第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 学生派遣を校内委員会の成長の契機に 神奈川県川崎市:文部科学省
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特別支援教育について

第2章 都道府県・市区町村・学校の取組 学生派遣を校内委員会の成長の契機に 神奈川県川崎市

概要

 特別支援教育体制充実事業において、学生派遣を位置付け、希望のあった学校に学生を派遣した。学校には、個別の指導計画作成と学生の指導を条件とし、派遣される学生には定期的にグループカンファランス、必要に応じてスーパーバイズを位置付けることによって、次の成果を得た。学校には、個別の指導計画に確認された支援方針や支援方法に基づいて、その一部を学生に託す主体性が育まれた。学生には、受身的な実習ではなく、見立てや支援方法の再吟味という課題をもった探求になった。

キーワード

 個別の指導計画 学生派遣 校内委員会の活性化 グループカンファレンス インターンシップ活用

1.学生派遣を受け入れる学校の成長

(1)学生派遣の考え方

 本市では、平成16年度より3年間、全市の小・中学校を対象に、特別支援教育体制充実事業を展開してきた。165校が、コーディネーター養成研修に参加し、巡回相談員を活用する1年間を決め、取組を行うものである。もちろん、専門家チームも学校の取組を支援するが、より日常的な実践をバックアップするために、平成17年度より巡回指導員(退職教員)を派遣し、授業観察後、担任とのコンサルテーションや校内委員会で支援を検討する取組も始めた。
 これらは、主に担任や教職員集団を支援するもので、ニーズのある児童生徒との関係から見ると間接的なサービスである。しかし、学校や保護者にとって、直接、児童生徒を支援する人的資源を求める声も切実である。実際、NPOや大学と連携して、学生などの人的資源を活用している学校も増えてきた。その取組の中には、自傷他害を防ぎ、教室離脱時の安全を確保する緊急性のあるものもあるが、支援者を付けること自体を支援のようにとらえ、支援者に方針が伝えられなかったり、校内委員会の活動とも別枠であったりする学校もあるように見受けられた。そこで、本事業の中では、直接サービスに寄与しつつも、校内委員会の活動が活性化するような枠組みを大事に考え、学生派遣を始めた。

(2)学生派遣希望校への条件

 毎年、年度当初、コーディネーター連絡協議会では、巡回指導員や聾養護学校の地域支援も含め、各学校が活用できる地域資源を説明する。そこで「学生派遣」の詳細を伝え、派遣希望の学校を募る。希望する学校には、個別の指導計画も添付で求め、学生の指導教官を定めてもらう。
 この過程で、コーディネーターは保護者と相談を深め、校内委員会で協議し、担任やその他の教師の支援を検討した上で、学生をどの部分の支援に活用するかを明らかにしなければならない。派遣される学生が決まったら、校長面接の後、コーディネーターか指導教官が、個別の指導計画をもとに事前に支援についての説明を行う。
 もちろん、支援を開始した後も、学生は支援について校内教職員から指導を受けられる。この過程で校内委員会が力を付け、コーディネーターも鍛えられる。

地域レベルの支援資源

地域レベルの支援資源 図

2.学生にとって

(1)提携先

 平成15年度より、お茶の水女子大学(生活科学部)と提携し、インターンシップ活用を始めていた。その後、明星大学、本年度より法政大学とも提携を増やしてきた。大学の教育課程に位置付けられた実習の単位を取得できる。これらとは別に、平成17年度半ばより早稲田大学教員養成GPも導入し、1中学校に組織的に学生チームの派遣も開始した。どちらも保険加入が条件で、交通費・報酬はない。その分、学生には、校種や、支援したい子どものタイプなどの希望もとり、主体的な問題意識をもって支援に臨むよう配慮してきた。

(2)学生を育てる枠組み

 学期に1回、あるいは2ヶ月に1回程度、総合教育センターでグループカンファランスを行う。どういう子どもを支援しているかを報告し合い、校内委員会やコーディネーターの活動の様子も共有し合う。観察から特性を見立て、支援方法を検討し合う力も培う。年度末には、子どもと自分との成長と支援課題をまとめる。支援過程で、必要に応じて総合教育センター指導主事がスーパーバイズを行う。
 教職志望者には、対集団では育ちにくい個人の困難さに共感する力を育てていく場になる。臨床家志望者には、クリニックモデルでは見えにくい環境との相互作用や教師・他児との軋轢から受ける子どもの痛みを肌で感じ、他者に本人を理解してもらう橋渡しをする支援も試みる場になる。

3.成果と課題

 支援の人を配置することが支援と誤解されやすい中、派遣の条件を提示したことにより、校内委員会の協議や個別の指導計画作成が促進された。もちろん、担任も学級内支援を行いやすくなり、支援される本人や周囲の子どもたちにもメリットがあった。
 学生は、年度末に書面で振り返りを行う。今後は、学校が学生活用を評価するシステムを整備していくことが課題である。
 今後は、更に質量ともに充実した派遣が求められる。学校側の受け入れ態勢や研修が十分でないままの量的拡大は避けたい。そのために、ボランティア活用のガイドラインを整備するとともに、適正な評価システムを導入する必要がある。また、提携大学とのパイプを太くし、より統合的な研修システムや地区ごとのカンファランスなど機能的な体制整備も必要と考える。

-- 登録:平成21年以前 --