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3.国における取組の現状

 文化資源のデジタル・アーカイブの活用については、政府としても早くからその重要性を認識し、その推進に関して多くの提言がなされてきた。例えば、平成14年12月に閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針」では、文化財等の保存・活用のための一施策として、「国民が文化財を理解し、親しむ機会の充実を図るため、文化財の特性や保存に配慮しつつ、情報通信技術や様々な映像技術など多様な手法も用いて、公開、活用を推進」すべきとされており、平成19年2月の閣議決定でも、同様の記述がなされている。
 最近では、平成19年5月の「知的財産推進計画2007」で、世界最先端のコンテンツ大国を実現するための取組の中で、文化財関係の公開・展示技術等の研究開発や高精細度画像関連技術の研究開発の支援、ハイビジョン技術の海外への普及促進といったコンテンツ関連技術の研究開発の促進が、また、平成18年1月にIT戦略本部決定された「IT新改革戦略」及び平成18年7月にIT戦略本部で策定された「重点計画−2006」では、ITを通じた我が国の情報発信力を向上させることを目的として、我が国の保有する有形・無形の文化財のデジタル化を進め、そのコンテンツをインターネットを通じて世界に発信できるようにする取組の推進がそれぞれ謳われている。
 文部科学省では、高度情報通信ネットワーク社会の中で、誰もがいつでもどこでも教育や文化芸術に触れられる環境を実現することを目的として、そのために不可欠な豊かなコンテンツの創製を目指し、教育や文化芸術分野におけるデジタル・アーカイブ化に必要なソフトウェア技術基盤を構築するため、平成16年度から「知的資産の電子的な保存・活用を支援するソフトウェア技術基盤の構築」プロジェクトを実施している。
 また、実際にデジタル・アーカイブ化した文化資源を活用する試みも始まっている。我が国が誇る文化遺産の情報に関する本格的なポータルサイトを確立し、文化遺産のインターネット上での総覧の実現を目指した取組としては、文化庁と総務省が連携して進めている「文化遺産オンライン構想」がある。これは、全国の博物館・美術館等の文化財・美術品情報をはじめとする文化遺産のアーカイブ化を促進し、それらを集約した中から必要な情報を検索できるシステムを整備するとともに、分野別・地域別等に情報を整理したリンク先を表示し、インターネット上で公開するものである。国立情報学研究所の技術協力の下、独立行政法人国立文化財機構、国立美術館をはじめ、全国の博物館・美術館等関係各館・団体からデジタル画像等の使用協力を得て、平成16年度からシステム実証のため、「文化遺産オンライン試験公開版」がインターネット上で公開されている。
 総務省では、有形・無形の文化財や美術品等のデジタル画像データを今日のデジタル技術やネットワーク技術により活用するとともに、失われつつある地域文化を保存・継承し、情報発信拠点としての環境を整備することを目的とした「地域文化デジタル化事業」を推進している。同事業では、地域の博物館・美術館等に収蔵されている有形の文化財や地域の祭礼等の無形の文化財、地方公共団体が有するその地域の文化財や地域文化に関する資料などをデジタルデータ化する経費について、地方交付税による財政支援を措置している。
 一方、アーカイビングやアーカイブ化されたコンテンツ活用のための技術に関する研究開発も進められている。例えば、独立行政法人科学技術振興機構(JST)では、デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術のための研究開発を平成16年度から推進している。また、JST研究成果活用プラザ京都(現JSTイノベーションプラザ京都)では、超高解像度大型平面入力スキャナの開発や画像材料推定システムの開発を進め、襖や屏風、日本画等に代表される二次元の大型文化財を非接触で短時間にデジタル・アーカイブ化するとともに、各画素のデータから顔料等に関する情報を得ることを可能にした。
 また、科学技術理解増進事業の一環として、地域の科学館が保有する高度なデジタル映像技術及びコンテンツを教育現場で活かす試みも進められている。平成17年度に実施された「デジタル技術を活用した移動水族館−海の生き物不思議発見教室−」は、最新デジタル映像技術による海中の映像などを理科の授業の中で用いたものであった。さらに、様々な観点から科学技術をわかりやすく紹介する番組をインターネットを通じて発信する「サイエンス チャンネル」や、身近な生活に深く関わっている科学技術についての多彩なコンテンツを収録した「JSTバーチャル科学館」を提供している。

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