ここからサイトの主なメニューです

3 情報教育に係る学習活動一覧

1.指導項目の整理

 小、中、高等学校の全ての学校段階において、情報教育に係る学習活動を抽出し、それを情報教育の体系の中に位置づけるに当たっては、現行の情報活用能力に係る3観点(情報活用の実践力、情報の科学的な理解及び情報社会に参画する態度)について、それぞれに係る具体的な指導項目としてどのようなものがあるかを整理することが必要となる。即ち、個々の学習活動が、情報活用能力の3観点のどこに位置づけるかに係る判断根拠となるものが必要ということであり、これは、「新・手引」に具体的に掲げられた情報活用能力の3観点を理念のままで終わらせないことにもつながることである。

 指導項目について整理したものは、別添1のとおりであるが、ここでは、これについて解説する。

 情報活用能力の3観点の定義は22.(1)で前述したとおりであるが、ここでは、これら3観点を、その定義の文言から、「情報活用の実践力」については、「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用する」、「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造する」及び「受け手の状況などを踏まえて発信・伝達する」の3つに、「情報の科学的な理解」については、「情報活用の基礎となる情報手段の特性」及び「情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法」の2つに、そして、「情報社会に参画する態度」については、「社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響」、「情報モラルの必要性や情報に対する責任」及び「望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度」の3つに分類した。

(1) 「情報活用の実践力」について

   まず、「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造する」及び「受け手の状況などを踏まえて発信・伝達する」の2分類に属する指導項目としては、それぞれ、「情報を適切に収集、判断、処理(分類、加工、編集等)し、新たな情報を創造し、表現するために必要な技能等」及び「情報を発信・伝達するために必要な技能等」を掲げた。即ち、「収集・判断・表現・処理・創造・発信・伝達」という一連の行動において、各過程を適切に行うために必要となる技能等に係る指導項目として整理している。「収集」「判断」等、各過程を細分化して指導項目を設定することも考えられたが、一連の情報伝達過程の中での個々の行動が、各過程のいずれに属するかを明確に区分することが難しく、複数の過程に跨る行動も多い。また、具体的な学習活動を見ても、各過程それぞれについての学習活動が分化しているわけではないことから、一括して指導項目として掲げることとした。

 次に、「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用する」の分類については、前出の2分類を包括する内容も扱う分類として位置づけ、「一連の情報伝達過程における適切な情報手段の活用に係る基礎知識」と「主要な情報手段の適切な活用に必要な基礎的な技能等」という2つの指導項目を掲げた。前者は、一連の情報伝達過程の意味や、各過程における多様な情報手段の存在、各過程における課題や目的に応じた情報手段の適切な活用の必要性等について扱う指導項目として整理し、後者は、主要な情報手段としての「コンピュータ」や「携帯電話」の活用に必要な基礎的な技能等について扱う指導項目として整理している。



(2) 「情報の科学的な理解」について

 

 まず、「情報活用の基礎となる情報手段の特性」については、情報伝達を行うための前提となる様々な知識のうち、各種情報手段に共通する特性(原理、仕組み等)について扱う分類として位置づけ、「総論」と「各論」に当たる2つの指導項目を掲げた。
 「総論」においては、「情報活用の実践力」の「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用する」の指導項目「一連の情報伝達過程における適切な情報手段の活用に係る基礎知識」にも位置づけられる「一連の情報伝達過程における多様な情報手段の存在」を掲げた上で、「当該多様な情報手段に共通する、及び各々の一般的特性」として、多様な情報手段の「活用場面における機能的特性」、音声、書面、PC画面等といった「扱う情報の形態の特性」、電気、電波、光;アナログ/デジタル;暗号化等といった「扱う情報の伝わり方の特性」を扱う指導項目として整理した。
 「各論」においては、一連の情報伝達過程全てにかかわりうる特徴的な情報手段として、「コンピュータの特性」、「インターネットを活用した通信(メール、掲示板等)の特性」及び「モバイル(携帯電話等)の特性」を掲げ、それぞれの仕組みや機能及びその特性、それを活用した情報手段の存在やその特性等について扱うこととして整理した。

