障害の発見や相談にかかわる現状について、障害種ごとにその主なものを紹介する。
先天性の場合、視覚による外界認知が困難な全盲や、明暗の区別がつく程度の視力の乳児については、授乳期に母親等と視線が合わなかったり、光に敏感に反応しなかったりという日常的な行動観察によって、早期に障害に気付くことが多い。
一方、視力の活用がある程度可能な弱視の場合は、乳児期の発見はなかなか難しく、幼児期に入ってからの行動観察や医療機関での診察によって発見されることも少なくない。
いずれの場合も医療機関において視覚障害と診断されるが、その後の支援機関としては、特別支援学校(盲学校)が乳幼児期からの育児支援や教育相談にあたるケースがほとんどであり、地域によっては福祉施設等において早期からの支援が行われているケースもある。
音声に対する反応が不十分であることに保護者が気づいたり、乳幼児健康診査で判明するのが一般的であったが、近年では、新生児聴覚スクリーニング検査の実施により、生後間もない時期(1週間~数週間程度)に聴覚障害が指摘されることもある。
聴覚障害の発見後の関連機関としては、医療機関(再検査等を実施する病院で確定診断)、難聴幼児通園施設があげられ、相談に応じているが、特別支援学校(聾学校)においても乳幼児教育相談等が行われている。
2~3歳ごろに、言語発達の遅れから保護者が気付いたり、乳幼児健康診査で言語発達が遅いことが分かったりするなどの後、児童相談所における判定や医療機関における診断により、知的障害があることが判明することが多い。また、出生前に染色体異常(ダウン症候群等)や、遺伝的疾患による知的障害が推定されることもある。
知的障害がある幼児は、一般に、医療機関の診断等を経て、児童相談所での療育手帳の交付や保健所等での相談が実施され、その後、知的障害児通園施設等で必要な対応が行われる。
多くの肢体不自由のある子どもの場合、病院から保健所に連絡が行き、保健師による支援が開始される。また、健康診断時の所見等から、医師や保健師から肢体不自由児通園施設が紹介され、早期からの療育が始まる。
脳性まひのある子どもについては、生後数か月から理学療法士による訓練が開始されることが多いが、確定診断がなされるのは、生後10か月前後であるとの調査結果もある。
小児期に発症する慢性疾患は、病院等で発見され、必要な対応がなされることが多い。
保健所では、長期に療養が必要となる疾患のある子どもへの生活面での指導や養育上の支援を行っている。就学期に入院するなど継続した医療又は生活規制が必要な場合、病院内にある小・中学校の特別支援学級や特別支援学校(病弱養護学校)に入学する場合もある。また、子どもの状態によっては病院等と連携をとり、訪問による指導を行うこともある。
口蓋裂のように、生後すぐに医療を必要とする場合や、吃音・構音障害のように、3~5歳ごろになると障害の状態が顕著になる場合がある。保護者が子どもの話し言葉の不自然さなどに気付き、療育センターや小学校等のことばの教室に相談を受けに行くことが多い。
また、口唇・口蓋裂の場合は、病院の口腔外科を経て、病院の治療センターや療育センター、小学校等のことばの教室で、相談や訓練、指導を受けることが多い。さらに、吃音や構音障害の場合は、家庭で保護者が気付き、その後、同様の経過をたどることが多い。
心理的な要因の関与により、社会的適応が困難である状態を総称し、情緒障害と呼んでいるが、その状態は、選択性かん黙、不登校などとして現れる。
選択性かん黙については、器質的・機能的な障害はないことに留意しつつ、特定の状況で音声や言葉を出せない状態を的確に把握する必要がある。不登校については、心理的な理由により、登校できず家に閉じこもっていたり、家を出ても登校できなかったりする状態に留意しつつ、登校しようとするができないという状態を的確に把握することが必要である。その他にも、情緒の未成熟や心理的な要因による様々な社会的不適応の状態が見られ、先述の状態を含み、それらによって集団生活への適応が困難である場合に学校教育においては情緒障害教育の対象となる場合がある。
なお、心理的な要因とは、情緒が不安定になり、その状態が続くような影響を与える原因のことであり、発達障害によるものではないという意味である。
LD(学習障害)に関しては、お絵かきや文字の読みなどが求められる場面になってから発見につながることが多いが、本人たちが集団の中では苦手さを隠そうとして回避することが多いので、個別に発達評価を行う場面を作ることが必要となる。
ADHD(注意欠陥多動性障害)に関しては、幼稚園や保育園に入ってから行動面で目立ち発見につながることが多いが、多動性のないタイプ(不注意優勢タイプ)などについては、発見が難しいため、忘れ物の状況など生活面での評価が必要となる。
自閉症に関しては、1歳6か月児健診、3歳児健診などで発見がなされることが多いが、知的な遅れのないタイプ(アスペルガー症候群)などについては、単発での健診では発見が難しいため、継続的な観察が必要となる。発見に関しては、言葉の有無よりも、周囲の大人や子どもに対する関心の持ち方や、音に対する過敏性や鈍麻性の様子などを見ることが必要とされている。
新生児医療の進歩により、超未熟児や重篤な疾患のある新生児の救命率が高くなり、新生児早期から重度・重複障害のある子どもが増えている。多くの子どもは、呼吸や栄養が安定し、家庭での育児が可能となれば退院するが、医療機関で治療を継続しながら、早期療育を受けることになる。
また、視覚障害と聴覚障害とを併せ有する者など、重複する障害の種類や程度により、専門性の高い支援が必要になる。てんかんや行動認知障害等の合併症を有する場合があり、その際は医療機関で継続的に経過観察する必要がある。地域の療育機関から特別支援学校(盲・聾・養護学校)へ進むことが多く、その中には、継続的な医療的ケア(注1)が必要となる場合がある。
-- 登録:平成21年以前 --