性が増している。相談内容としては不登校に関する相談が最も多く、学校外における教育相談も重要な役割を果たしている。こうした状況を踏まえ、教育委員会にあっては、 学校や教育支援センターの場に来ることのできない児童生徒も含めた相談支援を強化するため、教育支援センター等を拠点としたオンラインを活用した広域的な教育相談体制を整備し、SNS相談や電話相談とも連携した支援に取り組むなど、学校外における教育相談体制の充実にも努めること

(資料)
・「児童生徒の教育相談の充実について」(平成29年2月3日付け28文科初第1423号初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/066/gaiyou/attach/1388337.htm
・「児童生徒の教育相談の充実について ~学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり~」(平成29年1月教育相談等に関する調査研究協力者会議)
  https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/07/27/1381051_2.pdf
・ 「子供のSOSの相談窓口」
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

(2)組織的な教育相談の実施について
  学校内の関係者が情報を共有し、教育相談にチームとして取り組むため、既存の校内組織を活用するなどして、早期から組織として気になる事例を洗い出し検討するための会議を定期的に実施し、解決すべき問題又は課題のある事案については、必ず支援・対応策を検討するためのケース会議を実施することが必要であること
  学校において、組織的な連携・支援体制を維持するためには、学校内に児童生徒の状況や学校外の関係機関との役割分担、SC・SSWの役割を十分に理解し、初動段階でのアセスメントや関係者への情報伝達等を行う教育相談コーディネーター役の教職員が必要であり、 教育相談コーディネーターを中心とした教育相談体制を構築する必要があること
  教育相談体制が児童生徒の安心した学校生活、家庭生活の維持・改善に資するものであるかを評価するため、 児童生徒及び保護者からの意見聴取等を行い、利用者も含めた教育相談体制の見直しを必要に応じて行うことが重要であること
  教育委員会においては、SC・SSWの活動方針を明確にするため、 具体的なSC及びSSWの活動計画を策定、実施し、効果等を検証するなどし、定期的に評価を行う必要があること。 加えて、 学校や域内の教育支援センター等においてSCが適切に活動でき、児童生徒の安心した学校生活及び適切な環境が整備されるような支援体制を構築する必要があること

(資料)
・ 「児童生徒の教育相談の充実について」(平成29年2月3日付け28文科初第1423号初等中等教育局長通知)
  https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/066/gaiyou/attach/1388337.htm
・「児童生徒の教育相談の充実について ~学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり~」(平成29年1月教育相談等に関する調査研究協力者会議)
  https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/07/27/1381051_2.pdf

 

8.生徒指導上の諸課題への組織的な対応及び関係機関との連携強化について

  いじめ、不登校、暴力行為その他生徒指導上の諸課題への対応に当たっては、 校長を中心に、学校が組織的に行うことが必要であり、学校設置者への報告及びその指示に基づく対応が求められる。その際、児童生徒の問題行動・不登校等の背景には、家庭環境など様々な要因が考えられるが、 事案に応じて、SC・SSW等を活用するとともに、警察、児童相談所、法務局又は地方法務局、人権擁護委員、福祉・医療等の関係機関との連携を積極的に図ること

令和5年7月にとりまとめられた 「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」 や、 生徒指導提要 を踏まえ、性的な被害にあった児童生徒からの相談があった場合には、
 ・どこまで情報を共有していいか本人から同意をとり、繰り返し同じ話を聞くことを避けるようにするなど、 児童生徒に二次的な被害が生じないよう最大限に配慮すること
 ・相談を受けた者が一人で抱え込まずに、 生徒指導主事、学級担任や養護教諭、SC・SSW等が連携して組織として対応すること
 ・性被害は児童生徒の心身に深刻な被害を及ぼすことから、慎重な対応が必要であり、 早期 に専門家や性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等の 専門機関に相談し、関係機関と連携して対応する必要 があること
 ・犯罪や性的虐待の疑いがある場合は、速やかに警察や児童相談所に相談する必要があること
等に留意すること

(資料)
・ 「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」(令和5年7月26日 性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議 こどもの性的搾取等に係る対策に関する関係府省連絡会議)
  https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/pdf/boushi_03.pdf

  また、学校の教職員が児童生徒と向き合うための時間を確保することがこれまで以上に必要であることから、教育委員会及び学校に当たっては、以下の通知等に基づき、引き続き、 学校における働き方改革の推進等に必要な取組を徹底すること

(資料)
・「令和の日本型学校教育」を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について(答申)」(令和6年8月27日中央教育審議会)を踏まえた取組の徹底等について」(令和6年9月30日付け文科初第1293号文部科学省初等中等教育局長・文部科学省総合教育政策局長・スポーツ庁次長・文化庁次長通知)
  https://www.mext.go.jp/content/20240930-mxt_zaimu-000038209_1.pdf

【参考資料】
・ 生徒指導提要(改訂版)
  https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1404008_00001.htm
・「生徒指導リーフ」シリーズ(国立教育政策研究所)
  https://www.nier.go.jp/shido/leaf/index.html

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課