 次に、「情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法」については、情報伝達を行う経験と情報学の基礎的理論、方法とを結びつける指導について扱う分類として位置づけ、「情報伝達過程全体に関わるもの」と「情報伝達過程中、特に『処理』及び『創造』に強く関わるもの」という指導項目を掲げた。
 「情報伝達過程全体に関わるもの」においては、「一連の情報伝達過程での誤りの発生原因と解消手法」及び「一連の情報伝達過程における人間とコンピュータ等との活動特性の相違」を掲げ、コンピュータに限定せず、人間が行う情報伝達を科学的に捉えることとして整理した。
 「情報伝達過程中、特に『処理』及び『創造』に強く関わるもの」については、「問題解決(新たな情報の創造)のための多様な情報手段及びその特性」、「コンピュータの機能はプログラムやアルゴリズムが前提となっていること」、「問題解決(新たな情報の創造)を効果的に行う手段である『モデル化』、『シミュレーション』等の意味、特性及びその有効性」、「問題解決(新たな情報の創造)に情報手段を活用した結果を客観的に評価することの必要性、その手段等」及び「コンピュータによる制御等」を掲げ、問題解決(新たな情報の創造)へのコンピュータ等の活用、プログラムやアルゴリズム、モデル化やシミュレーション、コンピュータによる制御等について扱い、情報伝達を行う経験と情報学の基礎的理論との関係の明確化を図ることとして整理した。

 なお、「情報の科学的な理解」においては、「情報活用の基礎となる情報手段の特性」及び「情報を適切に扱ったり、自らの情報活用を評価・改善するための基礎的な理論や方法」の2分類が並列の関係にあり、一方が他方を包括する関係にはなく、いずれか一方を、他方に属する指導をも包括する内容を扱う分類として位置づけることとはしていない。



(3) 「情報社会に参画する態度」について

 

 まず、「社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響」については、情報伝達を行うための前提となる様々な知識のうち、情報、情報手段、情報技術が社会に果たす役割や及ぼす影響を特出しして扱う分類として位置づけ、役割や良い影響に係る指導項目と、悪い影響に係る指導項目という2つを掲げた。

 次に、「情報モラルの必要性や情報に対する責任」については、「情報モラルの必要性」と「情報に対する責任」を並列した名称となっているが、ここでいう「情報に対する責任」は「情報モラル」に含まれる概念と考えられる。その上で、当該分類は、情報伝達を行うための前提となる様々な知識のうち、「情報モラル」の習得を特出しして扱う分類として位置づけ、「『情報モラル』を身につける必要性及び身につけるために必要な知識」という指導項目を掲げた。当該指導項目の内容をさらに分類するとすれば、「情報モラル」の概念の分類をどの程度詳細に行うかによってその粗精度は変わってくるが、ここでは、総論的な位置づけとして「適切な情報伝達の必要性と『情報モラル』の習得が情報伝達の前提となること」を掲げ、各論的な位置づけとして、著作権の侵害等「違法行為」に係る内容、情報の発信伝達に伴う責任等「違法ではないが不適切な行為」に係る内容、そして、犯罪に巻き込まれないための知識等「情報安全教育」に係る内容を掲げた。

 最後に、「望ましい情報社会の創造に参画しようとする態度」については、情報伝達を行うための前提として認識しておくべき根本的な考え方を扱い、併せて前出の2分類を包括する内容も扱う分類として位置づけ、「情報化の適切な進展に寄与しようとする考え方」という指導項目を掲げた。当該指導項目の内容としては、コミュニケーションを重視する考え方、一連の情報伝達過程の各過程を適切に行おうとする考え方、メディアから収集した情報を常に批判的に捉える考え方といった内容を掲げているが、本指導項目は、「態度」「根本的な考え方」を扱う項目であり、必ずしもこれらに限定されるものではない。


