新しいデジタル文化の創造と発信(デジタルミュージアムに関する研究会報告書)

平成19年6月19日
デジタルミュージアムに関する研究会

要旨

 「デジタルミュージアムに関する研究会」は、文化資源の次世代型デジタル・アーカイブ化及びアーカイブの活用・流通・ネットワーク化に向けた技術の研究開発や、「デジタルミュージアム」の実証に向けたシステムの研究開発構想について検討を行うことを目的として、デジタル情報技術や博物館等の専門家を中心に、総務省の協力を得て、平成18年9月に発足(文部科学事務次官決定)。

  新しいデジタル文化の創造
 デジタル化された文化資源情報がデータベース化され、インターネット等によって配信がなされていけば、新しい「デジタル文化」として、新たな価値と使命を創造。
 将来的には、高齢者や障害者等が自宅のモニター等で実物とまったく同じ感覚で文化資源に接することができるユビキタスネット社会の実現により、ユニバーサルな鑑賞が可能。
 人工現実感(バーチャル・リアリティ)技術や拡張現実(オーグメンティッド・リアリティ)技術、遠隔存在(テレイグジスタンス)技術等の活用により、文化資源の利用価値が向上。
  1文化資源の有効活用(情報検索システムの活用、デジタル複製による活用、文化資源のデジタル復元)、2多様なミュージアム体験(多様な展示解説ツールの展開、臨場体験可能な映像展示、バーチャル・リアリティ等による仮想体験)、3新しいメディア芸術の創造・発展、4身近に文化芸術のある新しい生活の創造等、各地で新しいデジタル文化の創造に向けた取組が展開。

  「デジタルミュージアム」構想実現のための研究開発
(1) 先端基盤技術
  超高精細映像(スーパーハイビジョン)による鑑賞システム構築のための技術開発が必要。
  超臨場感コミュニケーションのための技術開発が必要。
(2) デジタル・アーカイブ技術・活用技術
 コンテンツ化、アーカイブ化、ネットワーク化に関する技術開発が必要。

  「デジタルミュージアム」構想実現に向けた体制づくり
 「デジタルミュージアム」構想実現のためには、1各地の博物館・美術館等の現場でICTに精通した専門家をはじめとする人材の育成と融合、2コンテンツの提供とシステム改革、3博物館情報の標準化、4様々な権利関係の適切な処理が必要。
 その早急な対応策として、1次世代型「デジタルミュージアム」技術実証モデルの推進や、2「デジタルミュージアム」構想実現に向けた産学官連携体制の整備等が期待。
 特に、産学官及び地域の責任機関等がそれぞれの役割を明確に意識しつつ、戦略の策定からその実現までを一貫して取り組む「デジタルミュージアム」開発コンソーシアムとも言うべき共同事業推進組織が、適切な場に早期に設置されることを期待。

  日本の文化力の源泉としての「デジタルミュージアム」
 人類の英知によって築かれてきた記憶にデジタル技術によって永遠の生命と普遍性を与え、未来へと導いて行くのがデジタル文化であり、これをさらに発展させ、将来につなげていく必要がある。


目次

はじめに

1. 文化資源等のデジタル・アーカイブについて

2. 新たな文化創造を支える基盤としての「デジタルミュージアム」

3. 国における取組の現状

4. 新しいデジタル文化の創造に向けた取組
(1) 文化資源の有効活用
(2) 多様なミュージアム体験
(3) 新しいメディア芸術の創造・発展
(4) 身近に文化芸術のある新しい生活の創造

5. 「デジタルミュージアム」構想実現のための研究開発
[1] 先端基盤技術
(1) 超高精細映像
(2) 超臨場感コミュニケーション
[2] デジタル・アーカイブ技術・活用技術
(1) コンテンツ化
(2) アーカイブ化
(3) ネットワーク化

6. 「デジタルミュージアム」構想実現に向けた体制作り
(1) 人材の育成と融合
(2) コンテンツの提供とシステム改革
(3) 博物館情報の標準化
(4) 権利関係
(5) 次世代型「デジタルミュージアム」技術実証モデルの推進
(6) 「デジタルミュージアム」構想実現に向けた産学官連携体制の整備

7. 日本の文化力の源泉としての「デジタルミュージアム」

開催経緯
デジタルミュージアムに関する研究会について(事務次官決定)