ここからサイトの主なメニューです

2.新たな文化創造を支える基盤としての「デジタルミュージアム」

 「デジタル文化」とは、デジタル技術が社会に浸透することによって、それまでに考えられなかった行動様式と生活様式が創られることであると考えられる。携帯電話やインターネット等通信分野におけるデジタル技術は確実に浸透し、生活する上で最も重要なツールとなっている。その結果、時間や空間(国籍)、年齢等を超えて、これまでに考えられなかった人同士のコミュニケーション空間がネットワーク上に生み出され、人々の新たな行動様式となっている。
 博物館・美術館等の来館者が期待するのは、展示物を通じた「体験」や、学芸員が企画力を発揮し研究成果を披露する展覧会という「コンテンツ」であり、さらにはそれらの背景にある文化を吸収し、自らの「精神活動の活力」とすることではないかと考えられる。
 既に一部の博物館・美術館等では、一定のコンテクストでアーカイブ・データをつなぎ、「コンテンツ」へと昇華させる手法を取り入れているが、デジタル技術をベースにした博物館・美術館等のあり方を考えるとき、これまでに集積され、今後ますます増大していくと考えられるアーカイブ・データをいかに利用して、人々が期待するものを提示できるか、また、それによって、「デジタルミュージアム」の役割をいかに拡張していくのかを、真剣に考えていかなければならない。
 デジタル技術を活用した博物館・美術館等は、デジタル化された膨大な文化資源のデータベースをバックボーンとして、それぞれの時代や社会、環境等を再現もしくは保存する役割を担っている。人々がそれらにアクセスするということは、その時代や社会、環境等を「体験」することであり、そこには「精神活動の活力」となるべき文化が存在する必要がある。「デジタルミュージアム」には、様々な時代や社会、環境等の情報が同時に存在するため、それらを組み合わせた新たな「コンテンツ」の提供が可能であるだけでなく、知の融合による新たな文化の創造にも最適な場であると言えよう。
 この新しい文化創造の源である「デジタルミュージアム」を実現するためには、単にデータベースの充実を図るだけでなく、文化資源のデジタル化の精度をより高め、「体験」として理解できる環境を創り出すことが必要である。そのためには、視覚情報を中心に五感を刺激するあらゆる情報の集約が不可欠であり、それらを有機的に連動し提示することではじめて、人々を圧倒的な臨場感で感動させることができるのである。
 なお、この世界の全ての情報を記録することは不可能であり、人々の心に訴えるために必要な情報は何なのかを念頭に置き、研究開発を進めることが肝要である。また、デジタル技術の適用に際しては、特に脆弱な文化財等を対象とする場合は、まず実物そのものの保存を第一に考えなければならないことは言うまでもない。

前のページへ 次のページへ


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