【参考】

31では、情報活用能力の3観点をさらに合計8分類に整理し、それぞれに係る指導項目を掲げてきた。
 一方で、「新・手引」の第3章「第1節 情報教育のねらいと期待される学習活動」
の「3.情報活用能力の着実な育成のための学習活動の組み立て」においては、情
報活用能力の各要素として、以下のものが掲げられている。

 ■ 情報活用の実践力
  (1) 課題や目的に合った情報手段(情報メディア、コンピュータ、ネットワーク)の適切な利用
  (2) 必要な情報の選択
  (3) 課題解決における主体的な情報活用(収集・表現・創造・発信・交流)
  (4) 情報の表現とコミュニケーション
 ■ 情報の科学的な理解
  (5) 情報手段の仕組みや特性の理解
  (6) 問題解決の手順と結果の評価についての基礎的な理論や方法
  (7) 人間の知覚、記憶、思考についての特性に関する基礎的な理論と方法
  (8) 情報を表現する技法に関する基礎的な理論と方法
 ■ 情報社会に参画する態度
  (9) 情報社会についての理解
  (10) 情報モラル・情報発信の責任についての理解
  (11) 情報社会に積極的に参加し、よりよい社会にするために貢献しようとする態度

 そこで、ここでは、ここまで整理してきた先述の8分類と、「新・手引」第3章第1節3.にある情報活用能力の上記11の要素との関係を明確にする。
 まず、「8分類」についてであるが、これは、あくまで「情報活用能力」の3観点の定義の文言を尊重して整理した、より、3観点に近い位置での分類である。一方で、「11の要素」については、「情報活用能力」の3観点の意味は踏まえつつも、「定義」の文言から整理したものではなく、より、実際の教育現場における学習活動に近い位置で整理したものである。このため、「8分類」に比べれば、定義から離れてはいるものの、具体性のある内容となっている。なお、11の要素は、8分類のいずれかに整理することができる。
 今回の検討会の整理において、「新・手引」に既に明示されていた「11の要素」からの指導内容の整理を行わず、より「情報活用能力」の3つの観点に近い位置づけの8分類で整理をした理由は、本検討会における検討が、個々の学習活動が3観点に分類される情報活用能力のどこに位置づけられるかを明確にし、情報活用能力の3観点を理念のままで終わらせないことを目的としていることを重視したためである。


2.学習活動一覧

 前項(1.)では、指導項目の整理について扱ったが、ここでは、具体的に各学校段階、学年ごとに、教科等をできる限り網羅的に捉え、情報教育に係る如何なる学習活動が考えられるか、また、それが、前項(1.)で8分類に整理した情報教育の体系の中でどのように位置づけられるかを整理し、「学習活動一覧」として示すこととする。なお、繰り返しとなるが、当該学習活動一覧は、各学校における教育課程の編成や、各教科等の個別の指導における参考として活用されるものであること、学習活動一覧に掲載した事例の他にも、独自の活動例を加えて更に充実した情報教育の推進に活用されることを期待する。
 学習活動一覧は、現行の学習指導要領又はその解説の中で、各教科等ごとに掲げられている、指導すべき「内容」等の中から、情報教育、即ち子どもの情報活用能力の育成をその目的に含むと解されるもののうち適切な例を抽出し、前項(1.)で整理した8分類に当てはめるとともに、小、中、高等学校を通じた情報教育の連続性等を考慮した配列を考え、適宜加除修正することにより作成したものである。
 以上の手法により整理した学習活動一覧は、別添2〜4に掲げるとおりである。各々、学校段階ごとに整理したものであり、ここでは、それぞれについて解説することとする。

(1) 小学校段階

 

 小学校段階の学習活動一覧は、別添2のとおりである。
 学年については、低学年(1、2年)、中学年(3、4年)及び高学年(5、6年)の3段階に分けて整理しており、個々の学習活動は、学習指導要領又はその解説の記載に従って記しているが、情報教育の観点から解説を加えている。
 一覧の中で「総合など」等と付記されている学習活動は、総合的な学習の時間等で扱うことを念頭に置いたものであるが、これらは、

 総合的な学習の時間においては、「各学校は、地域や学校、児童の実態等に応じて、横断的・総合的な学習や児童の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行うものとする」とされており、各学校においては、その趣旨やねらいを踏まえて目標や内容を定めることとされており、その一方で、行う学習活動の課題の例の1つに「情報」が掲げられていることから、当該学習活動を総合的な学習の時間で扱うことができる

それ以外の教科等においても、学習指導要領やその解説で示されている目標や内容を逸脱しない範囲内で、指導方法等を工夫することにより、当該学習活動を扱うことができる
という観点で掲げているものである。したがって、必ずしも、現行学習指導要領又はその解説において明示されているものではないが、既述のとおり、一覧は、各学校における教育課程の編成や、各教科等の個別の指導における「参考」として活用されることを期待するものであることから、特に掲げることとしたものである。

 また、一覧においては、その多くが「情報活用の実践力」に相当するものとなっている。これは、従前より、小学校段階では、「情報活用の実践力」の育成に焦点を当てて、情報手段に慣れ、親しませつつ、その適切な活用体験を持たせることが大切(「新・手引」第2章第2節)とされていたことと整合しているものである。一方で、従前より、情報の真偽に関わることや、著作権やプライバシーの問題などについては、具体的問題場面が発生した時に、それを見過ごすことなく、繰り返し触れることが重要とされていた(「新・手引」第2章第2節)ところでもあり、必ずしも「情報活用の実践力」のみを指導すれば十分とされているわけではない。加えて、社会において情報化は進展し続けており、情報機器の活用の低年齢化も進んでいる。

 以上のような状況を踏まえれば、小学校段階から、総合的な学習の時間等において、「情報の科学的な理解」や「情報社会に参画する態度」に係る指導を行うことが考えられるところであり、特に後者については、「情報モラルの必要性や情報に対する責任」について扱うことが考えられる。このため、ここで示す学習活動一覧においては、中学年(3、4年)の段階から、総合的な学習の時間等において、「情報の科学的な理解」及び「情報社会に参画する態度」の基礎的な内容について扱う形で整理している。


このほか、情報活用能力の3観点及びその分類に関し、「情報活用の実践力」の「課題や目的に応じて情報手段を適切に活用する」は、さらに「情報手段の基礎的な操作習得」及び「情報手段の適切な活用」という2つの詳細分類を、また、「必要な情報を主体的に収集・判断・表現・処理・創造する」については、さらに「情報の収集・判断」及び「情報の表現・処理・創造」という2つの詳細分類を設けている。これは、小学校段階の学習活動が情報教育の中でも基礎的なものであり、(1)で整理した3つの観点、8つの分類及び指導項目という体系からは若干それるとしても、当該詳細分類を設定することにより、そこに整理された学習活動が目指す情報活用能力が、具体的にイメージしやすくなると判断したためである。


(2) 中学校段階

 

中学校段階の学習活動一覧は、別添3のとおりである。
 中学校段階では、学年の区分は設けず、「中学校段階」という1段階で整理している。これは、小学校の学習指導要領においては、特別活動を除く全ての教科等の指導内容が、学年ごとに分けて記載されているのに対し、中学校の学習指導要領においては、理科、保健体育、技術・家庭、外国語など、指導内容が学年ごとに分けて記載されていない教科等が増え、これらの教科等においては、学習指導要領に掲げられた指導内容をいずれの学年で指導すべきかについて、各学校において創意工夫することとなっているためである。

 「各教科等の情報教育に関係する指導内容」欄では、学習指導要領又はその解説の記述に従って個々の指導内容を記しているが、小学校段階と同様、情報教育の観点から解説を加えている。また、総合的な学習の時間等における指導も考えられるところではあるが、中学校段階においては、学習指導要領に記載されている内容の中で、情報教育に係るものが比較的多いことから、特に、総合的な学習の時間等における指導については掲げないこととした。しかし、このことは、総合的な学習の時間等において情報教育に係る指導を行わないことを推奨しているわけではない。各学校が、その判断により、必要に応じて、総合的な学習の時間等において情報教育に係る指導を行うこともできるところである。

 次に、教科「技術・家庭」について触れる。教科「技術・家庭」については、「技術分野」に、情報活用能力の育成を目指す「B 情報とコンピュータ」が設定されてており、学習指導要領においては、

(1) 生活や産業の中で情報手段が果たしている役割
(2) コンピュータの基本的な構成と機能及び操作
(3) コンピュータの利用
(4) 情報通信ネットワーク
の4項目をすべての生徒に共通に履修させることとし、
(5) コンピュータを利用したマルチメディアの活用
(6) プログラムと計測・制御
の2項目を生徒の興味関心に応じて選択的に履修させることとしている。ここで別添3の一覧を見ると、選択的に履修させる部分も含めれば、「B 情報とコンピュータ」において、情報活用能力に係る3観点全てに触れることができるようになっている。しかし、「技術・家庭」のみで、中学校段階における情報教育全てを担っているわけではないので、中学校段階においても、小学校段階と同様、各教科等において、情報活用能力の3観点から情報教育の指導が行われることが期待されるところである。

 なお、中学校段階においても、「情報社会に参画する態度」、特に「情報モラルの必要性や情報に対する責任」についての継続的な指導は重要である。
別添2の小学校段階の学習活動一覧においては、「情報モラルの必要性や情報に対する責任」についても、その基礎的な内容を総合的な学習の時間等で扱う形で整理しているが、別添3の中学校段階の学習活動一覧においては、同分類の指導内容として、「技術・家庭(技術分野/B情報とコンピュータ)」に係る「情報化が社会や生活に及ぼす影響を知り、情報モラルの必要性について考えること。」等、3つを掲げている。各学校や各教員は、特にこの分類に係る指導内容について、生徒が、小学校段階で如何なるカリキュラムにより、どの程度まで基礎的な内容について指導を受けてきたかを十分に踏まえて、具体的な学習活動を整理していくことが重要である。

 最後に、中学校段階においては、小学校段階よりも学習活動の内容が高度化しており、当該一覧の「各教科等の情報教育に関係する指導内容」の欄の記述の内容も、小学校段階の学習活動一覧の中で記されている内容よりも高度化している。このため、当該記述のみでは具体的な学習活動がイメージできないことも考えられたことから、右端に「学習活動例」の欄を設けることとした。




(3) 高等学校段階

 

 高等学校段階の学習活動一覧は、別添4のとおりである。
高等学校段階でも、中学校段階と同様に学年の区分は設けず、「高等学校段階」という1段階で整理している。これは、学習指導要領において、指導内容が学年ごとに分けて記載されている教科及び科目がなく、各学年に置く教科及び科目そのものも、各学校において設定できるためである。
「各教科等の情報教育に関係する指導内容」欄では、学習指導要領又はその解説の記述に従って個々の指導内容を記しているが、小、中学校段階と同様、情報教育の観点から解説を加えている。また、特に、総合的な学習の時間等に係る指導については掲げないこととした点は、中学校段階と同様であり、このことが、総合的な学習の時間等において情報教育に係る指導を行わないことを推奨しているわけではないこと、各学校が、その判断により、必要に応じて、総合的な学習の時間等において情報教育に係る指導を行うこともできるところであることも、中学校段階と同様である。

 次に、教科「情報」について触れる。教科「情報」には、「情報A」、「情報B」及び「情報C」という3つの科目が設定されており、いずれか1科目以上を履修することが必要とされている。ところで、別添4の学習活動一覧を見ると、情報A、情報B及び情報Cの全てについて、情報活用能力の3観点に係る指導内容が入っていることから、いずれの科目を履修しても、情報活用能力の3観点全てについて触れられるようにはなっていることが分かる。

 以上のほか、「情報社会に参画する態度」、特に「情報モラルの必要性や情報に対する責任」について扱っていくことの重要性が高いという状況は、高等学校段階においても、小、中学校段階と同様である。

 これに関し、別添3の中学校段階の学習活動一覧においては、「情報モラルの必要性や情報に対する責任」について、「技術・家庭(技術分野/B情報とコンピュータ)」に係る「情報化が社会や生活に及ぼす影響を知り、情報モラルの必要性について考えること。」等、3つの指導内容が掲げられているが、別添3の高等学校段階の学習活動一覧においては、同分類の指導内容として9の指導内容を掲げており、よりきめ細かい指導を行うことが可能になっていると考えられる。各学校や各教員は、特にこの分類に係る指導内容について、生徒が、中学校段階で如何なるカリキュラムにより、どのような指導を受けてきたかを十分に踏まえて、具体的な学習活動を整理していくことが重要である。

 最後に、中学校段階と同様、別添4の高等学校段階の学習活動一覧においても、右端に「学習活動例」の欄を設けているが、その理由についても、中学校段階と同様である。



(4) 特別支援教育における配慮点

 

 特別支援教育における学習活動の内容は、基本的に前記小・中・高等学校における一覧に準ずる。しかしながら盲・聾・養護学校においては、在籍児が小学部(時には幼稚部)から高等部まで広範囲に及び、個々の児童生徒の教育的ニーズが多様なことから、情報教育を進めるにあたっては、一貫性のある計画的な教育課程が必要である。

 盲・聾・養護学校に学ぶ児童生徒は、その障害により移動が困難であったり、体験的に学習を進めることが難しい場合も多い。そこで情報活用の実践力を高め、情報を活用するスキルを学ぶことにより、あらゆる学習場面において社会参加・自立に向けた「生きる力」に直結する豊かな学びを期待することができる。とりわけコミュニケーションに障害のある児童生徒にとっては、情報端末機器は自らの意思を表現する有用なメディアでもあり、生活におけるパートナーとして大きな意義を持つ。そうした独自の意義を十分にふまえて積極的に情報活用の実践力を伸ばす必要がある。
 情報の科学的な理解については、そうした社会生活に直結する情報や機器の特性を学び、さらに自らの障害について知り、その改善・克服に向けて自らの不利を補う技術や環境改善の方策を知ることは大切である。
 情報社会に参画する態度を育成するためには、ネットワーク社会がある意味で障害の有無や人種、国境を越えた平等な世界であることを意識し、機器のアシストを受けながらも積極的に参加し、自己を表現していく経験を積むことが必要である。広範囲な交流やコラボレーションによって社会性を身につけ、社会人としての責任や自覚を促すことは特別支援教育を受ける児童生徒にとって大きな意義を持つものである。

 特別支援教育における情報教育は、それぞれの教科等で扱われるものと並行して、盲・聾・養護学校教育課程独自の領域である「自立活動」の内容としても、その障害の改善克服を目指して取り組む必要がある。こうした個に応じた指導においては、「個別の指導計画」に位置づけて、系統性を持って実施されるべきである。
 また、知的障害養護学校等において教育課程編成上の特例として、領域・教科を合わせた指導ができることになっており、そうした生活体験に密着した指導の中にも情報教育の意義を踏まえた計画的な指導を取り入れる必要がある。

 なお、特別な教育的ニーズを持つ児童生徒が適切な情報教育を受けるためには、以下のような配慮と指導上の工夫もまた必要である。
 ・ 障害や特性に応じた支援機器及び技術(アシスティブ・テクノロジー)の導入
 ・ 情報にアクセスしやすい環境整備(アクセシビリティの向上)
 ・ 多様な教育的ニーズに応じた適切な指導及び必要な支援に有効な柔軟性のある教育コンテンツの開発と普及
 ・ 指導方法やテクノロジーを支援できる専門機関の利用と相談機関の充実

 このように特別支援教育においては、個々の障害の特性に応じて情報化による効果が強く発現されることが期待できる一方で、その障害や環境故にデジタルデバイドが懸念されるため生じることがないよう、特に積極的な情報教育の展開が必要である。盲・聾・養護学校等における情報教育の意義についての理解や、それを支える技術の導入、指導に当たる教師自身を支援することについての重要性が教育界全体で更に認識されることが今後の大きな課題といえよう。




前のページ 次のページ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